映画館がやってきた!

構築日記・不定期便
- What's NEWを兼ねた日記のような読み物 -
2009年1月
[先月|目次|翌月]

2009.1.31
  • 「イギリス王室家系図」を書いてみる[wars-of-the-roses.xls]
     シェイクスピア作品に登場する「ジョン王」「リチャード2世」「ヘンリー4,5,6世」「リチャード3世」 「ヘンリー8世」そして、シェイクスピアの時代「エリザベス1世」の時代までの家系図を 描いてみた。
     先日見た「リチャード3世」のラストには何の説明もなく唐突に「リッチモンド伯(ヘンリー7世)」が登場して 大勝利…なのだが、この人はエリザベス1世のお祖父さんなんだね。
     そりゃあ説明不要だね。
  • BS2の「BS熱中夜話・ロック黄金期」を見て久しぶりにロックのCDをぽちった
    • Complete Clapton
    • Mothership(レッド・ツェッペリン)
    • Kinks
    • 狂気(SACD-Hybrid)ピンク・フロイド
    • ザ・パーフェクト・コレクション(ロッド・スチュワート)
    • ジェネシス・ベスト 2007
    • クリムゾン・キングの宮殿 (ファイナル・ヴァージョン)
    • ベイシティ・ローラーズ - 青春の記念碑
     ベスト盤中心に。
     70-80年代のロックを中心にした番組なので、小中高校生時代に聞いた曲ばかりで、 当時はなかなかLPは買えなかったので、なんだか番組に活性化されてしまった。
    (今持っているロックのCDはプログレばっかしだ)
     「ベイシティ・ローラーズ」は中1の頃の友人が熱中していて、妻に聞いても小学生男子たちが 掃除をさぼって箒で歌っていたなんて言うのだが、私は「けっ、軟弱なアイドル・グループ」 などと思ってた。が、今聞くとやっぱり懐かしく感じるね。
     ちなみに、何でかというと、NHKの現代音楽番組とか冨田勲を聴いているギター弾きだったので、 「シンフォニックで変拍子でシンセサイザーな音楽」が好きだったのね。
     あの頃「ドンタッドンタッ…」の繰り返しのアイドル・バンドは問題外だったな(笑)
2009.1.30
  • 『カプリコン・1』鑑賞(BSh) ★
    1977年アメリカ
     史上初の有人火星宇宙船「カプリコン・1」をめぐるNASAの陰謀の物語。
     打ち上げ5分前、突然3人の乗組員はコックピットから退去させられ、砂漠の基地に連れ去られる。
     打ち上げ前に生命維持装置の不良が見つかったが、NASAの体面にかけてやめることはできない。 ということで、パイロットを乗せないロケットだけを火星に送り、火星着陸シーンを 「スタジオ撮影」で誤魔化そうという。
     計画は上手く運んで、あとは地球に帰還した帰還カプセルにこっそり乗り込む手筈だったが、 耐熱シールドの破損で帰還カプセルは燃え尽きてしまう。
     乗組員は辻褄を合せるために会議室に閉じ込められる。
     「このままでは生きて帰れないかもしれない」と感じた乗組員たちは、ジェット機を奪って 逃走するが砂漠に墜落することになり追跡者との戦いが始まる。
     …という話。
     この映画のために「アポロは月に行かなかった」という噂が繰り返し蒸し返される ことにもなったという曰くつきの作品だ。
     結末は逃亡した3人の乗組員のうち二人までは捕まるが、最後の一人は逃げきって 自分の国葬に立ち会っている家族の前に帰ってくる。
     でもね〜、このストーリーならば全員国家の陰謀の犠牲になって 「事件は永遠に闇の中…」 という結末のほうが重みが増したような気はするね。
     アメリカ的に「正義の勝利」をやらないとスポンサーが納得しなかったのかもしれない けれど、国家の暴力の中に個人が飲み込まれていくというのが実はリアルなんじゃないかね。

  • 進化から見た病気「ダーウィン医学」のすすめ(講談社ブルーバックス)
     感染症が人類の主な死因だった時代から、生活習慣病の時代へ。そして遺伝子治療の未来、老化の本当の意味 etc...
     細菌やウィルスとの戦いに勝ち残ってきたのが今の人間。その仕組み… 人間と細菌の双方の戦略についての解説。これが面白い。
     西洋医学の主流は「症状を取り除く」ことだが、人間が本来病気と闘う仕組みに立ち返って考えると、 それでは解決にならないケースも見えてくる。
     「菌」好きにとっては、共生と病気の境目をのぞくことは、病気との付き合いもまた 楽しめる。「病原菌と闘っている自分の細胞が愛しい」みたいな(笑)
  • SONGS - 小泉今日子
     長いこと歌手活動をお休みしていたそうだが、昔の曲を今歌うのを聴くのは結構辛い。
     歌はスポーツ選手と同じで体が基本なので毎日鍛えていないと第一線で 戦えるものではないなと痛感する。同年代だから、こういう処に肉体の衰えを感じると自分まで 嫌な感じだ。もちろん、20代の頃だって上手くは無かったけれど昔は勢いがあったからね。
2009.1.29
  • 2008年・映画興行収入 参考:[goo映画]
    • 1日1. 崖の上のポニョ (155億)
    • 2日2. 花より男子ファイナル (77.5億)
    • 3外1. インディー・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国 (57.1億)
    • 4外2. レッドクリフPart1 (50.5億)
    • 5日3. 容疑者Xの献身 (49.2億)
    • 6日4. 劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド&パール (48億)
    • 7日5. 相棒 劇場版 (44.4億)
    • 8外3. アイ・アム・レジェンド (43.1億)
    • 9日6. ザ・マジックアワー (39.2億円) ★★★
    • 10日7.20世紀少年 (39億円)
    • 11外4.ライラの冒険 黄金の羅針盤 (37.5億) ★☆
    • 12外5.ハンコック (31億)
    (複数のデータから独自にまとめたので多少誤差あり。公開中の見込み数値含む。)

     昨年も興行収入は邦画が洋画を上回ったそうだが、いずれにしても100億超えの大ヒットは 『ポニョ』一本で少し地味な年だった。
     日本映画に客が入ったとはいえ、内容は『ポニョ』『ザ・マジックアワー』以外は 漫画原作かTVの劇場版で、 「お金をかけた二時間ドラマ」だと思えば、映画としては寂しい限りだ。
     ちなみに、Best10で劇場で見たのは『ザ・マジックアワー』のみ。
     『20世紀少年』は完結してから見ればいいかな。
     『ライラの冒険 黄金の羅針盤』はWOWOWで既に放送されたが、まあ「それなり」の出来で WOWOWで十分だと思った。
     『アイ・アム・レジェンド』は、このタイトルでなければ劇場に行ったかも。
     だいたい「原語のカタカナ書き」の作品は熱気を感じないんで…。しかも原作が 「地球最後の男」で出版されているのに。『ハンコック』は人名だから仕方ない けど。
     WOWOWで十分という映画は大半なのだけれど、日本映画が多くなって困るのは、 TVで放送されるときに原作or出資のTV局でしか放送されないことだ。つまり、 「CM入り・サラウンド無し」でしか放送されないことが多い。
     洋画なんかいまだに「吹替&デュアル・モノ」が主流じゃ、録画する気も起きない。

  • 去年自分が劇場で見た映画は
    • 11月『ハンサムスーツ』★★☆
    • 8月『デトロイト・メタル・シティー』★★★
    • 8月『スターウォーズ・クローン・ウォーズ』★☆
    • 5月『ザ・マジックアワー』★★★
    • 3月『劇場版ケロロ軍曹3』★★★
     どれもベスト10に入っては居ないけれど、事前情報で自分の好みだと 信じて行った作品ばかりなので、大きなはずれは無かった。
     まあ『スターウォーズ・クローン・ウォーズ』はちょっと微妙だったけれど。
     劇場で見て良かったナンバーワンは、『デトロイト・メタル・シティー』
     ギンギンの大音量でイベント的に盛り上がってこそ楽しめる作品だから。
     内容で一番盛り上がったのは、『ザ・マジックアワー』か、 もしかすると『劇場版ケロロ軍曹3』かもしれない。泣いたもんね(笑)
  • 2月のWOWOWはアカデミー賞特集etc.
    第80回(前回)関係では
    • 2/4水 深0:00- ヒトラーの贋札
    • 2/22日16:35- エディット・ピアフ
    • 2/22日20:00- エリザベス:ゴールデンエイジ
    • 2/22日22:00- スウィニー・トッド
     デトロイト・メタルシティー(アニメ版)が毎週金曜深夜(全12話) 放送されるのも見逃せない。
  • そのほかのWOWOW注目作品は次の通り
    • 2/11水 15:30- シザー・ハンズ
    • 2/11水 17:20- チャーリーとチョコレート工場
    • 2/11水 19:30- ペネロピ
    • 2/13金 10:00- サンシャイン2057
    • 2/14土 12:00- グラディエーター
    • 2/15日 22:10- モンゴル
    • 2/20金 深1:00- アイ・アム・レジェンド
    • 2/25水 10:00- インベージョン(SD)
    • 2/25水 21:05- スリーピー・ホロウ
    • 2/25水 深0:00- レンブラントの夜警
    • 2/27金 10:20- アラジン
    • 2/28土 6:50- 炎のランナー
2009.1.28
  • 読書「宇宙のランデヴー」(A.C.クラーク/ハヤカワ文庫)
     宇宙の彼方から「スペース・コロニー方宇宙船」が飛んでくる話。
     最寄の宙域に居た宇宙飛行士たちがこれに乗り込み探検する。
     宇宙船の中は完全に無人だし、太陽に近づくに従って色々なイベントが起きるけれど、 最終的には「人類完全無視」的な態度でどこか最終目的地に向かって飛び去ってしまうのが、 なんともストイックというか不思議なSFだ。
     ファーストコンタクト物SFは数多いけれど、ほとんど何も解らないまま 永遠の彼方に飛び去ってしまうというのは極めて珍しいパターンだろう。
     探検隊の中にキリスト教系(?)の隊員が居て、 「これは人類が宇宙に乗り出すために神が使わした箱舟ではないか」 という下りがあるのだが、そのアイディアについてそれきり誰も触れないのは もったいないなぁ。その一言からもう一冊書けそうな気もするんだけれど(^^;
     それはそれとして、このスペースコロニーはいわゆる「ガンダムの密閉型コロニー」 みたいな構造をしているのだけれど、推進機構は「未知の力場で慣性制御する」らしい。
     でもそれっていわゆる「重力を自在に操作する」ってことなので、円筒形を回して 重力を作る必要が低いし、そもそも内部に誰も居ないのだから、重力を作る必要ないし、 加速によって内部の水面が傾くとか、そういうことも無いわけで、なんだか 設定ミスのような気がするんだけどな。
     もっとも、クラークが本当に書きたかったことは「円筒形のスペースコロニーの物理学」 で、内部の重力の様子とか、コリオリの力で進行方向が曲がるとか、風が起きるとか、 総質量に対して加速が…とか、そういう細々した設定に関する脳内シミュレーション なのだろう。
     だから、そういう「描写」だけで、ストーリーなんか無くてもSFは書けてしまうんだよ というすごい作品。でもこのままでは映画にはならないだろうな〜
  • この世界では、太陽系の各惑星に植民地が有ることになっている。
     なんと「水星」にも金属資源採取の為に人が住んでいる。さすがにこれは きつそうなんだけれど、水星でも極地ならば人が住める温度の領域があるの かなぁ…
     一方「金星だけには人が住んでいない」という。
     小学生の頃に読んだ図鑑には、金星には数100気圧の大気があって、 地表には濃硫酸の雨が降っているという話が。確かにそれは厳しい。
2009.1.27
  • 「機動戦士ガンダムさん」よっつめの巻
     「宇宙島のガルマくん」最終回は泣けた。ザビ家の家族にも 幸せな「当り前の人生」の可能性は確かにあったかもしれないよね。
2009.1.26
  • 「かんなぎ」BS-J版最終回
     結局なぎ様には記憶の欠落があって神様としての自身がぐらついているのだけれど、 仁と一緒に何かを探していこう!みたいな、そんな結末。
     最後の最後に「またね」みたいな字幕が出たので、続編を制作する気持ちは あるようだ。一応期待している。
  • それはそうと「鉄腕バーディーDECODE:02」で、
     前作で敵をやっていた宇宙人の少女が、芸能プロ社長(?)のところで下働きをしているのだが、 こいつが何故か「かんなぎの高校の制服」のコスプレをしているのだが…
     エンジのワンピースに細いリボンという衣装はそれほど派手じゃなくて 違和感は無いが、結構遊ぶね。
2009.1.25
  • 「軌道エレベータが倒れるよ〜」(ガンダム00)
     登場人物が地上の風向きを気にしている。
     軌道エレベータって、全長の大半が宇宙空間にあるわけで、 倒れるのに風向きなんて関係ないよな。
     どこをどう壊しても必ず赤道の東に向かって倒れるぞ。
     さらに、切断した部分から上は遠心力で宇宙空間に向かって飛んでいくわけだが、 00世界の軌道エレベータは、三本が繋がっているので引っ張られて共倒れになる。
     静止軌道のリングは「静止軌道」にあるから、ブチっと切り離せば被害の波及は 避けられるが、低軌道ステーションを接続しているリングは内部に「磁性流体」が 循環していてその遠心力で軌道を保っているため、リングが切断されたら落下して しまう。
     しかもこの破片は真下に落ちるわけじゃない。赤道上を大量のデブリが周回する。 ということは、隣の軌道エレベータも只ではすまない。
     今頃、SF考証担当者は青ざめていると思う(^^;
  • 豊洲でニュースになっているベンゾ[a]ピレンって?
     調べると「ベンゾピレン」の別名(Wikipedia)で、タバコの煙や、食品の焦げに含まれるものらしい。 要するに昔「サンマの焦げを食べるとガンになる」と言われた原因のアレだ。 直火で調理した食品にはたいてい含まれている。
     動物実験(マウス)では発がん性が確認されているが、人間でははっきりしていない。 というのも、人間は火で調理した食品を摂取しつつ進化してきたために、 焦げた食べ物くらいで発病しないように進化してきたから
     一般的に、マウスで発がん性が確認された物質で、人間にはあまり毒性が高くない物質は数多い。 言い換えると「人間はマウスよりDNAの破損を修理する機能が高い」ということだが、 マウスのように寿命の短い生物は 自然界でガンにかかって死ぬことがほとんどないのに比べ、長生きする生物はDNAの 修復機能の重要度が高く、そのように進化してきた。ということだろう。
     今回学者は「要観察だが危険はない」という判定らしいが、ニュースには、豊洲で見つかった 濃度と、タバコや焼き魚による摂取量との定量的な比較なんかしてもらいたいところだ。
     「汚染土壌からタバコ何本分の濃度のベンゾピレンが大気中に漏れている」なんて情報があれば、 危険度は比較しやすい。だが現実には「その辺のあたりまえの空気のほうがよほど汚れている」 というレベルに落ち着くのだと思うが。
  • 焼き魚のオコゲに含まれる科学物質が築地の移転先から検出されたからって、どうなんだ。
     それでダメなら移転以前に魚を食べるなってことだ。
     そんなことを言い出したら、魚には有機水銀だって、PCBだって普通に含まれていて、 外国の健康オタクがみたら気絶するほどの量を食べているんだぞ。 そのうえ、細菌由来の生物毒のリスクを知りながらフグや生牡蠣を食べる人なんて 正気じゃない。
  • asahi.comなどでは「強烈な発がん物質が大量に…」などという書き方をしているけれど、 濃度はともかく日常的に食品から摂取している物質だということも書いた方が良い。
     もともと石炭から都市ガスを作る工場があった場所なので、たまたま廃液がバルブの スキマからぽとりと垂れた部分を調べたら従来のサンプルより100倍の濃度で 検出されても不思議ともいえない。
     今回はサンプル数を増やしているわけで、100箇所調べて1箇所だけから 出たのならそう考えるのが自然だろう。平均濃度は1/100以下と推測される。
     「科学的に正確な評価」を伝えることより、新聞の部数が伸びる書き方をする ほうが重要なら、そんなものは報道人失格だな。

