ブッシュネルXLT防湿対策
 野外設置型の自動撮影装置というと、過去研究者自らちまちまとタッパーウェアなどを利用し
てフィルムカメラの防水ケースを作っていたころを思い出す。現在では、デジタル化、小型化さ
れた自動撮影専用機が多数市場にリリースされ、また、使い勝手も相当よくなっていて、いろい
ろな意味で手放せない機材のひとつといえるまでに成長してきている。

 このところ自動撮影カメラを野生動物のインベントリーや生態調査に多用するケースが増えて
きていて、普及と同時に動作不良なども多発しているようである。
 最近の自動撮影カメラの国内ディストリビューターの説明を見ると、生活防水・防滴に相当す
る”防水機能”はあるが、”完全防水”ではない旨の表現が見られることがある。それ以前は特
にそのような表現が目立つことはなかったが。背景には、使用中の不具合の発生が予想以上に大
きかったからではないかと想像する。
 実際、ハウジングの構造からは特別に防水性も防湿性も強固とはいえないような気がする。誹
謗中傷的にとられると逆に迷惑なのだが、ユーザー目線的には、実際の使用環境が多湿であった
り、高山に長期間設置したりすることになるわけで、機材として設定された耐性を超えた環境も
あったかもしれない。
 目立つというだけで本当にこれが本質なのかどうかはわからないとした上でだが、不具合の主
たる原因は基板上に発生する結露など、どうしても滲入してしまう水分に起因することも多いの
ではないかと推測する。

 LSI、回路、プログラムの解析能力はないので、あくまでも見た目が基準なので根本的な誤解は
あって当然ということは認めるたうえで。これまで、調査中に不具合を起こして動作しなくなっ
たカメラを何台か分解して基盤の状態を目視で観察してきた。
 特徴的なのは、基板上チップ化素子など機械でハンダ付けした実装部分には、見た目の異常は
あまり観察されなかった点。もしすべての部品で異常がなければれば単にバラしただけで終わっ
た。が、一部、人手によるものと思われるハンダ周囲に、フラックス汚れが原因と思われる白色
化結晶などが多数発生していることが観察された。
 フラックスはハンダ付けする際、溶融ハンダの流れ込みを良くしたり、接合時、溶融ハンダの
酸化を防いだりなどの機能があるので普通に使用される。しかし、吸湿性や若干の腐食性も見ら
れる。
 フラックスは鉱物性油脂(ほか松脂なども)などを成分としているので、完全密閉された環境
や、あまり環境変化が少ない屋内設備であれば、フラックスの保護性が認められる。しかし、高
湿度条件では逆に吸湿、変性、腐食の原因となることがある。部品のハンダ付けの後、余分なフ
ラックスが基板から除去されなていないと、”悪条件”では何らかの障害の原因となる可能性が
ないとはいえない。
 これを防ぐには基板製作時に、ハンダ、基板クリーニング、加えて防湿性オーバーコート(シ
リコンなど)が必要になるものと思われる。ただし、クリーニング、オーバーコートと行程がい
くつか増え、当然それは価格に反映されるという問題もある。
 また、これを施したところで、不具合の原因がそれだけかどうか実はわからない点もあり、あ
またある不具合の一部を抑えることが期待できるかもしれない、といえるだけ。
 もし自前でオーバーコートを施すつもりならば、購入直後に基板上のフラックス汚れほか問題
を探し対策を講じることが最善だが、購入直後に自前で改造やネジをはずすなどの行為は、せっ
かく保証制度を台無しにする。私物であれば誰も遠慮はしないだろうが、公費購入などの場合、
自前分解ほか処理などは常識的に無理。

 最近とあるディストリビューターの方と話す機会があって、いくつか興味深い話を聞くことが
できた。また、それがこれまで個人的に故障品をバラしたりしているうちに気がついた問題とや
や符合する点があったりでかなり興味深かった。
 ひとつ、別のページ−トロフィーカムの修理(センサーレンズ交換)−あたりに触れた、もと
もとこれら自動撮影装置はハンターの玩具説、正確ではなかったにせよ、製造側の主たる販売対
象はハンターであり、映像記録を研究データとして捉え、欠落などの不確実性を嫌う”調査・研
究資材として扱いたがる研究者”には必ずしも向いていないとも取れる話だった。
 製造者の設計思想として販売対象が精度を前提にせず、使用する環境があまり苛酷ではないこ
とを想定したとするならば、特にオーバーコートなど施さなくても特に大きな問題はないと捉え
ていたかもしれない。設計仕様や販売価格は、どのような市場を対象にするかで変わってくるこ
とだろう。

