できる『美味しんぼ』 - からから亭 | Home |
YOROZU-YA:農薬がなかったら病害虫のためにまともな農業生産量は確保できない。(1)
日本は世界で一番農薬を使う量が多い(2)が、
世界一平均寿命が長いので農薬が体に悪いというのは迷信。
山岡:日本の平均寿命が延びたのは乳児死亡率が下がったから。
がん患者の数は増える一方。(3)
農薬や除草剤の中にはがんの引き金になる物質が含まれている。(4)
論点1. 農薬がなかったら病害虫のためにまともな農業生産量は確保できない
○
論点2. 日本は世界で一番農薬を使う量が多い
×
→山岡はこれには答えていないが、「生産量が確保できること」は
安全と同様に第一の基本である。ここを蔑ろにするのは「貧乏人は飢えて死ね」と
言っているのと変わらないからである。
「農薬を使わない場合に生産量がどう変化するか」については確かな資料が存在しないが、
一般論として「農業の規模が大きく、長年連続して生産するほど病害虫発生のリスクは大きい」
と言われている。
植物には元来、昆虫による食害や菌類による攻撃から自らを守るための化学物質を
体内に作り出し、または分泌する能力(アレロパシー)がある。
しかし、人間が「食料とする植物」は本来毒物を持つ植物の中から、食用に足る弱毒なものを
選んで「農作物」として改良してきたもので、植物本来の自己防衛力を奪ったものであるから、
農作物が病害虫に弱いのは宿命的なものなのである。
→これは統計の嘘。
アメリカを基準にすると、当時、日本では「単位面積当たりの農薬使用量」が7倍、
という統計があった。2003年には8倍に増えている。(OECDの統計資料)
一方「農薬の必要量は作物によって異なる」
アメリカで耕作地の半分以上を占める「麦」は、あまり農薬を使わずに収穫できるが、
どの国でも一般的に「果樹」や「米」には農薬が必要。
そのため、単純に「総面積」で平均化すると、
農薬を必要としない種類の作物をたくさん作っている国ほど、農薬が少ない農業をしている
ように見えるのである。
近年米国の農薬使用量との差が広がっているのは
遺伝子組み換えによって病害虫に強い作物なら、さらに農薬を減らすことができる、
という理由が含まれているだろう。
国別の表からは「乾燥した気候の国ほど、農薬が少ない」という傾向も読み取れ、
そういう地域性を無視した農薬批判も誤りだ。
技術的には(リンゴの例をとると)日本人は(消費者の希望によって)自然に流れ落ちてしまう
農薬の散布方法を好むため、がっちり付着する散布法をとる米国と比較すると
何度も散布をする必要がある、というケースもあるそうだ。
この場合「残留農薬」を減らすために、散布する総量が増えるという、正解の見えにくい
構造になっている。
論点3.日本の平均寿命が延びたのは乳児死亡率が下がったからで、がん患者は増える一方
×
論点4.農薬や除草剤の中にはがんの引き金になる物質が含まれている。
×
我々が利用する化学物質は「食品安全委員会」によって、
「一日摂取許容量(ADI)」というものが決められている。
そして、残留農薬がが実際の食品にどの程度含まれているかの調査が行われており、
毎年、厚生労働省から「食品中の残留農薬の一日摂取量調査結果」が公表されている。
→平均寿命が延びた理由はたくさんある。
山岡の挙げる「乳児死亡率が下がった」こともあるが、食品の安全性にかかわる部分では、
「化学肥料の普及で感染症・寄生虫が激減した」
「食品加工技術の進歩で塩分使用量が減ったことで、循環器系の疾病が減った」
など、医療技術の進歩に加えて「農業・科学技術の進歩」に支えられて病気が減って
きたことを無視してはならない。
がんは高齢になるほど罹患率の上がる病気なので、長生き社会でがん患者が
増えるのは当たり前で、農薬に結びつける根拠は無い。
※2004年、ミネソタ大学の研究では、有機栽培農作物の大腸菌汚染率は平均9.7%で、
1.6%の通常栽培農作物に比べ6倍もの高率を記録した。
→過去にさかのぼればこの指摘は間違っていない。戦後の食糧難の時代には、
イネの害虫「ニカメイチュウ」に効くのは、人間に対しても猛毒の
「パラチオン」という農薬だけで、農薬を散布するときには赤旗を立てて
立ち入り禁止にしたものだ。
進駐軍が持ち込んだ「DDT」の発がん性や、ベトナムで使用された「枯葉剤」の
催奇性も戦後暫くの出来事の記憶のある世代には忘れられない記憶である。
しかし、このような猛毒の化学物質は現在では厳しく規制されており、
論点3で指摘したように、
農薬や保存料は「現代人の平均寿命を伸ばした」功績の方が大きいのは明らかだ。
※日本国内においては、多くの環境汚染のピークが1970年頃にあり、
以降は急速に
汚染レベルは低下している。このマンガが1995年に出版されていることを考えると、
些か情報が古すぎるといわざるを得ないだろう
ともあれ、ここで必要なのは、
の知識・情報である。
「一日摂取許容量(ADI)」は、ある物質について人が生涯その物質を毎日摂取し
続けたとしても安全性に問題ない量として、通常、一日あたり体重1kgあたりの物質量(mg/kg/day)
として表される数値で、動物試験で得られた無毒性量に、人間と動物との差や個人差などを考慮して、
安全係数として通常1/100を乗じて求める。(動物実験を元にした算出方法をとるのは、
毒物を用いた人体実験ができないからである)
当然、農薬は「一日摂取許容量」を超えない使い方をすることになっている。
残留農薬基準については、現在(2006年5月から)は「残留農薬等に関するポジティブリスト制度」
によって規制されている。