2009.1.24
  • 今日は演劇ダブルヘッダー。「鉄人28号」と「リチャード三世」
  • 演劇「鉄人28号」鑑賞(天王洲アイル・銀河劇場)
     押井守初の舞台演出作品。
     これは去年末頃、秋葉原駅でポスターを見て「この芝居が呼んでいる…」って 感じで、妻と「押井ファン」の友人と三人で鑑賞。
     幕が開くと、セイタカアワダチソウの生い茂る湾岸の荒野の真ん中に膝まづく 巨大な「鉄人28号」。風雨にさらされて赤錆びた姿で…
     三階席から見下ろす形でも舞台の鉄人は圧倒的な存在感を放っていたのだが、 これは一階席から見上げる形だとさらに印象的だったろうなと思う。
     鉄人のデザインは今回の舞台のための特別な物で、オリジナルのつるっと卵型の 概観に比較して、ものすごい重量感と戦車的なディテール。しかも打ち捨てられた 戦争遺跡に感じる哀愁みたいなものも取り込んで、これ一つで物語のテーマを びしっと主張している。

     しかし始まってびっくりしたのは「宝塚歌劇」形式だったこと。
     えっミュージカル?! 押井さ〜ん、意外すぎるよ〜(^^;;
     ストーリーもオリジナル。
     昭和64年、東京オリンピックをきっかけに浄化されていく東京を舞台に、 悪の象徴とされた反体制の活動家や、野犬狩り、立ち食い師などと、彼らを追い詰めていく 警察に代表される国家権力、どちらの言い分にも利はある…という所に 鉄人らしさを含ませつつ、昭和の時代性を描いていく。

     鉄人28号がアニメ化されたのは、昭和63年。
     企画自体は、幻の「劇場版アニメ 鉄人28号」で原作者にお墨付きをもらった物らしい。
     パンフレットで押井は「昭和ノスタルジーは虚構の現代史だ。僕たちは未来に脱出したかった」 と書いている。
     東京オリンピックは、私的には物心つくには早すぎる年代の出来事なのだけれど、 最近のNHKの番組などで、戦争の匂いを消し去り、日本の復興・近代化を海外に誇示する ために色々と無茶をやったことが知られてきた。
     「あの頃の日本はよかった」的な映画が大ヒットしているけれど、確かに、 その時代の中では「今はいい時代だ」という感覚は無くて「未来はもっといいに違いない」 というよく言えば前向き、悪く言えば今ここから抜け出したい感覚があった。
     都会育ちの妻なんか子供の頃には「駅前で傷痍軍人が小銭を恵んでもらっていた」とか いうので、時の政府が掲げるスローガンよりは全然「戦後」ではあった。
     なので、そういう時代を背景に、 「押井の鉄人」は思い切り社会派メッセージ・ミュージカルだ。

     ストーリーは湾岸の野犬狩りシーンから始まる。
     「犬」か。押井らしい、さすがだ(笑) 犬関係団体からの花輪もあったな。
     野犬狩りというのは史実らしい。戦後的なる物一掃の対象として、野犬も狩られた。
     ここで大塚所長としてサンプラザ中野くん登場。歌う。
       敷島博士(池田成志)は、研究所で鉄人28号を管理、調整している。
     ちなみに池田成志は、最近では『グレンラガン』の螺旋王ロージェノムで カッコいいところを見せていたが、『THE・有頂天ホテル』では、ちょい役 ダンサー - オイリー菅原として出演していたり、なかなか良くわからない 俳優さんだ。
     金田正太郎(南果歩)は、女立ち食い師・ケツネコロッケのお銀との二役。
     鉄人は操縦者次第で「正義の味方」にも「悪の手先」にもなる。
     だから「戦後的価値観」なるものの中で育った新たな世代の彼が操縦者に選ばれた という設定だ。
       一方、「ケツネコロッケのお銀」は「女立喰師」
     「立喰師」というのは押井が作った架空の職業(?)で、 まあ蕎麦屋の食い逃げなんだけれど、店のオヤジとの駆け引きや口上に芸術的な 冴えを見せるもの、と思ってもらおう。
     さて、警察は反政府な人間たちも追及しているわけだが、 テロリスト集団「人狼党」の首魁、犬走一直(ダイアモンド・ユカイ)は、 湾岸最後の野犬集団のリーダー「有明フェリータ」を、自由の象徴として 野犬収容所から助け出す。
     正太郎君は、野犬を狩ることについて所長や敷島博士の言葉と、犬走りや お銀の言葉の間で、何が本当の正義なのかについて悩むことになる。
     ということはさておき、「人狼党」の本当の目的は、そういう状況のシンボルである 「東京オリンピック阻止」にあった。
     開会式妨害の為に「空に五輪を描く自衛隊のジェット機」が飛べなくなる。
     開会式を成功させるため、準備不十分のまま鉄人は緊急発進するが、 見事五輪を描いた鉄人は行方不明になる。正太郎少年も帰ってこなかった。
     という話。
     山場の「鉄人発進シーン」では、それまで舞台で中央でひっそりうずくまっていた 鉄人がぐお〜んと回転し、火を噴きながら立ち上がる。感動的だ…!
    (やっぱり一階の前の方で見たいですね〜これは)

     芝居として成り立っていたのかというと、それは良くわからない。
     「もはや戦後ではない」的ながむしゃらな前進が損なってきた物とか、 そういうテーマについては十分伝わってきたけれど、映画のチケット4枚分もする 料金に見合う娯楽性とか、全体を考えると疑問は有る。
     ミュージカル形式にすると必然的に「セリフの量」が限られるので 常なら語りまくりの押井脚本としては詰め込みが効かなかった=語り足りない… ということも有るのかな。
     まあ、鉄人の起動シーンだけで、普通の映画一回分くらいのインパクトはあった し、そこだけはもう一度見たいとも思うのだが。
     あれの終演後の行方が気になる。どこかの美術館に飾ってくれたら見に行きたい。 錆びついた姿はジブリ美術館のロボット兵を思い起こさせるところがあるけれど、 存在感は数段ずっしりしてかっこいいと思うよ。

  • 演劇パルコ・プレゼンツ・古田新太in「リチャード三世」鑑賞(赤坂ACTシアター)
    [パルコ公式]
    翻訳…三神勲 (角川文庫クラシックス刊)
    演出…いのうえひでのり[劇団☆新感線 主宰]
    cast:
    • エドワード四世 …久保酎吉 [ヨーク家長男]
    • クラレンス公ジョージ…若松武史 [ヨーク家次男]
    • グロスタ公(リチャード三世)…古田新太[ヨーク家三男]
    • アン…安田成美…[エドワーズ未亡人→リチャードの妻]
    • スタンリー卿 …榎木孝明[リッチモンド伯の義父]
    • バッキンガム公…大森博史[リチャードの腹心]
    • マーガレット…銀粉蝶…[故ヘンリー六世の妻(ランカスター)]
    • 故ヨーク公夫人…三田和代…[リチャードの母(プランタジネット)]
    • エリザベス…久世星佳…[エドワード四世の妻(プランタジネット)]
    • リヴァーズ伯…天宮良…[エリザベスの弟]
    • ヘイスティングス卿…山本亨…[皇太子エドワード五世擁護]
    • ケイツビー…増沢望…[リチャードの腹心]
    • ラトクリフ…西川忠志[リチャードの腹心]
    • リッチモンド伯…川久保拓司…[ブルターニュからリチャード討伐軍を起こす]
    • ドーセット候…森本亮治…[エリザベスの先夫の息子、リッチモンド派]
     古田新太が「リチャード三世」を演じる、というので見に行った。
     チラシのビジュアルもなかなか良かった。A3の大判にモノトーンで、 スターウォーズの銀河皇帝のようなオドロオドロしい蒼白メイク、世の中を 透かしてみるような視線。
     裏面には主要キャストの写真も有って、同じようなローブ姿で渋いことこの上ない。 正統派かつスタイリッシュな香りがする。
     というわけで、出かけてみると、本番ステージの衣装は薄汚れた ブリティッシュパンク(?)だった。おいおい(汗)

