イスラエルの試練と回復の新世紀(2)

横山 隆

「あなたの民に対して巧みな謀をめぐらし あなたの秘蔵の民に対して共謀しています。
彼らは言います「あの民を国々の間から断とう。イスラエルの名が 再び思い起こされることのないように」と。彼らは心をひとつにして謀り あなたに逆らって、同盟を結んでいます。」
(詩83:4〜6)

詩編83編でアサフは、終りの日に国々が"神の民の地"を奪おうとする謀略について預言しております。アサフは、東西南北から反イスラエルに組する連合体が悪しき策略をもって、イスラエルを取り囲むと預言しています。詩編83編7節〜8節に記載されるエドム人、イシュマエル人、モアブ人、ハガル人、ゲバル人、アンモン人、アマレク人の子孫は、イスラエル国家の東に位置しております。2つの民族エドムとイシュマエルは、混血して今日のアラブ、イスラム民族の祖となっており、南に移住してアラビア半島に、イスラムの本拠地に定住しています。イスラム世界の頂点に立つイシュマエル人こそは、イスラム教の中心に位置する民族です。裕福な産油国の中でサウジ・アラビアは、過去1948年、1967年の中東戦争で、モロッコやオマーンを含むアラブ連合体を後方支援してイスラエルと戦いました。また東に位置するハガル人、ゲバル人、アマレク人の子孫たちは同じ地域に定住して混血してきました。アンモン人の子孫は、現在のヨルダン王国に居ると言われています。ペリシテとティルスの住民は、聖書時代から地中海を中心とする海洋民族であり、現在も同じ場所に定住しております。聖書時代にティルスは、フェニキヤの都市を支配していました。これらの民族は現在レバノンに住んでいます。南レバノンは、1970年以降アラブ、イスラエル紛争の激戦場となってきたのです。

パレスタイン

パレスタインという語は、ユダヤ人の帰還する地がシオンという語で呼ばれることがないように、古代ローマがこの言葉を用いたことが始まりでした。PLOの指導者ヤセル・アラファトはパレスタインの町々の中に権力の中枢をおいておりますが、この中にガザも含まれています。今回のエルサレム紛争の中心に位置して、イスラエルに戦いを挑んでいる古代ペリシテ人の姿が、ここにはっきりと写し出されております。(詩83:8) パレスチナ人という言葉は、古代よりイスラエルと戦いの矛先を交えたペリシテ人からきているのです。1948年の独立戦争そして1967年の六日戦争の時、パレスチナ・アラブ連合軍の中心としてイスラエルと戦いました。パレスチナ人は再建されたイスラエルに対し、この50年間イスラムの旗印の下、ジハード(聖戦)を挑んできました。ゴリアテ(ペリシテ人)がダビデと戦ったように、ペリシテ人たちは巨大なアラブ連合軍を束ねて、イスラエルに対し幾度となく海の藻くずとしてしまおうと躍起になってきました。アサフはこれら古代民族の中に現代のイスラエルとペリシテ人の宿命的対決の構図を鮮明に描き出しております。

「アッシリアもそれに加わり ロトの子らに腕を貸しています。」(詩83:9)
力あるアッシリアについては…。ロトの子ら(創19:38)、すなわちモアブ人とアンモン人の子孫たちは、イラン西部、トルコの一部、シリアの大部分エジプトのナイル川流域などに定住しており、今尚その姿を見出すことができます。その首都ニネベは、チグリス、ユーフラテス流域に位置する現在のバグダッド、すなわちイラクを指しております。1948年、1967年の中東戦争で、ロトの子らの末裔に当たるヨルダンとシリアを支援してイスラエルとは敵対してきました。これらのドラマに登場した俳優たちは中東戦争の時にのみ登場した後、舞台を下りたのでしょうか。

アサフの預言的歌

詩編83編に記載されたアサフの預言的歌は必ず起こると考えられます。なぜなら、1948年と 1967年に起こった二度の中東戦争は、エジプトをリーダーとしアラブ諸国が団結したいきさつがあるからです。詩編83編に記載された国々のリストの中にエジプトはでてきません。すなわち過去における中東戦争を指してはいないのです。アサフは、終末時に起こるであろう軍事的陰謀を83編に記しました。この詩編83編と明確にリンクしているのがゼカリヤ12章です。ゼカリヤは、イスラエルに敵対する国家群となるのは、2つであると預言しました。

1. 周囲の国々(ゼカ12:2)
2. 地のあらゆる国々(全世界)がエルサレムに立ち向かう(ゼカ12:3)

神の時計

詩編83編はイスラエルにとって21世紀に対戦しなければならない主要な国家群を預言しております。(※シリアは近未来、イスラエルを脅かす敵対国家として交戦する(イザ17章。エレ49:23〜33)と考えられます。)
エルサレムが、イスラエル国家の所有として旧約聖書(タナッフ)に明記されている箇所は、70箇所あるといわれていますが、イスラムの経典コーランにはエルサレムという名がただの1個所もありません。マホメットはただの一度もエルサレムを訪れたこともなく、エルサレムについて夢の中で、メッカの神殿ともう一つの神殿が見えたとコーランの中に記されている"Night Journey"から17世紀に、この神殿をエルサレムと断定したいきさつがあるのです。

「彼らは言います。『神の住まいを我らのものにしよう』と。」(詩83:13)
神殿の丘がパレスチナの自治管理下におかれたことでも分かるように、聖なるところは、常にサタンによって歴史的に、踏み荒されてきました。最近の情報では、神殿の丘に建つ黄金のドームとエル・アクサ・モスクの他に第3のドームを建設しようとする計画があると言われています。今正に、時計の針は深夜を指しており、暁の黎明は間近です。いちじくの木であるイスラエルが短針であるとするならば、エルサレムは長針を示し、さらに神殿の丘は秒針を指し示しており、今こそ神の国の非常時なのです。単なる国家間の紛争を超越しています。永遠の神の国が樹立されることを妨げるサタンの戦略が、組織を上げて全面的に動き始めたのです。

「立て、宵の初めに。夜を徹して嘆きの声をあげるために。主の御前に出て 水のようにあなたの心を注ぎ出せ。両手を上げて命乞いをせよ あなたの幼子らのために。彼らはどの街角でも飢えに衰えてゆく。」(哀2:19)
さあ今こそ、かつての預言者たちがまたアサフがそうしたように、神への信頼に基づく信仰によって共に祈ろうではありませんか。

「わたしの神よ、彼らを車の輪のように 風に巻かれる藁のようにしてください。火の手が林を焼くように 炎が山々をなめるように あなたの嵐によって彼らを追い あなたのつむじ風によって恐れさせてください。彼らの顔が侮りで覆われるなら 彼らは主の御名を求めるようになるでしょう。」(詩:83:14〜17)

2001年4月JMFニュースレターより