映画館がやってきた! |
本作は一時期あちこちの電気店の「店頭デモ」で一番よく見かけた。
映画館では凄く感動したのに、家では案外良くなかった記憶があるが、 dts-es(7.1ch)で再生してみると迫力がある。
冒頭の戦闘で、弓矢や火のついた油のツボがびゅんびゅん 飛び交うシーンは、画面の外から画面の中央に大量の矢が飛び込んでくる感じが リアル。
左右からセンターに、真後ろからセンターにと、飛跡もクッキリ。さすが リア・スピーカー有りだ。
もう少し進んで最初の剣闘場で、ヒモのついた武器を振り回すシーンがあり、 反時計回りにゆっくり大きく、部屋一杯に「びゅん、びゅん、…」という 風切り音が旋回する。
自宅で再生してみると「なるほど、店頭デモに採用されるわけだ」と納得する。
唯一の欠点は、この凄い音響の部分はバイオレンス&グロテスク、血みどろ ぐちゃぐちゃで、楽しい映像ではないことか(^^;;
ガイナックスの記念碑的作品である本作は音楽を 「坂本龍一」が担当したことでもまた有名だ。
「ドルビーサラウンド(2.0ch)」がオリジナル音声であるが、 DVD発売に当って「5.1chリミックスバージョン」が制作された。
冒頭のナレーションが2.0chではフロントセンターから聞こえるのに対して、 5.1chではリアセンターから強く、フロントセンターから弱く聞こえる。
これを「サラウンド・バック・デコード有」の7.1chで聴くと、真後ろで 語っているように聞こえるが、「サラウンド・バック・デコード無」の5.1ch で聴くと全てのサラウンドスピーカーから出て、囲まれるように聞こえる ことになる。
サラウンドバックの無い時代の作品なので、「無」が正解だとは思うが、 心の声(ナレーション)はどこから聞こえてくるべきなのか、好みで選んでも 面白い。
もう一つ、この「サラウンド・チャンネルの語り」はかなり長いので、 テスト・トーンとしての使い道もある。
ストレート・デコードでは全く残響の無い耳元で聞くような声だが、 「シネマ・スタジオEX」の効果を大きく掛けていると、言葉に響きが 付いて不明瞭になるのが歴然と判る。
そもそも「シネマ・スタジオEX」は、残響の付加などにより映画館の 広さを再現してくれるもので、比較的近距離に設置される 「サラウンド・バック・スピーカー」の音を和らげるためには有効な はずだ。
だから、この語りを利用して「サラウンドバックの語りがスピーカー から直接的に聞こえすぎることなく」しかも「不明瞭にならない」 という、適正な量を確認すると良い。
音楽や効果音では、過剰にエフェクトが働いていても明確な違和感 にはならないけれど、それでも控えめな使用が本来の音場に近く「良い音」 であるはずだ。
「死んだ男と宇宙船のために」と乾杯する酒場では、双六(?)をする 登場人物の周りに「鉄道模型」の線路があり、模型の走行音が、サラウンド チャンネルをゆっくり大きく回り続けている。
ここで5.1chの繋がりを確認する事ができる。
さすが"ドルビーデジタル-EX" を要求した作品らしく、あらゆる効果音が実にきめ細かく散りばめられ、定位し、移動する。
EXだからリアに音がたくさん入っているというだけでなく、全チャンネルをぐるっと使っ て画面の外にも世界が広がっている感じを作り出しているのがさすが。
惜しいのはDVDが出ていないことだけ。頼むよジョージ・ルーカス!
とにかく手持ちのDVDの中で最高にLFEの音量がでっかい。ずど〜ん!