     赤坂ACTシアターには初めて行ったが、生声の演劇を上演するには ずいぶんと大きな劇場でキャパは1500程か。二階席最後尾から舞台を見下ろすと、 肉眼では誰がしゃべっているか判別できないほど遠い。オペラグラス必須。
     ただ、(隠しマイクで薄くPAが入っているようではあるが)声は小さくても明瞭に 聞こえるし、客席の傾斜が適切な設計で、 椅子は前後で斜め配置になっているため、銀河劇場みたいに前の人の頭で 舞台が欠けるなんてことはない。演目に対して大きすぎるとは思うが、 ホールとしては良い。要するに良いチケットを買えば…(^^;

     主役の古田新太は、初シェイクスピア。
     演出家も「シェイクスピアは初挑戦」だそうだ。 Webに「いつか古田新太でシェイクスピアをやってみたかった」という言葉があり、 初物コンビという企画だ。
     時代設定は小道具として携帯電話やパソコンやTVの取材カメラなどが登場して、 きわめて現代っぽい。しかし、小道具が現代的なだけで、内容まで現代に翻案している わけではなく、台本はほとんどノーカットに近いシェイクスピアそのもの。
     衣装はチラシとは似ても似つかぬ、60〜70年代イギリスみたいな極彩色のナイロンっぽい プリント柄。分かりやすいんだかふざけているんだか分からない。
     音楽はべらぼうに音量が大きいことだけが記憶に残った。セリフにかぶると 何もかもかき消してしまうから、主に場面転換のときにずばばばば…という感じで。
     セットは、演出家が『ブレードランナー』をイメージしたとも言う、 全体的に灰色の廃工場みたいな雰囲気で、右に階段、左に二階の渡り廊下があり、 中央の壁に回り舞台とエレベータ。(リチャード三世はト書きに「二階」を使う設定が 書かれていて、こういう立体的なセットは必須だ)
     舞台上に一ダースのTVモニタがあり、戦況の報告をする兵士の映像が出たり、 TVニュースが流れたり、登場人物の家系図が出たりと、演出上大活躍。
     「市民の噂話」…街の声をニュース映像風にまとめてTVで流す手法はスピード感があって 悪くない。
     このTVモニタには、登場人物のセリフ(独白)がテロップで出る場合もあった。 (最後列だと、50インチTVでも視力的に厳しかったが…)
     シェイクスピア劇では、独白をどう処理するか工夫の見せ所らしいが、テロップを使う独白は、 携帯パソコンを打ったり、メールの文章だったりの設定のように見える。
     リチャード三世は、独白に拡声器を使っていた。*

    *後から聞いた情報によれば、リチャード三世が手に持っていたマイクは「ICレコーダー」で 独り言を録音している、という設定だったらしい。残念ながら後ろの席からはオペラグラスを使っても そういう設定だとは判別できなかったけれど。
     その他一般的でない部分というと、 先王「エドワード四世」の末娘「エリザベス」が舞台に登場する。
     二人の兄、皇太子とその弟はリチャード三世に暗殺されるため、エリザベスは 即位したリチャード三世と反乱軍のリーダー、リッチモンド伯の間で 「正当な王家の血筋」を主張する道具として取り合いになる重要人物。
     彼女は本来の「戯曲」には名前しか出てこないが、この演出では、 序盤にエドワード四世の子供たちがロンドンにやってくるシーンで一緒に登場し、 ラストでは反乱軍の「リッチモンド伯」と行動を共にしている。
     しかし戯曲に登場しない彼女にはセリフはなく、登場人物が話しかけることも無いので 「透明人間」みたい。セリフも無くにこにこしているだけなのは変な感じだ。
     演出上「彼女がついた陣営が王位の正当性を主張できる」という状況を補強したい 気持ちはわかる。逆に言えば、シェイクスピアが彼女を描かなかったのは不思議だ。 (女王たちが多数登場するので、配役の都合で劇団内の女形が足りなかったのかな…)

     では順に感想を。
     本編の前に「薔薇戦争」の解説が語られる。(アナウンスで)
     『リチャード三世』は薔薇戦争の末期の話なので、ここにいたる状況説明。 イギリス人には無用の一般教養だが、確かに日本人は知らないな。(大学受験生なら 得意か…?)
     この解説、紙に書いたものも配布されて、制作側の「親切心」はとても感じた。
     芝居は…というと、全体的に前半はとてつもなく長く感じて(実際長いのだが) 気を失いかけた。
     後半はまずまず緊迫感が保たれ、ラストはなかなか盛り上がり、終わりよければ …という感じかな。と言える。
     もっとも、前半は水面下の陰謀話で、人間関係も複雑なので 眠くなって当たり前。後半は陰謀は加速し、戦争は起きるし、なので 盛り上がって当たり前の脚本ではあるから、前半に山場を作ってこその、 演出家と役者の仕事という気はする。
     冒頭にいきなり主人公グロスタ公(リチャード三世)の独白が来るが、 ここは聞かせどころだ。いい役者がやるといきなり引き込まれる。
     グロスタ公は「拡声器」で独白する。独白は「観客に向かってしゃべっている」 という考え方なら有りか。
     でも平板で普通に状況説明っぽく聞こえてしまった。第一声は本当に大切だと思うが。
     古田新太のセリフは、活舌ももう少し欲しいところだが、抑揚が頭打ちで一本調子かな。
       シェイクスピアはセリフの量が多いので全般的に早口の芝居になるのが普通だが、 もっと「セリフの速度の変化」とか「声の高さの変化」とか「声の大きさ」などを 使って欲しい。「声色(こわいろ)」も一つ。「フレーズ単位の"間"」は有ったけれど。
     シェイクスピアの長台詞は、英語として言い回しが難しく当時の観客にも 解りにくかったといわれる。むしろ「音楽的に塊で気分が伝わればいい」と いうことだったらしい。
     つまり音楽的抑揚がとても大切、ということだな。これが一本調子は辛い。
     もしかすると翻訳の問題も有るかもしれない。今回の翻訳は結構古く 上演に用いられた機会も多いらしいが、「現代口語」っぽい言い回しが案外しっくり来ない。
     坪内逍遥までさかのぼると辛いが、もう少し「歴史ロマン」らしさを持った 格調高い翻訳がふさわしいような気がする。
     日本で言ったら「時代劇」には当時の言葉そのものではないけれど、時代劇ら しい言い回しがあるとの一緒で。

     つぎの山場は、葬送のアン(安田成美)を口先でたぶらかして妻にしてしまう ところ。
     ここで思わず「うとうとっ」としてしまった。セリフのキレや抑揚がなにか足りない。 もちろん、 劇場が広くてエネルギーが拡散しているということはあるのだけれど、どことなく もそっとした感じだ。古田新太より安田成美のほうが芝居は上手い気がするが。
     演出ではこの後も頻発するが、衝撃的なセリフを言った瞬間に「ガーン」という 効果音が入るのはどうなんだろう。マンガじゃ無いんだから…。
     これは後半の、エリザベスを妻にしようと口上を述べる部分の方がずっと 良かったから、古田新太が出来ないというわけでも無いと思うのだ。
     相手役との掛け合いの問題なのか、それともエンジンがかかっていないのか…?
     ロンドン塔のクラレンス公(若松武史)は、真っ先に殺されてしまうので 出番はほとんどここだけだが、ベテランが当てられているだけあって印象的だ。
     ベテランであるからかセリフは、ちょんまげの「時代劇」っぽいイメージを受ける。 殺される間際の大騒ぎは「殿、ご乱心」って感じ。絶対イギリス人 じゃない(笑) でも旨い。目を閉じても「若松武史」という個性が強烈に光っている。
     味がある。
     ついでに殺し屋1,2も結構上手い。いい掛け合いだった。
     二幕から子役登場。
     弟、ヨーク公リチャードが上手かったな…。透明な声が心地よい。やばい。 もってかれる(笑)
     三幕からは皇太子エドワードも登場。爽やか。ヨークとエドワードが登場する場面は やけに面白かった。
     ヘイスティング(山本亨)は笑い声の奇声が印象的。
     この笑い声は「飛び道具」という気もするが、メリハリが出る。後で殺されて しまうので、楽しげな高笑いからの転落が生きる。
     バッキンガム(大森博史)は、もりもりと盛り上がったカツラがやたらと 目だって分かり易かった(目立ちすぎ)けれど、芝居も適切な抑揚があってなかなか良い。
     グロスタ公を王位に付けようという猿芝居のあたり、「公の腰巾着」感が よく出ていた。
     しかし、ここでも肝心のグロスタ公のセリフはいまいち単調に響く。 上げたり下げたりするバッキンガムのめまぐるしい声色の変化と比較すると。
     …ということでグロスタ公が「リチャード三世」になって第一部終了だ。ふ〜

     休憩中は知らないロック音楽がガンガン流れる。
     基本的に劇中音楽も全部ロック。
     こんなに大音量にしなくてもな。

     四幕以降、スタンリー卿(榎木孝明)の出番が多いのだが、 この芝居がベラボウに良い。スタンリーはリチャード三世の下で働きながら、 悪を憎んで苦しむ正義の人、という役どころ。その有るべきところに ピタリと収まった芝居だなぁ。高潔な人物だということが、身のこなしからも 立ち上ってくる。

     王になったリチャードの初登場シーンは、コミカルなピカピカ衣装で会場の 笑いを誘う。でもそれは無いだろ…。
     リチャードが「元女王たち」とごちゃごちゃ対話(話が長〜い)しているうちに、 海の向こうで リッチモンド伯が兵を挙げる。このあたりからストーリーが加速する。
     もっとも、ここまでは城の中の話であるのに対して、イギリス全土で 同時多発的に反乱が起きるという話なので、テンポは良いが混乱している。 要するにわけが解ることより勢いの方が大切、ということだなぁ。
     そして第五幕からリッチモンド伯(川久保拓司)登場。
     はっきり言ってリッチモンド伯というのはこの長い芝居の中で最終幕に 突然現れてイングランド王になってしまうという、外国人には「え〜っ!」 という感じの人物。国外(フランス)に居たのでリチャードの暗殺の手を逃れた 人物らしいが、血筋も説明が無いし唐突だ。
     だがともあれ、こいつ(川久保拓司)がめちゃめちゃ美形だ(^^;
     妻の言うには「まるで宝塚のオスカルさま」…マンガに出てくる金髪の 王子様みたいだ。正義の味方のアイコンそのもの。
     義理の父のスタンリー(榎木孝明)も美形だし、正義の味方は美形に決まっている!
     亡霊のシーンは、大音響のロックにのせてボイスチェンジャーを通した 亡霊ボイスでドロドロに。聞き取りにくいのが難点だが、まあ、聞こえなくても 亡霊が言いたいことはわかるから良いか。
     一方リッチモンド伯が目を覚まし天幕から出てくると、 エリザベスの娘のエリザベスが付き従っている演出。え〜やりすぎでは?
     そしてリッチモンド進軍の演説。
     特筆するほど上手いというわけではないが、絶世の美形が正論をまくし立てると 圧倒される(笑)
     ここは舞台に配置したTVを利用してニュース映像風に仕立てられていて、 「Yes,I can」みたいな、テロップが流れ、その後のリチャードの演説も 合せて「米国大統領選」のパロディーになっているようだ。
     そして戦闘シーンに突入。
     リチャードは味方がやられても一人で何人分もの働き。単身敵陣奥地に 乗り込んでリッチモンドと対決する。
     殺陣は頑張っている。(シェイクスピアの戦闘シーンでは、形ばかり 二度三度剣を合せて終わりという舞台も有ったなぁ…ト書きもあっさりした 物ではあるが、役者が好きにやっていいという解釈が適切な気がする)
     リチャードはこの話の中では「陰謀の人」なのだが、この戦闘シーンは、 本質的には「武人なんだなぁ」と思わせる一瞬だ。
     有名な「馬をよこせ、王国などくれてやる」のセリフは、 流れのままに勢いで叫ぶ感じだった。
     そして最後のリチャードvsリッチモンドの一騎打ち。
     戯曲のト書きには「二人が戦ってリチャードが倒される」としか書いてないので、 ここは演出家の自由だ。で、ラストはリッチモンドのサブマシンガンで蜂の巣
     「え〜、きったね〜卑怯者〜!!」(^^;;;;;