 実際には不具合を起こした機体が、どのくらい製造者やディストリビューターにフィードバッ
クされ解析されているのかもわからないので、今後どのような方向に”改善”が進むのかもまっ
たく不明。一応業務上、保障期間中の無償交換に応じる国内販売業者を通していたこともあり、
返品した故障機体が今後の改善に役立つものと信じたい。

 ということで、晴れて1年間の保障期間を過ぎた50数台について、自前での防湿処理作業を行
った。本当ならば購入すぐに施さなければほぼ意味がない。すでに1年使ってしまった機体では
表に表れていない不具合を抱えたままの処理になるので、果たしてどの程度の効果があるのかわ
からないわけだが。

 シリコンオーバーコートをする前に、今回使用した機体の形式と特徴をざっと俯瞰する。
モデル119425 2009年ごろまでリリースされた、設定確認用白黒モニタ付。
 正面外観 塗装はカモモデル
 白黒モニタ、コンソール、電池室
 基板正面 センサー、カメラ側
 基板裏面 DRAM、フラッシュメモリ、CPUがある。液晶パネル配線はコンソールのボタン側を
     経由している
モデル119455 2010年ごろリリースされた、設定確認と記録映像確認用カラーモニタ付。
 正面外観 このあたりから赤外線LEDの数が増えた
 カラーモニタ、コンソール、電池室
 基板正面 119425とは部品配置が若干異なる
 基板裏面 カラーモニター配線はメイン基板から直接接続。シート配線が短く、あけるとモ
     ニタが脱落する
モデル119456 2011年ごろリリースされた。基本119455と同じだが温度計と集音マイクが付加。
 正面外観 基本的に119455と変わらない
 基板正面 マイクと温度計がコネクタで接続。赤外線照射器パネルの配線もハンダ付けからコ
     ネクタに変更。取り外ししやすくなった(製造者側的には組みやすくな
     った、だろう)
 基板裏面 カラーモニター配線はメイン基板から直接接続。シート配線がややながいので、あ
     けてもモニタが脱落しない

 リリース年度はおおむね日本国内。モデル119425と119455の間にも数種モデルがあったが、一
部使用実績はあるものの分解まではしていないのでここでは触れない。

 そのほか、重要な点、どのモデルでもメイン基板とコンソールをつなぐ白いシート配線の接続
部品ははずさないほうが良い。シート配線の接点を固定している部品で取り外しは可能ではある
が、ははずそうとすると割れたり欠損したりする。その後の接続不良などの原因となるので、め
んどくさくてもつないだまま隙間を縫って作業するしたほうが良い。もし、部品の知識があって、
同じ部材を用意できる場合はこの限りではない。その辺は個人の技量と自己責任ということで。
 精細な写真で説明してないのでわかるわけはないと思うが、メイン基板正面の円筒状の部品が
あって、これは多分水晶発振子思われるが、119425と119455には2個、119456には3個実装。集音
器回路に関わる発振回路に使われている(のかどうか)。
 119456の背面下部に突起物が付加。どこでどのように言われて”改善”したのか不明だが、現
実的には便利とはいえなかった。119425や119455などは立ち木などに設置したときに、ベルト通
し穴のために下向きになりがちで、俯角、仰角の調整が必要だった(というべきか、調整マージ
ンがあったので自由に変えられたというべきか)。固定的になったので俯角がつけにくいという
不便さを感じる人もいたかもしれないし、安定したと感じた人もいたことだろう。
 また、映像記録形式が119455まではASFだったが、119456でAVIに変わった。また、映像エンジ
ンの処理方式が変わったためなのどうか知らないが、モニタ映像、SDの記録映像ともにジャギー
が目立つ。後発だから良いとは限らない(個人的な好みの観点では)。
 そのほか使用上の変更点、概観上の変更点はそれぞれの取説に書いてあるとおりなのでこれ以
上は触れない。

