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基礎中の基礎(1)
それは姿勢です。伝統的な音楽や舞踏も、あらゆる武道やスポーツも、茶道・華道などの古来からの洗練された文化も、総てに共通して言える基本中の基本は、立っても・動いても・座っても・横になっても「背筋を真っ直ぐに伸ばす!」です。
地球上にアメーバーの様な生命が誕生してから数億年後、始めて脊椎を持つ魚に進化しました。それが動物総てに共通する背骨の先祖です。つまり背骨こそ動物の基礎をなす証なのです。霊長類はこの脊髄に頭や尻、手足が発達して自由に動かすことが出来るようになりました。その中でも人間は特別な能力を得たのです。
貴方が一流になりたいなら、頂いたこの特別な運動能力をフルに効率よく使いきり自由自在に手足を動かす方法を会得することなのです。その基本は、それらを支配しバランスを最小限で無駄なく最大限の効果を出すために、脊髄をしなやかに真っ直ぐにすることから始めることです!
昨年はアテネオリンピックに興奮しましたが、金メダルを取る選手は勿論、出場権を得た国を代表する選手は皆姿勢が良かったですね。また、プロ中のプロの野球選手、サッカー選手、ゴルフ選手で国際的に活躍する人は背筋の軸のバランスが完璧に取れています。音楽の世界でも国際舞台への登竜門、国際コンクールで優勝する若者に共通する事は、姿勢がいいことです。また高齢まで水準を維持して演奏できる音楽家も演奏する時はやはり姿勢が崩れていません。さあ、今日からでも、貴方も脊髄を意識して、頭と手足のバランスを取りながら歌って楽器を演奏する訓練を始めて下さい。またこれらは特別な人だけの基礎でなく、総ての人々の普段の暮らしにおける仕事や活動や休息の中で、背中を真っ直ぐに伸ばす事は最も大事な、脊椎動物共通の脊椎の由縁たるものなのです。 合掌 2/27
音感の基礎(2)
突然ですが、今、貴方が取り組んでる曲やエチュード、または音階でも、まず、声に出して歌って下さい。いまさらだと思わないで挑戦して下さい。歌う事が音楽の基本だからです。兎に角、声楽を目指してない限り美声でなくても結構ですから心から歌って下さい。但し、その時、始まる最初の音だけをピアノ等で正しい音程を正確に合わせ、後はガイド無しで最後まで歌いきってみなさい。そして、終わった最後の音をピアノ等で弾いてみて下さい。さあ、如何でしたか?音程がぴったり合った人は絶対音感もしくは相対的音程が完璧です。大幅に音程がずれてたり、全く違う調号まで狂ってたり、または、途中で歌えなかったり、つっかえたりして中断した人は、曲を演奏する上でもっとも大事な音感イメージが欠如していますから、音程を特訓する必要があります。これから気を付けてトライすれば必ず音感が身に付き、完全な音程と豊かな音楽性が貴方の演奏に加味されます。
厳密に言えばピアノは平均律、歌や楽器で独奏するときは準正調(第3音で移動ドのミ、第7音で移動ドのシを上行系は高め・下行系は低めの音程にする)ですが、そんな事より、弦楽器の人はしっかり指先で指板に穴が空くぐらい一点で押さえて楽器を芯のある音程で響かせなさい!そしてポジションの手の形を意識して音を出しなさい。出した音の音程を平均律のピアノの音程で何度も聞き合わせてください。次第に自分の頭に正しい音程が予期的に響き、曲やオケパート、エチュードや音階の音感が完全に近づきます。
絶対音感が無くても、相対的音感(ある音から1.2.3.4.5.6.7度.オクターブ.9.10度等の音の間隔の幅の和声的音程)が完成すれば、むしろオーケストラやアンサンブルで調和がとれます。しかし、コントラバスやチェロ、チューバやバス・トロンボーン、ファゴットやホルンなど、根音を演奏する人は、冒頭に述べた、揺るがないfでもpでも芯のある音程を出さなくてはいけません。何故ならあなた方が出した音を頼りに他の楽器が和声的に積み重ねる音程をとるのですから責任重大なんですよ!!! 合掌 2/28
「音程の基礎」(3)
私の寒行修行も2ヶ月過ぎ、今日から3月。残すところ後30日となりました!