     そしてスタンドマイクを手にしてリッチモンドの演説。盛り上がっていく ロックのBGMに合せて歌いだす…かと思ったよ。なんかGactのステージを 見るような気分、ってか大河ドラマ?紅白?(笑)

     …というわけで、なんだか美形パワーに押し切られて「主役はリッチモンド?」 みたいな気分でお終い。最後にちょろっと出てきて美味しいところ持って行くな…。
     総じて年配の実力派俳優たちはやっぱり上手いと納得した。癖がありすぎる と思う場面もあったけれど、格の違いがにじみ出ている。 出番がちょっとしか無いのがもったいないくらい。
     女性陣は後半女ばっかりでトークバトルのシーンがあるが、セリフに酔わせてくれるほど 上手い人は居なかったかな。
     古田新太は、やっぱりコメディーの人なのかと思う。まあ自分の劇団では悪人の役も なんでも出来るのだろうが、 リチャード三世は重すぎたかな。脇にいくつもの名演が輝いていてもやっぱり シェイクスピアは、主役のセリフが音楽のように緩急自在に響いてこないと 三時間はもたない。
     とはいえ、この長い芝居のセリフを全部覚える俳優たちの才能には感心する。
     今回、ちょくちょく引っかかってはいたけれど、極端に不安になるような役者は 居なくて安心して聞いていられたのは確か。

  • 公式サイトを見た感想
     劇団☆新感線の看板俳優として、この世の大悪党からあの世の悪魔に至るまであまたの悪役、 曲者を演じきってきた古田新太が、満を持して「リチャード三世」に挑戦します!
     と有るのだが、考えてみればTVドラマなどでしか見たことが無いので、 面白い俳優だとは思っていたが、演劇でのキャリアについての予備知識が無い。
     演出家「いのうえひでのり」が、この複雑な人間関係のストーリーをわかりやすく 面白く演出しようとがんばっているのは随所で感じた。あちこちで滑っているとか 過剰だなと感じるところは有ったけれど、うまく機能している仕掛けも多々あった。
     その結果「古めかしい」という感じはなかった。
     ただ、古田新太の魅力を引き出すということにはなっていない気がする。 ほぼ、役者自身の問題だと思うのだけれど。
     一見古典と思われがちなシェイクスピアを、現代に引きつけ…
     …スピーディかつスリリングで、観客を飽きさせない“ケレン味”たっぷりな 舞台として現出してくれることでしょう。
     という解説はどうか。
     今回の演出は、ほとんどセリフの間引きも無く、ト書きもそこそこ生かしていたから 衣装と小道具とビデオ映像は現代的だけれど、「古典に則った演出」と言える様な気もする。
     だいたい、「スピーディ・スリリング・ケレン味」はシェイクスピアの脚本に既に ぎっしり込められていると思うのだ。
     そういえば、王位を狙う確信犯となり、悪行の限りを尽くすリチャード三世の姿に、 天賦の演技力で“極悪人”に成りきる怪優・古田新太の雄姿を重ね合わせずにはいられない。 とあるのだが、あまり「極悪な印象」は無かったかも。
     これが「市村正親」のリチャード三世のときは、舞台に立っただけでメラメラと悪意 が発散していたのだが。
     やっぱり冒頭からの「独白」の処理の軽さなどがひびいているんじゃないかな。結果的にラストでは、 「あぁ、リチャード三世は陰謀の人ではなく、戦場でこそ活き活きする、根っからの武人だったんだな」 なんて思ったのは、「それはそれでありうる解釈」のような気もしてきたけれど、演出の狙いだったのか…
     つまり、映画『明日に向かって撃て!』のラストみたいな印象だよ。
     ガーッと突っ走ってドーンと飛び出してバーンと散ってしまう、みたいな。

     いのうえ氏は『天保十二年のシェイクスピア』の演出をやった人だそうだ。
     これはWOWOWの放送で見たけれど、やたら長いのに面白くて、長さを感じさせない 演出だったと記憶している。
     とするとやっぱり演技力というか、役のつかみ方が違うというか、そういう問題なのかなあ。

  • ところで、『明日に向かって撃て!』って、もうBlu-rayになっているんだね。 見たい。高画質で見たいな〜
     ジャケットは「ガーッと突っ走ってドーンと飛び出してバーンと散ってしまう」の ラストだねぇ(笑)

2009.1.23
  • 今週末は「演劇鑑賞3連発」なのである
  • 演劇 彩の国シェイクスピア・シリーズ第21弾「冬物語」鑑賞 (彩の国・大ホール)
    [公式ブログ]
    翻訳:松岡和子 →
    配役
    ・レオンティーズ(シチリア王)…唐沢寿明
    ・ハーマイオニ(シチリア王妃)…田中裕子
    ・パーディタ(レオンティーズとハーマイオニの娘)…田中裕子(二役)
    ・カミロー(シチリアの貴族)…原康義
    ・アンティゴナス(シチリアの貴族)…塾一久
    ・ポーライナ(アンティゴナスの妻)…藤田弓子

    ・ポリクシニーズ(ボヘミア王)…横田栄司
    ・フロリゼル(ポリクシニーズの息子)…長谷川博己

    ・道化(老羊飼いの息子)…大石継太
    ・老羊飼い(パーディタの養父)…六平直政
    ・オートリカス(ごろつき)…瑳川哲朗
     「冬物語」というのは、サッポロビールの「シェイクスピアの戯曲からビールの名前を付けました」 というCMで、それなりに有名だと思うが、上演機会の少ない作品だ。それは、シェイクスピアの 戯曲の中でも、かなり無理のあるストーリーが災いしていると思われる。

     ストーリーを追いながら感想を。
     舞台はシチリアとボヘミア。
     今回の演出ではほとんど大道具も無いシンプルなものだが、衣装の色と背景色が、 シチリアは赤、ボヘミア青のイメージカラーで統一され、衣装だけで登場人物の関係が 推察できてわかりやすい。
     物語は16年の歳月を挟んで、前半と後半に分かれる。
     シチリア王レオンティーズ(唐沢寿明)は、幼馴染のボヘミア王ポリクシニーズ(横田栄司) が滞在した折、帰国しようとした彼を引き止めるが、なにしろ9ヶ月もの長逗留をしているので 帰国の決意は固い。(当然だな…)
     登場シーンで二人の幼馴染の友情を表現するのか「紙飛行機」を飛ばす。
     これが綺麗な円を描いてくるっと飛ぶ…と思ったら落ちない。ぐんぐん上っていく。
     なんと天井から糸で吊ってくるくる回しているのであった。意外なワザに単純に 引っかかってしまった。やるな…。
     さて、王は王妃ハーマイオニ(田中裕子)にポリクシニーズの引止めを 試みさせるが、あれほど帰国の決意の固かったポリクシニーズが、王妃の話術の巧みさに負けて、 あと三日だけでも、と滞在を伸ばすことになった。
     ところが、王は「俺が引き止めて無駄だったのに妃の引止めに応じるとは、むむ、怪しい、不倫だ!」 …と妄想爆発。
     ついには家臣カミロー(原康義)にポリクシニーズの毒殺を指示する。
     家臣はびっくり、「なんだか突然待遇が悪化したな〜」と不審に思っていたポリクシニーズも コトを打ち明けられてびっくり。「とにかくお逃げください」ということで、家臣カミローと ボヘミア関係者は全員夜逃げ。
     …というわけで、マジで滅茶苦茶な急転直下。
     戯曲的にはこの不倫疑惑は王の脳内にしかないのだが、この舞台ではセリフは無いけれど、 ソデの方で「それなり」に、王妃ハーマイオニーとポリクシニーズが互いに手を取り合ったり、 妙に見つめあったりして、偶然目にした王が不快に思うのも有りかな…と思わせる演出。
     しかし、どうせ「理解不能な妄想」に犯された王様なので、この後にやってくる 不倫裁判での王妃ハーマイオニーの「潔白」を強調するために、 「王はいちゃいちゃに過剰反応した」という根拠を見せるよりも、 「王妃の無実に一点の曇りも無い」ことを強調した方が、 悲劇性が高まると思うのだ。
    (まあ、西洋的マナーでは人妻の手を取ったりハグしたりするのは当たり前という 考えも有るけれど、シェイクスピアがどう思っていたかは不明…)

     というわけで、部下がポリクシニーズの逃亡を手助けしたことに益々疑惑を深めた 王レオンティーズは、王妃が妊娠中の第2子もポリクシニーズの子だと思い込み、王妃を投獄、獄中で生まれた女児は家臣のアンティゴナスに命じて荒野に捨ててしまう。
     王妃の処刑に一応「裁判」の体裁をとって「アポロ神殿の神託」を仰ぐ レオンティーズだが、神託が全ての真実を正しく指摘すると、
    「神託なんかくそくらえ!」と逆切れ。
     だがその時、王子マミリアスが母を案じる心労のあまりに死亡。
     これを聞いた王妃もその場で倒れる。
     これは「天罰」…と恐れた王は後悔するが、時既に遅かった。
     赤子はボヘミアの荒地に捨てられ、アンティゴナスは熊に食い殺され、 アンティゴナスがボヘミアまで乗ってきた船は嵐で沈没、乗組員全滅。
     彼らには「罪なき王族の子供を捨てた実行犯なので天罰が当たった」と言える。
     でも命令したのは王様だ。神様も理不尽なことをする。
     とはいえ、「王は荒野に捨てろと言ったけれど、ボヘミアにも荒野は有るぞ…」 という天の声を聞いてわざわざボヘミアまで捨てにいったんだから、 荒野に捨てたことにしてポリクシニーズに預ければ良いではないか?
     アンティゴナスにとっては「気が利かないにも程がある」という 天罰かもしれない(^^;;

     そして16年後。
     羊飼いに拾われた赤子は美しく成長してパーディタ(田中裕子)と呼ばれていた。
     ポリクシニーズ王の息子フロリゼル(長谷川博己)は農民に変装して 彼女のもとに入りびたり。「羊の毛刈り祭」でプロポーズする。
     息子の行動を不審に思った王は、シチリア脱出から常に彼を助けてきた 「カミロー」と共に村に潜入して王子の行動を見張っていたのだが、 「父親には秘密です」という息子の発言に激怒した王は、二人が二度と会わないよう 命ずる。
     一緒に居合わせたカミローは「二人をシチリア王を頼るように言って逃がそう。 そして旨くボヘミア王を説得すれば自分もついでに里帰りできるかもしれない」と 工作を始める。

     同じ頃、シチリア王は毎日を亡き王妃の墓参りで過ごしていた。
     世継ぎの無い王に家臣は「再婚してください」と懇願するが、 元王妃の友人の貴族ポーライナ(アンティゴナスの妻)(藤田弓子)は、 失われた世継ぎの姫が見つかるまで再婚禁止…という神の言葉を根拠に反対している。
     そこに、王を頼って「フロリゼル&パーディタ(実は王女)」が現れる。
     王妃&王女は「田中裕子」の一人二役なので、シチリア王レオンティーズなら、 一目見た瞬間に「亡き妻に生き写しだ!!」というリアクションが有ってもいいように思うのだが、 この件に関しては完全スルー。
     納得いかない。同じことは、ボヘミア王が羊飼いの娘として彼女に会ったときにも言える。
     どいつもこいつも「同じ顔の女」がいるのにどうして気がつかないんだ〜!
     しかも、16の娘にしては相当に無理があるぞ、田中裕子は…。
     現実問題、第二子出産という王妃の年齢設定を考えると第一部では20歳前でも おかしくないから、16年後の娘を同一人物が演じても不自然ではないのだが、 王妃を知る人物が、同じ顔の女に気がつかないのは有りえない。
     王妃の出番の少なさを考えると「出番を増やさないともったいない」のは分かるけれど、 スジの上では無理がある。

     ともあれ、駆け落ちの二人を追ってきたボヘミア組が、羊飼いから 「パーディタ(王女)の出生の秘密」を手に入れ、シチリア組は跡継ぎ問題が解決して 過去の非礼も詫びてめでたしめでたし。
     という話題の合間に、王妃ハーマイオニの最期を看取った人物ポーライナの屋敷で、 「王妃の彫刻が完成した」とかで全員で鑑賞会。
     ポーライナは、「王が本当に後悔して妃ともう一度会いたいと願うならば、 この像に命を呼び戻すことが出来ます…」とかなんとか言って、カーテンを 開くとおおなんと、王妃の像に命が通うではないですか〜!
     って、絶対にポーライナが16年前に気絶したハーマイオニを匿って、 死んだことにしていた(そのままだと死刑だから)のは間違いないんだけれど、
     それにしても、16年は長い(^^;;
     現実には王は不倫裁判のさなか、長男が心労で死亡したと聞いたとたんに 後悔、反省して裁判取りやめにして、以後反省の日々だったのだから、 そんなに「死んだことにして匿う」ことは無かったんですが。
     この「男から名誉を傷つけられたショックのあまりに死んでしまった… ということにして相手を反省させた後で、そっくりの別人(?)として再登場」 というネタは「から騒ぎ」でも使っているけれど、16年の時間差は やりすぎです、シェイクスピア先生。
     「毎日反省させて16年」しかもしっかり「再婚阻止工作」もしつつ。これは もはやポーライナのサディズムです。
     最後に「夫は熊に食べられて死んでしまったポーライナ」と 「ボヘミアでの逃亡生活から帰国した貴族カミロー」を王の命令で再婚させて 三組が同時に伴侶を得てめでたしめでたし。
    (先生、大勢結婚させてハッピーエンドは「夏の夜の夢」で使ってます!)

