資料集目次へ▲  ホームページへ▲


建設大臣への要請書

小田急小田原線線増連続立体交差事業(喜多見駅から梅ヶ丘駅付近間)について

 政官財癒着構造におけるゼネコン疑惑の解明とその根絶は現下の急務であります。細川新内閣は、このような癒着構造による公共事業を抜本的に見直し、生活者重視の社会へ転換させることを、政治改革と連動する基本公約として発足されました。
 そのような情況の中、小田急小田原線(喜多見駅−梅ヶ丘駅)の線増連続立体交差事業計画が、本年2月、東京都より都市計画決定され、近く貴職に対し事業認可申請がなされようとしています。
 しかし本事業計画は、地下方式による事業実施を求める、世田谷区議会の決議(昭和45年、48年)や、沿線住民の延べ十数万人にのぼる要請署名を無視して高架方式を採用した、住民不在の計画であります。しかも事業者側は、都条例に従った環境アセスメントを行わず、また基礎資料である事業調査報告書の情報公開もしないばかりか、小田急電鉄や工事受注予定業者である大成建設・ハザマのゼネコン従業員等を住民説明会に大量動員して住民の声を封じようとするなど、計画策定手続きをすべて強圧的に進めたあげく決定してしまったものであります。 本事業が実施されれば、住宅地域の真ん中を民家でいえば四階建てのコンクリートブロックの長城が縦断し、しかも激しい騒音や振動等の公害を広範囲に撒き散らすことになります。一方地下方式によることとすれば、そのような環境破壊は全くありません。
 事業者側は地下方式によると3,000億円から3,600億円を要するが、高架方式では1,900億円ですむと説明していますが、専門家グループの算出によれば、現在世界で最も進歩している我が国の地下鉄工事技術をもってすれば、地下方式は多少のゆとりをみても1,950億円ですむのに対し、用地買収を必要とする高架方式は環境対策費も考慮すると3,400億円もかかるとされ、地下方式の方が安いことが明らかにされています。
 このように本事業計画は手続き・内容とも著しく不条理なもので、政官財癒着の公共事業の典型であるばかりでなく、都市計画決定はされたものの事業認可は未だなされておらず、制度上見直しが十分可能な段階にあります。しかも本事業には前述したように地下方式という、すべての面で本計画より優れている具体的代替案が存在しています。
 ところで東京都等は、既に都市計画決定されていること、計画について事業認可の段階で見直された前例がないことなどをあげて、建設大臣が見直す余地はないかの如き宣伝をしています。この議論は、これまでの同種事業が、本事業も含めて政官財癒着構造のもとで地方自治とは名ばかりの行政指導で行われてきたこと、そしてそのことが腐敗と犯罪を生み出してきた原因であり、その故にこそ細川総理が政府の責任と権限において抜本的見直しを約束されていることを忘れた暴論であります。
 また、本計画事業費の行政側負担のうち52.5%もの部分は国庫負担によるものであり、当然国が事業内容についても直接責任を負うべきでありますから、この点でも東京都等の主張は誤っています。
 以上の理由により、私たちは細川内閣に対し、別紙の署名を添えて、本事業計画の全面的見直しを求めるものであります。貴職におかれましては、その所管大臣として事業認可の可否を決するお立場にありますので、本事業につき認可申請がなされた場合はその認可を凍結して実情を調査された上、事業調査報告書を公開するなどの住民参加の手続きのもとで抜本的見直しをされるよう要請するものであります。

 平成5年11月2日

細川総理に「小田急線の地下化」を要請する実行委員会

建設大臣 五十嵐広三 殿


(読売新聞 1993年11月3日記事)

小田急高架化見直しを

世田谷の沿線住民、建設大臣に陳情

小田急線の高架・複々線化計画で、世田谷区の沿線住民で作る「細川総理に「小田急線の地下化」を要請する実行委員会」(水島英夫委員長)のメンバーが二日、五十嵐広三建設大臣に対し「計画の抜本的な見直しを」と陳情した。
 この日の陳情には住民四十人が訪れ、「高架化計画は住民の意向を無視している。地下化という対案があり、制度上も再検討が可能な段階なので、認可申請を凍結して欲しい」などとする要請書を、一万七千六百四十六人の署名とともに手渡した。
 さらに「一地域の問題としてでなく、細川内閣が掲げる「問題ある公共事業の見直し」のリーディングケースに」と要請した。
 これを受けて、五十嵐建設相は「住民との意見の隔たりが大きいのは残念。(住民にも地下式という)客観的にレベルの高い対案がある。それを大事にしながら話し合い、検証するよう都に言いたい」と答えた。
 計画は、小田急線の梅ヶ丘−喜多見間六・四キロを高架・複々線化するもので、ことし二月に都市計画決定され、都は年内にも建設大臣に事業認可を申請する方針で準備を進めている。


(日経新聞 1993年11月3日記事)

小田急線高架化計画 地下方式に変更要望

    沿線住民団体、建設相に

 東京都などが進めている小田急電鉄、喜多見−梅ヶ丘駅間の高架化計画について、沿線住民グループ(水島英夫委員長)は二日、同計画を地下方式に変更するよう求める要望書を事業認可権者の五十嵐建設相に提出した。要望書と併せ一万七千人を超える署名も手渡した。
 これに対し五十嵐建設相は、都に高架方式を採用する根拠になった事業費算定などの基礎資料の提出を求める考えを示した。都は「計画の見直しは考えていない。認可を得次第、今年度内にも小田急電鉄と高架方式で工事に着手したい」(建設局)としている。


  ページの先頭へ▲  資料集目次へ▲  ホームページへ▲