調査方法は「マーケットバスケット調査方式」をとる。
これは、一般的に人が日常の食事をすることによって農薬などを、どの程度摂取しているかを
調べることを目的とした調査方式で、市場で流通している農産物、加工食品、魚介類、肉類、
飲料水等の食品について通常行われている調理方法で調理を行った後、各食品に残留している
農薬などの量を測定する。
さらに、国民健康・栄養調査の結果から1日あたり各食品をどれくらいの量食べているか
を調べ、各食品中の残留農薬の測定の結果から、1日あたりに食品を食べることによって
摂取される農薬などの量を計算する。
こうして平均的な日本人がどの程度の農薬を摂取しているかが評価できるのである。
実際の例として「福岡市の調査結果」を見ると、平成18〜20年の調査で、
農薬成分を検出することのできた食品群のいずれも、その量は
一日摂取許容量に対して1%未満であった。
つまり、農薬が検出されたいくつかの食品のなかの最大量の場合でも、
一生摂取し続けても問題が起きないとされる量の1/10,000に収まっている
ということである。
[参考:厚生労働省>食品安全情報>分野別施策>食品中の残留農薬・動物用医薬品・飼料添加物(ポジティブリスト制度など)>「平成16年度食品中の残留農薬の一日摂取量調査結果」]など
量に関する議論は以上の通りだが、実際の「がんの原因」として農薬がどのように
評価されているかを調べてみよう。
次の表は、米国国立がん研の「がん疫学専門家」のまとめた、
「がんの原因に対する専門家と一般市民の見解の相違」を表したものである。
主婦の感覚 | がん疫学専門家 | |
---|---|---|
食品添加物 | 43.5% | 1% |
農薬 | 24% | 0% |
タバコ | 11.5% |
30% |
大気汚染公害 | 9% | 2% |
タンパク質焦げ | 4% | 0% |
ウイルス |
1% |
10% |
普通の食品 |
0% | 35% |
性生活・出産 |
0% |
7% |
職業 |
0% |
4% |
アルコール |
0% |
3% |
放射線・紫外線 |
0% |
3% |
医薬品 |
0% |
1% |
工業生産物 | 0% | 1% |
そして専門家の知る、がんの原因は、
「普通の食品」="35%"、
「タバコ」="30%"
「ウィルス」="10%"、
「性生活・出産」="7%"
と続き、食品添加物は1%となる。
つまり、論点4.農薬や除草剤の中にはがんの引き金になる物質が含まれている。
を逆から見た命題(期待)
「無農薬・有機栽培野菜」は安全(=がんの引き金になる物質が含まれていない)
というのは、大きな幻想なのである。「生きるために食べること」それ自体が、
最大のリスクなのだ。
「普通の食品」によるリスクの中には、そこに含まれる天然の発癌物質のほか、
肥満や塩蔵物による害、嗜好品なども含まれていると推測される。(後述)
次に、日常生活の様々なリスクの中で「農薬のリスクはどのレベルに位置するか」 を示した資料を見てみよう。
死因 | 危険度 |
---|---|
たばこ(1箱/日) アルコール 原付自転車 ハングライダー 肥満 心臓カテーテル 造影剤注入 自動車 肺内視鏡 自転車 胃カメラ 家事 市街歩行 肺レントゲン エイズ 医薬品 スキー 原子力発電所放射能 残留農薬・食品添加物 |
1/200 1/250 1/250 1/550 1/600 1/1000 1/2000 1/4000 1/5000 1/8000 1/10000 1/15000 1/20000 1/20000 1/30000 1/80000 1/100000 1/200000 1/500000以上 |
この表からは、
「残留農薬・食品添加物」の危険度は「酒とタバコをやる人」の1/5,000である。
ということが読み取れる。
つまり、タバコ・お酒をやる人が「無農薬野菜」を選択するのは意味が無い。
また、前の表から「普通の食品のリスク」も35%もあるので、
たとえ「残留農薬・食品添加物」が完全にゼロ
の世界に行っても、総リスクはまったく変化しない。
いずれにしても、無農薬野菜を購入して農薬や食品添加物をゼロしようという 努力は、ほとんど無限に費用対効果の悪い努力だといえる。
YOROZU-YA:農薬以外の化学合成物質はいたるところに氾濫していて
農薬だけに神経質になるのは意味が無い。(5)
農村の人口はどんどん減っていて、わずかな労働力で除草剤を使わずに作業しろというのは消費者の身勝手。
山岡:除草剤や農薬は、農家の人々の健康を害している。(6)
ここは全然論点がすれちがっているが、双方の
論点を検証してみよう。
論点5.農薬以外の化学合成物質はいたるところに氾濫していて
農薬だけに神経質になるのは意味が無い ○
発がん物質の相対的危険度を比較するため、発がんの危険性の指標「HERP値」
(Human Exposure/Rodent Potency Index)
が公表されている。(米国の環境について計算されたものである)
参考として、上記のHERPの表を和訳したものを掲載する。身近な食物の中に
天然の発がん物質が、農薬の規制値以上の高濃度で含まれている事実を確認してもらいたい。
→農薬に限らず、化学物質全体の中でリスク/ベネフィットを考えるのが正しい。
しかし、「化学合成物質はいたるところに氾濫していて」という言い回しは最初から、
「化学合成物質は危険で天然は安全、という思考バイアス」がかかっている。これはいただけない。
なぜなら、天然・合成にかかわらず、全ての物質が100%安全、100%無害
