H17年1月〜2月
「食後の言葉」
「吾今此の清き食を終わりて、心ゆたかに力身に充つ、願はくば此の身心を捧げて己が業にいそしみ、誓って四恩に報い奉らん。ごちそうさま。」
ご馳走さま!とは(駆ける走る)と書きます。客人のために走り回って食材を調達して料理して下さったおもてなしに感謝する美しい日本の言葉です。そうして命を頂戴して満腹満足感を得て血となり肉となりエネルギーが益したなら無駄に使わず、社会に貢献し、総ての生命に還元する農作業や環境リサイクルにも努めて生命のサークルの一員にならなければなりません。近年は、その命の輪のサークルが人間でストップして途絶えてしまい、またそれ以上に人間が出すゴミや環境破壊で絶滅する種族が後を絶たないのです。
もっとも近年の日本人に重要なのは、食べるだけ食べてゴロゴロ寝る、それだけでも上記の地球環境破壊の一員になってしまう生活習慣を止め、そのエネルギーを使って自分の手に職をつけるそれぞれの技に精進しなくては成らないと同時に四恩への感謝を忘れてはなりません。四恩とは、五体満足に産んでくださり食べさせて育ててくださった(1)両親への恩。多くの人に助けられ専門の先生に技を教えて頂いた(2)衆生の恩。食事が出来る平和な国や社会を築いてくださった(3)国王や天皇の恩。恵の雨や太陽の光となり地球を優しく包むオゾン層や大気、輝く星の宇宙は佛や神の慈愛と智慧、人々を正しい生活に導く仏陀の教え、それらを正しく伝える聖者や僧の(4)三宝の恩。此の四恩に報いられるように食前食後に言葉に出して感謝をして精進をしましょう。合掌 2/5
「食前の言葉」
「吾今幸いに、佛祖の加護と衆生の恩恵によって、この清き食を受く、つつしんで食の来由をたずねて、味の濃淡を問はず、其の功徳を念じて品の多少をえらばじ。いただきます。」
私たちが食べ物を口にしたとき、近年では同種のほ乳類である牛肉や豚肉の消費も増えていますが、必ず動物も植物もその命を人間が奪い食べてるのですね。だから、「いただきます」とは「命を頂戴します」の頂きますと言う意味なんです。
お寺での本物の精進料理では季節の自然に収穫できる野草や野菜を頂戴します。もちろん野菜も生きている命を摘むのですが、食材となるまでの太陽の恵み、雨水の恵、土壌の恵、防虫や収穫した人の労力、食材を料理し、味付けし、盛りつけ配膳などした調理人の心技など、私たちが口にするまでのその食材の経路への感謝を必ず称えてから食べさせて頂きます。食前の言葉を覚えて毎食前に称えてくださると幸福までもが貴方の心身への血となり栄養となりますよ!明日のメッセージは当然「食後の言葉」です。合掌 1/4
「日本猫」
今日は外出を控えた方がいいですよ!(残念)「鬼は外、福は家!」と町中に追い出された鬼がうようよ溢れてます。でも、働くお父さんを玄関までお見送りもしないで、トドの様に昼までゴロゴロ寝てるお母さんの方が鬼よりもっと怖いですから・・・・!(斬り)
さて、ガムテープで貼られた段ボール箱に詰め込まれ、残酷な人間に本堂の前に捨てられ死にかけてた猫も、注がれた慈悲に報いすくすく成長しました。成長するに連れ、それぞれが血統書がついてもおかしくない程の珍しい外来種の様な毛並みの良さです。昔と違ってペットブームで高級な猫が飼われては捨てられ、それらが野良猫と混じり合って混血が広がってるのでしょう。
しかし、日本古来の猫も、実は鎖国の300年時代に交易があったオランダ長崎航路から猫が渡来しています。それ以前の全世界と交易盛んな室町鎌倉時代、飛鳥奈良時代でも、船に潜入したネズミがシルクや織物、書物、食料香料を囓るのを防ぐために猫を船に乗せていたのです。
たとえば日本の伝統とされる祇園祭の鉾車のご神体は日本古来の物でなく古代ローマ軍の影響を受けた欧州の絵柄で、交易によってもたらされた欧州のタペストリー織物なのです。
