2劇通信・幕の内タケ第11号 1999年(平成11年)11月11日
「は、ハードボイルド?」 「もちろん!」
毎度おなじみ四夜原 茂インタビュー。なんと今回の芝居はハードボイルドだという。おとぼけ芝居専門の2劇がハードボイルド? だが聞くところによるとかなり本気らしい。その本気ぶりに、迫る。
四夜原 うん、初演は87年のしかも11月だから・・・
― うわ、ちょうど12年前。このとき、主役の探偵二人をやったのがあの立身出世劇場の。
四夜原 関さんと坂本さん。
― 関秀人さんといえばご存じの方も多い立身の座長。坂本武雄さんは確か関さんと一緒に立身を旗揚げした方ですよね。
四夜原 今はもうこの世界をやめられたけどね。二人ともなんていうか、男気のある役者さんだった。とにかくカッコよかったんだよ。その二人とタコやイカみたいなうちの役者と対決させてやろうって思って書いた。
― 8年前にも再演してます。
四夜原 あのときは舞台美術さんのデカイものを作るからそれにふさわしいやつをっていうリクエストで出してきたんだ。
― このときの探偵は阿部さんと横山さんですが・・・カッコよかったんですか?
四夜原 今だからいうけど失敗だったな。
― そんな率直な。しかしこうして振り返るとこの作品は初演は立身の二人と、二回目は舞台美術と。いってみれば対決の歴史ですね。今回も・・・?
四夜原 そう、対決。今までの2劇のイメージと。
― 今までの2劇のイメージというと、脱力というか、間抜けというか、ふぬけというか。
四夜原 あっはっは(手を叩いて大喜び)。
― ここは怒るところでしょう。
四夜原 失礼ちゃうか、それは。
― すいません。
四夜原 笑わさないよ。もう、ぴくりともお客様を動かさない。
― じゃあ本気でハードボイルドなんですね。
四夜原 もちろん。
四夜原 謎の言葉?
― キャストに役者名がずらずら並んだ後で「以上より選抜」って。
四夜原 ああ、あれ。
― あれは何ですか?
四夜原 あの中からオーディションをやったんだよ。
― 2劇じゃ前代未聞ですね。なんでまた?
四夜原 「カエルノモリ」「ひやしんど」とヨシキの父親探しシリーズをやってきたんだけど、今回は一回お休みして番外編をやってみようかと。だから今までの実績は関係なしで役者が選びたかった。
― なるほど。やってみてどうでした?
四夜原 おもしろかった。
― オーディションの感想が「おもしろかった」でいいんですかね。しかも選ぶ側が。でも私も見ましたけど、わざわざ新作の脚本書いたり、小道具用意する人もいてちょっとした小公演でしたね。
四夜原 自分は何にもしないでただ見てるだけって楽しいねえ。新しい発見もあったし、今後もちょくちょくやりたい。
― それでキャストは決まりましたか?
四夜原 ほぼね。
― 2劇にカッコいい探偵ができる役者がいるんですかねえ。
四夜原 いるよ。松田優作の生まれ変わりみたいなのが。
― ・・・いいんですか? そんな大きなこと言って。
四夜原 もちろん。
四夜原 でもソ連なくなっちゃったし。
― 大国同士の国際緊張っていっても現実感が薄いですし。
四夜原 だから今回は別の緊張に巻き込まれる。
― 別の? 何のです?
四夜原 それはまだ言えないな。
― そこをなんとか。
四夜原 探偵たちの前に謎の夫婦が現れる。一見するとふつうなんだけどその生活ぶりはやたらと怪しい。二人を追っていくうちに・・・って感じかな。
― しかし日本の探偵でハードボイルドが成り立つんですか?
四夜原 そこが腕の見せ所と。
― またもや大きく出ましたね。では最後にお客様に一言。
四夜原 ハードボイルドです。カッコいいです。
― もう、めちゃめちゃ?
四夜原 そりゃもう、めちゃめちゃ。
― 見にいらした女性の目がハート型になるくらい?
四夜原 ・・・・・・・・・・・・・もちろん。
― 何ですか、その不自然に長い間は。
紛れもなく彼は本気である。「本気で」ハードボイルドか、「本気で」そう思わせたいのかは今のところ不明だが。