といえるものは無く、「摂取量」によって人体への影響が決まるからである。
安全性は「摂取量」とともに検討すべきものである。
HERP(Human Exposure/Rodent Potency Index)
http://potency.berkeley.edu/pdfs/herp.pdf
MoE評価
http://potency.berkeley.edu/MOE.html
これによると、残留農薬や水質汚染などから人が摂取する汚染物質の量はきわめて微量であり
人体への悪影響は認められないが、むしろ天然由来の物質や調理した過程で食品から
発生する発がん物質の方がはるかに問題であることが指摘されている。
そもそも、自然のままで発がん物質を含まない野菜・果物はほとんどない。
HERPの平均は0.002%である。
HERPの値0.00001%は、ほぼ化学物質の規制基準値に近く、ほとんどの「普通の食品」が
合成化学物質のために定められた規制を通過することが出来ない。
危険性 HERP(%) |
一日当たりの摂取量 | 人(70kg)での発がん物質摂取量/日 | 発がん性の強さ [TD50 (mg/kg)] | ||
---|---|---|---|---|---|
ラット | マウス | ||||
140 | EDB(労働者の1日暴露量、高濃度レベル) | エチレンジブロミド | 150mg | 1.5 | (5.1) |
17 | クロフィプレート(1日平均量) | クロフィプレート(高脂肪血症治療薬) | 2,000mg | 169 | (?) |
12 | フェノバルビタール(1回量) | フェノバルビタール(睡眠薬) | 60mg | (+) | 5.5 |
14 | イソニアチド錠剤(予防薬) | イソニアチド(抗結核薬) | 300mg | (150) | 30 |
6.9 | ゲムフィブロジル | ゲムフィブロジル(高脂血症治療剤) | 1.2g | 247 | (-) |
6.8 | Styrene-butadiene rubber industry workers (1978-86) | 1,3-Butadiene | 66.0 mg | (261) | 13.9 |
6.2 | コンフェリー・ペプシン錠剤(1日9錠) | コンフェリー根 | 2,700mg | 626 | (?) |
6.1 | Tetrachloroethylene: dry cleaners with dry-to-dry units (1980-90) | Tetrachloroethylene | 433 mg | 101 | (126) |
5.6 | メトロニダゾール(治療時の量) | メトロニダゾール(トリコモナス治療薬) | 2,000mg | (542) | 506 |
4.7 | ワイン(250mL) | エチルアルコール | 30mL | 9,110 | (?) |
4.0 | Formaldehyde: production workers(1979) | ホルムアルデヒド | 6.1 mg | 2.19 | (43.9) |
3.6 | アルコール飲料(平均) | エチルアルコール | 22.8 ml | 9,110 | (-) |
2.8 | ビール(12オンス、354mL) | エチルアルコール | 18mL | 9,110 | (?) |
2.4 | ABS樹脂: production workers (1960-1986) | ABS樹脂 | 28.4 mg | 16.9 | . |
2.2 | トリクロロエチレン: vapor degreasing(before 1977) | トリクロロエチレン | 1.02g | 668 | (1580) |
1.4 | トレーラーハウスの空気(14時間/日) | ホルムアルデヒド | 2.2mg | 1.5 | (44) |
1.3 | コンフェリー・ペプシン錠剤(1日9錠) | シンフィチン | 1.8mg | 1.9 | (?) |
0.9 | Methylene chloride: workers, industry average (1940s-80s) | 塩化メチレン(溶媒) | 471 mg | 724 | (1100) |
0.6 | 普通の家庭の空気(14時間/日) | ホルムアルデヒド | 598μg | 1.5 | (44) |
0.5 | DHEAサプリメント | DHEA(副腎皮質ホルモン) | 25mg | 68.1 | . |
0.3 | フェナセチン錠剤(平均量) | フェナセチン | 300mg | 1,246 | (2,137) |
0.2 | 天然のルートビール (12オンス、354mL、現在発売禁止) |
サフロール | 6.6mg | (436) | 56 |
0.1 | リモネン(食品中のレモン油) | d-リモネン | 15.5mg | 204 | (-) |
0.1 | コーヒー,11.6g | カフェイン | 20.8mg | 297 | (4900) |
0.1 | バジル(1g、乾燥葉) | エストラゴール | 3.8mg | (?) | 52 |
0.07 | ブラウン・マスタード(5g) | アリルイソチオシアネート | 4.6mg | 96 | (−) |
0.06 | ロバスタチン | ロバスタチン(高脂血症治療薬) | 20 mg | (-) | 515 |
0.06 | Diet Coke(12オンス、354mL) | サッカリン | 95mg | 2,143 | (−) |