     脚本の「無理無理感」と「ネタのデジャブ感」、「演出の有りえない感」 などなど、まあ、シェイクスピア作品の中で上演機会の少ないのは 納得できる内容だけれど、面白いことは面白い。そんな作品だった。

  • 役者について
    唐沢寿明…レオンティーズ(シチリア王)
     …なにをやっても上手いなぁと思う。とにかくレオンティーズは冒頭から 妄想に駆られてむちゃくちゃな事を言うわけで、行っちゃってる感が素晴らしい。
    田中裕子…ハーマイオニ(シチリア王妃)/パーディタ(レオンティーズとハーマイオニの娘)
     実年齢は存じないのだが、たぶん16年後の王妃よりさらにだいぶ年上なんじゃないか…
     不倫法廷で名誉を訴えるシーンでは「実力」が必要とはいえ、二役で16の娘までも 演じるのは、実年齢的に、蜷川爺さん(失礼)から見たら誤差かもしれないが、 普通に無理があるような。
     「花言葉」のシーンはハムレットの「オフィーリア」を思い出させるが、 やっぱり「純真無垢な少女」の感じと微妙にずれる。二役で同一人物ゆえに、 観客が彼女の上に第一部の悲劇的な気分をひきずって見てしまうのも足を引っ張って いるかな。
    藤田弓子…ポーライナ(アンティゴナスの妻)
     ずいぶんお婆ちゃんぽく見えるが、狂気のレオンティーズにただ一人正論で 対決して引けをとらない…という迫力はきっちり備えていい感じでした。
     そのほかの登場人物は、別にそれほど重要ではない感じ。
     長谷川博己…フロリゼル(ポリクシニーズの息子)は、パーディタの恋人だから 重要な役では有るけれど、人物造形的に「王子」という記号の域を出ていない。
     (愛一筋で駆け落ちするけれど、無計画で生活設計も何も無いのがバカ殿っぽい)
     道化と羊飼いは「王女を拾って育てた」という設定に必要なだけ。
     ならずものなんか完全に本筋に無関係。
     その一方で、名前も無いような「宮廷の人々」の中に、なかなか秀麗眉目の好青年が 何人も居たのは、やっぱり蜷川さんの趣味のこだわりだろう。
     やっぱり、美形は良い(^^)セリフ無しでも居るだけで存在感が舞台の格を上げる 気がするね。

     今回は役者の声が聞き取りやすく、不明瞭ということはまったく無かった。
     3F最後列付近だがセンター。
     過去ここの2F/3Fの左右バルコニー席で鑑賞する場合に、時々聞き取りにくい 経験があったが、役者のせいでなくホールの音響が両端は不利、ということなのかな。

  • 演出について
     「色使い」と「紙飛行機の仕掛け」はとても良かった。
       紙飛行機は要所で何度も登場するのだが、何度見ても効果的。
     後半、何もかも失ったレオンティーズが紙飛行機を手にして登場。 また飛ばすのか…と思ったら、細かくちぎってバラバラにしてしまったのがまた 印象的で良かった。
     でも紙飛行機を見て「マクロスF」を思い出したのは内緒だ(笑)
     ハーマイオニとポリクシニーズのいちゃいちゃは、上にも書いたが、 何も無い方がレオンティーズの妄想が際立ってよいのではないかと思う。
     「羊の毛刈り祭り」のところや道化の存在、すりなどは、結構分量があるのだが、 本筋に無関係なので、大幅にカットしていいような気がする。
     後半ではハーマイオニとパーディタの一人二役の意味が生きていない 気がする。良い女優の出番が倍になるというだけでは納得いかないなぁ。
     突込みどころだと思えば、コメディー効果を引き出すことも出来ると思うが、 そういう意図はないみたいだ。
     最後の王妃ハーマイオニの彫像に命がよみがえるシーンは、 脚本通りではあるけれど「ポーライナ」の長いセリフが 結婚式場の司会者みたいで、そこはかとなくおかしい。
     予定調和の流れに無理やり司会進行する、その「無理矢理感」が面白い。
     だけど、この予定調和を結婚式で笑う人が居ないように、なんとも可笑しいのだが、 声に出して笑うまで沸騰しきれないもどかしさがあった。
     王子、王女の婚礼も決まって、残る悲劇は不名誉の中で死んだ王妃のことだけなんだけれど、 脚本的にもう、彫刻=王妃なのは「バレバレ」。
     登場人物にとっては「奇跡」でも、観客にとっては「かなり無理のあるドッキリ」 …それどころか、途中から「いい加減登場人物も気づいているフシはある のだけれど、無理矢理感動話に持っていくよう、全員で壮大なノリツッコミ状態に突入している という気さえする。
     だから演出に「ここは笑っていいよ」のサインを仕込んで欲しかった。
     そうすれば、彫刻が動く瞬間、舞台の上と客席が一体になって「ありえね〜感覚」で 盛り上がれただろう。
     結局「第一部は悲劇」「第二部はコメディー」という視点から脚本を刈り込んで きっぱりと別の雰囲気で上演すると、数段人気作として受け入れられるようになる のではないかなぁ。
  • 上演時間は約3時間半
     蜷川のこのシリーズは基本的に「ノーカット」のようだが、天下のシェイクスピア先生 とはいっても、この話は結構無駄もある。道化のシーンなんて、劇団員をバランスよく 登場させて、適度にシモネタも混ぜて無学な一階席の庶民も満足させようみたいな、 中世の時代的要求もあると思う。せっかくお金を払うからには、芝居は長い方が得、 みたいな価値観もあるのかも。中世だから。
     でも現代的には、ビシバシカットして2時間でもいいと思うんだ。
2009.1.22
  • 「軌道エレベータが崩壊します。どうしよう?」(〜ガンダム00)
     軌道エレベータが崩壊すると、コロニー落としなんか比較にならないくらいの 被害が起きるかもしれない、という考察をしてみた。
     軌道エレベータは「静止軌道」に重心を持ち、地上と宇宙空間にケーブルを伸ばした 構造を持っている。
     軌道エレベータのケーブルを、その全長のどこかで切断すると、切断地点から上は 宇宙空間に飛び出し、下は地上に落下することになる。
     静止軌道までの距離は約36,000km
     地球一周(40,000km)に近い長さである。
     地上数kmの長さのケーブルならばほとんど垂直にとぐろを巻くように落下すると思われるが、 静止軌道に達するほどの長さから垂直落下を始めると、フィギュアスケートの選手がスピンするときに 腕をちぢめて回転速度を増すように、ケーブルの先端の速度が増して、赤道に巻きつくように 倒壊していくだろう。
     『ガンダム00』の作品中では、三本の軌道エレベータが静止軌道と低軌道のリングで 接続しているため、一箇所が倒壊すると他の設備が共倒れになる危険も高い。
     倒壊した場合の被害は、ぐるっと地球一周に及ぶ可能性が高い。

     そのように倒壊していく軌道エレベータは、理論的にはどのような被害をもたらすか。
     これは「細長い紐」のような構造なので大気圏に突入した状態で空気抵抗は相当に高い。
     また、素材が「カーボンナノチューブ」などを基本とすると、ある高さ(落下速度)より上は大気圏突入の際に 比較的低温で燃え尽きる可能性が高い。
     流星が発光する高度は100km前後。いわゆる宇宙との境目である。軌道エレベーターのほとんどの部分は これよりはるか高空の宇宙空間にあって、十分な高速で突入してくる。
     大気との摩擦による燃焼は、倒壊するケーブルの下のほうから始まり、 燃え尽きることによってケーブルは切断されるだろう。
     切断されたケーブルは地球に巻きつく動きを止め、 巨大な前のめりの線香花火が地球周回軌道を回っていくような 光景が見られるのかもしれない。

     赤道に巻きつくように倒壊していく長大な構造物を地上からみると、「倒れる」とは見えず、 地上に平行に接近してくるように見える。
     燃える軌道エレベーターが見えるのは、赤道から約1100kmの範囲。距離的には長いけれど、 赤道の人口密度が低いエリアのことで、西欧諸国にとってはいずれにしても 他人事ということになりそうである。
     SF的には「コロニー落とし」などと比較されるが、 一本の「ひも」である軌道エレベータと都市そのものであるスペースコロニーでは、 質量と密度が桁違い。ただし、切断されれば崩壊する軌道エレベータに対して、 安定した軌道上にある巨大な質量のスペースコロニーを地球に落とすのは、 ほとんど不可能に近いのではないだろうか。
    結論: 「軌道エレベータ」は地球一周以上の長さの巨大な構造物ではあるが、 地上100kmを超えるほとんどの部分は倒壊時大気との摩擦熱で燃え尽きる可能性が高い。
     従って赤道の島など、無人に近い部分に建造すれば、大きな被害は出ないだろう。

  • 「超並列ネットワーク的知性と人間は理解しあえるか?」(〜マクロスF)
     ランカとあいくんの間の理解が種としての敵対関係を軌道修正した、というような ことが、実際にこういう形態の知性に起き得るのかということをテーマに考察。
     人間の脳をタイムラグ無しにネットワーク化したときに、巨大な一つの知性に 生まれ変わるのか、というテーマも存在する。マクロスには。
2009.1.21
  • シェイクスピア全集〜松岡和子訳(ちくま文庫)を大人買い
     週末「彩の国シェイクスピア・シリーズ〜冬物語」を見に行くので、ちょいと予習をして、 予習に使ったのは白水社の全集(小田島雄志訳)なのだが、ここの台本は「松岡和子訳」を使っている。
     松岡訳は、彩の国の上演に合わせて翻訳進行中らしく、これも読みたいなと思って調べると、最新刊として 発売中だったので、今回は間に合わないけれど、まだ持っていない残りの十数冊と合わせて、 ぽちぽちぽちっとぽちった(笑)
    参考:[冬物語を予習した話(2008.12.8)]