トラブルの原因につながっていると思われる問題 湿度と結露
 このような自動撮影装置の防水性は、野外においてもいいけど、少しぐらいはともかく、直接
水が掛からないようにしといてね、ということ。たしかにそれに注意しておけばトラブル起こし
にくいかな、とは思う。例えばメーカー提供の対衝撃用(クマを想定した)ケースをかぶせたり、
照明や撮影画角をさえぎらない程度の、手作りカバーなどをかぶせただけでも、直接の水濡れ対
策としては効果があるかもしれない。
 が、設置期間自体は短ければ2−3日、長ければ1ヶ月毎くらいで記録の回収と電池チェックは
行われる。むしろデータの回収は頻繁に行ったほうが記録としての鮮度や利用性は高いのだろう
が、現状、無線などによるデータ転送とかべらぼうに長い電池寿命が実現していないので、見回
り回数は電池寿命と記録媒体の容量に依存する。水の滲入は、データ回収やメンテナンスの際に
筐体を開くことでも起こる、ということにも留意したほうが良い。

 ふたには防水性ガスケットがついているが、筐体を成形する際の金型がよくないのか完全密着
は疑わしい(これはばねでかなりきつめに抑えて密着性を確保してるっぽい)。また、外部電源
接続穴があるものでは、使わないときにかぶせるゴム栓が外れやすい場合もあって、水が滲入す
る要素は多いかもしれない。言っちゃあ悪いが、筐体の耐水性はあまり当てにしないほうが良い
かもしれない。
 ということでひょっとすると筐体の構造よりも、基板自体の設計と製造段階で湿気に対する耐
性を高める対策が必要なのかもしれない。

 湿気が入る仕組み(推測)
 特に気温の変化が大きい環境では筐体内部と外気の圧力差が発生しやすい。筐体はプラスチッ
クとはいえ剛体構造なのでその圧力変化に追従して形状が変化するわけではない。
 このためわずかでも内外に圧力差が生じれば、隙間から空気が流通してしまうかもしれない
(例えば、日中は気温の上昇で筐体内部の圧力が上がるが、夜間は収縮減圧傾向など)。そう考
えると、特に朝露が降りるような環境に長期間放置を想定するとなんとなく不安になる。
 不安を増長する例 これは足掛け3年(実際の設置期間は不明)高山に仕掛けられたモデル
     119425のガスケット
 
 で、現場に設置している間に撮影動作しなくなったり、誤動作が増えたり、モニターが写らな
くなったりなどなど・・・不具合起こして事実上調査に使えなくなった機体の基板上でなにがお
きていたかを見てみた。
 当然こちらの知識レベルでは、回路構成自体やLSIの中身がわかるわけがない。あくまでも見た
目の異常ということで。
 写真がうまく撮れてないので正確な説明にはならない、ということを最初に断っておく。その
あたりはもう少しまじめに取り組んでみようかと思う人がいたらそれに任せる。いるのかどうか
は知らんけど。
 
 基板上に実装されているチップ化部品それぞれには、見た目の異常はわからなかった。基盤自
体は緑色のレジンで覆われているので、配線が露出しないかぎり異常を起こすことはないが、電
源線や別途手作業でハンダ付けしたとおもわれる部品周りに、白色物質の付着やハンダの腐食が
見られた。白色の汚れはハンダに含まれるフラックスが熱で飛び散り、空気中の水分と反応して
白色化したものと思われる。
 ハンダ腐食は、通常銀色の接合面が灰色や白色に変わっていること。これもフラックスの吸湿
や結露が電気分解したりと湿度に関わる変化と見られる。
 これらが基板上でもっとも激しく見られたのは、赤外線LED回路の裏側、水晶発振子のハンダ付
け部分、焦電センサーの増幅回路周辺、カメラレンズの赤外線カットフィルター駆動ソレノイド
の給電線と基板の接合部などであった。これらは119425、119455、119456いずれのモデルにも共
通して見られた。
 赤外線LED回路の裏側
 水晶発振子のハンダ付け部分 ハンダの腐食
 焦電センサーの増幅回路周辺
 ソレノイドの給電線と基板の接合部 白黒線の接合部
 119425の白黒モニターはメイン基板から一度設定ボタンの配線を経由しているが、それをつ
なぐシート配線の接合部一面に白色物質で覆われていた個体もあった。
 フラックス汚れに起因する白色物質 モデル119425の白黒モニターの結線部。
 そのほか、焦電センサーの取り付け部分周辺も白色物質が発生しているケースも多かった。
 これらの白色物質や腐食は、ハンダ付けあとフラックスを完全に取り除かなかったために起こ
ったのではないかと思われる。この汚れを残すと吸水してショートなどの原因となる場合があり、
集積回路などが異常を起こし動作不良につながったのではないかと推測される。