0.06 | イカ(54g、ガスオーブン中で加熱) | ジメチルニトロソアミン | 7.9μg | (0.2) | 0.2 |
0.04 | レタス,14.9g | カフェイン | 7.9mg | 297 | (4900) |
0.03 | トマト,88.7g | カフェイン | 5.46mg | 297 | (4900) |
0.03 | コンフェリーのハーブ茶(カップ1杯) | シンフィチン | 38μg | 1.9 | (?) |
0.03 | ピーナッツバター(32g、サンドイッチ1枚) | アフラトキシン | 64ng(米国平均、2ppb) | 0.003 | (+) |
0.03 | Safrole in spices | サフロール | 1.2 mg | (441) | 51.3 |
0.03 | Orange juice, 138 g | d-リモネン | 4.28 mg | 204 | (?) |
0.03 | Furfural in food | Furfural | 3.64 mg | (683) | 197 |
0.02 | マッシュルーム(Agaricus bisporus、2.55g) | 各種ヒドラジン | (?) | 20,300 | |
0.02 | コーヒー,11.6 g | カテコール | 1.16 mg | 84.7 | (244) |
0.02 | リンゴ,32.0 g | カフェ酸 | 3.40mg | 297 | (4900) |
0.008 | ビール(1979年まで、12オンス、354mL) | ジメチルニトロソアミン | 1μg | (0.2) | 0.2 |
0.008 | スイミングスクール(1時間、子供) | クロロホルム | 250μg(平均) | (119) | 90 |
0.008 | Aflatoxin: daily U.S. avg (1984-89) | アフラトキシン | 18ng | 0.0032 | (+) |
0.007 | Celery, 14 g | カフェ酸 | 1.51 mg | 297 | (4900) |
0.007 | d-リモネン(食品添加物) | d-リモネン | 1.01mg | 204 | (?) |
0.007 | シナモン,21.9 mg | クマリン | 65.0μg | 13.9 | (103) |
0.006 | ベーコン、調理品(100g) | ジメチルニトロソアミン | 0.1μg | 0.02 | (+) |
0.006 | コーヒー,11.6g | Furfural | 783 μg | (683) | 197 |
0.005 | コーヒー,11.6g | ヒドロキノン | 290 μg | 82.8 | (225) |
0.005 | ニンジン,12.1g | アニリン | 624μg | 194 | (-) |
0.004 | パン,79g | Furfural | 584 μg | (683) | 197 |
0.004 | ジャガイモ,54.9 g | カフェ酸 | 867μg | 297 | (4900) |
0.004 | 汚染井戸水1L(シリコンバレー最汚染井) | トリクロルエチレン | 2800μg | (-) | 941 |
0.004 | Methyl eugenol in food | Methyl eugenol | 46.2 μg | (19.7) | 18.6 |
0.003 | 普通の家庭の空気(14時間/日) | ベンゼン | 155μg | (157) | 53 |
0.003 | ベーコン、調理品(100g) | ジメチルニトロソアミン | 0.3μg | (0.2) | 0.2 |
0.003 | 日本酒(250mL) | ウレタン | 43μg | (41) | 22 |
0.002 | コーヒー,11.6g | 4メチルカテコール | 378 μg | 248 | . |
0.001 | 水道水1L | クロロホルム | 83μg(米国平均) | (119) | 90 |
0.0007 | TCDD(ダイオキシンの一種)1990 | TCDD | 12.0pg(米国平均) | 0.0000235 | (0.000156) |
0.0004 | EDB(食品から摂取する量) | エチレンジブロミド | 0.42μg(米国平均) | 1.5 | (5.1) |
0.0003 | 汚染井戸水1L(Woburn) | テトラクロルエチレン | 21μg | 101 | (126) |
0.0002 | 汚染井戸水1L(Woburn) | クロロホルム | 12μg | (119) | 90 |
0.0002 | PCB類(食品から摂取する量) | PCB類 | 0.2μg(米国平均) | 1.7 | (9.6) |
0.0002 | AF-2 (禁止される前の平均1日摂取量) |
AF-2 (フリルフラミド) |
4.8μg | 29 | (131) |
0.00008 | DDE/DDT(食品から摂取する量)1990 | DDE | 659ng(米国平均) | (-) | 12.5 |
(http://potency.berkeley.edu/pdfs/herp.pdf を元に和文化。合成化学物質の過去の 暴露値などを省き最近の値中心に編集しました)
アメリカ発のデータなので、日本人には馴染みの無い物質/食品名も頻出しているが、
以上の表に示されるように、一般の食品のほとんどに食品添加物や環境汚染物質
の平均値を上回る発がん性物質が含まれていることは読み取っていただけるものと思う。