  • かんぽの宿」売却話
     大臣が売却妨害しているが、あれは「郵政民営化反対派」の巻き返しパフォーマンスだと思う。
     大臣は、1.もっと不動産価格が低迷していないときに、2.地元企業と自治体にバラ売りしろ、 と言っているが、「雇用を守る条件で最高額の入札」をしたのがオリックスなわけだ。
     そもそも宿はおよそ「評価額140億、毎年の赤字50億、今回の売却価格90億」というのが 基礎的な数字で、評価額から一年分の赤字を引いたのが売却価格と見れば、これは妥当だろう。
     企業努力で2年目にトントンに出来るとしたら、それはたいしたことだ。
     「価格が安すぎる」とクレームするなら、「地元企業と自治体」に売却したときに、 合計価格が90億を上回ることの試算が無ければならないし、そもそも 「全国の自治体がかんぽの宿を欲しがっているのか?」という確証が必要だ。
     この時代に、そんな赤字施設を購入する余力のある自治体は無いと思うし、 そんなものを買えば税金の無駄遣いだ。何のノウハウも無い自治体が、郵政省以上の運営が 出来るはずもない。自治体に活用してもらいたいというのは夢物語だ。
     「不動産価格が上がるまで待て」という話は、毎年の赤字経営の持ち出しを上回るペースで 景気が良くなる必要があるが、今一年で30%も不動産価格が上がるはずが無い。
     さらに一括で経営権を売れば、プロのノウハウで全国の施設を連動した宣伝やキャンペーンで 効率向上が期待できるが、 自治体にばら売りなんかしたら、不人気施設は即経営破たんだろう。
     …というわけで、どうみてもこの件は「自民党内の派閥争いのためのパフォーマンス」 だ。政治家が文句を言うなら数字で根拠を示せということなのである。
     公共事業の見積もりをすると原価や交通量や常に2倍3倍の誤差が当たり前 (というかデタラメ)で赤字を撒き散らす官僚や政治家が商売の話に口を出す なんてな。
2009.1.20
  • 年末年始『グレンラガン』一挙放送
     …録画してあった物にやっと着手。前半7話を一気に見る。
     「熱いロボットアニメをもう一度!」という願いを込めて企画された作品だというが、 気合で理屈をねじ伏せる強烈な作品になっていて、これは確かに凄いと思った。
  • 「大根おろしを辛くする方法」〜ためしてガッテン
    1.辛味の元になる酵素は皮の部分にある
    2.辛味はすりおろした5分後に最大になる
    3.数十分放置すると匂いが変化してダメになる

     ということで、通常言われる「下の方が辛い」というのは、直径が細いので相対的に 酵素を含む皮の比率が多くなるから、なんだと。皮を剥いてしまうといずれにしても 辛味は無い。
     私は番組で作っていたような「蕎麦の薬味」として大根おろしを良く使うが、 大根おろしをすりおろしてから蕎麦を茹でると、ちょうど辛味のピークで蕎麦が茹で上がる というのは、日常に使える手軽なコツで、良い情報だ。
     ただし、「大根の上の方でも5分立てば辛くなる」というのは程度問題で、 試してみると「青いくらいに上の方」だと皮も薄すぎて酵素が無いのか ほとんど辛くなかった(^^;

2009.1.19
  • ファイルサーバ(TeraStasion 1.0T)・エラー発生
     帰宅するとサーバ室からピコピコと警告音が鳴り響いている。のぞくと赤ランプが…(^^;;
     というわけで再起動したら「ディスクアレイの再構築」が始まった。
     が、そこはRAID5の威力か、とりあえずすごい勢いで点滅するアクセスランプはともかく、 データは無事のよう。良かった良かった。(翌朝見ると静かになっていた)
     障害発生とはいえ、記録を見ると、2006年7月の購入以来 2年半完全に無停止で運用していたのだから、たいしたものだと言うのが妥当だろう。
2009.1.18
  • ついにLD生産終了(パイオニア)
     2008年には4,000台生産して、今年部品が残っている3,000台分つくったら終わりなんだって。
     でもこうなると再生環境確保の為にあっというまに3,000台は売れる気がするな。
     本当は2002年に撤退するつもりが、今年まで頑張ったらしい。
     とにかく「お疲れ様」だけれど、我が家のディスクは今後どうなるのかなぁ。
     …結局LDで発売されてDVDでは再発売されなかった作品って映画以外ではけっこう あると思う。マイナーアーティストのライブLDとか。
  • テレビ朝日「情報整理バラエティー ウソバスター!」(1/10(土)19:00-)
     ネット上にはびこるウソというコーナーで自作自演プログを作って、これを作ったのが、 かの「あるある大辞典」の制作会社なんだとか。懲りないですねぇ。
     番組の趣旨が「ウソの情報にだまされてはいけない」という真面目なテーマなのに、 制作手法はまったくバラエティー番組のノリのままということか。
     ともあれ、「ネット上のウソ」なんて今更なことより「TVのウソ」を 徹底的に反省した方がいいんじゃないか。健康食品とダイエット機器の通販番組などの 検証とか、ね。
2009.1.17
  • NHK交響楽団定期演奏会・1月Cプログラム(NHKホール@渋谷)
    指揮:デーヴィッド・ジンネマン 演目:
    ・ウェーベルン/パッサカリア作品1 (1908年作曲) ・マーラー/交響曲第10番から「アダージョ」(1910年〜未完) ・R.シュトラウス/交響詩「ツァラトゥストラはこう語った」作品30 (1896年作曲)
     指揮のデーヴィッド・ジンネマンは73歳だから年齢的には完全に「巨匠」であるが、 日本のオーケストラへの客演は初めてなのだそうだ。
     アメリカ生まれながら、ヨーロッパの特質を併せ持った指揮者という評価を受けているのだとか。
     今回のプログラムは、前世紀末…1900年をはさんだ時代の三曲。
     三曲とも調性の解体前の音楽ではあるけれど、明快なメロディーの美しさより 複雑な響きを聞かせるような音楽で、簡単に言うと、お客さんは少ないし寝ていた(^^;;
     「パッサカリア」は「職人的な対位法の技術」が評論家に誉められたそうだし、 パッサカリアという形式を用いたところがバロック的な興味もあるのだと思うが、 現代音楽大好きな私にとってもちょっと職人的に凝りすぎの音楽だと感じる。
     まあ、ウェーベルンのCDを一枚も持っていないのは、今まで氏の音楽を聴いたことは あっても何度も聞きたくなるほど感動したことがないからだと思うので、 今日の曲に関してもしょうがないかと…る
     マーラーの「アダージョ」は、未完の第10交響曲の中、唯一本人の手で完成した 曲とか。
     若い妻の不倫に心を病んだ作曲家が死ぬ間際に書いた曲…というだけ有って、 しんみり弱々しい感じでなんとも…。
     交響詩「ツァラトゥストラはこう語った」は、R.シュトラウス大好きなN響のこと、 今までも聴いたことはあるような気がするのだけれど、どの曲もそうだが、N響が どうしてこんなにR.シュトラウスが大好きなのか不思議に思う。
     その上、「アルプス交響曲」とか「英雄の生涯」などはまだ分かり易い ストーリー性と音の一致が有るけれど、「ツァラ」はネタがニーチェの哲学書 なだけに、難解度120%、というか確かに哲学ではあるのかなぁ。
     映画『2001年宇宙の旅』で使われた輝かしい冒頭だけがあまりにも有名なだけに、 続く本編の難解さが際立つのが皮肉である。
     自然と人間が対立しついに和解しないことをぶつかり合う二つの調性の和音で表現しているのは、 とても解りやすく「なるほど」と思うけれど、音楽の進行に合せてテロップで解説してくれるような 親切な手助けがなければ、音だけ聴いて真意が伝わるものでもないる
     そういう部分で、純粋な音楽としては弱い。いっそ映画音楽とか、映像を含む作品 であればまったく違った説得力があるのだと思う。まさに『2001年』の中で聞くことの出来る この曲の冒頭の圧倒的な印象がそれだ。
     …ということで、今回の演奏会は「超地味」だった(^^;
  • 一緒にコンサートに行った友人が、正月の「イタリア旅行」 の写真を見せてくれた。
     キリスト教徒で、教会建築を鑑賞するのが主目的だったようだが、 とにかくどこの都市に行ってもとんでもない密度で教会が存在し、 それらがぎっしり装飾に覆われていることが凄い。
     特に天井画や建物の柱や扉などの彫刻の緻密さ。イタリアのカトリック教徒って、 「スキマ恐怖症」なのかなぁと思う念の入り方。とにかく圧倒的だった。
     それはそれとして、正月で旅行代金が高いのに上乗せして「燃料サーチャージ」 が一人7万円もしたとか。母親の旅行代金も丸々だしてあげる親孝行なやつだが、 今回ばかりは財布が痛かったらしい(^^;
     ユーロは安くなっているし、原油価格も低下しているけれど、旅行代金の 値段はなかなかすっと安くはなってくれないようだ。
2009.1.16
  • 『ライラの冒険 黄金の羅針盤』鑑賞(WOWOW) ★★
     (公開2008年3月・米 NEW LINE)
     予告編で主人公の女の子がツバを吐くカットが性格悪そうで気に入らなかったので 映画館に行かなかったのだが、WOWOWで放送されるなら見ます。そういうレベル。
     見始めてしばらくすると妻が気絶していたが終わると「私だって見たかった。説明を要求する」 と言われたのだけれど、これがなかなか言葉で説明しずらい複雑な設定の物語で…
     だけど、見所のある作品なのでまとめてみたい。
     …
     『黄金の羅針盤』は、イギリスの作家フィリップ・プルマンの『ライラの冒険』シリーズ (三部作)の第1巻が原作。ライラの世界は私たちの世界とよく似たパラレルワールドだが、 第二部では私たちの世界、第三部では私たちの世界とライラの世界の行き来が描かれる。
    (ちなみに、世界的にはヒットしたが何故か北米では評価されず、2008年10月に 続編の制作は保留になったらしい)
     ライラの世界で人は「ダイモン」と呼ばれる動物の形をした精霊と生きている。 外見は言葉をしゃべるペットのようだが、魂が繋がっていて「もうひとりの自分」 ともいえる存在。ダイモンが感じる苦痛はパートナーの人間も苦しみ、生死さえ共にする。
     都市は我々の世界そっくりだが、人語を解する白熊や魔女が住むファンタジー世界。
     その社会は「パラレルワールド的に中世な教会」が支配している。
     教会はのっけからライラ達が倒すべき敵であり、作品の最終的な流れは無神論的な 世界を志向しているために、 北米では一部のキリスト教団体が上映反対運動(チェーンメールなどなど)を展開するなど、 困った盛り上がりもあったらしい。
     作品は「宗教の形をした権威主義による理性の抑圧」を否定しているのであり、既存の宗教そのものを 否定するものではないというのが、ローマ辺りの見解だそうだが、これを「自分たちへの挑戦だ!」 と見て興奮する人たちは、批判について「身に覚え」が有るのだろう。

     さてストーリー。両親のいないライラ(ダコタ・ブルー・リチャーズ)は、パラレルワールドの オックスフォード大学の学寮に住んでいる。
     叔父のアスリエル卿(ダニエル・クレイグ)はこの世界の謎を研究しており、 北極でパラレルワールドを繋ぐ「ダスト」 という粒子の流れを観測するが、それこそは世界を支配する「教権組織」が隠したい事実だった。
     叔父は組織に毒殺されそうになるが、難を逃れ更なる研究のため再び旅に出るが、そこで 敵に手に落ち消息を絶つ。
     一方ライラの友人の子どもたちがさらわれる事件が相次ぎ、親友ロジャー(ベン・ウォーカー)も 何者かに連れ去られる。
     そんな中突然コールター夫人(ニコール・キッドマン)が「ライラを北極に連れて行く」 と言って身柄を預かることになる。
     学寮長は返答を渋るが、北極の謎に興味を持つライラは彼女についていくことになる。
     旅立つライラに学寮長は「真理計」を渡す。
     北極に旅立つ準備の途中で、コールター夫人が子供たちをさらっている組織の黒幕だと気づいた ライラは逃げ出し、船上生活者ジプシャン、気球乗り、よろい熊、魔女などなどの助けを得て 北極の敵の基地をぶっ潰し、さらわれた子供たちを助け出す。

