トロフィーカムの修理(センサーレンズ交換)

 野外に自動撮影装置を仕掛けていると、しばしばクマに壊される。頑強なケースも別売されている
こともあるが、経費的に手が回らないことも多い。たとえば平成23年度、環境省環境研究総合推進費
によるクマ類に個体数推定法の開発に関する研究では、60台のブッシュネルXLTを仕掛けたりした。
お金に余裕があって、できるところではそれなりの防御手段を取ればいい、それだけ。

 が、そのような処置をしないで運用するケースもないわけではないのだが、ほとんどの場合は素人
が修理などに手を出して何とかなる場合は圧倒的に少ない。ここではごく軽微な障害で済んだ場合に
ついて紹介する。

1 カメラケースの軽微な破損・割れ
 カメラケースが粉砕されるような事態はなかったが、固定用ベルト通しが千切れてケースに穴が開
くという事例は調査期間約三ヶ月間、60台中4例ほど観察された。

ベルト通し破損例1 樹木に固定されていた機体の片方のベルト通し穴破損。
ベルト通し破損例2 樹木に固定されていた機体の両方のベルト通し穴破損により落下したもの。

これらは電池室ならびに機体内部が降雨による水の滲入により回路が壊れる恐れがある。
幸いに撮影・記録機能ほか正常動作する状態で回収できたので、とりあえずは、内側からビニールテ
ープを張って目張りをした上、外側から穴をセメダインスーパーXで封止した。

補修例 硬化後もある程度弾性が保持される。シール効果はかなり高い(経験的に、あくまでも)。

接着剤の品質表示で、化学反応型接着剤とかアクリル系変性シリコン接着剤などの表示があるものな
らばよく、粘性があって”盛り”易いもの。ほかにはコニシのボンドシリーズ、ウルトラ多用途SUも
同系統。

2 軽微な破損?センサーレンズ交換
 設置した樹木からもぎ取られた挙句、センサーレンズに噛み跡(穴)あったのは、60台中2台、うち
一台は行方不明(センサーレンズのみ落ちていた)。回収できた一台については、正常動作が確認でき
たのでセンサーの触れネルレンズの交換を試みた。
 ブッシュネルXLTに使用されているレンズとまったく同一のものは見つからないが、秋月に焦点距離が
ほぼ同じ、21.7mmのレンズがあったのでそれを使った。ただし、レンズ面のスプリットパターンと
プロポーションは異なるので、オリジナルとまったく同一の性能を示すかどうかは保障できない。
 XLTのレンズの焦点距離は、レンズ面中央から焦電センサーまでの実測で約20mm(正確ではない)。
また、2012年4月18日現在このモデルは在庫限り、とのことで今後この方法での修理は困難になるものと
思われる。

破損状況1 レンズ面に噛み跡の穴。
破損状況2 レンズをはずしてみた。

オリジナルと代替品を比較すると、

白いほうが代替品
サイズを合わせて切り抜くと

レンズ枠は内側からプラスチックの部品で押さえられているが、溶着してあるので取り外しには注意が
必要。

枠をはずしてみた
枠に合わせて
枠をはめる

同じ方法で復元はできないうえ防水性が損なわれるので接着方法はそれぞれの技量で何とかする
しかありません。

結果このように

実際に使ってみると調子は悪くはなかった。
結果オーライって言うことで。

3.結露?
 長期間野外に放置しておくと、調子が悪くなってくる機体は少なくない(延6台)。防水構造とはい
っても完全とはいえない。で、稼動しなくなった機体を分解するといくつかはハンダに白い粉が吹いて
いるものも見られ、結露が電気分解してできた酸化物のように見えた。ブラシでこすり落とすなどクリ
ーニングすると復活する電子機器もあるようだが、ショートしている間にほかのところが吹っ飛んでる
こともあるので必ず復活するわけではない。

 製品として基盤にオーバーコートなどが処理されていたのかどうかは不明だがあまり湿気には強くな
さそうだった。確かに購入時に分解して基盤両面に たっぷりシリコンコートやフロロコート(商品名?)
を施してから現場に設置すれば多少は湿気対策になる可能性はあったのかどうか。

 が、自前で分解してしまうとその後メーカーやディストリビューターからの保障が効かなくなってし
まい、いろいろと後の問題がめんどくさくなる。研究費や調査費が公費で出ていればなおさら。対策は
ある程度考えられても、常識人には手を出せない。とか言ってるうちに保証期限が切れるころ(1年とか)
にはほぼ完全に手に負えない状態になっている。なんかもったいない。ということで、このような輸入品、
日本向けには固有の気候を考えて、せめてオーバーコートを念入りに処置したものを販売してもらいたい。

 いっちゃあなんだが、もともとは外国のハンターの玩具から発達したもので、研究資材として利用、と
いうのはあくまでも副次的な需要ではなかったかと思ったりする。消耗品と割り切れるほど誰もがお金持
ちではないだろうに。

 ということで、故障の原因は確かにこれだけではないのだが、これ以上掘り下げるにははっきり言って
知識もないし、製品自体もブラックボックスなのであまり適当なことはいえないんだけどね。

(2012/04/18)

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