「アルコール」はもっとも上位のグループに含まれるし、「カフェイン」は
非常に広範囲の食品に含まれている。「香り」を発するものは芳香族化合物で、
厳密に言えばことごとく発がん性を持っているということができる。
つまり、100%無毒の食品は存在しないのである。
一方、人の手で作り出された化学物質は厳しい規制によって、ほとんどの
食品が天然にもつ危険性(HERP値)より小さくなっているのである。
天然農薬・殺虫剤
植物が生産する天然殺虫剤成分は約1万種類もあるといわれるが、そのほとんどが分析を受けていない。
1990年、エームズ博士他により52種類をテストしたところ、27が発ガン物質であった。これらは、
ほとんどの食品に含まれているのである。
米国人は平均毎日1.5グラムの天然農薬を食べており、この量は残留農薬基準の10,000倍以上になる。
つまり、野菜、果物に含まれる農薬成分の99.99%は天然のもので、残りの0.01%の合成農薬
を減らすために無農薬野菜を選ぶ論理的妥当性はない。
(「美味しんぼ」のこの巻の出版は1995年であり、執筆当時にはかなりホットな話題であったはず
で、「天然農薬」と「HERP」に作者が触れていないのは意図的なものとしか考えられない)
代表的な物質には下記ものがある。
天然農薬成分 | 含まれる農産物など |
---|---|
カフェ酸 | コーヒー、レタス、トマト、りんご、じゃがいも、セロリ、にんじん、プラム、洋梨など |
サフロール | スパイス類 |
イソチオシアン酸アリル | マスタード |
d-リモネン | マンゴー、オレンジジュース、ブラックペッパー |
クマリン | シナモン、桜餅 |
ヒドロキノン | (漂白効果があり美肌剤として用いられる) |
カテコール | コーヒー |
4メチルカテコール | コーヒー |
メトキサレン | パセリ、セロリ、セリ |
アリルイソチオシアン酸 | キャベツ、カリフラワー、カラシ菜、西洋ワサビ |
エストラゴール | バジル、ウイキョウ |
アクリル酸エチル | パイナップル |
セサモール | ゴマ |
メチルベンジルアルコール | ココア |
酢酸ベンジル | バジル、ジャスミン茶、蜂蜜 |
クロロゲン酸 | リンゴ、アプリコット、サクランボ、モモ、ナシ、ブロッコリー、キャベツ、ケール、コーヒー |
論点6.除草剤や農薬は、農家の人々の健康を害している ×
私の記憶に残っている殺虫剤というと「スミチオン(フェニトロチオン剤)」一辺倒であるが、これは
1961年に農薬登録された「有機リン系農薬」で、アブラムシ、アオムシなど、なんにでも良く効く
印象で1960-70年代には「こればっか」という記憶がある。
「環境ホルモンと農薬」
農薬の製造工場の従業員は農家以上に農薬に暴露される可能性が高いが、
現場では厳密な健康診断が実施されて、ここで問題の無いことが、農薬の人体に対する
安全性の担保となっている。
逆に「無農薬の農作業が農家の人々の健康を害するリスク」も存在する。
「有機・無農薬野菜」を生産する農家は、自分の健康のためにやっているのではない。
主な目的は「高付加価値」な作物の生産である。
→先に述べたように、人間に対しても猛毒を有する農薬を使わざるを得なかった時代もあるが、
現代では「農薬が農家の人々の健康を害している」という事実は無い。
「美味しんぼ」原作者の年齢からして「ベトナム戦争」で使用された「枯葉剤(2,4,5-Tなど)」の
イメージが大きいと思われるが、あれは確かに人間にも毒物だったし、合成過程で生じた副産物
(ダイオキシン,TCDD)も多かった。そもそも「全ての植物を枯らし尽くしてゲリラ兵をあぶりだして殺す」
目的で撒いた薬剤で、人体に対する安全性なんて「ついでに死んでもOK」くらいの考えで
使われたものだろう。(もちろん現在は使用禁止)
しかし、これは「農業に使う除草剤」とは全く違う。何もかも枯らしては農業にならないからだ。
つまり、
「特定の作物には影響を与えずに雑草だけを枯らす」という微妙な働きをするもので、
植物の光合成を阻害したり、植物ホルモンを利用したりと、
「特定の植物だけにある弱点」を攻撃するものだ。
また「散布後短時間で分解する」ように設計されている。(土壌に長期に残留する薬剤を使えば、
農地として使えなくなってしまう)
当然、「人間・動物」に作用することは原理的に無い。
(「遺伝子組替え作物」には、特定の除草剤と組み合わせ、これに抵抗力(解毒作用など)の
ある遺伝子を組み込むことで収量増加を狙うものもある。)
除草のためには「地面を銀色のシート被覆し日光を遮る」など、
薬剤以外の方法も利用されている。
アブラナ科植物には薬害が出るそうなので、初期にはマンガのように
「殺虫剤のために野菜が不健康に…」というケースもあったかもしれない。
スミチオンのADIは0.005mgで、過去には死亡事故もあったし、そもそも
散布中に通りかかれば、風向きによってはかなり具合が悪くなるシロモノ
だった。
だがこれは、当然ながら使用量の適正化や、より目的を絞った薬剤への置換えなどが進み
現在に至っている。
70年代後半には「畑の真ん中を歩いていて農薬の匂いが漂ってくる」などということも
ほとんど無くなり、急速に「改善」が進んでいった実感が有る。
このことからも、作者の農薬に関する感覚は30〜40年も過去のもので、
今の実態とはかけはなれたものであると言えよう。
1998年には当時の環境庁が発表した「環境ホルモン戦略計画SPEED’98」
で、内分泌撹乱作用(環境ホルモン)をもつと疑われる化学物質として67の物質(群)が