さて、昨日、歌ってみましたか?最初の音から最後の音の音程のズレは確認しましたか?最初の音を声で調整することすら出来なかった!なんて言ってる人は完全1度とかオクターブ・2オクターブの音がとれてないのです。
例えばチューニングのAの音をオケではオーボエ、自宅ではピアノや音叉で合わせますよね。その音に自分の楽器の音を合わせるでしょ?しかし中学校のブラス全盛時代からチューナーの目盛りで安易に合わせる事になれてしまった人はいつのまにか耳でなく目でしか音程を合わせられなくトレーニングされてしまってるのです。逆に音でチューニングしていた人はいつのまにか耳の能力が開発され、どの音程も合わす力が身に付いています。まだチューナーに頼ってる人は補助として使い基本は耳で聞いて自分の頭にその音を響かせて自分の楽器をチューニングする癖を今からでも身につけなさい。
そうすると、完全1度4度5度、長短2度3度6度7度また増減音程の響き合う波長のうねりが頭に共鳴するようになります。特に弦楽器のヴァイオリン・ビオラ・チェロは隣同士の弦の開放弦の重音が完全5度ですし、コントラバス、ガンバ、ギターなどは完全4度です。先ずは開放弦での完全な音程の響き合う重音のうねりの特徴を自分の頭の中にも響かせなさい。
次は、その3度4度5度音程で、それぞれの一番簡単だと思う調での重音音階を弾いてみなさい!左手の指先を立て間隔を均等に弦を押さえると、弦楽器の人はこれだけで手の形が完全なポジションの形として完成されます。さあ、今日は重音音階に挑戦してみなさい!必ず新しい反省と発見がありますよ!!ファイト! 合掌 3/1
「力の配分の基礎」(4)
楽器を弾くのに力は必要ですが無駄な力は邪魔です。演奏者にとっては例え世界的ソリストでもこの「力の配分」に、いつも気にしながらトレーニングをしています。今朝は初心者に多い力の配分の大きな勘違いと、思うようにコントロール出来ない重大なミスを指摘します。
もっとも理想的な力(圧力)は、地球内部からの引力と貴方の体重です。ニュートン先生の理論を利用させて頂く事と、腕の筋肉は手首から指先を・肩の筋肉は腕を・背中の筋肉は上半身の重みをコントロールして力を配分します。しかし、それぞれが硬直し関節がブロックしてしまうと「無駄な力」となります。
例えば子供の頃学校や公園にある鉄棒にぶら下がった経験があるでしょ?その時、長い間最後までぶら下がる競争をしたとき、両手は真っ直ぐに伸びて指の第1.第2関節が丸くなりやがて握っていた親指が離れて最後に4本の指が残りますが体重を支えきれなくなり地面の砂場に落ちますよね。その、落ちる寸前が理想的な力の配分です。使ってる筋肉は指先を曲げて引っ掛かってるだけの力です。これが演奏するときの両手の指の働きに使えれば無駄がありません。勿論、指板や弓の毛箱でのコントロールはそれぞれの指先を鍛える必要もありますが・・・・・。
先ず、右手は大きな音量を持続して出す駒のすぐ上でffのロングトーン練習において、上記の力配分を意識してコントラバス奏者なら腕を真っ直ぐ肩から親指の先まで一直線に伸ばして引力が逃げないように、他の弦楽器奏者は肘から先を自由に動くように、指以外に無駄な筋肉を使ってないか確認しながら力の配分を意識しなさい。次に、弓の重みだけで指板よりにppでロングトーンしてみなさい。弓の重みを支える何グラムかだけの力で済むのに、腕や手首に無駄な力が入りガチガチに硬直してませんか?以上のffとppのロングトーンの練習で必ず力の配分に気が付きますよ!
左手は出来るだけ関節を丸く指先を立てて、正しい音程の針の一点をねらい、肩や背中の筋肉で鍵状の指先を引っ張り押さえる様に上半身で音程を押さえられるように意識しなさい。音階練習では次の音に変わるギリギリまでしっかり指を指板に圧力が加わったまま残し、次の押さえる音の指が移弦する場合は前もって昨日の重音練習の様に準備して押さえてなさい。かなりきつい練習ですが効果絶大です。さあ、今日も一日頑張って挑戦してみて下さい。合掌 3/2
「スピードの配分の基礎」(5)
駒の近くでffで弓先まで均等に圧力をプレスしてゆっくり弓を動かすのも、肩から(バイオリンは肘)振り抜くブレーキのかからないトップスピードのボーイングも、自由にコントロール出来なければ、様々な場面に必要とされる音色や音量に対処できませんし、音楽のエネルギーに貴方は唯うもれてしまいます。
重厚でエネルギーを込めたゆっくりなボーイングは(4)の力の配分を意識しなさい。今朝は躍動感溢れるスピードの早いボーイングの基礎を再確認してマスターしましょう。
メジャーリーグのバッター、国際大会でのゴルファーなど、玉を一点で捕らえて打ち返した時のフルスイングがホームランや飛距離を超えます。その時、バットや1番ウッドは既に頭の後まで振り抜かれた状態です。野球やゴルフの玉が音だと想像して、弓の根元近く1cmでffアクセント・スタッカートsffzを弾いて弓を水平に猛スピードで振り切ってみなさい!球が当たる瞬間と同じグリップのように、音を発音する瞬間を捕らえる為にフロッグをはさみ持つ指がしっかり瞬発力に絶えなくてはなりません。しかし、その握る力の為に腕が硬直したり肩に力が入ってると玉も音も遠くまで飛びません!この相反する原理を克服するために野球選手は素振りを毎日1000回、ゴルフ選手は打ちっ放し練習所で玉を1000発打つのです。弦楽器奏者も基礎練習に1cmの発音をフルボーイング(フルスイング)でダウンで500回、アップ500回毎日やってみなさい!貴方の発音の音は誰よりも大ホールの客席の一番遠くまで音量が減衰しないまま届くようになるでしょう!
