本-開旧友との再会と、感激の至福の音楽会本-開

「ウィーン八重奏団」

5月15日は新緑の中、春念仏法要を盛大に厳修し、寺務処理も残し忙しい翌日、北九州・名古屋・広島公演の為に広島のホテルに3日間滞在している留学時代の親友と昼食を約束していたので車で高速を飛ばしました。山陽道の山並みは新緑に覆われ、目に青葉忙しい寺務の保養になりながら正午過ぎにホテルに到着。30年も続く私との交流で大の日本通になったウィーン・フィルのコントラバス奏者を車で30分程の郊外にある三滝寺へ案内し、滝を散策した後、山内にある茶屋で名物の煮麺とおむすびを新緑の薫風の中で静かに食べました。

サガト氏は心臓病を患い術後であったため、心配して会いに行きましたが、元気そうで安堵しました。ホテルに送り届けて、その足で帰宅する予定でしたが、リハーサルでバランスを聞いて欲しいと言うので、演奏会場でゲネプロを聞きました。ウィーンフィルの首席奏者達の熱心なリハーサルを久し振りに聞いて、今更ながら音楽の厳しさを思い出しました。リハーサルが終わる頃、梶本音楽事務所のマネージャーが招待券を持って私の座ってる席まで持ってきてくれたので、結局、本番も聞きました。

モーツアルトのディベルティメントに始まりクラリネット五重奏、後半はシューベルトの八重奏曲と言う、ウィーン八重奏団伝統のレパートリーをゆっくり堪能して聞かせていただき、時が過ぎるのを忘れる至福の一瞬でした。現在のメンバーは私が留学時代の同期や音大アシスタント教授が中心で、ボスコフスキー兄弟が創設した時代から世代交代を何度も繰り返していますが、ウィーンフィルよりもむしろ伝統の音色を残してるのがこの八重奏団だと言えます。ウィーン独特の甘く柔らかいサウンドと高度なテクニックを音楽の流れに自然に使いこなす余裕のアンサンブルは筆舌に言い表しようのない心地よい音なのです。思えば、近年コンサートを聴きに行ったのは2年振りで、やはりウィーン八重奏団の日本公演の時でした。忙しく寺務に追われる日々に、親友のお陰で毎回招待券を用意して頂く光栄は将に神様か阿弥陀如来の救いとしか言いようがありません。

実は、ウィーン留学時代も長い行列を何時間も並んで僅かな枚数の立ち見席を買わなくては聞けない当時の名指揮者が振るウィーン・フィルの定期演奏会も団員の家族にだけ用意される招待券をいつも私に譲ってくれたのです。お陰でウィリー・ボスコフスキーがシュトラウスの様に弾き振りする最後のニュー・イヤー・コンサートも翌年始めて賛否両論でフランス人のマゼールが指揮したニューイヤーも、ベーム、カラヤン、ヨッフム、ショルティー、アバド、ムーティー、等々、大指揮者達を招いたウィーンフィルの定期演奏会の総てを特等席で聞かせてくれたのです。今日までの私の音楽観を大いに影響された最高のプレゼントでした。だから、前住職と交代して責務に努め海外に行けなくなった私は、どんなに疲れていても、日帰りで600キロを運転しても、来日公演に来る旧友に会いに行き、ただただご恩に感謝する気持ちを届けたいと思うのです。    合掌 2005.5/16

教信寺貫主:長谷川慶悟=音楽家:長谷川悟

朝の法話へ戻る
本-開ご感想書き込み本-開