リストアップされ、そのなかには農薬とその関連物質も含まれていたが、その後の検証で
ほとんどの物質は哺乳動物に対する作用を示さないことが報告された。
(魚類に対する内分泌撹乱作用については、生活排水(人間の排泄物)に含まれる
(本物の)女性ホルモンの作用が化学合成物質の作用より桁違いに多いことが確認されている)
現在、このリストは単に調査研究の対象物質であり、掲載された物質が
内分泌撹乱化学物質などと言う根拠がなくなったとされている。
また、農薬はすでに環境ホルモン作用の試験(繁殖性、催奇形性など)で安全性が
確認されたものだけが登録されており、この検証作業で重ねて安全性が確認された
と言って良い。
「有機・無農薬野菜」を販売する宅配サービス業者も、収益性を前提に
ビジネスを行っている。
もちろん、「慣行農業」の農家と販売ルートも、これでビジネスを行っている。
(もっとも、慣行農業という言い方は、日々改善を重ねている農家に対して
失礼な呼び方であると考える。)
YOROZU-YA:合成保存料が無かったら食中毒で死ぬ人がたくさん出る(7)。
合成保存料があるから加工食品が出回って主婦が楽をできる
栗田:食品会社が保存料を使うのは管理が楽で長い間もたせることができるから(8)。
女性の社会進出を妨げているのは日本の男性の女性蔑視の態度。
論点7.合成保存料が無かったら食中毒で死ぬ人がたくさん出る ×
「合成保存料」というと、なにか「強烈な毒物」という感じがするが、現在主に使われている
保存料は、天然由来成分になっている。
→ここも論点がすれちがっているが、とにかく
「合成保存料」「食中毒」について考えてみよう。
現実問題として、「食品が原因で人が死ぬ」ことが年々減っていることは事実である。
フグや毒キノコで死ぬ人はまだまだ、それなりの頻度でニュースにもなっているけれど、
食中毒も確実に減っている。これは、冷凍、冷蔵、保存料などによる「保存技術の向上」と、
食品供給の絶対量が増えたことで、怪しげなものを無理に食べなくても生きていけるからである。
(キノコやフグで死ぬ人は大抵個人の冒険や無知に起因している)
名称 | 出所 | 性質 |
---|---|---|
安息香酸 ,-ナトリウム |
自然界や食品中に低濃度ながら極めて広く分布 みかん、マンゴ、パパイヤ、キウイ、メロンなどの果実類、ニラ、タマネギ、キュウリ、ブロッコリー、キャベツ、などの野菜類から、0.1〜数ppm程度検出される。 |
チーズ及び醤油の製造工程中に生成することや、シナモン、タイム、クローブなどの香辛料にも含まれることが知られている。 |
ソルビン酸 ,-カリウム |
1959年にナナカマド(Sorbus aucuparia)の未熟果汁に発見された天然に存在する物質 | 抗菌力はあまり強力ではないが、広い抗菌スペクトルを有す。 静菌的に働き殺菌力は弱い。細菌よりも真菌(カビ・酵母)に対して有効だが、乳酸菌にたいしては抗菌性が弱い。 ・米国では使用制限なしのGRAS (Generally Recognized As Safe)物質として「砂糖」や「寒天」と同等に扱われている。 |
プロピオン酸 ,-カルシウム,-ナトリウム |
多くの"発酵食品中に広く分布"し、特にナチュラルチーズの一種であるエメンタルチーズには高濃度に含まれる他、醤油、魚醤、なれすし、くさや汁に含まれる。 また、添加の対象物であるパンの発酵過程で生成させることも報告されている。 |
酵母に対して抗菌性が弱く、パン生地の発酵を阻害しないことから、ロープ菌による腐敗やカビの発生を防止するために使用される。 哺乳類の大腸やルーメンでは細菌が食物の中のセルロースやヘミセルロースを嫌気発酵し、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸を生成しており、これが植食性動物の体内では重要なエネルギー源となっている。 |
これを見ると、無条件に「天然モノ」が安全というわけではないが、一般的な消毒薬のイメージとは
大きく違い、「保存料」は、生き物の知恵を利用して標的となる微生物をコントロールしていることが
理解できるだろう。
名称 | LD50(mg) | 人間(60kg) に換算 |
---|---|---|
砂糖 | 30000 | 1800g |
ブドウ糖 | 25000 | 1500g |
グルタミン酸ナトリウム | 16200 | 972g |
ソルビン酸(防腐剤) | 10500 | 630g |
アルコール(エタノール) | 7000 | 420g |
クエン酸 | 7000 | 420g |
食塩 | 4000 | 240g |
炭酸水素ナトリウム | 4000 | 240g |
乳酸 | 3700 | 222g |
ビタミンB1 | 3000 | 180g |
リンゴ酸 | 3000 | 180g |
安息香酸ナトリウム(防腐剤) | 2000 | 120g |
BHT(酸化防止剤) | 1390 | 83.4g |
サリチル酸(防腐剤) | 1000 | 60g |
アスピリン(医薬品) | 750 | 45g |
酢酸 | 300 | 18g |
カフェイン | 200 | 12g |
DDT(殺虫剤) | 113 | 6.78g |
カプロサイシン(唐辛子の辛味) | 65 | 3.9g |
ニコチン | 50 | 3g |
アフラトキシンB1(カビ毒) | 7 | 0.42g |
食中毒を防ぐ基本は「調理したら時間をおかずに食べる」ことに尽きる。
むしろ、作者の本心は「主婦の手抜きに対する批判」の方が大きいのではないか?