また、逆に1cmだけけ弓をプレスして止めれば、バントヒットやパターゴルフの様に玉は確実な方向へ正確に地面に転がすことができます。弓の場合はインテンポの揺るがない8分音符の刻みや、絶妙のタイミングを立ち上げるテンポの変わり目の重要な音とか、自分のテンポ感を相手に正確に伝えるときは、この1cmの発音を1cmだけ弓を動かし圧力のかかったまま止める奏法が基本で効果的です。そのまま均等にダウン・アップを繰り返せば勇ましいマーチのリズムになり、バリエーションとして1cm発音してから弓を弦から離すと余韻が美しく響くワルツの頭打ちにも実践できます。上記の双方の奏法を同時に練習しなさい!これらは、本当に理にかなった音色と発音のエネルギー伝達方法の要なのです。3/3(雛祭り)
「心地よい音の基礎」(6)
良い音は漠然と千差万別のようですが、そうではないのです。生理学的にも精神的にも良い音は(1)誰もが感じ動物や植物や天体までもが心地よい音です。(2)それは自然界にある総ての音と、無限のイメージと想像力によって描かれた音、(3)そしてそれらを聴いて感動を積み重ねて経験してきた自己感性の中で洗練された音です。良い音は万国共通の神仏が人類に与え、それらを世界各地で歴史と文化の中で創造された最高の目に見えない世界遺産だと私は思っています。
人の耳に最初に無意識に聴いた音楽リズムは母親の体内で聴く心臓の鼓動のリズム。胃腸を流れる水の音。やがて自分の心臓の音が母親の動脈の鼓動とテンポが複雑なリズムを同調させて変わる心地よいリズム感を無意識に聴いてきたのです。そして何よりも驚くことに、世界の人類誰もが最初に、そして貴方もが発した産声は440Hrzの正確なAの音だったのです。ですから、誰もがリズム感と正確な音程を持って生まれてきてるのですが、余計な知性や情報を脳に蓄積しすぎて、本来持って生まれた能力を埋もれさせてしまうのです。
練習の基礎の基礎とは、誰もが兼ね備えたこれらの能力を思い出し、開発し、再発見して感動が感動のエネルギーに連鎖し、さらなるイメージに向かって自らがその音を出す!と言う思いがどれだけ強く持てるかによって、自分のテレパシーを他の人や生命に、依り良い音を出して伝えるのですね。
私は現在4匹の猫と生活を共にしています。たまに楽器を弾くと4匹とも集まってきてリトミック教室の様にコントラバスの音に合わせて走ったり踊ったり歌ったり、静かに聞き入ったりしてくれます。音が猫達にも伝わるのです。心を伝達するには、よい音でなければ聴いてもらえません。良い音にはクレッシェンドの目的地のffの音、ディミニエンドの先のppの音、吃驚させてこちらを向かせるppから突然のsfffzの音。心地よく眠らせる穏やかな体内で聴いた水の流れの様な音、宇宙から発信される周波数を超えた音。様々な音色は貴方自身の経験から生じ、演奏者は自分以外の総ての人々に想像できる最高のイメージのプレゼント(お布施)なのです。つまり、ほんまもんの「良い音を出す」と言う行為は、実はお釈迦様が説く「お布施」と言う心の原点と共通しますから興味を持って研究してみて下さい。合掌 3/4(雨)
「楽器本体を響かす基礎」(7)
もし、オケパートや独奏曲で開放弦の時だけ特別大きな音がすると思う人は、左手の音程を押さえるポジションの形が悪く、また指先の力が弱くて指板まで弦をしっかりプレス出来ていないのです。ですから押さえた音と開放弦で響き方が違うのです。
例えppでも正しい音程を押さえる一点の指先が、指板に穴が空くほど体重が乗っていなければ美しい楽器の響きは生まれません。この時、腕全体が硬直してはなりません。体重の瞬間移動がポイントです!基礎(4)で述べたように力の配分と無駄な筋肉を使わないで、背筋と腹筋に重点を置いて合理的に必要な力を使うのです。その体重の力を指先に伝えると、指が鍛えられれる人はしっかり音程を押さえられ、開放弦以上に響きの美しいppの音や、密度の濃いエネルギッシュなffの音が響き渡ります。
楽器の能力をフルに引き出してあげることが演奏者の勤めです。その努めが出来ていないのに楽器が響かないとか、悪い楽器だとか、安物のボロ楽器だとか文句言ってる人は、例え高価な名器や歴史的著名な作者の楽器を持っても、くすんで埋もれた醜い音しか出せません。本来どの楽器も楽器自体がもっと響きたいと思ってるし、奏者にどうしたら響くかを黙って教えてくれています。その事に気が付いていない初心者や音痴の人には逆に楽器の方が悪いと思われてしまって楽器が可哀相です。人間以上に楽器はデリケートで頑固で気まぐれで包容力があり演奏者を一番理解してくれています。貴方の恋人にも、一生の友にも、一番の理解者にもなってくれるのですから大事にして毎日向き合ってください。楽器が何が言いたいのか話したいのか伝えたいのか貴方も理解できるようになれますよ!