 これらのことから、もし正常動作している個体に何らかの防水・防湿処理をするのであれば基
板全体ではなく、異常が起こりやすいところを重点的に施すことでも不具合の発生をある程度防
げるかもしれない。

シリコンコート
 はっきり言って湿度や結露がすべてのトラブルの原因というわけではない。わからないことも
多いので全体のトラブルのうちのいくつかが解消される可能性があるかも知れない、というかな
り消極的な個人的見解に基づく。
 現実的には、この処理によってさらに別な問題を引き起こす可能性もあるので、まねしてどう
にかなっても責任は持たない。ということで。

 今回使用した材料は、
 シリコンコート剤  太洋電機産業BS-C20B
 秋葉の千石電商とかマルツパーツなどで普通に販売。
 このシリコンコート剤は、有機溶媒を用いているので量の多少に関わらず、適当な排気施設な
ど換気の良い場所で使用すること。また、火気厳禁。
 基板に塗布する前に、フラックス汚れを除去する。専用の除去剤も販売されている(普通コー
ト剤と並んで陳列されているが)。ほか、歯ブラシなどでも除去できる場合があるが、強く擦る
と基板をいためる場合もあるので注意すること。
 先に述べたようなフラックス汚れは、故障個体でなくても認められる。放置した場合さらに汚
れが発達する恐れがあるので注意深く基盤を観察すること。ただし、これまで示した例は、あく
までもこちらの立場で観察できたものであり、メーカー、モデル等が変われば当然事情は変わる。
 オーバーコート自体は、いくつかの場合を除いて基盤に害を与えることはないが、起こりそう
な障害の軽減が期待できるというだけで、すでに起きている不具合(顕在、不顕在いずれの場合
でも)を修理することではない。
 場合によっては、フラックス汚れがまったく見られない事例もあるものと予想される。このた
め、やみくもにオーバーコート処理をするのではなく、問題を起こした個体をよく観察し、処理
が必要と思われる部分は自分で判断すること。何の変化も見られずなんだかわからないという場
合は、無理して処理などしないほうが良いと思う。
  
 今回処理したのは、フラックス汚れが顕著だった部分を中心にした。特に写真を撮ってない。

 赤外線LED基板裏面ハンダ付部分全体
 メイン基板上赤外線LED基板の給電線(赤黒)のハンダ部分
 メイン基板上水晶発振子(と思われる)部品のハンダ部分(119425、119455は2箇所、119456
     は3箇所)
 メイン基板上焦電センサーの信号増幅回路周り
 メイン基板上光学系赤外線カットフィルター給電線(黒白)接続ハンダ部分
 メイン基板上USB接続端子周り(必須ではない)
 メイン基板上電池室からの給電線(赤、青、緑)接続ハンダ部分(XLT固有の接続線、基板両
     面処理すること)
 メイン基板裏面焦電センサーのハンダ付部分
 メイン基板裏面LSIほかメモリなど足・端子が露出している場合
 メイン基板裏面モニタ接続端子(119455、119456)
 メイン基板裏面マイク給電・信号線ハンダ部分(119456のみ)
 メイン基板裏面温度計給電・信号線ハンダ部分(119456のみ)
 メイン基板裏面SDカードスロット端子
 メイン基板裏面シート配線の接続端子基板側
     シート配線は接続ソケットで接点を圧着しているだけなので接点にオーバーコート
     剤がしみこまないように注意する
 コンソール側モニタ用シート配線ハンダ接合部(119425のみ)
 コンソール側モニタ用シート配線ハンダ接合部(119455、56では使われていないが接点が露
     出しているので念のため)
 そのほかハンダ手付け処理されていると思われる部分
 そのほか白色汚れが観察できた部分 等

