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オーストラリア紀行

第五部:シドニー編
  1. ちょっとSFな感じ
  2. お手軽市内観光
  3. オペラ・ハウスの秘密?
  4. 朝のオーストラリア
  5. オーストラリアの魅力

ちょっとSFな感じ
帰りは、飛行機の関係でシドニーに一泊しなければならなかった。 昼すぎにハミルトン島を出発して、ブリスベンを経由し、シドニーに着いたのは 夜の8時ごろだったろうか?宿についたら、一休みして夕食を食べがてら、 市内観光に出かけた。
シドニーはかなり南なので、気温も今までに比べてずいぶん低かった。 市内の移動にはシティ・レールという 地下鉄が走っていて便利だ。切符の自動販売機は、日本のものとは違って、 行き先などのボタンを押すと金額が表示されるので、そこで初めてお金を 入れるようになっている。 ホームに降りていくエスカレータはどこか不思議な雰囲気があって、 ちょっと古いSFの世界に来たような感じがした。列車は2階だてで 大きなドアが印象的だった。都会の地下鉄らしく落書きなどがあり、 夜なので鉄道警備の人が乗っていた。ホームにも警備の人が乗る車両の止まる 位置に印がつけてある。まだ、人も多い時間だったのでそんなに治安が悪いという 感じはしなかった。

お手軽市内観光
とにかく、シドニーではもう夜だし時間がないので、お手軽な市内観光をした。 とりあえずシドニー・タワーに登って みることにした。ここからは、シドニーの街が一望できる。無料の双眼鏡が 一定間隔で並んでいて、自由に見ることもできる。シドニーの夜景が360度 広がっていた。
次に中心部を一周するモノレールに 乗った。切符を買おうとして、自動販売機にコインを入れると、なぜかコインが 出てきた。しかも、枚数が少ない。良く見るとそれが切符代わりのメダルだった。 このメダルも5秒後には改札口で飲み込まれてしまう。モノレールは ぐるぐる回っており、どこまで乗っても同じ料金だから、それで問題ないのだ。 しかし、どうも手持ちぶさたで納得がいかない感じだった。
モノレールを意味もなく一周した後、夕食を食べにオペラ・ハウスの見える レストランに行った。ここのウェイターは英国紳士風のきどった感じの風貌を しているのに、なぜか妙にノリが良く、ひょうきんだった。料理を持ってくる とき、ちょうどレストランの横を音楽を鳴らしながら船が通った。それに合わせて 鼻歌まじりで料理を持ってきた。コショウも半分踊りながらふりかけてくれた。 その容器も大道芸のように投げてみたりした。しかし、それはぎこちなく 見てる方がハラハラするくらい、とってもへただった。しかし、本人はなぜか ご機嫌だった。

オペラ・ハウスの秘密?
食事の後、オペラ・ハウスを近くまで 見に行った。ちょうど催しが終わったところらしく、帰る人が大勢出てきていた。 それに逆らうように歩いて近くへ来たときにはほとんど人影はなかった。 近くで見るオペラ・ハウスは巨大でとても迫力があった。それはきれいに ライトアップされていた。見上げると、何やら雪のようなものが舞っている。 それはライトに集まった沢山の虫が飛び交っているのだった。そして、 さらに良く見ると、白いオペラ・ハウスの壁面には、無数の虫たちがうごめいて いた!かなり、気持ち悪い感じで…。というわけで、夜のオペラハウスは 近くで見ない方がいいかもしれない。でも、不思議と地上には虫はいない。 地上のライトを暗めにして虫が来ないように工夫されているような気がした。
対岸には、ちょうど、ハーバー・ブリッジ が見えた。これもきれいにライトアップされていたが、その上空にはやはり 何か飛んでいた。光に集まった虫たちと、それを餌にするコウモリたちだった。 オペラ・ハウスといい、ハーバー・ブリッジといい、ちょっと見ては いけないものを見てしまった感がある。しかし、「それが真実の姿というものだ」 と、変に納得してそこを後にしたのだった。