上の「がんの原因に対する専門家と一般市民の見解の相違」の表の中で、
農薬が0%なのに対して、(保存料を含む)食品添加物が1%なのは、食品添加物が
直接口に入るものだという違いが大きい。(農薬は調理の過程で洗い落とすことができる)
従って、食品添加物の少ない食品を選ぶことは無農薬野菜を求めることよりは意味があるだ
ろう。時間と技術があれば「惣菜料理」より「手作り」の方が良いのももちろんのことだ。
しかし、「酸化防止剤」がいやだと言って、毎日バターやマーガリンを
手作りすることができるだろうか?
あるいは、酸化防止剤無添加のバターの酸化による発がん物質生成のリスクを
どう評価するべきだろうか?間違いなく、酸化したバターを食べるより、
酸化防止剤に守られたバターのほうが安全だ。
対象物質名 | 一日摂取量 (mg/人) |
一日摂取許容量 (ADI)(mg/kg体重) |
日本人の平均体重(50kg)における一日あたりの許容摂取量(mg/日) | 摂取量のADIに占める割合(%) |
食用赤色2号 | 0.006 ** | 0.5 | 25 | 0.02 ** |
食用黄色4号 | 0.469 ** | 7.5 | 375 | 0.13 ** |
亜硫酸 | 0.154 ** | 0.7 | 35 | 0.44 ** |
ソルビン酸 | 13.56 ** | 25 | 1250 | 1.08 ** |
アスパルテーム | 5.853 * | 40 | 2000 | 0.29 * |
アセスルファムK | 0.736 * | 15 | 750 | 0.10 * |
スクラロース | 0.310 * | 15 | 750 | 0.04 * |
サッカリンナトリウム | 0.648 * | 5 | 250 | 0.30 / 0.26 * |
グリチルリチン酸 | 0.595 * | − | ||
キシリトール | 70.098 * | 特定せず | ||
ソルビトール | 1052.95 * | 特定せず | ||
マンニトール | 168 * | 特定せず |
一方、見栄えを良くすることが主目的の「食用色素」に
関しては、安全性とは別に、使用しないほうが良いという考えもできる。
これは、毒物としてのリスクの問題より、「実力より美味しく見せる」
ことや、万が一「痛んだ場合に見た目で判断することが難しくなる」という
副作用もあるからである。
論点8.食品会社が保存料を使うのは管理が楽で
長い間もたせることができるから ○
→これは「その通り」なのだが、マンガの文脈上は「悪いこと」として書かれている
のが問題。
加工食品を用いるのは消費者の自由なのだし、加工食品に保存料を使う
メリットは明白。批判するところが見当たらないのだが。
加工食品の「保存料」を問題にするならば、伝統的な保存食の
「塩分」が高血圧やがん原因となることや、スモークされた食品に含まれる
「タール」、
ハムやベーコンに含まれる、「ジメチルニトロソアミン」などの
人工の保存料などより桁違いに高い天然の発がん性物質の
リスクをどう考えるのか、筋の通った説明をする必要がある。
鶏肉が大嫌いで臭いをかぐのも嫌がる子どもが、地鶏ならOKに、
普通のお店にあるニンジンはいがらっぽい青臭いにおいがしてえぐいような苦い味がするが、
おマチのニンジンは甘くていい香りがして果物みたい。
山岡:子供は偏食なのではなく「正しくない食べ物を拒否する鋭い味覚を持っていた」だけ(9)
論点9.一般の野菜より、有機・無農薬栽培の野菜は美味しい
×
さらに昔とは大きく品種が変わっている。
(いずれにしても、真剣に有機栽培に取り組んでいる農家は、組織的に科学的な
研究を重ね、土壌分析の結果によって肥料のバランスを変えるなど、大変な努力
をしている。基本の肥料が「肥料」で化学肥料のような成分バランスのコントロールが
困難で、収量に大きな影響を持つようだ。
有機栽培農家のレポートを読むと「なかなか作物が育たなくて困難の連続」という話ばかり。
「子供の味覚バンザイ」的な話はあまりにも安直
→この話題は、[22巻 - 韓国食試合 (1989年) 1.食品成分表の怪]
でも指摘されているけれど、同じ品種でも野菜の味と栄養素は旬(季節)によって大きく変動する。
(「ほうれん草」のビタミンCの季節変動は8倍にもなる)
同じくほうれん草のビタミンCは、収穫から日数がたつと減少し、7日後には55%まで減少する。
輸入野菜の栄養価は、それだけで半分になっていてもおかしくないのである。
このようなわけで、平均的な実力として「有機・無農薬栽培の野菜が美味しい」とすれば、
それはローカルな流通路で自然の旬の時期に出荷される、という理由が支配的と思われる。
もっとも、「日経レストラン」2006年10月号
「新・何でも実験隊/有機野菜VS普通の野菜(119p)」
で有機栽培農作物と通常栽培農作物の味比べ
をしたところ、通常栽培農作物の方が美味しいという結果が出てしまった。という話も有る。