追伸。但し、この度の基礎シリーズを本当に正しく実践してるのに楽器が応えてくれないなら、それは本当に楽器が病気になってます。調子の悪い楽器は弦楽器専門(専門病院)の修理をしてる職人さん(主治医)に調整してもらいなさい。楽器本来の能力が発揮出来る健康な状態にしてもらえるでしょう。 合掌 3/5(曇り)
「急降下・急上昇する海鳥ボーイング基礎」(8)
さて、今朝は発音が無いのに音が響く、デタッシェのテクニックの基礎練習です。まずは今朝のタイトルにしてるイメージから説明しましょう。
水平線まで見渡せる大海原、遠く山が霞む大草原。これが指板の切れ目から駒の直ぐ上までの4本の弦の弓を弾く範囲だと思ってください。
次にカモメやペリカン、鷲や鷹の空中の鳥が弓だと思ってください。この時、右手の腕や肩は鳥が空中で静止してるような大空の空気抵抗の役目です。
水平線を泳ぐ小魚や、原野に顔を出したウサギやネズミが、天空から狙い澄まされる獲物(音)だと想像してください。鳥たちは急降下して嘴(クチバシ)が水面や地表にわずか擦れるまで降りて狙った獲物を捕まえると、一気に上昇して大空に舞い上がります。
その動きを弓で試してみなさい。角度を間違えると水面や地面に鳥たちは激突して即死ですから、鋭角に弓の毛が弦に的中してはいけません。例えばスローモーションで見ると弦に弓の毛が2本4本8本16本32本60本100本200本・・・と乗って音を鳴らし、入った角度と同じように弦から少しずつ急激に離れて、水面には波紋が地面には草が揺れ砂埃が舞い上がる様に、弦が震えて楽器に振動が残ります。
しかしスローもショーションで練習すると圧力を加えてしまうので、あくまでも弓のスピードは鳥や飛行機の滑降と同じようにスピードを落とさない事です。失速して墜落してはデタッシェの良い音になりません。
基礎4と5で述べた圧力の引っかかりの発音とは、まったく別物の発音と余韻が生まれます。違いは弓が弦に対して直角に当たり弓の毛全部使って引っかかりを作る肩の圧力と、今朝のは空中に腕がぶら下がってる様な肩の状態で、弓が弦に角度を付けながらやがて腕の重みが弦にのしかかり一瞬のうちに過ぎ去っていくスピードが命です。
肩の力が抜けるまでスピードはでませんよ!もし肩の力が抜けてもふにゃふにゃのままだとコントロールできませんから弓の軌道を正確に知らせる管制塔の頭を働かせて挑戦して下さい。また基礎の4.5のプレスの発音も直ぐに作り直せるようにして片寄らないで即座に柔軟になんでも自然の理にかなった奏法で対応出来る様になって下さい。合掌 3/6(鶴林寺真光院落慶式典参列)
「粘り強く吸い付く弓の基礎」(9)
様々なボーイングの基礎は両極端を究めれば中間色の幅も広がり豊かな音量音色の持ち主になります。
今朝は昨日とは正反対、粘り腰のテクニックの基礎です。(5)で1cmの発音を説明しましたが、その、発音を発音した音量のまま持続させるとffのロングトーンになりましたね。
しかし、一つの音だけの場合なら問題なくできても、音階的な音の移り変わりでポジション移動、移弦の動作が加わると、弓を返す瞬間、弓先や根元の弦から弓が無意識に浮いたり離れてしまったりするのが学生やアマチュアは勿論、プロオケ奏者でも多いのですから、それだけにエネルギーを意識して使わなければなりません。
例えば、楽譜を漠然と眺めて見ると何処の場所にエネルギーを注ぐか見えてきます。上行系の音符の並びはクレッシェンド、下行系の音符の並びはディミヌエンド、連続するパターンの和声進行の根音の支え、音階などです。
そこで「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シー・ドー!」と歌うのがベルカント唱法ですから、頂点の音を見つけたら、その一つ前の音を弓を返す瞬間まで途切れないでクレッシェンド・テヌート・エスペレッシーボで繋ぎなさい!世界共通の感動を揺さぶる魂の音となり、そして頂点でその感動を余裕を持って楽しませなさい。つまり、もっともエネルギーを注ぐのは、音楽的フレーズの頂点への最後のステップ「一つ前の音」なのです。登り詰めた最後のステップをしっかり粘り腰で地面(弦)から離れないで頂点に到達しないで、踏み外して転落したら怪我が多きですからね!
そこで、弓を返す瞬間も1cmの発音を持続させて次の音を捕らえるのです。弓先では圧力がかかりにくいので、特に腕を真っ直ぐに伸ばし、肘を外向けないで内側に回転させるようにすると肩からの体重の重みが逃げなく弓の毛が弦に吸い付く様になります。
また、もっとも大事な音を発音させるときはダウンが基本ですから根元から弾きます。その大事な音の前のエネルギーを注ぐ弓はアップで弓先から根元ギリギリまで運んできます。この時にこそエネルギーのロスをゼロにして弓を返す一瞬まで持続音でクレッシェンドを続けられることが一流の証となるのです!音楽的には当たり前の事なのに、あんがい弓では完璧に出来ない奏者が多いのですよ! 合掌 3/7
「シーソーする弓とスピッカート」(10)
またまた、両極端の奏法です。昨日は吸い付く粘り腰の弓でしたが、今朝は跳ねる弓(スピッカート奏法)の基礎訓練法です。
弓を持つ左手関節を自由にして、しかし重要なのは肩から「肘」「手首」「指関節」を抵抗に絶えられる強度を保ちます。もっとも合理的なのは腕を真っ直ぐにして肘を内側に曲がらないように練習をすると理解できます。一旦コツを覚えマスターして肘を曲げても出来る様になった人でも、もう一度肘を真っ直ぐにして基礎を確認してください。
次に、手首に余計な力が溜まってないか確認のためにも、弓の竿を支える一本の指先(ジャーマンは中指先・フレンチは親指先)を支点に弓先の重みを感じながら空振りでシーソーしてみなさい。できますか?
