[2-Geki]  2劇通信・幕の内タケ第13号 2001年(平成13年)1月1日

(今回は美術担当)阿部 茂の
   「ヤツについての四方山話」



今回の作・演出を担当する音間 哲。とはいえ、まだまだおなじみでない方も多いは ず。そこで阿部 茂に「ヤツ」について語ってもらいましょう。

「音間はいい本書くんだよ。」昔、東京の小さいホールで誰かにそう話したことがある。 たしかホールにビールを持ち込んで打ち上げみたいな事をしていたときだ。 初対面のお客さんが脚本家を探してるってな話をしていた。 「それならここにおるやないの・・・」

しかし音間はついてないやつだ。書いた、それも、当時やつは速かった。 送った。稽古して本番もやった。やつはそれを東京まで見に行った。 でも約束の原稿料は支払われなかった。もちろん交通費も。 きっと「音間さん、ありがとう。」って済まされたんだ。 もちろん「どうゆうこっちゃ!」と心の中では毒突いてみただろうが やつのことだ、へらへら笑って「あ、どうも・・・」とかなんとか高い声で しどろもどろの受け答えをしたんだろう。音間はかわいいやつだ。

あの風貌、高い声、弾けるようなおしゃべり、 大好きな焼きうどんにむしゃぶりつく姿。 どこから見てもあの筋の人だ。 人にはいえない趣味に耽り、仲間内でその知識を自慢し、女の子に嫌われるあれだ。 でもどうしてそんなやつが芝居なぞしてるんだろう?

音間はあまり自分のことを話さない。 飲み屋でキャーキャーしゃべってる時、やつは誰かの話につっこみをいれているだけだ。 決して自分の話はしない。 きっと誰も理解できない井戸みたいな中でひそかな楽しみに耽ってるんだ。

それが時々漏れてくる。微妙なバランスでやつの台本に染み出している。 全部ぶちまけると嫌われるし、かといって何にも漏らさないんでは書いてる意味がない。 微妙なバランスでね。

[イラスト・阿部]


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