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電磁環境(EMC)の基礎知識

- クリーンな伝送のための基礎知識 -

 電磁環境(EMC)の基礎の中でもAV機器使いこなしに直接関わる基礎知識だけを まとめてメモ。

電磁現象

静電誘導
 帯電した物体、電圧のかかった導体の表面からは、電気力線が発する。
 静止した電荷によって生じる電界が「静電界」であるが、交流で変動する電界も 静電界として扱ってかまわない。
 静電界の中に導体を置くと、内部の自由電子が移動する。これによる障害を 「誘導妨害」と呼び、高電圧設備に近接して設置された通信線などに見られる。

 静電界は中空の導体の内部でゼロになるため、通信ケーブルでは金属シースを 被せることによって静電誘導を軽減される。

電磁誘導
 ループ状の銅線のループを貫く磁束が変化すると電圧が発生する。これを 「電磁誘導」という。
 大電力の送電線に近接して通信線を設置した場合、送電線で発生する 「変化する磁界」によって通信線の対となった電線の間に電圧が発生する。 これを「電磁誘導障害」という。

 より対線(ツイステッドペア)を用いると、誘導によって発生する電圧が 一ひねりごとに逆方向になるために打ち消しあい、「電磁誘導障害」を受けにくい (LANケーブルなどで使用されている)。
 ただし上記のようなケースでは電力線による「誘導妨害」も同時に受けるので、 シールド線を用いることが多い。

熱雑音
 抵抗体には「熱雑音」が発生する。

雑音の有能電力(実効値) = kTB[W]
k : ボルツマン定数( 1.381e-23 (J/K) )
T[K] : 絶対温度
B[Hz] : 周波数帯域

電源

電圧変化
 100V電源の電圧変化は101V±5Vの範囲内に維持するように制御されている。

電源高調波
 商用電源は50/60Hzの正弦波であるが、高調波成分が混じると、 電力用コンデンサの振動/過熱、TV/蛍光灯のちらつき、ステレオの音質低下などを引き起こす。
 発生源としては、インバータ、サイリスタ応用機器が代表的。
 対策として、リアクトルとコンデンサでトラップ回路を作り、高調波を吸収する。

コモン・モード/ディファレンシャル(ノーマル)・モード
 電気回路は、電源と負荷を結ぶ一対の導線で成り立ち、行き帰りの導線に流れる 電流は等しい。
 しかし、導線と基準面(筐体、大地など)の間に電気容量など「浮遊インピーダンス」 が存在すると、高周波でその影響を無視できなくなる。
 コモン・モード電圧/電流とは、回路と基準面の電圧/基準面を流れる電流のこと。
 コモン・モード・ノイズとは、大地やグランド線に流れるノイズ。
 コモン・モード・ノイズは、導線と基準面からなる大きなループを電流が流れるために これが電磁波を発生し、他の機器に放射妨害を与えやすい。
 一方、無線妨害、落雷のサージ電圧、商用電源からのノイズは、いずれもコモン・モード・ ノイズとして伝搬し機器に障害を与える。
 対策は

対策・その他

妨害抑圧素子
 電磁妨害の放出の抑止、侵入の防止には、コンデンサ、コイル(フェライト磁心)、 LCフィルタ、バリスタなどを組み合わせて用いる。
 これらは、希望信号に対する損失が小さく、妨害信号に対する損失、反射が大きい。
 損失の小さい素子を組み合わせると、特定の周波数で電圧や電流が振動的になり、 希望信号の波形がひずむことがある。
 予想外の共振周波数で、妨害波が強調されることがある。
 → 対策には副作用が出ることもあるということ。

遮蔽(シールド)

電波吸収体
電波吸収体は

 フェライト・ドーナツとセラミック・ドーナツを交互に組み合わせた電源用 ノイズ・フィルタは、軸長1cmで30〜40dbの高周波漏洩防止能力を持っている。
 → 信号ケーブルにフェライトドーナツを被せることがあるが、やたらに使うと 必要な信号まで通らなくなる可能性がある。
 フェライト・コアは、電磁波として外部から到達してケーブルに発生した 高周波電流を減衰させる。(電波が素通りするようになる)


■参考文献
・不要電波問題対策協議会編/図解EMC用語早わかり(オーム社)
宮崎技術研究所の技術講座「実用ノイズ対策技術」 - とても詳しいノイズ対策の解説。実際の ノイズ波形の写真が沢山ある

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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!