「普通のお店にあるニンジンはいがらっぽい青臭いにおいがしてえぐいような苦い味がする」
などと言っているが、事実は逆転していて
「昔のニンジンは青臭かった」が「現在の品種は甘い」と言うべきだろう。
作者の心情的には「今は旨い有機無農薬野菜を食べているけれど、農薬バンバン使用していた
時代に食べたニンジンはまずかった」という記憶があるのだろうが、事実は「品種が変わっている」
というだけの事なのである。
これは昔から無農薬の家庭菜園(農家の自家用)のニンジンを食べたことのある
田舎暮らしの私の経験に照らしても事実。昔のニンジンは腹の空いた子供がおやつに
失敬しても後悔するくらい青臭かった。現在の品種はサラダで食べても旨いように
品種改良されている。
「美味しんぼ」ではしばしば関係者を畑に連れて行き、その場で生の野菜を食わせる
というデモンストレーションを繰り返しているが、そういうシチュエーションなら
「なんだか美味しい気持ちになる」のは雰囲気に酔っているだけなのではないか。
各国の研究機関で「農薬の使用の有無で野菜の栄養素に変化が無い」という
報告が続いている。
2005年、近畿大学の森山博士らの実験によれば、「無農薬栽培りんご」は、通常のりんごの
最大5倍もアレルゲンを多く含んでいることが判明した。りんごは「すす班病」の病原体に
反応して天然農薬を増産している可能性が大きい。という。
漫画が描くように「素朴なばあちゃんのセミプロ農業」で農家の生活は成り立たない。
つまり、本当の有機栽培は科学である。)
作物自身が「生きるか枯死するか」の境をさまよっているような状況と、
「植物本来の活力で美味しい作物が収穫できる」という謳い文句のあいだに、
大きな隔たりを感じる。
最近、農薬や合成保存料の害などが人々の意識から遠ざかっているが、次の世代のため
農薬、除草剤、添加物を無くす努力をしなければならない。
ということで、今回はデータも無い印象論に終始して、
双方とも極端かつ感情的。社会派ぶりっ子の手抜き回。
近年では農薬&保存料の問題より、むしろ食品の安全情報に踊らされる消費者をターゲットにした
「偽装オーガニック問題」みたいな話題のほうが頻繁ですね。
参考:農薬ネット
生鮭…白 vs 赤、
生鮭vs新巻鮭、→ほとんどの人は「見た目の良いもの」を選ぶ。
日本で一番多く取れるのは「白鮭」
婚姻色を発していない沖合いで取れた鮭を「銀毛」と呼ぶ。長旅で疲れていないので体は丸々している
(こちらは高級品)
河口にたどり着いて赤黒いマダラ模様の婚姻色になったものを「ブナ」と呼ぶ
去年は取れすぎで養殖のエサにするほどブナが捕れたのに、外国から24万5千トンもの鮭を輸入している
タスマニアの鮭は寄生虫が居ないので生で食べられる
輸入鮭に人気が有るのは「脂がのっているから」
霜降り肉同様、日本人の「脂信仰」は問題だ。日本人は「赤身の旨さ」を知らない。
マグロのトロに関しては「酢飯との出会い」
が無ければ有り得ないと思うので「赤身の旨さ」を知らないというよりは「寿司屋の手柄」かと。
「牛肉」については、確かに「上手く焼いた赤身のステーキ」は
極上の旨みがあるが、それが一般化していないのは、食文化が浅いからか仕方がない。
しかし「独自の牛肉文化」
が日本で育ったと考えることもできます。外国人だって和牛の旨さは絶賛しているし。
輸入鮭の30%は養殖で、エサの調合によって脂肪分をコントロールできる。
養殖サケの中にはエサにエビの殻を混ぜることで鮭の身を赤くしているものもある。
※まとめると、身が赤く美しくて脂が乗っているので、
輸入サケには人気があるが、国産モノ(特にブナ)は値崩れするほど獲れて安価でも人気がない…
ということですね。
寿司屋で「トロサーモン」は人気メニュー。しかも国産は寄生虫のリスクがあり
生では食べられないから外国産以外考えられない。これは「別種の魚」と言ったほうが
良い。
寿司には脂が乗っているほうが旨いけれど、切り身の「塩鮭」となると、
白ザケの方が旨い。要するに「調理法ごとに適した種類がある」ということで、
輸入サケを排除するような考えには問題があるのでは。
しかし捨てる云々以前に問題の「ブナ」というものを店頭で見たことがない。
色々調べると、「婚姻色」の出ているブナは大漁とか関係なくほぼ「市場価値が無い」
ということで流通しないのが当たり前らしい。もったいないので加工食品として
研究はしているらしいけれど。
獲れすぎて困るくらいなら自然に産卵させてやれば良いと思うが、日本の川は護岸工事で鮭の産卵に適した
環境が失われている。
※産卵して死に下流に流れ着いたサケが大量に腐敗してたいへんなことに…
というニュースを見たこともある。本来なら川辺の野生生物のエサになって生態系の中で循環
するはずが、人間が一方的にサケだけを放流して楽しんでいるからそんな事件も起こる。
新巻鮭は塩分は昔と違って甘塩のものもあるので高血圧に悪いということはない。
保存食としての機能を喪失していると思うのだが…
できる『美味しんぼ』 - からから亭 |