     結局のところ、「さらわれた子供を助け出す」という仕事は成功するものの、 「ライラが重要人物である理由」「真理計の秘密」 「ダストの秘密」「叔父の行方」「魔女の秘密」「敵の正体と彼らが隠しているもの」 「パラレルワールドの謎」「ダイモンとは何か」などなど、殆ど全ての謎が 何一つ解決していないので、これは二時間の壮大なオープニングだ。
     原作本はこの一話で上下巻二冊に渡る大作なので、脚本の為に 省略された話も相当に多いだろう。
     登場するさまざまな組織の相互関係や、種族の説明もほとんど無いようなものだ。
     こんな状況の第一話で、続編の制作が延期というのは悲惨だ。 主人公が子供だから、一年延びただけでも成長して話は繋がらなくなってしまうので、 もはや絶望的ということだろう。
     結論として、面白そうだが続編が出ないのでは評価不能、ということになるだろう。 また、続編の有無に係らず、もう少し映画単体でのまとまりが欲しかった。
     「話が途中」という点では「指輪物語」に匹敵するくらい途中なのだが、 「指輪物語」では一つの映画の中で曖昧で未解決なまま続編に持ち込みなアイテムが あまり無いような気がする。
     作品世界の「科学っぽさ」「魔法っぽさ」「宗教っぽさ」のバランスもなんだか 説得力が無い。ゲームバランスが悪いという感じか。
     例えば『ハリポタ』なら「魔法」、『鋼の錬金術師』なら「錬金術」を中心に パラレルワールドの「もう一つの現実」を形成しているわけだが、ライラには「核」 となる物が無い。漫然とファンタジックなだけ。
     恐らくファンタジーなどはただの方便で、ストーリーの核は 「人々を無知な状態に抑圧して支配する教会との闘争」 なんてところに有るのではないかと思うのだが、少なくともこの映画では、 動物の形をした精霊やしゃべる熊とアクションの描写に終始している。

2009.1.14
  • 「離散数学「数え上げ理論」 - 「おみやげの配り方」から「Nクイーン問題」まで」(野崎昭弘/講談社ブルーバックス)
     これも最近の「シロウト向け」ではない「数式を隠蔽しないブルーバックス」の一冊
     といっても、内容はタイトルのように「おみやげの配り方」とか、具体的な例をあげつつ 一般化して説明しているので、数え上げに関する「漸化式」くらいまでなら高校数学の学力で 十分分かるようにはなっているし、よくわからなくても十分面白いと思う。数学に興味があれば、 の話だけれど。
     中には「ギャンブル必勝法の実際の勝率」についても書いてある。
     そこで面白いのは「二人で公平な勝負をすると、最終的な勝率は資金に比例する」という検証。
     サイコロの丁半にかけるとか、完全に五分五分の公平な勝負をしても、「資金と時間が有限」のばあい …つまり、相手が破産するまで勝負を続けると、資金が潤沢なほうが勝つというのが、 確率論的な真理、なんだって。
     「資本主義」の社会ではお金持ちが勝つ。これが、絶対の真理らしいよ。

2009.1.13
  • 小説版「マクロス・フロンティア」Vol.3 アナタノオト
     アニメ本編とは微妙に事実の相違があるみたいなのだが、恐らく設定にはあって アニメには出来なかったこまかなエピソードが今回も沢山書いてあって補間用としては楽しめる。
     アニメとの違いが気に入らない人も発生すると思うが、見なかったことにしても、全体の流れが 成り立たなくなるほど重大なことはないので問題なし。
     今回もアニメではほとんど描かれなかった「歌舞伎」エピソードが沢山あるので、 アルトの人物設定の補完には良い。

  • 「西の魔女が死んだ」(梨木香歩/新潮文庫)
     めずらしく「ベストセラー」のコーナーにあったから買った(笑)
     簡単に言うと、おばあちゃんと暮らした田舎の家でのひと夏の経験が、 登校拒否少女の人生観を変えた、みたいなお話。
     こういうと、ありきたりな感じがするけれど、日本人と結婚したイギリス人のおばあちゃんの ライフスタイルが、ゆったりしていて心地よく感じられるのが、この小説のチャームポイントっ てことだな。

2009.1.12 [成人の日]
  • 演奏会「天地創造」2009 杜のホールはしもと ニューイヤーコンサート(橋本)
     20数年ぶりに橋本に行った。
     昔は見渡す限りの原野が広がっていたのに、なんだか街ができていて驚愕した(^^;
     …というわけで、この20年に何があったのかネットで調べてみたら、 ちゃんと橋本の発展をまとめたページがあった。
     とにかく1990年の「京王相模原線」全線開通が橋本と横浜線沿線を都心につないで便利にした ということだそうだ。そういえば、学生時代の京王相模原線は、山の中(多摩センターあたり)で途切れていたなぁ。
     JR相模線も、昔は「あ〜、こんなところに電車があるんだ…」というくらいのウルトラローカル線 だったのに、橋本の発展とリンクしてものすごく本数が増えたらしい。

     さて演奏は、今年ハイドン没後200年だとかで、あちこちの合唱団がこの「天地創造」を演奏するようだ。
     この演奏会は公募合唱団と、特別編成オケ。主催は地元市民文化財団。
     終わってみたらまあまあ満足な演奏だったと思うけれど、オケの出だしの数曲はテンポ感の 定まらないふわふわの演奏で、思い切りヒヤヒヤものだった。
     調べてみると、コンサートマスターは指揮者先生と縁のある人のようだが、イマイチ先生と ノリが合わないようで、15分くらい進んでやっと温まって調子が出てきたかな?という感じ。
     通奏低音系はなかなかいい感じ。
     チェロなんかうっとりするほどいい音。帰って調べたらN響の団員(西山健一)だった。
     コントラバスは、読売日本交響楽団のコントラバス奏者高山健児。なんかぶっとい変わった 弓を使っているのが気になったがこの「特注弓」を製作した製作者のページにネタが掲載されていた。
     あとN響メンバーとしては2nd(山田慶一)ヴィオラ(小畠茂隆)にもいたようだ。
     (ならコンマスもN響から呼んだほうがいいんじゃないかと思わぬでもないが…)

     ところで、合唱団つながりで聴きに行ったのだが、「天地創造」って意外に 合唱団の出番が少ないんだな。35曲のうち10曲しか出番がない。譜持ちならそんな 大変じゃないかも(^^;
     最後に色々書いた後でこういうのもなんだが、ハイドンはシンフォニーにはかわいい曲もあるけれど、 これといって好きな曲って無くて、今回の「天地創造」も各部の終曲はぶわっと盛り上がるが アリアはイマイチだな〜と思って聞いていた。演奏に2時間もかかるくせになんだかメリハリがない。
     我が家のCDをざっと見渡しても(妻が勉強用に買ったディスク以外)一枚も所有して無いが、 唯一「宗教合唱名曲集/ロバート・ショウ」というCDに天地創造の 第一部終曲が入っていて、この曲だけは名曲かもね…