 モデル119425で処理中 ビデオ映像からキャプチャ
 モニタ給電シート配線部
 SDカードスロット信号線など
 外部電源給電部
 LED給電部
 赤外線カットフィルタ給電部
 赤外線LED基板

 と、話は冗長になったが、とにかく基板の心配な点にオーバーコートしてみた。実際これでど
のような結果になるかはまだわからない。諸般の事情で処理した機材がいわば”使い古し”なの
で、たいして期待はしていない、というのが正直なところ。

(2012/07/15)


////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
余談1:
 モデル変更などで機材の特性自体が変わってしまう可能性がないわけではない。複数年継続的
な調査でも、単年度区切りの予算の関係でその年度ごとに機材を購入しなければならない場合や
年度ごとに受託業者が変わって採用機材が代わる場合も想定される。
 また、年度をまたぐと、前年モデルが生産されていなかったり、ディストリビューターの都合
で最新型のモデルのみの供給(常に新しいものを供給するのは販売側の基本的なサービス)しか
ないとすれば、同系列であったとしても仕様が変わってしまうことがある。
 何か前年度の比較、のような調査設計になっているような場合、はたして同じ精度のデータ取
得(映像記録)ができたかどうかわからない、というような問題が出ないとも限らない。

 異常に悲観的な展開をしているが、この手の検証はかなりめんどくさいので、はっきりいって
お手上げの状態なので知らないフリをしておくしかないのかもしれない。
 または、それほどたいした問題ではないと思えなくもないので無視しておいてもあまり害はな
いかもしれない。どう思うかは自由。

       野生動物調査用センサーカメラの 機種間性能比較

 というような比較実験もあるので参照されたら良いと思われる。これでは特定機種との比較が
主体。今後を期待するが、第三者目線でもっと広い範囲の機種で実験できれば何かの役に立つか
もしれない。が、生態屋目線ではどうしても”実地での動作にこだわり”いきなり野外実験の結
果だけを評価する傾向が強いかも(上記文献はしっかりした室内実験っぽい)。
 やはり工業試験施設を用いた基本性能試験は必要だと思う。結局お金と体力のある組織にお任
せするしかないんだけどね。

////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
余談2:
 基板を露出させてみて気がついたこと。3モデルとも外観サイズなどはほぼおなじ。だが、基
板構成は仕様変更に合わせて変化している。モデルごと基板設計をしなおしていると思うので改
良・改善は行われているようだ。が、どのような市場セグメントとか、どのようなユーザーの声
がどのように反映しての結果かは不明。そんなこんなで設計思想とお客様満足度に温度差が発生
するわけだが、それはそれで仕方がない、って言ってて済むのかどうかも不明。

 機械は機械、どうがんばっても設計にも製品に”完璧”は存在しない。とはいえ特に不確定的
な変化にとんだ環境で使うことが前提になるような調査研究分野では、予期せぬ不具合や少しの
トラブルがデータの欠損などにつながり、後々に与える影響は無視できない問題。可能な限りの
対策を講じておくことは必要。が、基板のオーバーコートはともかく、フラックス汚れの除去程
度は製品の性能以前電子機器製造における基本姿勢に関わるのではないか。

 常に良いものを追い続けるのも致し方ないし、それに答えてかどうかはわからないが毎年のよ
うにモデルチェンジもある。一方で、前年採用した機材が翌年製造されなくなって入手不可能に
なったために、同じモデルが引き続き採用できないことを問題視されたこともある。
 これは一般市場向けの一般機材だから仕方がないと言ってすむのかどうかは、それを使用しよ
うとしている分野で捉え方が異なる。ただ、センサー感度や耐久性などモデルごと、機体毎に大
幅に、もしくは微妙に異なるわけで共通の土俵やら基準にのせて、メーカーや機種モデルに関係
なく適用できるキャリブレーション法が必要になるのかどうか。

