谷越え設置の例 水害対策

 侵入防止用に恒久的設置型の電気牧柵を設置するとき、水の流れそうな沢や河川を
横断して設置しなければならない場合がある。多くの場合、クマの侵入防止などの問
題の大きい山間地域、中山間地域の多くには、異常出水、土砂崩れ、土石流などの災
害多発地域と重複する場合が見うけられる。

 そのような場所に電気柵を設置する場合、大雨による沢や河川の推移上昇がクマ、
イノシシの侵入を防止する目的で設置された電気柵を破壊する事も想定される。特に
集落包囲型、広域的行動遮断型など大規模に(延長数キロに及ぶ場合もある)設置し
た場合、これら出水や水位上昇が懸念される地域を横断しない例はほとんどないもの
と考えられる。

 特に多段式にワイヤーを配置する場合、一部のワイヤーが水没などによりショート、
充分な電圧を維持できない事により電気柵の侵入防止効果が消失する可能性もある。
また、長距離に延長した電気柵の一部の断線によって数kmに及ぶ電気柵全体の侵入防
止効果が損なわれることにもなりかねない。

 通常の点検、保守作業を頻繁に行う事によって充分管理できる問題といえることで
あろうが、労力、人件費拠出に問題があるならば、対策が遅れてしまう可能性も高い。
とくに日本のように急峻な地形が多く、降水量も多い環境を抱える場合は設置設計段
階からよく対策を吟味しておく必要がある。植生ほか地形、土質など土木建築方面の
十分な知識と情報を整理し、土砂災害の危険をこうむる可能性の高い場所においては
地域の土砂災害ハザードマップ等も参照しながら充分な対策が講じられるようにしな
ければならないだろう。

 多くの場合、電気柵メーカーはそのような事態に対していくつかの安全装置、安全
対策を講じられるようオプションを用意してる。特に水流変化のある水路を横断する
場合には、フルッドゲートコントローラーなどと呼ばれる、電柵の一部が冠水して異
常電流が流れた場合一時的に電流の流れを制御する部品などがある。

 ただしこのような部品はあくまでも部品であり、ひとつとして同じではない現場情
況に万能に対応するものとは考え難い。基本的な概念は共通するものの現場設計は千
差万別でよい。メーカーマニュアルそのほか実例もあると思うが一つ一つをよく比較
吟味して現場に合った対応を生み出して行く必要がある。もてる器材・材料には限り
がある。組み合わせてもそれほどのバリエーションを選択できないかもしれないが、
経費と労力を考慮した上+個人的な好み、+美的感覚、+突飛な発想で、せっかくな
らば楽しい電柵張りであるべきと心がけたいものである。

 1.あまり頻繁に水が流れないが不意な増水などが予想される場合。
 現実に設置された例を若干加筆訂正して概念図化した。
 とにかく主電源からの電流をどこかを迂回して流亡の恐れのあるところを迂回でき
ればよいだけの話しである。具体的な方法は無数の選択肢があると思うのでその中か
ら経費と労力がかからない方法を選べばよい。ここでは2重絶縁ケーブルを空中線化し
て対岸に渡す。フェイルセーフの考え方を持つこと。

 2.常時水が流れている河川などの設置する場合。
 各メーカーが推奨してる方法。下段ワイヤーからチェーンを垂らし、フルッドゲー
トコントローラーや切断スイッチを設置する。基本的な概念は共通していれば”絵”
はどんな風に描いてもよいだろう。

 ”絵”は同じではないが、基本概念を同じにした電気柵が設置されている例として、
牛小屋高原エコロジーキャンプ場など。
 
 3.広域的、かつ常時土砂崩れ危険地帯。図はない。
 恒常的に設置する場合でも常時土砂崩れ危険地帯では、丸太杭やインサルティンバ−
(ガラガーの場合)ではなくてあえてグラスファイバーポールとリボンワイヤーで済ま
せてしまったほうがよいかもしれない。長期的に見た場合堅牢性に欠けそうだが、侵入
防止効果は充分な電圧が保たれていればあまり問題はない。それよりは広域的に破壊さ
れても、あまり時間を割かずに侵入防止効果を復旧できる方法も選択できる。簡単に設
置できる=簡単にし様変更ができる、という利点を活かしてみてはいかがだろう。
 
 以上は全部が自分で設置経験したものばかりではない。が、一応設置作業に携わって
きた範囲で少ないながらひとつの反省点を踏まえてはいるつもりではある。しかし単な
るお話。

2006/08/07
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