-「VISION FORUM」潜入記-

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 キヤノン(株)とキャノン販売(株)が開いた展示会、「CANON EXPO 2000 @TOKYO」と同時に開催された「VISION FORUM」の中で、「ほぼ日刊イトイ新聞」というウエッブサイトも開設されているコピーライター糸井重里氏と、われらがサエキけんぞう氏を講師とした講演が、「インターネットという事件」のタイトルで行われた。 今回、運よくこのフォーラムに潜り込むことができたので、その時のレポートをお届けします。

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 そもそも「CANON EXPO 2000 @TOKYO」は、一般向けというよりも、CANON製品を販売しているような企業向けに行われた展示会という色合いが濃く、それと同時に開催されたと「VISION FORUM」も、それに合わせてまじめな内容のフォーラムが並んでいる。そういうわけで、フォーラムを見にくる人も、ほぼ全員ネクタイをしめたサラリーマン、しかも平均年齢高め、女性の割合はほとんどゼロに近く、熱心にメモをとりながら視聴している人もちらほら、といった感じで、約300人ほど入る開場いっぱいとなっていた。
さて、ほぼ時間通にフォーラムはスタート、音楽とともに糸井重里氏とサエキけんぞう氏の紹介が、ステージ左右に配されたスクリーンに写し出された後、開場後ろから今日の主役が登場。糸井氏はジーンズとジャケット、サエキけんぞう氏はスーツと赤いシャツの襟をジャケットの外に出すちょっとMadFrenchJapaneseな出で立ちである。

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 フォーラムは、まずは「ITに弓を引く」として、IT、ITと言うけれど、ITを推進している偉い人たちは、使う側の立場で考えていないのではないか、例えば「光ファイバーで高速通を」とか「200X年までには、全国民に安価なインターネット接続を」とかいうけれど、インフラを整備しただけで本当に、みんなインターネットを使うようになるの?ウエッブサイトをみんな見るようなるの?という問題提起から始まり、「女性はインターネットは見ないよ」といわれた時代に始めた「ほぼ日刊イトイ新聞」が、今では1日約25,000あるアクセスの約55%が女性のであり、何事にもシビアな女性に振り向いてもらうために、どういった考えでサイトを運営していったかを、糸井重里氏はさすがコピーライタといった例を出しながら、サエキけんぞう氏は随所に「え?今のはつまりどういったことですか?」と、さらに奥深い場所へ導く突っ込みを入れつつ、終始なごやかに進められていった。

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 では、対談中印象に残った言葉を並べてみよう。

「パソコンが普及して、実はCDの原価は非常に安いということがばれてしまった」「しかし、それでもほしいCDなら、高いお金を出しても買う」「これからは、今まで以上に付加価値が問われる

「女性は、普段お金を色々節約していても、使うときは使う」「男はいいや、いいやで使ってしまう」「ゲイは、女性以上にシビア」

「ゲイが女性以上にシビアなのは、より女性らしくなるために、女性行動を解体し再構築しているから」

女性は同性にほめてもらうために着飾っているんですよ」「例えばヴィトンのバックを持っていても、同姓にそのバックいいいねーと言ってもらうためであって、男性にそんなことを言ってもらうことを期待してはいません」
 #この話を聞いて、10年以上前カールラガーフェルド着ている女性に「お、いいねーカール
 #ラガーフェルド」と言って誉めたら、いやな顔されたことを思い出した(^_^;。
 #そうか、そういうことだったのか(^-^;;。

「ゲイの人は、そういう女性の行動を、解体し再構築している」「だからゲイの人は、女性以上に女性らしい」

解体・再構築をしていくことによって、消費者として洗練されていく

でもこの方法だと反復しかできない。過去の再現でしかないんですよ
 #質量保存の法則ですね(^_^。
「これからは、どうやってこれを増やして行くかを考えて行かなければ」

「今は、なんでも数字に置き換えられている」「数字だけの世界では、敗者の美学、という言葉は、あり得ない物になってしまう」「え?歯医者?敗者?。ああ、敗者」
「ゴッホのひまわりが、粗大ゴミに出されていたら拾う?」

古臭い、努力とか動機とかが重要

「色々あっただろうが、iMacを出すと決断したことはやっぱりすごい」

数字、業績は当たり前で、これからは努力とか動機とか、魂の部分」「インターネットになっても、人に来てもらうようにするためには、昔からある商人の心得のようなものを見直すことが大切」

「いろんなことを詳しく知っている人がいて、その人に情報源をたずねたら、新聞だけだと言われた」「新聞でも情報は同じ」「これは情報の中から、例えばここ水素がある、ここに酸素がある、ということに気づき、それを結合させて水を作るようなこと」 


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 これ以外にも色々な名言の数々が飛びかって、1時間半ほどのフォーラムは、終了した。
IT時代であっても、人に来てもらう、利用してもらうためには、ずっと古くから商人などが受け継ぎ実践して来た、お客さんに信用を得るための努力やテクニック、なぜそれをやるか、やり続けるかの動機、さらにはそこから産み出されるいわゆる魂の部分が大切だということには、とても共感ができた。例えばインターネットのウエッブページ作りを例にしても、一番大切なことは、ずっと続けることだと自分は常々思っていた。いつもある、たえず新しくなっているということは、延いてはユーザの信用にもつながって行く。しかしこれは、一見単純で簡単なように見えて、実は非常に大変なことでもあるのだ。
まあこんな感じで、ともすれば説教じみたりセミナーじみたりしそうな話が、さすがの糸井・サエキ両講師の絶妙なバランス感覚で、わかりやすくソフトで楽しい講演になっていた。


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 と言うわけで対談のあと、お礼を言いに控室におじゃまし、ちゃっかり写真を撮らせてもらって、会場を後にしたのであった。
関係者の皆様本当にお世話になりました。

 

2000.11.25
Masahito@通りすがりのライター