本-開平成17年残雪から春彼岸の草花開花写真報告シリーズ本-開

「ヒマラヤユキノシタ」(5)

今朝も再び寒の戻りです。正月から毎朝6時の鐘突と境内諸堂・石仏参拝を続けて80日になりますが、今年は20年ほど前までの通常の冷え込みが身にしみます。去年までが温暖化の影響や上空のジェット気流から海流の異変により温かすぎたために寒いと感じるのです。気象だけでなく、すべての人間の感覚は常に経験の記憶により、比較して判断するのですね。これが重要でもあり、経験不足からの判断は失敗や危険を冒す事にもなります。

だから今日でも砂漠やジャングル、海洋や山岳地で暮らす少数民族は、長老を大事にし、長老の意見を尊重し、年功序列の秩序を自然と身につけ平和に暮らしています。

今日紹介する花は、寒い庭先で早くから花を咲かせて楽しませてくれるヒマラヤユキノシタです。雪の下と言うぐらいですから、寒さに強いのですが、それも最高峰のヒマラヤが冠についてますから、将に高山植物です。普通のユキノシタはもう少し後で紫の花をつけます。葉は繊毛がついていますが、天ぷらにすると美味しい食用でもあります。母がよく春をつげる旬の精進料理で天ぷらをしてくれました。

菜の花、ゼンマイ、タラ、ウド、フキノトウ、ユキノシタ、赤いツバキの花まで様々な庭の植物を天ぷらで食べさせてもらいましたが、このユキノシタとフキノトウは大好きでした。これを食べると春の味覚が舌にひろがり、現在のような豊富な食材が無かった頃の貧乏な食生活でも幸せになりました。もうすぐ次のシーズンはタケノコと山椒の葉の木の実合えが待ち遠しく思います。 合掌 3/20(彼岸中日)

 

「寒アヤメ」(4)

こんなに寒い今年の初春に境内片隅で紫の花を咲かせる為に、参詣の旁々で花に気が付いた人は、何という花ですかと尋ねられます。アヤメだと答えると、こんな時期に?こんな乾燥した土に?と不思議がられるのです。

そう言う厳しい環境でも育つ品種がこの「寒アヤメ」なのです。索漠とした昨今の世情の中、悪い誘惑に溢れる都会、潤いのない生活、お金が至上主義の社会、様々な自己の利権の為にののしりあい・足を引っ張り合う醜い人間社会、そんな社会にも純粋な心で卒業して新しく社会人になる人たちもこの季節多くいます。

厳しい環境にも凛と「寒あやめ」のような可憐な花を咲かせて、悪い環境に染まらず、いつまでも自らを尊び他をも尊び嘘をつかない人生を送ってほしく祈ります。合掌3/19(長女の卒業式に)

 

「沈丁花」(3)

中国原産と言われる沈丁花はピンクと白の花を咲かせ、なによりも開花時期には甘い香りを漂わせてくれる低木ですので、庭先に植えられます。何度か朝の鐘突や日中の庭掃除でもその香りに感動した事をお伝えしましたね。

挿し木でも意外と強く成長してくれるので旧家や園芸好きの主人の庭にはよく見かけるポピュラーな庭木です。ところが、数十年も毎年花を咲かせて楽しませてくれていても急に枯れてしまうこともあります。

原因は良く分からないのですが、やはり植えられた土地の肥料から日照や風当たりの負荷によるものでしょう。植物は、一度根を生やすと生涯、其の場所から自ら引っ越しはできません。その場所でどんなに環境が変わろうとも、じっと我慢して静かに絶えながらも可能な限り花を咲かせ健気に香りを放つるのです。そして逃げ出すことなく、その土地の浄化に一生涯を捧げ環境を守ります。

動物の場合はその環境が不適切になったら汚すだけ汚した後、新たな環境を見出して引っ越し移動します。しかし、動物が植物の果実や葉や根っこ食べてウンチを地面に落とした汚物すらも肥料に消化しきれず排泄された果実から目を出し再び地球環境浄化をしながら成長して動物を養う植物はなんとも慈愛と包容力のある生命でしょうか。