2chのことも考えて20-30Hzまでフラットに低音が伸びる設定にしておくと、 鼓膜が充血するほどの低音で耳が痛いので、手加減が必要なほど。もちろん、 低音はLFEだけでなく、全チャンネルに大量に入っている。
とにかくゴジラの登場シーンはすべてLFEで強化。
ここまで低音が強いと、どどど!という振動が、破壊された建物が 砕けるパリパリという高音などをかき消す恐れがあるので、聞き手に節度を 要求する。ボディーソニックがほしくなる一枚でもある。
LFEが入っているのは、エンジンが動いているシーンだけ。
とはいえ、本物の「空気の動揺」が入っているので、一連の発射シーンは鼓膜に注意。
砂漠の真ん中でジョディ・フォスターが宇宙からの通信を待っている。 そこに届く宇宙の声が「重低音のパルス」、心臓の鼓動のような。
スーパーウーファーがなければ、初めて宇宙人からの電波をとらえた興奮は きっと半減。規則正しい低音の響きが観客の血圧を押し上げる。
前半。ほとんどの低音はメインスピーカーから出ていてLFEはお休み。 スクリューの回転やヘリコプターのローターの音にしかLFEを使っていないけれど、 低音は凄く出ている。
大変なことになるのは氷山にぶつかった後。
右を向いても左を見てもとにかく怒濤の水水水…という状況を重低音の充満が 演出する。
LFEは使っていないが、低音の質が印象を左右するだろう作品。
ゴリラのボスの威厳のある声は、人工的に強化された低音の厚みが演出しており、 自然な低音のバランスを引き出すことが、ボスの優しさや厳しさのメリハリを 左右してしまう。「とにかく派手に爆発音がすればいい」なんていうアクション 映画の音とは違った意味で、低音映画だ。
スローモーションで弾丸が脇をかすめて飛んでいく音が、ぴたりと画面にシンクロ したときの気持ちよさは「今のシーン、もう一回」とお代わりしたいくらいの楽しさ。
ヘリコプターの機銃から排莢された薬莢がバラバラと落ちてくるシーンのキラキラ 感とか、要所要所に派手な効果音が散りばめられている。
娯楽大作と言えばこちらも凄い。えげつないようなサラウンド感(笑)
大統領機の護衛のF15がグインと回り込んで後ろに付ける瞬間の「回り込んだぞ」 と言わんばかりの音は「やっぱりスピーカーは5.1chそろえなくちゃね」という 説得力がある。
ただし、「機内の銃撃戦シーン」などで怒濤の発砲、着弾音が 飛び交い「リアスピーカーだから小型で…」などという控えめな発想は微塵もなく 360度平等な発砲の嵐。ヤワなリアSPは悲鳴を上げるというバリバリ・サウンドだ。
作品としては「強いアメリカ万歳ヒーロー映画」でCGも即席臭いんだが(^^;
クラシックと関係深いと言えば、この作品もあげておかないと。
サラウンド音声は、実に自然に環境の中に放り込まれたようで、リアリティー 追求型と言えるかな。モーツァルトに指揮されるシーンでは楽団員気分も味わえ ます(^^)
ベトナムの空気がまつわりつくようなサラウンド。
冒頭のベトナムの記憶にうなされる一時帰還兵の夢の心理描写。
ひたひたと近づく低いヘリコプターの羽根音が、憂鬱に、まとわりつくように 自分のまわりを旋回する。そしてゆっくりと悪夢から覚めるとその羽根音が天井 の扇風機にオーバーラップする。
この感じはドルビーデジタルでなければ絶対味わえないでしょう。
有名なワルキューレの騎行を鳴らしながら爆撃するヘリコプターのシーンも、 狂気を感じて怖いです。
これはドルビーデジタルのデモ&テスト信号ディスクなのですが、真っ先に 買ったDVDの一つです。デモ映像は強烈だし、テスト信号は役に立ちます。
とにかくドルビーデジタルの能力を発揮させるには調整が鍵なので。
大画面導入の原動力になった映画がこれ。
撮影年代が古いので、ドルビーデジタル全開というわけではありませんが、 包囲感は結構ありますし、LFE全開にしてダーズベイダーのフォースが発動する 瞬間の空気のどよめきとか、スノーウォーカーの足音の恐怖を味わうとか、良く 知っている作品ならではのお楽しみがありますね。
この作品、なぜか液晶プロジェクターと相性がいい。
繰り替えし見た回数ではやっぱりダントツかも。
足音と言えば、ロスト・ワールドかな。この作品のドルデジはわりと現実味の ある使われ方だと思います。CGもリアルだし。
さらに足音と言えば、冒頭で金属ターミネーターがしゃれこうべを踏み抜く音 で有名なこれ。
あの"グシャ"っという音のリアルさを聴いて
「あ〜、センタースピーカーがあって良かった」と思います(^^)
映像もそうですが、T2はサウンド・デザインも「スタイリッシュ」の一言に つきます。とにかく格好いい。
音楽系ではこの作品も。クラシック系のサウンドをふんだんに使った分厚い 音楽が多いのですが、大合唱がわ〜っと取り囲むように鳴り響くのは圧巻。
人間の業の深さを描いているようでありながら、楽しく何度でも見られてしま う変な作品ですね(笑)
娯楽作品では、この作品のサラウンドの使い方が派手で目立ちます。
オープニング・クレジットのバットマンのエンブレムが飛んでくるシーンで、 音でなく映像自体が自分の背後からスクリーンに向かって飛んでいくように "見える"というのは、刺激的な経験でした。まあ、内容はアメコミですけど(笑)
文:唐澤 清彦 | 映画館がやってきた! |