出来た人はそのシーソーの運動の中で例えば2番線のオープン弦に当ててみなさい。トン・トン・トンってな感じです。出来ますか?これは(1)弓の重みを感じる事と、(2)バランスを感じる事と、(3)落とすスピードと力によて跳ね返るバウンドをコントロールする事の重要な三位一体の理を身体で覚える為の練習ですから、それらを感じるまで延々と試してみなさい。
さあ、今度は弦に弓が落ちた瞬間に(5)でマスターした1cmの発音の為に指を使って弾いてみなさい。腕もやがて連動してついてきます。この時、弓が跳ね返るエネルギーが大きいと音を出す前に跳ねてしまってますね?
跳ねる事と弾く事は相反する様ですが、実はこの跳ね返る一瞬にも粘り腰の弓の運動が入りバランスよく相反する運動を連動さる事が重要なポイントなのです。この時(1)スピード、(2)圧力、(3)タイミング、の3原則が絶妙なバランスをコントロール出来るようになれば、例えばベートーベンの交響曲第5番のスケルッツォの様な重厚で躍動感あふれるスピッカートが可能になりますし、慎重にしかしリラックスして跳ねればモーツアルト作品で殆ど使う連続する8分音符のスピッカート奏法が完成します。
スピッカートも発音が命です。発音がクリアーになり、その発音した後、弦に持続して圧力がのこるか、徐々に抜けるか、弓から弦を離すか、跳ね返すか、の違いだけなのです。
勿論、発音にも色々あり前述の三原則の度合いが音色を左右しますが、躍動感溢れる演奏にはオン・ザ・ストリングもスピッカートも音を起こす「発音」から後の音の余韻の処理をどう響かすかがテクニックなのです。しかしそのテクニックも自分の中に絶対的なイメージが無ければ、伝授した世界最高水準正統的奏法も、宝の持ち腐れで、何の意味も無くなりますよ!合掌 3/8
「指板上の百足と猿」(11)
右手の基礎が続くと左手が疎かになりがちです。左指先関節がしっかり強くなってきたら、次は、百足(ムカデ)虫の様に弦を排歩く押さえ方でフレーズを弾いたり、サルスベリの木をツルツル落ちてくる猿の様に左手が弦を移動する押さえ方を意識してみましょう。
先ずムカデの押さえ方です。夏に干した布団や洗濯物を取り込むと大きなムカデが入り込んで吃驚したことがあります。観察すると百本も足はないですが、足が這う様に地面から足が離れる事がありません。つまり、指板にそれぞれの指がカギ状にムカデの足の様に接地して、弾いてる音を押さえたまま、次の音程に次の指が準備して押さえる事によってフレーズはつながり余韻が残る微妙で高度な連続性ムカデ運指が完成します。その形が正しいポジションとなり、例えば2楽章のゆっくりしたフレーズはより音楽的に歌えますし、スケルッツォやフィナーレの早いパッセージが難なく弾きこなせるでしょう。
次に完成したポジションの形のまま、跳躍する音程を捕らえるときに、猿が木を滑り降りる様にイメージしなさい。猿の両手は木の後まで廻って体重を支え、両足は木の表面をひっかいて登り降りの動力とブレーキになってます。つまり、ネックの後に廻ってる親指が猿の両手の役目です。2指から4指までが猿の両足でありムカデの足だとイメージすれば解りやすいでしょう!これでスルスルとポジション移動ができて、しかもネックや指板、弦から完全に離れてしまうことなく、しかもギリギリの余裕をもって目的地の音まで速やかに的確に移動できますね!しかし、左手がネックや指板からポジションの形を崩して離れてしまうと音楽がつながらなく生き生きとしたフレーズが生まれません。つまり左手は音楽(命)に連動する綱渡り木登りなのです!貴方はいつも「猿も木から落ちる」ばかりになって命(音楽)を落としてませんか?今朝は左手指の運びをもう一度確認してください。合掌 3/9
「効果と意識改革」(12)
基礎シリーズも12回目になりました。毎朝読んで実践に取り組んでいる人は少なからずも効果があることに気付いたはずです。読むだけでは理解できないし実践練習してないひとは修得はできません。このシリーズで伝授してることは自然の理にかなったあたりまえ事ですが、意外とうるさく指摘してくれる先生は日本では少ない様です。
もっとも大事な最後の砦となる苦労して修得した奥義を、自分を脅かすくらに上達した弟子や外部の人に教えない先生が殆どですから・・・・・残念。
しかし、この基礎シリーズでは向学心溢れる純粋な学生に惜しまず総てを伝授したく思っています。毎朝の内容は無理矢理おかしな換算すれば一回10万円以上のレッスン料を払う価値のある内容なんですよ。
