**ミニ法話シリーズ「お彼岸、ぼた餅とおはぎ」**

 当山教信寺法泉院の参道の彼岸花と、旧、教信上人御廟所苔庭に咲く珍しい白曼珠沙華

 お彼岸には「ぼた餅」や「おはぎ」をお仏壇に御供えし、家族揃って一緒に食べて、お寺参りやお墓参りをする風習が、日本の一般家庭の年中行事として現在まで続いています。世界に誇るべく誠に美しい日本人の心の原風景です。 春には牡丹の花に因んで「ぼたん餅」が訛って「ぼた餅」となり、秋には萩の花に因んで「おはぎ」と呼ばれました。又、春彼岸にはヨモギの若葉を混ぜたヨモギ餅を御供えして食べる地方もあります。あんこの甘い食感を想像すると唾液が出てきました。どれでもいいから、口一杯に頬張って早く食べたいですね。

 さて、先ず、お彼岸について当たり前の事ですが、ご説明致しましょう。「暑さ寒さも彼岸まで」とは、春分の日と秋分の日の事で、お彼岸の中日に当たります。昼と夜が丁度半分になる一日で、その中日の前後3日間を合わせた七日間がお彼岸の期間で最初の日を「彼岸の入り」最終日を「彼岸の明け」と言います。

 では、お彼岸とは何をする日なのでしょう?当然、前述の餅を食べるだけの日ではありません。古代インドのサンスクリット語の「パラミータ」と言う言葉を中国で「波羅蜜多」(はらみった)と音訳されました。般若心経などのお経に良く出てくる発音です。これを意訳したのが「到彼岸」(とうひがん)です。

「彼(か)の岸(きし)に到(いた)る」と読んでご理解頂けると思いますが、分かり易く言えば、三途の川を挟んで、我々の居る此(こ)の岸が、様々な煩悩に迷い苦しんでいる娑婆の世界。彼(か)の岸とは、煩悩を超越した悟りの世界で、苦しみやしがらみの闘争が無い理想郷の極楽浄土を彼岸と言う言葉で表現しています。到彼岸とは、その理想郷の彼岸に到る道筋や方法を指し、その道筋や方法を説かれたのがお釈迦様の説法である経典であり、仏道修行の方法なのです。

 なんか難しい話になってきました。でも、有り難いことに我々にも分かり易い日々の生活で、実践目標に出来る教えが説かれています。「到彼岸」パラミータ(波羅蜜多)に到る為の修行には六つあり、之を六波羅蜜と言います。365日の中の春と秋のたった2週間だけ、特に意識する修行徳目が六波羅蜜(布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧)の仏道実践なのです。

 一、布施(ふ せ)  与えよう 自分に出来る可能な物でお金でも心でも!

 二、持戒(じかい)  守ろう 天の理や地球のリズムや人の道の決まりを!

 三、忍辱(にんにく) 養おう 我慢する忍耐力や、相手を許す寛容な心を!

 四、精進(しょうじん)務めよう 諦めず投げ出さず、たゆまず成せるまで!

 五、禅定(ぜんじょう)見つめよう 心静かに 自らの身・口・意の反省を!

 六、智慧(ち え)  生きよう 真実の世界を見極め 悟り求める人生を!

う〜ん、こりゃ両彼岸の1週間といえども大変な修行ですな!しかし、彼岸の時だけでも意識する人と、何も意識しないで過ごす人は、人生の意味合いに大きな違いを生じます。だから甘〜い「ぼた餅」や「おはぎ」をご先祖様の報恩感謝に御供えし、家族揃って食べて、お互いに意識し合う、此がパラミータなのです!           合掌

教信寺兼務法泉院住職:長谷川慶悟

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