システム調整

〜 TA-V88ESのセットアップとパラメータ調整 〜
TA-V88ES Photo

 全ての機材の設置と接続が終わり、とうとう音出しの時。
 機材の発注から到着までの間に、デモ映像とシステム調整信号の入った
「ドルビーデジタル・エクスペリエンス」というDVDを買ってきました。

 このディスクは、デモ映像(ガメラなどの映画予告編と、ドルビーデジタルの
ロゴサウンド集)と、システム調整信号が入っています。
 基本的な調整自体は、AVアンプに内蔵のテストトーンで出来るのですが、この
DVDは実に便利だと思いました。取扱説明書もわかりやすいし、要点はナレーショ
ンで説明してくれます。デモ映像もド迫力。推薦です。

 しかし、さあ音が出るぞとなれば、調整なんぞ後回しにしてガンガンバリバリ
のソフトを視聴してみたいのが人情。いくつか候補はあったのですが、よくSONY
のAV機器のカタログ写真などに出ている「JUMANJI(ジュマンジ)」を再生
してみました。
 しかし…
 聞いているうちに何だかセリフが弱い感じがして、ボリュームを大きめにした
いのだけれど、そうするとなんだかうるさい感じがする。
 サラウンド感も弱いような…。
 今までのステレオ再生と比べると変な感じだと思って見ていたら、象やサイな
ど、CGなジャングルの動物たちが街にあふれて大暴走するシーンで
『ずぅごごごごっ!』と壁が崩れるかという大振動(^^;;;
 こりゃイカンと思ってボリュームを絞ると今度はセリフがさっぱり聞こえてこ
ない。う〜む…。

 組み立てただけではとんでもなく変な音がする、ドルビーデジタルは、普通の
ステレオ再生とは全く違う暴れん坊だったのです。
 やはり大切なのは調教…いや、調整ですね。

                               ----*----

 ということで『システム調整の巻き』です。
 わが家のAVアンプはSONYの"TA-V88ES"で、ドルビーデジタルの基本調整ポイン
トは次の通りです。

  1.スピーカーの有無/大きさ
  2.リヤスピーカーの位置
  3.ディレイ(スピーカーの距離)の設定
  4.センター/リヤスピーカーの音量バランス設定
  5.LFEチャンネルの音量設定
  6.音色合わせ

 各項目の内容と、実際わが家でどのような調整を行ったかを紹介しましょう。

1.スピーカーの有無/大きさ

■L □C ■R  ドルビーデジタルは、5.1チャンネルの信号を扱いますが、 ■SW     メインのLRのスピーカー以外は、有無の選択が出来ます。         つまり、CENTER/REAR/SUB WOOFERの各チャンネルは、たとえば、 □LS  □RS CENTERが無い場合はLRにミックスして出力する機能というのが、        用意されています。 (■LARGE) (□SMALL)    また、スピーカーは[SMALL]/[LARGE]を選ぶことが出来、小型        スピーカーを使っている場合は、低音のみ他の大型スピーカー        またはサブ・ウーファーに信号を回すということが出来ます。     わが家では、スピーカーは全部有り。CENTER/REARのサイズはSMALLに    設定しました。[LARGE]では、リヤの低音が出ないので少し寂しい感じに    なります。 (ちなみに、リヤはパイオニアSS-T7 文庫本サイズのスピーカーです。     周波数特性は80Hz-60kHz)     [3Hz〜20kHzのスイープ信号]が、テストDVDに入っていますが、実際の    低音はフロントから出ていて100Hzぐらいでリヤスピーカーに切り替わる    仕掛けにもかかわらず、不自然な感じはしませんし、「ドン」という低    い太鼓の音などは、完全に後ろのスピーカーから出ている感じがします。     まあ、低域で多少は「本当は前から音が出ている」って感じがしなくも    ないですが、実際の映画では上手い具合に繋がってしまい、無理にLARGE    に設定して低音が出ないよりは遙かに好印象です。

2.リヤスピーカーの位置

□L □C □R    このアンプ独特の機能で、リヤスピーカーが人間の横か、 □SW      後ろかを選べます。これは、仮想スピーカーを作る機能で ■ ◎人■SIDE 有効になります。          (仮想スピーカーの機能についてはあとで説明します)  ■ ■BEHIND  わが家では後ろ(BEHIND)。