朝のオーストラリア
翌朝は早く起きて、フィッシュ・マーケット に行くことにした。フィッシュ・マーケットまではタクシーを 拾っていった。道路は朝のラッシュで、渋滞するほどではないが、 なんとなく混んでいた。今までいたリゾートとは違い、都会の、いつもの 木曜日が始まろうとしているところだった。
ところで前の晩に、かなりいやな夢を見た。それは、休暇を終えて久しぶりに 会社に出て行き、みんなにプレッシャーを受けるというものだった。 そのことを友人Sに話すと、彼も同じような夢を見たと言っていた。 そういうわけで、最後の日は妙に現実に引き戻される日となった。
途中で、信号を磨いているおじさんを みかけた。信号といえば、オーストラリアの歩行者用押しボタン信号は、 ちょっとおもしろい。普段はボタンのあたりがピッ、ピッと鳴っていて、 信号のある位置を自己主張している。そこで渡ろうと思ってボタンを押しても しばらくは何も変化しない。「あれ?こわれてるのかな?」と思っていると、 10秒くらいたってから急にパキュン!と鳴って、青に変わり、 テケテケテケテケと鳴り始める。まるでせかされているような感じだ。 青信号の時間はとても短く、道を半分くらい渡ると、もう赤信号が点滅を 始めます。そして、やっと道を渡りきったときにはもう赤信号になっている。 お年寄りなどは、あの時間で渡りきれるのかちょっと心配な感じがした。 それにしても、あのパキュン!テケテケは何度聞いても変な感じだった。
フィッシュ・マーケットには、巨大な電子ルーレットのような機械のある せりの会場があって、まだせりが行われていた。マーケット内の店には そこから仕入れたばかりの新鮮な魚介類が豊富に並べられていた。しばらく、 見て回ったあと、そこで軽く朝食を食べてホテルに引き返した。帰りは途中まで 歩いてシティ・レールに乗った。 その道の途中で、テレビか何かのドラマの撮影 が行われていた。街の一角の建物の中で撮影されているようだったが、 周りにもスタッフがあふれていたのですぐわかった。建物の裏の方では、 台本の読み合わせをしているらしい俳優たちもいた。しかし、人だかりが できるわけでもなかったので、有名人ではないのかもしれない。または、 都会のよくある風景として、通行人たちにとっては特別、めずらしいものでは ないのかもしれない。
こうして、オーストラリア最後の朝を楽しんだ後、昼前にはもう日本へ帰る飛行機に 乗っていた。機内の映画は、まだ日本ではロードショウ前の「トゥルーマン・ショウ」 をやっていた。トゥルーマンは平凡な日常から外の世界へ飛び出すが、僕は ちょうどその平凡な日常へと戻るところだった。

オーストラリアの魅力
オーストラリアの魅力を一言で話すことは、もちろんできない。
それは、料理がおいしいことだったり、人々が気さくなことだったり、 自然があふれていることだったり、住みやすいことだったりする。 それについて少しでも何か書いてみようと、今回の旅行記を書いてみた。 しかし、今回のわずか10日あまりの滞在で、見たり聞いたり感じたことは、 そのうちのほんの一部にすぎない。また、大部分はリゾートにいたので、 快適な環境はある意味であたりまえのことなのかもしれない。それでも、 旅行に出かける前と後では、自分の中で全くイメージが変わっている。
僕が海外旅行をするとき、実は最も興味あることは、その国の 文化だ。 といっても重要文化財や遺跡などでなく、実際に毎日生活している人々の 中で生きている文化にとても興味がある。それは、日常生活で、何を考え、 何に気を付け、何に悩みながら生活しているかというようなことだ。
クランダのホテルで気球ツアーを申し込んだときのツアーデスクは、70歳 にもなろうかというくらいの、おばあさんだった。彼女は僕らのよくわからない 英語を聞き、ツアー会社に問い合わせたりしてくれた。料金の計算のときも、 何度も計算しなおしたりして、今ひとつおぼつかない感じだったが、それでも 別にいらいらさせられるようなことはなかった。それは精一杯、彼女なりに やってくれている感じがしたからかもしれない。 ちょっとした受け答えの中にもその人柄や考え、気遣いのようなものが 現われるのを感じるとき、妙に安心したり、心配になったり、親しみを憶えたりする。 それは既に旅行の醍醐味と言える。
シドニーのタクシーは、それまでに乗ったものとは違い、ドライバーを保護するための プラスチックでコクピットが完全に囲まれている。料金を払うときも、手渡しはできず プラスチックの横についた回転式の小箱を経由して支払う。おつりもそこからもらう。 治安の良くない都会ならではの工夫とはいえ、かなり違和感がある。 しかし、それもまた文化だと言える。同じオーストラリアでも田舎と都会では 文化も違うということだ。
そうした日常の細かな発見をすることで、日本で当たり前だと思っていることが そうではないということを実感として感じることができる。そうして、日本や 日本人としての自分自身の良いところ、悪いところが再発見できる場合もある。
僕にとっての国際化とは何か?
それは、英語をうまく話せることでも、レストランでスマートにチップを 渡せることでもない。また、政治や外交に詳しいことでも、そのどろどろした 駆け引きの力学に詳しいことでもない。
ただ、より多くの人々と関わって、彼らを理解し、また逆に理解してもらうことだ。 理解するというのは、何が共通点で、何が違う点かを知ることから始まる。 知ることは感じることから始まる。
そしてそれは、新たな旅から始まる…。

〜おしまい〜

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