追っかけ日記
Sanderlingの引退好演

last modified at 2003.11.24

書下ろし

[05.17] [05.18] [05.19] [PROGRAMME]
前回BerlinでSanderlingを聴いた際、今回の券を買って居た。 単にSanderlingを1回でも多く聴いて居たかったというだけのことなのだが。
それが、この演奏会で引退するらしいという噂が入ってきた。 信じたくは無いが、もしそうなら余程のことが無い限り、Cancelは無いななど打算したりもする。

2002.05.17 (Fr)
NRT-FRAは順調で定刻前に着陸したのだが、乗継ぎのFRA-TXLが機材の不具合(コンピュータの調子が悪かったが、今は問題無いと離陸前の機長アナウンスで言って居た様な気がする)で1時間遅れの離陸。 Hotelにcheck-inし、荷物を部屋に放り投げて、Unter den Lindenに着いたのは開演10分前だった。
席は空席だらけで、3階席(日本で言う4階)は皆無、2階席も2列目位までしか埋まって居らず、だったら2階席の中央2列目なんぞを前売りで買わずに居たものを・・・
前半の2演目はオケ無し。 2曲目のAnnonciationは電子音楽だったので仕様がないにしても、後半も録音で踊るのかと不安を覚えた。 休憩後、ピットにオケが居て、tuningをして居るのを見て、安心。 折角の春祭、生オケで聴きたい/観たい。
今回の春祭も、男の一族と女の一族の交歓とでも言う感じ。 「一族」と言うよりも、男5人と女5人の発情期。 終いには、男5人が主役の女に襲いかかり、全裸にしてしまう始末。
こっちは好い年をしたおじさんだから良いが、客席には子供も少なからず居たのに・・・前回の教訓 :-Pを生かせず、オペラグラスを忘れて来たのが心残り(^_^;)

2002.05.18 (Sa)
流石に季節外れ(大体09月か10月辺りから翌年の春までがSaison)なものでBerlin界隈に面白そうなものが無い。 かと言って、翌日のSanderlingを考えれば、余り遠出して体力・気力を無駄にはしたくない・・・などと考えると何も聴くものが無い。 Operなんか観たく無いんだが、まぁStravinskyなら許容範囲かとHannoverにした。 それに題名が良い。 「放蕩者の成り行き」なんて、自虐的な親近感を覚える :-P
尤も、字幕はあるものの独語なんで当然読めず、予習もして居なかったから、何の話かさっぱり判らない。 舞台装置と演技だけで想像するに、何か親子の世代間格差でも表現して居たんだろうか。

2002.05.19 (So)
日曜(独逸の日曜祝日は、レコード屋も本屋も開いて居ない)だったからと言うのもあるが、Sanderlingの為に万全を期したいものだから、早めにHannoverからBerlinに戻り、Hotelにcheck-in、目覚まし時計を仕掛けて、十分に昼寝。

まず、Haydn-Variationenの「重さ」に圧倒された。 Haydnの主題とは言え、やはりこの曲はBrahmsの曲だったのだな。
Mozartの内田も凄かった。 これまで、大見栄を切ろうとして、ズッこけてばかりの内田を聴いて居たから、良い加減、彼女を見放そうかと思って居た。 そりゃ、大見栄を切って、決まれば超格好良い。 でも、大見栄と言うのは、許容度の狭い精緻な瞬間を外すと、救い様の無い位情けない音がする。 これまで聴いて来た彼女の音は、殆どそうだった。
それが、今回は、余りに素直で従順な音だった。 小細工や仕掛けに走らずとも、彼女が希有なピアノ弾きだったことを思い知らされた。 小細工なんかで誤魔化さずとも、聴ける音がする。 やっぱり、内田って凄いピアノ弾きだったんだと思った一瞬だった。
そしてSchumann。 軽やかな動きと重さが釣り合った演奏だった。 釣り合ったと言うより、あの飄々とした風合いと、密度の濃い響きが、ミルフィーユの様に、交互に、現れては消え、現れては消えて居た。

それにしても、予想通り、もの凄い演奏会だった。 Berliner Sinfonie、普段はこんなに上手いオケじゃ無いと確信する。 それが今回は、オケの目付きが尋常で無かった。 演奏中、プルトの後方でさえも、真剣にSanderlingに喰らい付いて居た。
聴衆の反応も凄かった。 新聞やProgrammに、最後の公開演奏会と書いてあったからだろう。 終演後、足をドタバタ鳴らし、盛大な拍手を贈って居た。 乏しい経験だが、どちらかと言うと醒めて居る印象のBerlinの聴衆が、これ程までに興奮して居るのを観るのは、Thielemann以来、2度目のことだった。


練りに練られたProgrammで、オケと聴衆に見送られて引退出来て幸せな人だと、終演後、誰かが言って居た。 半ば納得するものの、全面的には賛同出来ぬ。
これがWandの引退演奏会なら、1 Programmを聴いて納得しただろうと思う。(実現して居たら、それはそれで、同じ演目で良いからもっと聴きたいとか何とか駄々を捏ねて居ただろうけど(^_^;)) Wandの演奏を聴いて、発見が無かったとは言わないが、多分こういう演奏になるんだろうなと言う予感があって、その予感通りの音が素晴らしかったことに興奮して居た。
一方のSanderling、僕にとって、予測不能な人だった。 人を喰った演奏をして居るかと思えば、機敏な演奏もし、Shostakovichの様に嬉々として振って居る時もあり、Oberon序曲の様にチェリ顔負けの演奏もあった。 予想を超えたところで、常に頂点を聴かせてくれた。
あんなに元気なんだから、そして最後だと言うのなら、1週間に1演奏会づつで良いから、Brucknerも振って欲しかった。 ShostakovichやSibeliusも、もっと聴きたかった。 HindemithとかTchaikovskyとかMahlerとか、僕が未だ聴いて居ないProgrammも聴いてみたかった。 何より、Oberon序曲をもう一度聴きたかった。

久しぶりに、追っかけ仲間と呑んだ。 こうやって、10人も20人も集まって呑むのは多分最後だろう。 チェリやWandが生きて居た頃は、別に示し合わせた訳でも無く、でも会うのが当然の様に呑んで居た。 志向も嗜好も思考も多彩な連中だから、聴か「ねばならない」演奏会が偶々一致するというのはとんでもないことだったのだと、今更ながらに実感した。


PROGRAMME
2002.05.17 19:30 : Staatsoper Unter den Linden, Berlin
: Le Spectre de la Rose
: Annonciation
Stravinsky, I : Le Sacre de Printemps
Deutsches Staatsballett, Unter den Linden

2002.05.18 19:30 : Opernhaus, Hannover
Stravinsky, I : The Rake's Progress
Henneberger, J / Staatsoper Hannover

2002.05.19 20:00 : Großer Saal, Konzerthaus, Berlin
Brahms, J : Variationen über ein Thema von Joseph Haydn B-Dur op.56a
Mozart, WA : Konzert für Klavier und Orchester c-Moll KV 491
Schumann, R : Sinfonie Nr.4 d-Moll op.120
Sanderling, K / pf. : Uchida, M; Berliner Sinfonie-Orchester

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