 結局は、”感度は同じ”と考えてとか、”性能差はない”と想定して利用してしまうかもしれ
ない。だが、そう思ってやらかしたことがある。
 センサー感度を119425では”High”に設定していたので119455も”High”に設定したところ、
連続撮影状態になったため、ほんの数時間でSD容量いっぱいまで使い切り、本当は10日間で得ら
れたはずのデータが無効になった。事前の調整を十分行わなかった”人為的ミス”とはいえ同じ
系列でも性能差がある可能性は大きい。
 このケースの場合、119425の”High”は119455”Normal”に近かったようであった。ただし、
119455と119456の差はこれほど極端ではないか、もしくは同じと考えられた。119425、119455、
119456いずれもセンサー周りの回路構成は素人ではわからない。
 ただ、外見は似ているが品番の構成の違い(25と55、56という連番の振り方)から、”中身”
は違がった可能性はあったし、それに頓着しなかったのはやはりこちらが電子機器についてはド
素人だから、ってことだったかもしれない。
 っていうか、ド素人だからこそ、新しい機材を買ったら、機材の氏素性には関係なく、できる
範囲ででも比較検証を怠ってはならないってことだろう。この事例はケアレスミスというか手抜
き的人災で、先に述べたように機体モデルが同じ系列ならば”性能差はない”などとゆめゆめ思
ってはならない、ということだったと思う。
 研究用に耐えられる機材ならば、PIRの感度調整は”normal”、”low”、”high”だけでなく、
加えて各段階での微調整用にバリコンでも付加されると面白いのだが。

 実際ばらして基板を見て、設計思想の違いというのか製品に対する思い入れの違いがなんとな
く伝わった気がする。結果、高温多湿、温度変化の激しい環境で長時間使用するにはやや難点が
ありそうな機材だったと思う。
 今後は製造工程をある程度改善してもらえるのか、もしくは、ユーザー側が保証が効かなくな
るなどのリスクを覚悟で自前で手を加えるかどうか。このあたり製造者とユーザー間ですり合わ
せができないと未来永劫トラブルかかえる羽目になる。
 機械に完璧はない。そのためトラブル自体は何らかの形でなくなりはしないが、予防の余地が
ありながら改善されないトラブルは問題外。

 このような機材の市場における、いろいろと細かい”日本人研究者”セグメントの声って製造
者や提供側に届いてる?単に待ってるだけでは製造者側は、情報がなければ彼ら目線で作ったも
のしか出せない。
 一般的に製造側は、ユーザーの声を聞いていると言ってはいるが、実際には作れた物で”市場
を育てる”という傾向の思想で製品をリリースしてくるのだろう。しかしそれがユーザー側に必
要なものだったか必ずしも一致しているわけではない。
 先日話しを聞いた、とあるディストリビューターも日本向け商品の開発に情報のフィードバッ
クの必要があるとのことだった。情報のやり取りができなければ改善は不可能。
 ユーザー側も”自分たちに必要な良い機材を育てる”意識を持つ必要があるわけで、そうでな
ければいつまでたっても、どこか物足りない”最新機器”に金を支払い続ける羽目になることで
しょう。
 どうなることやらわからないが、今後に期待しよう、でいいのかね。

////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
余談3:
 DNA分析における、シークェンサーのように社会的要求も高く、単価も高いが分析結果自体に
高い価値付けができる機材は、それなりの利益が保証される。そのため研究者との緻密な連携が
できていて、研究者目線でも日進月歩で良いものができていることだろう。
 一方で自動撮影装置を使う研究者市場、調査研究市場自体がどれほどの規模はどれほど期待で
きるのか、またそれを使って得られた結果自体の価値がどのくらいなのか・・・・比較の対象で
はならないにしろ。
 欧米ではハンター市場にリリースしたことで一定の利益が見込めているのだと思うが、日本の
ように狩猟者人口も年々減少しているところでは同じような市場構造は見込めないだろう。それ
に代わるものとしてはセキュリティーか対極のアンダーグラウンド的な利用者か。
 野生鳥獣保護管理とか環境調査とか大義名分はあってもそこは市場経済、大手が”危険を承知
で”そんな市場に積極的に乗り出すとは考えにくい(セキュリティー分野は巨大な市場があって、
大手、中小も検知から情報処理まで一貫したシステムとして存在。ここでは現在動物調査用自動
撮影装置として出回っている海外製品と同じような機材を作るかどうかという意味で)。
 また、ひょっとすると、違法性の高い分野に使用された摘発機材にそれら大手企業のロゴなど
がはいっていたとしたら、企業イメージも丸つぶれになるのは間違いない。参入してこないのは、
いろんな意味で危険と踏んでのことだろう(あくまでも推測)。

////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

(2012/07/16)