2劇通信・幕の内タケ第14号 2001年(平成13年)6月6日
「テーマは『記憶』」「・・・と見せかけて、実は」
「どこまで芝居でメチャクチャできるか」
今回、記憶障害を題材に選んだシャー・ハ・ラシゲールこと四夜原茂。 まさか難病もの? 悲劇? どちらも2劇には今ひとつ不似合いな気がする。 ひとつそのあたりの真意を聞きださんと、2劇がたまり場にする居酒屋にもぐり込みました。
四夜原 響きがいい。それだけ。
― 他に何か、深い理由とかは・・・
四夜原 このくらげ旨いなあ。付きだしとして秀逸だなあ。
― なさそうですね。
四夜原 元々はテレビで知ったんだけどね。 ビタミンB1の欠如によって起こる「ウェルニッケ脳症」っていうらしい。 記憶喪失とは違って、病気になる前までの記憶ははっきりとあるんだけど、そのあとのエピソード記憶ができなくなる。
― エピソード記憶?
四夜原 例えば我々は、ある一日を「あんなことがあった」「こんなことがあった」って 出来事で記憶するわけだけど、これができない。 昨日なにしていたかの記憶ができない。今さっきまでなにしていたかの記憶がない。
― 怖いですね。
四夜原 その怖さを笑い飛ばしてみようと。
― 笑い飛ばすって・・・当事者にとってはとても笑い事じゃないと思うんですけど。
四夜原 もちろん。でもね、この病気でない人だって、忘れる怖さと無関係ではない。 年を取っていけば誰だってあり得ることだから。
― なるほど。
四夜原 そのとき失うものばかりに目を向けていてもなんにもならない。残ったもので楽しもうと。
― 私たちは忘却という現象とどう向き合うか、ですね。
四夜原 そう。今回は記憶を失っていく人とどうつきあうか、 記憶を失うということとどうつきあうか、って話になると思う。
― 裏のテーマは?
四夜原 どこまで芝居でメチャクチャできるか、やね。
― え?
四夜原 記憶できない主人公は明日の自分のために日記を書くんだけど、 徐々にこの内容が事実とずれてくる。 けれど主人公はもちろん、周りの人間もその日記に合わせて行動せざるを得ない。 たとえそれがどんなにハチャメチャな内容でもね。
― その日記を観客にも配ると聞きました。
四夜原 読みながら見てもらう。
― 芝居の先がわかっちゃう、ってことですか?
四夜原 どうかな? 日記は数種類用意するし。
― 数種類って・・・中身が違うんですか?
四夜原 どの日記に当たるかで、芝居の見方が変わるかもね。
四夜原 場所は梅田の真ん中だし、火曜から日曜までのロングランだから、 来る方々にも都合が合わせやすいだろうし。
― 是非、足を運んでいただきたいですね。では最後にお客様に一言。
四夜原 胸ぐらつかむような芝居で、目にもの見せちゃるぜ、と。
― 果たし合いやるんじゃないんですから、もう少しソフトに。
四夜原 今までにない体験をご用意して待っております。