2009.1.11
  • 1月アニメ「FLAG」→第二話で落ち
     「FLAG」は「旗」
     チベットの民族紛争に隣国の超大国が手を出してぐちゃぐちゃになったところに、 国連軍が介入してコトを収めたはずだったが、「民族統合の象徴」になった一枚の報道写真 に写った旗が何者かに盗みだされ、再び紛争が激化する。という状況を報道カメラマンの カメラを通してドキュメンタリータッチでアニメ化。
     という感じの作品。
     戦争ものとしての背景は、極端に現実世界の紛争そのままの設定。
     SFアニメ的には、「強化外骨格」をベースに「可変戦車」に発展した兵器が登場。 これを運用するチームに報道カメラマンが参加して、物語の中心になる。
     脚本は「野崎透」。 Wikipediaで経歴を見ると、 大学院時代は潜水艦の研究をしていたとかで、主にサンライズのアニメ作品において、 舞台となる世界の詳細を設計し、使用される専門用語などを考案している 「スペシャルコンセプター」という役職をたくさん経験しているらしい。
     私的な有名どころでは、 ガサラキ(1998年)- シリーズ構成 、 無限のリヴァイアス(1999年)- スペシャルコンセプター 、 ラーゼフォン(2002年)- 設定考証 、などの仕事をしている。
     さて、今回の「FLAG」で野崎氏は「脚本」担当。
     監督の手腕によるところもまた大きいのだろうが、二話見た限りでは 設定はあるが脚本は無い作品という感じになってしまった。
     当たり前のことではあるが、どれほど「設定がリアルで緻密」でも、 それだけで物語は成立しないということだな。
     昔からよく言われるSFの悪口に「人物が描けていない」なんていうことがあるけれど、 登場人物は状況の説明を延々と語るだけでさっぱりドラマが動かない。
     演出的には「登場人物の報道カメラマンのレンズを通した映像」が多い。
     大きな画面で見ると、手持ちブレブレで気持ち悪い。 『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』で使われた、ドキュメンタリー風味をつける手法で、 趣味の問題ではあるがちょっと勘弁。という感じ。
     少ない作画枚数で画面が静止していることを誤魔化しているようにも見える。
  • 1月ドラマ「刑事コロンボ」
     もう第3話。やばいくらいに面白すぎる。
     小学生の頃、地域の子供たちの演芸会で、自分で脚本を書いて「コロンボ」と「ドリフターズ」の 設定を混ぜたような、「ドタバタ刑事ドラマ」を公民館で上演したことがある。
     何か出し物を…というときに、ためらいもなくそんな芝居を自作自演していたのだから、 コロンボはやっぱりあの時代の子供たちにとって、基礎教養、みんなが見ていてあたりまえの存在 だったなぁ。
     もちろんその脚本には「ウチのカミサンがね…」とか、「あ〜、最後にもうひとつ…」とか、 決め台詞をふんだんにちりばめていた。
     とはいえ、さすがに30年以上前のこと。「昔コロンボを見て刑事ものに夢中になったよね…」 と懐かしく思っても、詳細は全く記憶にないので、今回の再放送には1話ごとに大興奮だ。
     しかも、リマスターされたハイビジョン放送。放送当時にはありえなかった高画質。 NHKもやってくれる。素晴らしすぎる。
     ちなみに今回の放送は、日本初の完全ノーカットで全45+23話 [NHK公式]
     初めての放送は、1972年〜79年。小中学生時代直撃だったってことですね。
     1話75〜90分あるので、普通のTVドラマとしては2話分。長いけれど 面白いので時間を感じない。
     時間が不ぞろいなのは、そもそもは(CMを含めた)2時間番組なのたが、 「CMをたくさん入れるための短縮版」が混じっている、ということらしい。
2009.1.10
  • 「帰ってきたウルトラマン」(MXTVの再放送)
     ウルトラマンが思いっきりビルに突っ込んで崩壊しているカットがあった。
     特撮セットを作っている人は大変だなぁと思うけれど、ビルが壊れてもどうも 中身が空っぽみたいだなあ。
     家具とか書類の束とか、細かな紙ふぶきのようなものがぶわっと吹き出すと リアルでスケール感も出るんじゃないだろうか。
  • 光学70倍ズームのビデオ(ぱな)
     たとえば、静止画時45.4〜3,180mm(4:3)、さらにデジタルx10倍。=700倍
     うお〜何に使うんだ、スパイ道具か(笑) ここまでの倍率になると、解像度さえしっかりしていれば、 たぶん「土星の環」とか見えるはず。たぶん。
     人間を撮るなら、100m先の人の顔のどアップも撮影できる。でも「野鳥撮影」くらいに使うのが穏便か…
2009.1.9
  • 封筒サイズのVAIO Type P
     これって、NECのモバイルギアと同じ形だな。懐かしの。
     モバイルギアは、当時は毎日持ち歩いて、海外からモデムでパソコン通信したり 「画期的な最先端マシン」で愛着があったので、 このスタイルは懐かしい。フルサイズのキーボードと、同じサイズの液晶という、 持ち歩きとタイピングを両立させた最適サイズ。電池で長時間動くのもこれしかない。
     だから旅先で文章を作成するのにはモバイルギア一択という時代も長く、 i-modeでメールが可能になるまでの、パソ通時代最高のツールだった。
     本家モバイルギアは、その後小型化とカラー液晶化して、打ちにくく駆動時間も短いという ユーザーの求めるものから外れて消えて行ったが、やっぱり「この形だから良い」という 世界はあると思うな。
     VAIOなのでどうしても「マルチメディア」な構成になっているけれど、 「物書きマシン」に徹した超軽量・超長時間駆動のマシンになればもっと 面白いんだがなぁ。それこそ、戦場記者が使えるような。
     あとは、国家権力に機材を没収されそうな場合に、ごっくり飲み込んで隠せる、耐水・耐酸性の メモリースティックがあったら完璧だ(^^;;
  • 農水省の「リサイクル飼料」推進計画
     日本の飼料自給率は07年度で25%と国際的に低い水準にある。 農水省は15年度に35%へ引き上げる目標を掲げており、今年度 からエコフィードの製造業者らでつくる協議会に生産費用を補助。
     飼料用トウモロコシなどは9割以上輸入だというわけで、ちょっと 穀物相場が変動するとてき面に肉の値段も上がる。
     というわけで、自給率を上げるのは正義のようにも見えるが、 「エコフィード」というのは、食品の廃棄物をエサにしようという話で、 その出所は、コンビニや外食産業の廃棄物とか、食品加工工場の廃棄物、 酒粕の類など様々。
     ただ、「BSE問題」というのは、牛や羊を解体して廃棄する部分を、 飼料にリサイクルしたことから起きたことを忘れている。大規模な エコフィードを生産するとなると、原料の内容の把握も困難になって 牛や豚の様子がおかしくなっても、いつどこで混入した何が原因なのか、 たぶん解らないだろう。
     草や穀物のシンプルな食事が基本の家畜に、あれこれかき集めて作った エサを食べさせるリスクをじっくり評価することと、鉄壁のトレーサビリティ を保障する必要があるのではないかなぁ。
     世界的には、日本の食べ残し水準はかなり低く、しかも外食産業(5%)より、 家庭の廃棄率(8%)のほうが高いらしい。
     そういうわけで、牛肉の飼料効率*1=10〜11倍(牛肉1kgを生産するために、飼料が10〜11kg必要)」 を考えると、 たった5%の食べ残しを完璧に処理しても、食糧生産としてはたいして 足しにならないような気もするんだよな…。
    (ただし、豚肉は牛の三倍の生産効率)
     というわけで、農水省は「安全」より「飼料価格の安定」の方を重視しているような 気がする。
     (飼料自給率ではなく)食料自給率を上げたいなら、肉より魚を食べようみたいな ことになるし、もっともっと「米」を食べるべきだな。
     江戸時代のように、カロリーの大半を米で満たす生活に戻ったら、あっという間に 食料自給率100%に近づく。水害や失業が減るというオマケも有り。 ま、極論ではあるけれど。
     *1参考:「牛肉の基礎知識」coop山口
2009.1.8
  • 小説「狐笛のかなた」(上橋菜穂子/新潮文庫)
     昔々、日本のどこか、少女小夜の胸に傷ついた子狐が飛び込んできた。
     これはなんというか、とっても一口で荒筋を紹介できるタイプの物語ではないことに 改めて気が付いたりするのだが、ありきたりな言い訳をするならやはり、複雑で奥が深いから、 としか言いようがない。
     そこで扱われているのが、権力や因縁や愛などのさまざまな「感情」だから言葉にしにくいということもある。
     ただ、世代にまたがる恐れや悲しみ、恨みなどが二つの国の間に次々と不幸を引き起こすストーリーの先に 確かな温もりが示されているのが良い。言葉によって言葉に出来ないような柔らかだけれど ずっしりした何かが心に残る。
     印象的な書き出し、息をつかさぬ展開、やわらかな読後感。良い物語というのはこういうものか、 と思うが、児童文学だからといって「感想文」のネタとして この物語を読んだらさぞかし苦労することだろう、「読めばわかる」とは書けないから(笑)
2009.1.7
  • 海外ドラマ「GALACTICA」スタート
     詳しい事はよくわからないけれど、大昔やっていた「宇宙空母ギャラクティカ」のリメイクなのかな…。
     かつて「人と同じくらいの能力を持った人工知能搭載アンドロイド」が反乱を起こし、人類との 全面戦争が起きた。その戦いが終わり和平が結ばれてから40年、アンドロイドは宇宙のどこかに 姿を隠していたが、大戦当時の戦艦ギャラクティカの退役式の当日、再び人類抹殺の戦線を仕掛けてくる。
     …という話。これが第一話。
     人類はすっかり平和に慣れてボケボケしているけれど、敵は40年間こっそり一撃必殺の準備を してきたわけで、生き残った人類はものすごく大変。ですね〜。
     それにしても、アメリカという国はTVの連続ドラマでSF大作作品が作れるんだからスケールがでかい。 そしてノウハウがある。巨大な宇宙船間のスケール感がちゃんと有るし、現代と少しだけ違う未来社会の 日常生活の空気とか、ちゃんと感じられる。
     毎週1時間番組をフォローしていくのはなかなか大変だけれど、まあ見てみよう。
  • 1月アニメ「宇宙をかける少女」スタート
     サンライズのオリジナル物。初回はなんだかとてもハイテンションでわ〜っと勢いで押し切られ、 なんだかよくわからないが…次回もとりあえず見てみるか?という感じ。まあ「ハイテンション」 の多くを担っていたのは「福山潤」の力量かも知れないが(笑)
     ともあれ、「情緒不安定なスペース・コロニー(AI)」ってのは、きわめて珍しい設定なのは間違いない。
2009.1.6
  • 東芝が2011年に「SSDスロット搭載TVを出す」とか言っているらしい
     製品ジャンル的には日立のiVDR(HDDカートリッジ)と同じようなもので、今でも USB-HDD接続可能TVは売っているので、出来ることにそんなに変わりはないと思われる。
     ただ、「Blu-rayの代わりにSSD」という戦略だとちょっと首をかしげる。
     たとえば、シャープの「Blu-ray内蔵TV」なら「レンタルDVD」が見られるけれど、 SSDスロットじゃ、市販ソフトの再生は出来ない。
     それと、500GBのSSDを「10倍の容量のBD-RE」として使うかということはなくて、 「単なるHDDレコーダ(BDに書き出すことのできない)」ということなるんではないか。
     SSDが何枚も売れたらNANDメモリー事業はウハウハだろうけれど…
     でも2011年って遠くないか。
  • 東芝はまた「SDキオスク」というメモリーカードにレンタルショップで映画を書き込む サービスも開発するらしい。
     どうせ本気じゃないと思うけれど、10GB程度のファイルを書き込むとすると、 その待ち時間がネックになりそうな気がするな。
     普通はDVDレンタルした方が手間が少ない。
     唯一有用なのは、新作が全部貸し出し中のときだが、そういう時は書き込み端末にも 行列が出来そうだ。
     東芝の主力商品がメモリチップなのは解るが、そんなに花火を上げなくてもいいと思うんだな。
     こんな絶対に開発倒れになるような投資しなくても、案外「何もしないで景気回復を待つ」方が 最終的にお金かからないかもしれないしね(^^;;
2009.1.5
  • 微熱
     昨日までよりは良くなったような気がするけれど、まだまだ微熱。
     それに加えて、すき焼きが胃の中にある。なんだか全然消化していないなぁ。でも、 これは体を縦にして重力で先に送り出した方が治るんじゃないかという判断で、 とりあえず薬を飲んで昼頃には起きてみる。
     三時間くらいすると、胃が動いてなんとかなった感じ。
     体温も36度台に低下。
  • というわけで、夕方からノロノロと仕事に行ってみたりする。だって月曜日なんだもんな。
  • というわけで、治ったつもり。
     風邪を引くと今まで二泊三日くらいで治ることが多かったけれど、今回は四泊五日コースだったなぁ。
     過去の正月の日記を振り返ると、2005年は、1/2,3の二日寝込んでいたらしい。何故か風邪は正月にひく。
     ついでに、母が死んでから一度しか新年に実家に帰ってないな…。
     その2007年は「温泉-妻の実家-夫の実家」の6日連続移動で死んでいたらしい。
     さらに驚くのは、一月の日記には何かが壊れた話が必ずある。今年はまだ何も壊れていないけれど、 それは自分が寝込んで何も触っていないからかも…
     結局のところなんだかんだ年末年始は毎年ハードだということ。何度か平和に大掃除してTV見て 過ごした年も有るけれど。
2009.1.4
  • まだまだ発熱。
     起きたら38度未満の中途半端な熱だが、ほとんど絶食4日目に突入して、発熱に必要なカロリーが 尽きてきたような気がする。
     …という口実でなんとなくチョコレートでカロリー補給してみる。
     妻はフラメンコ教室の体験レッスンをのぞきに行くとか。
     なんとなく、今日の夜には治っているという設定で、夕食に
     「病人でもほとんど噛まないで食べられるくらい柔らかな高級牛肉のすき焼き」を提案してみる。
  • 夕方…なんともはっきりしない体調だが、とにかくカロリー不足で体重も減ってきたみたいなので、 薬で熱を下げてすき焼きを食べてみる。
     う〜ん、体調悪くても高級牛肉は旨いな(笑)
     でも、少し飲んでみたビールの味はあんまりよくわからないな。
2009.1.3
  • まだまだ発熱。
     朝10時頃から、上映会第二部。
     『攻殻機動隊ver.2.0』Blu-ray BOX
     めちゃめちゃ美しくなっている。
     グリーン基調のオリジナルに対してアンバー系の色調に統一されているのがまず大きな違いだけれど、 CGで作った新作カットが本当に美しい。まあ、オープニングから素子が熱光学迷彩で消えるまではあまりにも 変わりすぎて受けつけない人がいるのは理解できる。
     しかし、映像以上に劇的に変わっているのは音。
     オリジナルは2ch(ドルビーサラウンド)だが、2.0は、「ドルビーTrueHD 6.1ch」
     これほどまでに、6.1chの全てを縦横無尽に大胆に使って、しかも違和感無く成 功しているアニメを見たことが無い  オリジナルは2chなんだけれど、ver2.0では、これほどまでに、5.1chの全てを縦横無尽に大胆に 使って、しかも違和感無く成功しているアニメを見たことが無い。という進化。
     効果音はとにかく徹底的についている。銃器の発射音や薬きょうの音なんか、アメリカで音をつけてきた からこその充実なのだろう。それにしても、通常のハリウッド映画のアクションシーンの音が「観客席」 で聴く音なのに比較したら、「状況の中」に巻き込まれて聴く音と言うべき臨場感が有って、それは アニメだから許される感覚と言えるのかも知れない。
     ダイアログのつけ方も興味深い。
     通常のハリウッド映画では、ダイアログはめったにセンタースピーカーを離れることは無い。
     日本映画では、5.1ch時代に作られた作品でサラウンドチャンネルにダイアログを配置した作品は 時々あるのだが、何故か位相の回ったような浮き上がった音声になっていることが多い。
     しかし、このver2.0では、画面(左右のスピーカー)の少し外側まで含めた広がりの中で、 違和感無く自在にダイアログが定位して、画面の外から声だけが接近してきてやがてスクリーンに 人物登場という移動を伴う声も、スムーズ繋がっている。
     画面真ん中の敵に対して発砲した銃声が、左後方で発砲&薬莢の飛散する音と、画面の中で敵に着弾する音とに 分かれて、観客の耳元を弾丸がかすめて行く幻覚を味わえるのは、これは凄い。
     久しぶりに「スピーカーがたくさん有って良かった!」と思ったし、たぶんセッティングの正しさも 保障されたんじゃないだろうか。これほどの臨場感がえられるんだから。
  • 後半は、押井繋がりで「スカイクロラ特番」の録画をだらだらっと流す。
     夕方客人が帰った後、やっぱり熱が出てきて38度突破。薬が切れた。
     寝る。
2009.1.2
  • まだまだ発熱。夕方からお客さんが来るのでそれまで寝て過ごす。
  • 5時頃お客さんが来る。
     Blu-rayのソフトを何か見ようということになるのだが、非常に「趣味の共通した友人」であるために、 手持ちのソフトのほとんどが「あ〜家にもある」と被りまくりだ(笑)
     思案の上全然ハイビジョンではないけれど『ロケットガール』なんか見てしまう
     全員疲労しているためか、12時過ぎたところでなんとなくお開き。
  • 38度近い熱が出ると、口腔内の細菌が繁殖しないのか、歯を磨かなくても口の中が ネバネバしないし、歯周病は完治状態になり全身ダメダメのわりに快調そのもの。面白い。
2009.1.1
  • なんだか発熱。37.0〜37.5くらいの中途半端なところをふらふら。
     というわけで寝る。
     そういえば、先日から腰が痛かったのは、風邪による関節の痛みの一環だったんだなぁ。やっぱり。
     妻の実家の新年会はパスさせてもらったが、妹夫婦の娘も風邪を引いていたために結局 全員集まるタイミングは無かったみたいだ。
     何も食べられないので、2リットルのポカリスエットとゼリードリンク3パックを買う


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!