その7
2001.08.07
Satori日記
音楽に国境無し
ザルツブルク近郊の高原の町Schladmingで開催された夏の音楽講習会から昨日8/6に帰国してきました。私のコントラバスマスタークラスの期間中に、デトモルト国立音楽大学ピアノ教授のミハエル・ケラー氏、ウィーン国立音楽大学ヴィオラ教授のシークフリート・フュールリンガー氏と重なり各国からの参加学生共々、多くの人々と交流を深めました。
そんな、人々との触れ合いが自然に出来たのは何故でしょう。それは、深い森から湧き出る清水が街に流れ、鱒が元気に泳いでいたり、小鳥達が森から街の人々に囀りに来たり、3.000メートル級の山頂からパラグライダーで飛行を楽しむ人々、何度もロープーウエイで登っては、マウンテンバイクで一気に駆け下りる地元の子供達。決してエンジンの爆音を立てないで、森の動物達を驚かせないスポーツを雄大な自然の中でマナーを守って市民は楽しんでいる。人にも大自然にも、気配りが出来ているこの国の人々は、やはり電気で増幅する楽器でなく、クラシック音楽をこよなく愛してやまない。そこには、本物だけが存在する価値を見出され、本物を目指す学生達を応援してくれる土壌があったからでしょう。
そんな環境のもとで開かれた講習会は、最高に幸せな贅沢な時間を過ごさせて頂いたのです。
日本の様な過剰な物のサービスは必要ない。ただ、美しい自然を何世紀も守りつづけながら築き上げた精神文化を、この先、何世紀も変わらず暮らし続ける欧州の田舎の街があることを知った学生は世界観が変わったでしょう。初めての海外旅行がこの街だった学生達は本当に幸せだったことでしょう。大都会では決して感じることが出来なかった最高の感性を自分の中に見出すことが出来たのだから・・・・・。
美しい大自然の景色と、決してその自然を破壊しないで共生する人間の生活。学生達の音楽に、この講習会で習得したした技術的な奏法以上に、欧州でも最も美しい大自然に溶け込んだ街並みでの2週間の暮らしが、帰国後、これからの樂曲の音色となって現れることを期待しています。
兎に角、コントラバスを通じて今回の経験が出来た感動は、言葉や人種や性別・年齢に関係なく、心の最も美しい重要な感性で受け止められた事こそ、音楽に国境が無いと言う由縁だね。そして大自然が育む人間の心の成長を、妨げるような日本の欲と利権の人間社会を清める音楽を奏でる様な人が、今回の参加者から生まれることを期待してやまない。