植物は動物に果実や球根、茎や新芽を食料に与えながらも自然界のみならず人間の手も利用して自らの子孫繁栄を営んでるところを考えると、植物は或意味では、自由気ままに勝手に生きる動物を意のままに支配してるのかもしれませんね。逆に言えば動物は植物によって生かされてるのです。 合掌 3/18(雨上がり)

 

「水仙」(2)

昨日は春の日差しの温かい一日かと思えば、今朝は雨です。寒暖を繰り返し春爛漫を迎えるまでにも、様々な花が順次境内や庭に咲いて、孤独な毎朝のお参りを楽しませてくれます。もっとも早くから咲いて長く今も慰めてくれるのは白く可憐な花、水仙です。

日本古来の品種でなく水仙も地中海沿岸ヨーロッパよりユーラシア大陸、中国を経て日本に伝わった花です。西日本中心に全国に多数分布していますが、有名なのは淡路島の三原郡南淡町の黒岩水仙郷です。淡路島最高峰の輸鶴羽山山麓から紀伊半島の大阪湾に向かう斜面になんと500万本を超える大群生が大迫力です。是非、明石大橋を渡って花と温泉の島、淡路島を周遊し、特産淡路牛のステーキとタマネギサラダを食べた後、夕暮れ時の帰りは岩屋から明石までタコフェリーで海上から明石大橋を見上げてご覧ください。これも人工美の夜景が自然美の海に映り、夜空の星と織りなすパノラマは絶景です。昔は何度か往復しましたが、これは本当にお薦めの周遊コースですよ!

しかし、黒岩山水仙郷も素晴らしいですが、境内中庭にひっそり数十本がまとまって咲いてる様子は、可憐な一輪一輪が静かに寄り添う家族のようで微笑ましいものです。 合掌 3/17(雨、観音さん月参り)

 

「雪道の吊り橋」(1)

♪君の〜行く〜道は〜果てし〜なく続く〜♪ 

日本のグループサウンズ先駆け時代は日本フォークソング全盛期でした。その頃、流行った曲の歌詞の冒頭ですが、ご存じな方はその頃が青春時代でしたね。最近の流行歌も早口言葉の様な歌から再び♪一つに一つの言葉のメロディーの曲も復権してきましたが、昔の単純で美しい素朴なメロディーと歌詞は忘れないで残る物ですね。幼児期の唱歌もそうです。

この写真は眼下は渓谷の底、その先は滝が落ちる谷に架かる吊り橋ですが、雪に覆われて滑り落ちそうです。雪山の登山道や山里と生活道路となる道を歩くと、自然の地理を上手く利用して山肌を曲がりくねった歴史道をつけてるなと感心します。しかし人工の橋だけは最短距離で合理的に真っ直ぐ伸びます。橋を渡ると向こう岸は、また別の集落へと雪道が続くのです。

山里の集落でも、都心の人口密集地でも、人々の暮らしの数だけ生活スタイルが全く違い、通る道も違います。人生も勿論違い、それぞれの目指す目標も違います。しかし、先人達がつけてくれた道を、今誰もが自由に歩かせて下さるのです。

貴方は目標だけを見過ぎて、歩かせていただいてる貴方の選んだ道をつけて下さった先輩達の、道無き場所を開拓し後世の人々の為にも建設しようとした思いや苦労に気付かないで歩いていませんか?

足を踏みしめて人生を歩くと言うことは、目標を見失わないコンパスを狂わさず、周りの景色を楽しみ、道ばたの草花に癒されながら、道をつけて下さった先人達の苦労に感謝して、過去の偉人が歩いた足跡をたどりながら、貴方が選んだその道を歩き続けると言うことなんですね。

だから、前シリーズの楽器奏法の基礎も、奏法を伝える教則本も、貴方が選んだ道を築いてくださった道標であり、貴方が歩く道路そのものなんですよ!尊敬する師匠(先代)が付けた道が途切れて行き止まりその先の開拓がされていなければ、弟子(子孫)がその道をもっと先まで後輩(子供や孫)が歩みやすいように築くことが貴方(現在を生きる人)の使命かもしれません。 合掌 3/16

 

教信寺貫主:長谷川慶悟=音楽家:長谷川悟

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