本-開伝言番外編本-開

世界連邦新聞掲載原稿より

「世界平和は国際文化交流から」

音楽家念仏聖 長谷川(悟)慶悟

 千三百年前、奈良の都は国際交流極東の拠点として花開き、朝鮮半島、中国大陸は言うに及ばず中央アジア、中東、東欧から仏教と共に有形無形様々な文化が伝播して来ました。

 特に東大寺大仏開眼法要では、ルシャナ佛前にて管弦楽団・合唱団が演奏するなか、エキゾチックな伎楽・舞楽団が舞い、スペクタクルな大音楽祭が奉納されたのです。その海外からのゲストはバラモン僧、仏教僧を含め総勢1万人にも及んだと記録に残っています。

 飛行機便が発達した現在でも、一つの会場に、これだけ海外からのゲストを迎えてのイベントはオペラの引っ越し公演でも希なことですから、如何に当時の人が異文化交流を柔軟に受け入れてきたか想像するだけでも愉快です。まさに、時空を越えて、この度の日韓で開かれるサッカーワールドカップでえる程の興奮だったに違いありません。 

 人類の歴史の中で、地球の各地に定住してきた民と、旅を続ける民の交流はどれだけ素晴らしいドラマを生んできたことでしょう。

 私も音楽修行で15歳から郷里を離れて以来、広島〜東京〜ウィーンで学生時代を過ごし、卒業後も、仕事柄ウィーンを拠点に欧州各国から、台湾、フィリピン、ハワイ等の環太平洋地域への度々の演奏旅行、また、近年はオーストリアやドイツでの夏期大学客員教授に招かれ一都市に長期滞在し、様々な国の人との交流をさせて頂く機会に恵まれました。

 招かれた都市での見聞は好奇心をくすぐられ、出会った人々の真心に感涙する経験は私自身の宝物だと思っています。だからこそ、学生、父兄、同朋、知人、一般参加者までも募り、私の演奏旅行に同行して頂き、その感動を共有する喜びも20数年伝えてきました。

 その結果、参加された全ての方が世界共通の言葉である音楽を媒体に、素晴らしい国際交流を経験されました。

 世界の様々な異文化を認め合い、紹介しあう異国の人間同士が、心を一つにするその瞬間に、意識するとしないに関わらず国際平和の使節団の役割を果たしていたのです。

 現在の氾濫する物質文化圏から見ると、アジアや東欧、EU欧州諸国でも恵まれた都市は限られています。しかし、交流した国々の人は精神的には大変豊かに、文化や歴史、自然の恵みに誇りを持ち、共生していました。

 そして、彼らは音楽を始めとする芸術文化に尊敬の念を持ち、ある時は愉快に歌い踊る楽しい郷土芸能と共に暮らしているのです。

かえりみると、現在の日本人は異国の文化を認め吸収消化する事は得意でも、歌って踊る民族音楽を忘れてしまい、郷土文化を楽しむことが如何に下手でありましょうか。      

 軍事費増強でなく文化庁の予算を倍増して文化を育て、対等でエキサイティングな異文化交流で、自他の文化を楽しく認め合い尊重することこそ、真の平和の姿と私は思います。

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