さて、今朝は意識改革の内面性の話です。人の能力は限りない可能性を秘めていますが、近年、目標に向かって進むための情報量や迷わす物が溢れすぎています。人間の器を流しの蛇口の下に受けるボールだと想像してみなさい。大きなボール器も空にしてると水も一杯注がれますが、食べた食器や容器が積み重なってると水を注いでも直ぐに溢れてしまいます。容器が一杯だと溢れでるだけで受け止められないのです。だから、どんな料理の素材もいつでも入れられるようにいつでも洗ってすぐに使えるように置いておかなければ使い物になりませんよね?!だから心をいつも空っぽにして、いつでも最も大事な物を受け止められる状況にしておく必要があるのです。例えば座禅はその空(くう)の精神状態にする為の一つの理想的な修行です。
例え芸術の分野でも宗教の世界と雖も、生きるためにお金を得ることは必要ですが、儲ける事や収入を得ることが最終目的になり、純粋に芸術や神仏に向かい合う人間が極端に少なくなりました。プロ意識は大事ですが賞金や給与を得ることがプロの理想姿勢ではなく、やはり精神を捧げる事が本道のはずです。16世紀から20世紀後半まで、世界の歴史的楽界に名を残した作曲家や演奏者の目的は必ずしも100パーセント金儲けではなく、純粋に芸術に命を懸けて向かい合った結果、パトロンに崇敬されて莫大な援助を得たり、大衆から支援されて結果的に後から富を得たのです。また、終生最後まで金銭財力に縁を持たなく貧困の中で芸術に向かい合った人の方が、歴史的に天文学数字ほど多かったでしょう。人は財をなすと没落します。だから仏教では出家という財を捨てて仏陀に帰依して罪を重ねる身から逃れるのです。
音楽家もあらゆる芸術家も社長も会長も、例え成功者になっても、純粋に学び純粋に感動する心を忘れてはなりません。ましてや学生が贅沢をしてしまい、純粋に学ぶ向学心を失っては学生(学ぶために生まれた、と書く)本来の生活から逸脱してしまいます。それは現在の日本人の99パーセントに言えるでしょう。毎朝この基礎シリーズを読んで実践してる諸君は、残りの1パーセントの学生だと信じています。また例え学校を大昔に卒業していても「一生涯、学ばねばならぬ!」のが人間の努めであり責務だと痛感しています。 さあ、諸君今日も頑張ろ〜〜〜〜!
要約すれば、純粋に学び精進し続ける人生の目標・目的は、お金や地位や名誉を得る結果を求める事ではないのです。そう言う結果はあくまで勝手に付いてくるものなのです。そう意識改革すれば何事も悪い執着心が無くなり、楽な気持ちで自分の道に向かい合い純粋な修行として勉強に集中できるでしょう。目先の目標は全力で取り組む事は大事だけど最終目標と思うな!ただ立派な通過点になり経験となるだけです。では、最終目標はなに?それは立派に通過点を超えて行けば、やがて見えてきます! 合掌 3/10
「勇気と決断の瞬時の音」(13)
貴方が始めてプロオケやアマチュアオケの定期演奏会にエキストラとしての初仕事の初日の練習で、例えばベートーベンの交響曲5番運命の冒頭の8分休符を指揮者が魂を込めてタクトを振り下ろした瞬間、ソ・ソ・ソ|ミーーー|っと、コンサートマスターやパート首席奏者と同じタイミングでしかも完璧なfの発音と音程で弾けますか?
恐らく90パーセントの人が追従しても隠れて弾くか、残りの10パーセントはタイミングがずれて弾くか、音量が出ないで弓だけ動かしてるかでしょう。
しかし、そんな音を出せないエキストラも新入団員も、邪魔で本来ギャラを支払ってまで出演してもらう必要ありません。と、口には出しませんが、そう思ってるのが真剣勝負で演奏してる首席奏者や指揮者、そして運営してる楽団事務局の本音でしょう。
逆に、思い切って清水の舞台から飛び降りる思いで出した精一杯の音が、音程外したり、タイミングやテンポ感が目立ってズレ、まったく非音楽的であったりすれば、もう次回からお呼びがかかりません。 たいがいの演奏者は、そんな経験をして、自己防衛となった結果、弓だけ合わせる事が上手になった人が多いです。
弓の方向だけ合わせてもオケやアンサンブルの、確かに邪魔になりませんが、戦力にはなりません。積極的にその場面にあった音楽性で、作曲家の熟考した効果を最大限に音に出し、指揮者の理想とするテンポやタイミングで発音する事を、複数の人間が同時に感じとり「同じ音」を出す事が、結果的に同じ弓の弾く場所やスピードやタイミングや弓の方向が合う。それがオケやアンサンブルで名門と言われる国際水準の音楽の共通語となる本物なのです。
自分の技術や音楽性を向上させ、実践で勇気と決断を一瞬にして判断し、音にする現場での緊張感ある仕事を積み重ねて、そのつど真剣勝負を続けてる人は、そのプレッシャーをも楽しみに変え、力を抜く場所も身体で覚えていきます。
しかし、初心者は大先輩や師匠の力を抜く場所を真似をしないで、真剣勝負で絶妙のタイミングで響き渡る発音をする「勇気と決断の瞬時の音」を理想としなさい! 合掌 3/11(シュトライヒャー教授の命日)
