映画館がやってきた!

液晶プロジェクタの画質調整を考える

- CPJ-A300で映画を楽しむための具体例 -

 CPJ-A300は、標準状態でまずちゃんとした画は出ますが、大画面にするほど 明るさが減るためにあれこれ調整したくなるものです。
 何ヶ月も「あ〜でもない、こ〜でもない」とCPJ-A300の画質パラメータを ひねっているうちに、ついにコツをつかんだように思うので、 ここに披露しようと思います。

 今まで見えなかった物が見えてくる?

画質調整パラメータの挙動

 CPJ-A300の調整パラメーターは
の四つがあります。

 この説明の中で、パラメータの値は、画面表示の棒グラフを0〜100%で読みとり、 標準状態を50として、表現します。

・秘訣の大原則

 調整項目の呼び出しでは真っ先にピクチャーが出てくるので、まずこれを調整 したくなります。
 ピクチャーは、それだけでもかなり調整範囲が広いのですが、CPJ-A300の調整の秘訣は、
 明るさ、 ピクチャー、 色の濃さ」の順で調整することです。
 そして、この三つが互いに影響し合います。

・パラメータ操作による画質変化

 調整の順を追ってポイントを解説します。
1.明るさ
 明るさは、標準状態(50%)では、全白画面でも液晶がフルに開いている状態では ないようで、もう少し明るくできます(白飛びを避けている(?))。
 また、暗い方は、少し早めに全黒になってしまいます(見かけの コントラストを稼ぐため(?))。

 実際的には、アニメや、TV番組では明るさ=50%でも問題ありませんが、映画では 暗いシーンで潰れがちなので、50%〜75%程度の範囲で持ち上げる必要があると 思います。
 上げすぎると、

 のいずれかの状態になるので、そうならないポイントを探します。  テストディスクがない場合は、全黒の基準はシネスコ映画の黒枠 で良いでしょう。

 ハイライトの白潰れは以下に説明するピクチャーを下げることで 救うことができるので、ここではとにかく、暗部に注目します。

2.ピクチャー(コントラスト)
 SONY製品はコントラストの代わりに「ピクチャー」という言葉を使いますが、 実際、ただのコントラストとは違うのかも知れません。
 見た感じではピクチャーを
上げると「全体に明るくなりながら、コントラストが上がる」
下げると「全体に暗くなりながらコントラストが下がる」
という 動作だと思います。

 具体的には前の段階で「明るさ」を上げたことで、全体的に明るくなっている はずなので、白が飛んでいるようならピクチャーを下げ、まだ白に余裕がある ようならピクチャーを上げます。
 私の所では45%〜60%くらいのあいだに落ち着くことが多いです。

 ビクチャーと明るさは互いに影響し合うので、これを交互に気の済むまで調整 します。

 これを、逆の順序(ピクチャー調整→明るさ調整)でやると、なぜか うまく調整することが出来ません。結局この順でやると、ビクチャーを上げすぎに なりやすいことが、一つの原因のようです。

3.色の濃さ
 個人的には、標準値でも、目が慣れれば十分な色の濃さだと思いますが、 どうしても、TVよりも色は薄付きになる傾向があります。
 しかし、色の濃さを上げると、原色に近い部分の明暗が犠牲になります。
(具体的には、ジブリのオープニングのトトロの線画が見にくくなるとか、赤の グラデーションが単色のベタになるとか。)

 他の項目との関係では、ピクチャーを上げた状態では、色の濃さは上げること が出来ません。

 つまり、明暗のコントラスト(ピクチャー)と、色のコントラスト(濃さ)は 連動していて、片方を上げれば、片方は下げなければならない関係にあります。

 具体的な調節の手順としては、色の濃さを上げたければ、単色のグラデーショ ンや、原色の中の細かい図形に注目し、これが潰れない程度に濃度を上げ、 どうしても潰れるようなら、ピクチャーを下げる。という二つの項目のバランス を取ります。
 場合によっては明るさの調節も必要でしょう。

 これで、 明るさ、 ピクチャー、 色の濃さの三つの項目の相互依存の関係が 理解できたことと思います。

4.色合い
 いわゆるHUEですが、個人的には肌色の好みから、一目盛りだけ 左に振っています。
 この項目は、他項目との相互関係は無いようです。

私の調整(具体例)

 基本条件をゲイン2.4の90インチ・ビーズスクリーンに写すものとして、 具体的な設定を紹介します。

●映画

明るさ75%
ピクチャー50%〜55%
色の濃さ45%〜55%
 基本的には、暗い画面をしっかり見るために、明るさをぐっと上げて、 白が飛ばないように、ピクチャーを少しだけ調整します。  色の濃さは、ほとんどいじる必要はないのではないかと思いますが、 これはピクチャーの値との兼ね合いになります。

●映画(米国版LD)
明るさ50%
ピクチャー80%
色の濃さ50%〜55%
 米国のNTSC規格が日本と比べて黒が明るい というのは、輸入盤を買っている人にはよく知られていることだと思いますが、先日購入した 『US版ゴジラ』では、上記のような値になりました。
 日本版に比べればもともと黒が浮いたセッティングになっているので、通常とは 全く反対に、明るさを押さえて、ピクチャーでコントラストを付けます。まったく、 あきれるほどの設定の違いですね。
 しかし、まず明るさで黒のレベルを決めてからピクチャーで白飛びをコントロール するという順番自体は変わりません。

●TV,アニメ
明るさ65%
ピクチャー65%〜50%
色の濃さ50%〜60%
 TV番組やアニメは平均的に画面が明るいことが多いので、あまり明るさを上げ なくても良い場合が多いように思います。
 色の濃さが欲しいときには、これを上げた分だけピクチャーを下げれば、 色の飽和が避けられます。

・コツは "やわらか画面"

 どちらにも共通して言えることは、最暗部をどれだけ見せるかと、最明部を いかに飛ばさないかということ。
 そして、明暗両方見せると言うことは結局
 「コントラストを欲張らない」ということです。

 ピクチャーを下げると、一見甘い画調になりますが、それは比較対象がある場合 の問題で、真っ暗な環境では、人間の視覚の柔軟性がカバーしてくれます。
 そこで、黒、白が潰れないように調整した画は、一見ぼ〜としていますが、 映画一本通して見るためにはこの方がストレスがありません。
 結局、コントラストを欲張らないことが、液晶プロジェクタ調整のコツといえ るでしょう。


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!