3.ディレイの設定

    ドルビーデジタルは、理想的には全てのスピーカーから等距離となる    中央で聴くことになっています。このとき、音量や位相が揃う前提です。     しかし、実際にはこういう配置は難しいので、デジタルディレイで、    センターとリヤスピーカーの位相をそろえます。     数値的には1ミリ秒で34cmでしたか。     リスニングポジションからフロントスピーカーまでの距離を基準に、    他のスピーカーとの距離を測り、ディレイの秒数を入れます。    (しかし、これはテストトーン(持続音)では効果は分からないですね)  ここまでが、目で見て合わせる項目です。  ここから先は、耳で合わせます。

4.センター/リヤスピーカーの音量バランス設定

    5チャンネルが全て同じスピーカーなら、同じ信号を入れれば同じ音が    するはずですが、サラウンド用には普通は小型スピーカーを使うので、     各チャンネルのスピーカーの能率が違うため、音量がまちまちになりま    すので、テスト信号を聞きながらそれを合わせ込みます。     L→C→R→RS→LS→… と順繰りに「ザー」というテスト信号(ピンク    ノイズ)が流れます。これを聴きながら全てのチャンネルの音量が同じに    なるように、調整します。     小型でワイドレンジなスピーカーは、一般的に能率が低いので、家では    センター[+4.5db]リヤ[+6.0db]になりました。     未調整の段階で聞いた映画のセリフやサラウンド感が弱かった理由は、    これだったのですね。     カタログ上のセンタースピーカーの能率は[86db]で、メインのスピーカー    は確か[90db]程だったかと思いますので、だいたい、スペック通りの値が    入ったことになりますが、実際の映画を見ながらセリフの明瞭度が欲しけ    ればもう少し上げてみるとか、好みで調整の幅はあると思います。    (後日リヤスピーカーの向きを完全にリスニングポジションに向けるよう    に内側に振ったところ、[+5.0db]でバランスが取れました。)

5.LFEチャンネルの音量設定

    LFEチャンネルというのは、ドルビーデジタルの重低音(120Hzまで)専用    チャンネルのことです。     理由は分かりませんが、この信号は[-10db]に設定するのが標準だそう    です。     最初はそれを知らずにデフォルト値のまま「ジュマンジ」などを再生    したからもう大変。さほどボリュームは上げていないのに、めちゃめちゃ    な地響きがしたのはこれでした。     一応、メインスピーカーと同じ音量でならすように設定しますが、恐竜    の足音がず〜んと欲しいなら大きくするとか、好みで調整して良いように    思います。でも、大きすぎると床も壁も、窓ガラスも、何もかもが振動し    出すので要注意です(^^;;     アンプ側のバランスは[-6.0db]程度に落ち着きました。     サブウーファー本体(ヤマハ YST-150SW)にも、ボリュームと、カットオ    フ周波数の設定がありますが、基本的にボリュームはアンプの方でバラン    スを取りたいのでわかりやすくするために12時の角度で固定。     カットオフ周波数(高音を切って低音だけを通すフィルターの周波数)の    設定は、ドルビーデジタルの場合アンプからは、もともと120Hz以下とい    う必要な低音だけを送り、余分な高音は含まれていないので、スピーカー    側のフィルターは働かす必要がありません。(一番高い周波数にセットし    ます)

6.音色合わせ

    いわゆるトーンコントロールです。     セリフの明瞭度を増すとか、小型スピーカーの低音を補うとか。色々な    使い方があると思うのですが、私はまだそこまで手を出していません。     しかし、メインのスピーカーが低音から高音までわりと明るい音色で鳴    るのに対してセンター、リヤの小型スピーカーは中音域に肉の付いた厚い    鳴り方をします。よく言えばストイック、悪く言えば開放的でない。これ    は、調整の効果が望めるポイントかも知れません。  これで、基本的な調整項目は全て終わり。  ばんざ〜い!(^^)  デモDVDの信号を聴き、合間合間に迫力のデモ映像を見。そんなことをやって いるとあっという間に一日が過ぎていくのでした。  それにしても、デモ映像の凄いこと。  「ギン」という衝撃音とともに波紋が広がる映像が、画面の外まで広がって いく感じがありありと分かります。これはトリップするぞ。  360度からの音響…。  それは画面の外の気配が実体化するということです。  いままで平面の中の出来事だった映画が、スクリーンからこちらの世界に押し 寄せてくる。画面の中から放たれた銃弾が耳元をかすめ、恐竜の群が地響きを立 てて追い越してゆく。そして、街の雑踏の中にごく自然に立つ…。そう、デジタ ル・サラウンドは、派手なアクション映画だけのものではないのです。画面の中 と現実の空間を、ただ自然に一体化させてしまう力こそ根本的な魅力なのかも知 れません。

次回は『スピーカーセッティングの微調節』の巻き。まだまだしつこく迫ります(笑)
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