(永遠の師匠シュトライヒャー教授の命日に回想)ウィーン国立音楽大学留学1年目後半でシュトライヒャー教授のマスタークラスにも入りました。そこでは当時、ベルリン・ラジオ放送響・トロント響・イスラエルフィル・スペイン国立響・オスロ響・アルゼンチン・ハンガリー・地元ウィーンなど世界のプロオケ奏者達に混じってオケパートのレッスンを唯一一番若い学生の私が個人レッスンの後のグループレッスン受講していました。その時のウィーンフィル首席として長年オケを支えてきた先生の真剣なレッスンで、顔を真っ赤ににして怒り狂う恐怖は今も忘れられません。萎縮して弾けないレッスン中にいきなり「Satoriおまえだけ一回弾かないで休め!」と言われ、必死で自信を持って弾いていた自分の力がまだまだ足りないのだと愕然として皆が弾き終わるのを頭を垂れて聞き終わると「ほらね、Satoriが弾かないと皆バラバラでまったくバス本来の音になってないだろう!」って言われたのです。その時、ああ日本で当時N響首席として楽界からオケの鬼と言わしめた中先生に習った技術とオケでの意義込みを基礎に、大学2年の頃から既に都内のオケから地方各地のオケの客演首席奏者としても招かれ、厳しい現場で実践経験を積んだ事が、世界の若いプロ達より、ある面では高い水準だったんだと改めて思い、自分が誉められた事が、日本を誉めてくれた事の様に思え、シュトライヒャー先生の前で涙ぐんでしまったことを、命日の今日、急に思い出してしまいました。
「膨らむイメージを音に!」(14)
今朝の鐘突境内参りは、冬に逆戻りの寒さです。しかし、冷たい風の中にも水仙の花が可憐になびき、玄関先に数日の陽気で開花した沈丁花が甘い香りを冷風に乗せていました。足が動かなくなり玄関先の沈丁花の花も見れなくなった母に、花を一輪折って一輪差しに水を入れ食卓に飾ってあげました。
これが、音楽だとふと思いました。夜明けのどんよりした雪雲は粘り腰の弓、厳しい寒さの暴風や豪雨は力強く重たいスピッカートで演奏される場面、また人の感情で怒りや恐怖や強い意志を表す弾き方です。冷風に絶えながらも可憐に咲く水仙の白い花や、沈丁花の花の香りはデタッシェやレガートで弾く美しい情景、また人の感情では慈愛や片思いの切ない思いを寄せる恋心の感じです。勿論、軽快で楽しい感情のスピッカートも、嬉しい喜びの粘り腰の弓もありますから、同じテクニックで幾通りも表現力を変えられる事も重要ですよ。
季節や場所や自然界を、大空を飛ぶ鳥の目から見る雄大なパノラマ景色から、小道の片隅に咲く野花のマクロまで表せる音楽、人のあらゆる感情から哲学や思想まで表せる音楽、聴衆がそれらの音楽を聞いて自分の脳裏にその景色を再現できる情報量のインスピレーション伝達は、まだまだ大型コンピューターの情報量をはるかに上回ってるでしょう。
つまり、演奏する側にとって、テクニックや基礎は大事ですが、その学んだ技術で、何をどう伝えたいのか自分の脳裏にイメージの音が描かれてなければ、説得力のある音になりません。
勿論、漠然としたイメージでいいのですが、そのイメージに最もふさわしい音を出すために、これまで学んだ理にかなった正しいテクニックや基礎を利用・応用するのです。
自分の頭で想像し、空想の中で自由に夢を見て、時空の旅、心の旅をして下さい。旅費もかからず誰にも迷惑かけず、音楽で最も大事なイメージが膨らみ、それらが貴方自身の心を豊かに成長させてくれます。
現実に見える余計な人工の物より、自然界から受けるインスピレーションの、このイメージ空想の方がはるかに宇宙的空間まで広がり素晴らしい本当の音楽ですよ! 合掌3/12
「弓はアイアイ?」(15)
今朝は寒い!冷えすぎると老人が調子悪くなり心配です。今朝は動けない母の仕事を代わて労働奉仕する為に、壇家の主婦有志の皆さんが境内草引き掃除に来られます。有難いことです。なまんだぶつ!
冷たく固まった土から寒くても成長する雑草を抜くために、先の細長い草引きスコップを手に根っこから掘り起こします。このように人は、あらゆる道具を発明・改良・生産して暮らしの役に立ててきました。
ところで、アイアイ・アイアイ・おさ〜るさ〜〜んだよ〜。の歌知ってますよね。大陸から孤立したマダガスカルで独特の進化を遂げたこの島特有の動物たちの仲間の猿です。アイアイは右手中指の爪が異常に細長く伸びて、串や爪楊枝の様になってます。この長い爪で硬い果物の皮を破って穴を空け、中の果肉やジュースをホークやストローの様に上手に使ってほじくり出して食べます。フォークやナイフや楊枝をいつも身につけてるようなものです。便利ですね。
さて、本題です。我々日本人は箸を上手に使って食べます。食べるときに貴方は箸が重たいとか、使っていてまさか痛みを感じないですよね!?箸の持ち方を習い始めた頃には不自然な角度のために無駄な筋肉を使っていて、もしかして痛かったかも知れませんが、今は指の延長の様に自由に無意識に使ってますよね!?