10年ほど前に、依頼された声明や般若心経読経とオーケストラの共演作品作曲の為に、モーツアルトがフィガロを作曲したウィーンのアパートの近くの部屋を1ヶ月借りて作曲活動の拠点にした事があります。その折、渡欧に利用した飛行機がオランダ航空だったので、アムステルダムに急遽途中下車し、レンブラントからゴッホまでの絵画を美術館巡りして鑑賞し、運河周遊や古い街並みの市内を散策しました。その石畳の歩道を、昔よく郷里で見かけた様々な日本猫が沢山歩いてるのです。道すがら猫と戯れながらハット思いました。日本にいたネコ達はここからオランダ交易船に乗せられネズミ退治の為に連れてこられたんだ!この子達が日本猫のルーツだ!!!とね。 合掌 2/3
「添い寝」
今朝は昨日よりまだ寒い鐘突で手先が零下でしびれてしまいました。境内の今季最低気温記録更新でマイナス5℃です。北国の人が聞けば笑われてします。私もウィーンに住んだ最初の年にマイナス25℃の郊外の湖の畔で一日中、映画ロケ撮影のエキストラのバイトで経験しましたから、零下の厳しさを覚えています。マイナス5℃は北国では温かい冬の通常の気温ですね。
しかし、ぬくぬく室内で生活をしてると一瞬の外気温の調整に対応しきれないのも事実です。と言うのも、最近の寒さに一昨年の秋と去年の初夏に捨てられた猫を飼い始めた4匹が、私の布団の中にもぐり込み足下に2匹・両腕に2匹が添い寝してくれるので、真夜中から明け方の寒さは猫の体温と純毛のお陰で快適に熟睡できます。難点はネコ達が大きく成りすぎて、寝返りできない程ベットが狭く身動きできないので少々肩がこることです・・・・。しかし世話のかかるネコ達ですが、動物と人間の助け合いの心が芽生えお互いの信頼関係が強まるのも事実です。人と人も、民族や宗教も、国と国も助け合い支え合うと、信頼関係が崩れることは決して無いのでしょうが、利己的な利益誘導や利害関係が生じると助け合わなくなり敵対してしまうのです。だから、個人の余計な財産や名誉やプライドや権力を捨てる事から安らぎの純粋な心を取り戻すことが出来る事を2500年前にお釈迦様は自ら実践して苦悩の末に体験談と天の理を悟った神髄を教えて下さったのです。それが仏教で言う本当の出家生活なのですね。 合掌 2/2
「雪化粧」
普段から真冬でも素足で過ごしてるのですが、今朝は草履にも横殴りの吹雪の為か軒下に置いていたにも係わらず雪が凍り付いた草履は流石に堪えました。辺り一面真っ白の境内に足跡を残す事に戸惑いさえ感じる荘厳な世界です。境内の参道から雪化粧した諸堂・鐘突堂・阿弥陀石仏・御廟所・とりわけ地蔵石仏は頬に白粉化粧をして、いつもと違う表情を見せてくれました。少し寒そうにも見えましたが、普段と違うと言うだけで驚きと感動が生まれてきます。北国ではもう雪はうんざりされていることでしょうけど、南国に住む人にとっては神秘的です。
世界の人々の生活も「所変われば品変わる」です。例えば、どの国でも主食は毎日同じ物を食べますが、飽きることはありません。その主食も米やムギ、芋やトウモロコシなど地域や国によって異なりますが、食前に感謝の祈りを捧げる人はどれくらいの割でしょう。ましてや、未だに世界には食物を摂取できなく餓死する人もいるというのに、美食を追い求める日本では食事を残したり、買いだめを腐らし、捨てて粗末にする。挙げ句の果てには若い母親が自分の子供に食事を与えないで餓死させる事件まで最近よく報道されています。今朝の厳しい寒さの中でたたずむ石仏はそんな近年の日本事情を黙って見つめているだけで、救ってくださるのかどうか雪化粧の表情から、その美しさに感動すると共に、末法の不安を覚えた今朝のお参りでした。合掌 2/1
「運命の岐路」
1月も今日で終わります。人類が暦を数え始めて僅か数千年、地球生命誕生の数十億年、宇宙誕生の数百億光年からカウントするには一瞬の月日の変わり目に過ぎませんが、今日という日で人生が一変する人が何億人も居るでしょう。