弦楽器奏者が右手に持つ弓も同じ事が言えます。弓を持った瞬間から貴方の中指や人差し指が延長した様に思い、構えて連結した指と弓が「弓先まで神経が通ってる」ようになってますか?つまりアイアイの爪です。
例えば、ピッチカートは人差し指若しくは中指先の爪の反対の腹側で弦をひっかいて弾きます。弓を使った時も、弓の竿が貴方の指の延長だと感じ、弦に引っ掛かり音を出す馬の毛が、ピッチカートする指先の腹と同じように発音するひっかかりを、プロもアマも、卒業生も学生も、ベテランも初心者も、もう一度確認しながら感じて弓を使ってください。そうすれば必ず貴方の音色はいままで6色のクレヨンだったのが、64色のフルカラー油絵の具に変わったぐらい、自由に音楽表現できるようになるはずです。 合掌3/13
「ボーイング80」(16)
今朝も境内は氷点下の中の朝のお参りでした。昨日は一日中バッチャンが数十回もトイレに行く度に付き添って居ましたが、掃除の奉仕活動の壇家有志や来客にお茶を出したり、昼食の用意をして目を離した数分の間にも何回も顔から床や壁に倒れ、顔面切り傷と目を覆い被さる程に青黒く腫れ上がって幽霊のお岩さんの様な顔にさせてしまい心苦しく悲しいです。月曜日の今日病院へ連れて行きます。本当に現在、自宅介護に明け暮れる良妻賢母の奥様方の苦労を思い知らされました。自宅介護されてる家族の皆さんは慈悲深く献身的で素晴らしい旁々で将に菩薩様なのでしょうね。
さて、タイトルのボーイング80は旅客機の名前ではありません。因みに海外旅行で始めて乗ったジェット機はボーイング747でした。ボーイング80とは運弓する右手が、音程を押さえたりポジションの形で苦労してる左手よりも音楽演奏上重要で80パーセントを占めてると言うことです。
アイアイの指先の様に弓を持って感じられれば、その80パーセントの音楽表現が完成されます。中指での弓の支え、人差し指の腕全体の重みを支える圧力、小指のバランス調整、無駄な力が入らないで他の4本の指を見守る親指の包容力。薬指は小指よりも力を使わないで添えるだけの優しさ。それらを、しなる様に受け止める手首。腕の重みを人差し指にしっかり伝える為に肘は真っ直ぐ伸ばし、肩は腕を大きな振り子として支える為に両肩が平行になるように背筋を真っ直ぐに伸ばします。ハーフポジションからハイポジションに移動するときは、弓を駒の方へ背筋を真っ直ぐにして、礼儀正しくお辞儀をするように腰を曲げます。左右に曲げては合理的ではありません。異常のように腰から伝える身体全体の重みを自由にコントロールして右手人差し指が弓の竿にかかる圧力を音楽にするのです。この圧力エネルギーと弓の使う量と弓のスピードの三原則を、自分のイメージや音楽観を頭と心で思ったままに、今弾く楽曲やフレーズやその重要な一個の音にすることが、音楽なのです。だから弓は音楽を作る80パーセントも重要な役目をしてるわけですね。
左手の難しいパッセージも難しいフィンガリングも正しい練習をすれば効果が直ぐにあらわれますが、右手の弓の運び方はその人の性格や人生観や環境など様々な、その人個々の精神の成熟度にも左右されます。技術だけを向上しても、心を向上させなくては理想の音になりません。だから音楽は生きていて複雑で純粋でおもしろいのです。
楽器に導かれ師匠に導かれ、既に音楽に洗礼を受けたものは、生涯、純粋に真剣に楽器と向かい合う事によって自分を向上させてもらえます。こんなに有難い恩恵はないでしょう。これらの恩に報いるために神仏に感謝して選んだ道を、与えられた道を、一生可能な限り精進しましょう。合掌 3/14
「基礎シリーズ最終回」(17)
世の中には「生意気な若僧」「身の程知らず」「口だけ達者」「聞く耳持たず」などを言われたりする学生がいます。が、そんな人が音楽をすると、そのまま演奏や音色にも当てはまり、大人になってある程度経験を重ねて演奏技術を習得しても、音楽ファンは勿論、幼稚園児が演奏を聴いても、いやな音として感じて、二度と聞きたくならないでしょう。
一方「謙虚な姿勢」「秘めたる情熱」「優しい言葉使い」「人の話を聞く」「真面目に努力する」学生が基礎を真剣に学と、精神的にも技術的にもみるみる上達して幅広い音楽的演奏や豊かで魅力的な音色を出せるようになっています。また、そんな人の演奏を聴くともう一度聞きたくなるものです。
謙虚に練習を重ねた後者の人は或程度冒頭の前者のハッタリの表現も少しは必要ですが、前者に当てはまる人は、後者の人のように黙々と心を入れ替えて努力をしなければ、いつまで経っても、楽器を変えても、学校を変えても、先生を変えても、一生失敗する人生を送ることになります!
この基礎シリーズを愛読してくれてる貴方は後者の素質十分で、既にかなりの技術もマスターしています。貴方に必要なのは、今まで学んできた努力と精進に自信を持つことです。常にこれでいいのだろうかと自問しながら練習を重ね、上達してきたのですから、身に付いた自分の力を信じて試験やオーディション、コンクールに挑んでください。またプロになったら演奏会にわざわざ来場してくださった聴衆に、結果的に感動を与えるように、学んできた総ての肥やしをエネルギーに変えて演奏しなさい!いつもの練習の様に冷静に合理的に効果的にポイントを注意して、自分の頭と心で、身体全体を理にかなった奏法で弾けば、貴方は既に誰よりも立派に弾けるはずです。貴方の純粋な心から発する音楽を聴きたいと待っている未来の聴衆の為に、その調子で精進を続けてください!ファイト! 3/15
教信寺貫主:長谷川慶悟=音楽家:長谷川悟