過去を振り返れば、あの時こうしてたら・・・・、もしかしたら違う人生だったかも・・・、と誰もが考えるでしょう?でも、それが一瞬の運命です。しかし、例え些細な一瞬でも、その人の受け止め方や精進の度合いによって、その一瞬の繰り返しが積み重なり大きく未来を変えていきます。ですから、例え悪い結果になったとしても全てが自分の責任であり、社会環境の責任転嫁に逃げてはなりません。
今日が人生の変わり目の一瞬だと思った人は、朝から心身を正しく準備して、積み重ねるブロックを崩れないようにしっかり土台に積み上げなさい。土台が傾いていたり基礎がゆるんでる事に気が付いた若い世代の人は、積み重ねる前に基礎修復にもう一度十分に時間を使いなさい。それは目先の結果より将来的には重要な事だと認識した未来が開ける若人となるでしょう。また、ピサの斜塔の様に積み上げてしまったのに傾いた熟年・老齢の人は、倒れないようにバランスを考えてその上にゆっくり用心して今日と言うブロックを乗せてください。
学生中には何度も試験を重ねて最後に卒業試験を迎えます。卒業すれば就職試験で希望の進路に進む者もあれば、仕事に就けない者もいる。運良く仕事に就けても毎日が責任ある真剣勝負。しかし人を騙し陥れて積み上げたブロックは必ず直ぐに崩れ落ちる無駄な労力になります。また、社会人になれば結婚して家庭を築く幸せもあれば、離婚で苦しむ夫婦や家族もある。赤ちゃんの誕生に喜ぶ者あれば、両親との永久の別れに悲しむ時もある。自分の精進で思い通り事が運ばないと関係者や社会事情を恨む人もあれば、何事も真摯に日々を受け止め、先生や恩人や家族や、ご先祖様や神仏、山河・大木・太陽・月・星を崇敬して感謝する者も居る。
未来は過去の積み重ねのブロックが左右します。今日からでも一瞬を築き上げる積み上げ方に精進して、今日という一個が無事に積み上がったら自分だけの努力だけでない多くの要因に感謝を怠らない事が最も大事な一瞬かもしれませんね。合掌 1/31
「責任者」
色々な団体には必ず代表者・園長・校長・学長・団長・理事長・責任者・社長・会長など、その営利・非営利に係わらず全ての小さなグループから、社団・財団・福祉・宗教などの法人団体に代表責任者を置きます。代表者自らが築き上げた者から専任された者、歴代の引継に推薦されたり自薦した者、外部団体から招かれた者・派遣された者、様々な形態がありますが、何であり、その団体の顔であり諸手続公式書類には必ず代表者がサイン捺印が要求されます。
それだけに、その人が直接問題を起こさなくとも、団体の一人が業務上社会的失敗をすると代表者の監督責任を負うことになります。しかし、逆にそのグループ団体の全員が同じ理想の方向を見て行く率先者になり、或いは見守るスタンスを保ち発展向上を願えば必ず支持され社会に貢献できるのです。
その理想への願いが強ければ強いほど理解されるまで衝突や、妨害、弊害などに苦しむことも生じるでしょうが、正しい信念と理想を持て、ある時は肉を切らして骨を切らさずの覚悟で、妥協と折衝を重ねれば貴方が代表を務めるその団体は内外より崇敬されるでしょう。また、団体役員以下構成される歯車の一員(その誰もが必要不可欠な適材適任者)は代表の精神を尊重してサポート協力する事が、団体(教室・学校・会社・各種団体・研究室・部署・管轄・家族・地域・市町村・都道府県・国・地球・太陽系・銀河系・宇宙)が直接的間接的に調和がとれ、社会的地位向上発展につながり誇りとなります。そうなれば、当然それぞれの個人生活を保障される事になるのですから、そのグループの一員になれば、代表者の個人利害を捨てて全体を護る苦労をも理解して、献身的に協力して働かなくてはなりませんね。合掌 1/30
教信寺貫主:長谷川慶悟=音楽家:長谷川悟