もぐれ小田急線

号外 1998年12月27日

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号 外 も く じ

都が下北沢の地下化を公表
経堂工区、高架見直し必至

環境に優しく安く早い  今こそ、全線地下へ

都が下北沢の地下化を公表/経堂工区、高架見直し必至

12月8日の都議会本会議で成戸寿彦都市計画局長は、小田急線東北沢・梅ヶ丘間の整備方針についての都議の質問に、「現在、線増部分は地下方式で整備する案で、また、在来線については線増線計画を勘案しながら、立体化計画の案を、関係者で構成する検討会に提案し、協議を進めている」と答えました。

もってまわったいい方をしていますが、これは線増連続立体交差事業を下北沢地域においては地下方式で行うと表明したことに他なりません。

 

方式は2線2層地下

局長のいう検討会とは12月4日に開かれた東京都・世田谷区・渋谷区・小田急でつくる「小田急線梅丘・東北沢間整備方針検討会」を指し、この検討会で東京都は2線2層地下方式、4線並列地下方式、2線高架2線地下方式、4線並列高架式の4案を示しています。当然、線増部分を地下とすれば、この4案のうちから4線並列高架方式は消えます。2線高架2線地下方式はどうかといえば、井の頭線が小田急線の上を走っているので、その上をまたぐ高架は技術的にも費用の上からも著しい無理があり、東京都自身これを放棄した経緯があることから、この形はありえません。また4線並列地下方式は現在の東京都の計画からすれば、オープンカット形式なので用地費はもとより工事費がシールド方式の約3倍となり経費の無駄は甚だしくこれもありえません。従って、選択肢は2線2層地下方式しかありえないのです。

市民運動の画期的勝利

私たちは永年にわたり、小田急線の喜多見・東北沢間の線増連続立体事業は高架ではなくて地下方式で行うべきであると主張してきました。既に高架で事業認可をした地域については事業認可取り消し訴訟や工事差し止め訴訟で闘っていますし、この夏に提訴した小田急騒音等複合汚染阻止訴訟では、下北沢地域も含め違法騒音の除去のために計画の地下化への転換と、騒音被害に対する損害賠償を求めています。今回、

東京都が下北沢地域の地下化を表明したことは、私たちの市民運動の画期的勝利を意味します。

隠していた下北沢の地下

 下北沢地域の構造形式を地下方式とすることは、既に1987年度・88年度に東京都が実施した小田急線連続立体事業調査で示唆され、遅くとも1991年には決定されていましたが、主として2つの理由から秘匿されてきました。一つは下北沢地域の地下化方式採用を公表すれば、成城・梅丘間の高架方式採用の不合理性が決定的に際立つからです。もう一つは線増連続立体事業を梅丘で分断し、下北沢地域の計画を未定とし、喜多見・梅丘間のみでの「細切れアセス」(*注)を行えば、将来増える電車の本数やスピードアップをごまかし、この事業の決定的な環境破壊を隠蔽する環境アセスが実施できるからでした。

(*注)2つ以上の関連する事業について切り離し、いわば「細切れ」にして環境アセスを行うことは都条例に反し、違法です。

東北沢・梅丘間がすでに地下方式で決定しているとの情報は、1993年11月に業界紙がすっぱ抜き、1994年11月には大臣交渉の際、野坂元建設大臣の口を通じても住民に伝えられていました。信頼できる筋からの情報も得ており、私たちは下北沢地域の地下化決定を確証し、機関紙上で宣伝にもつとめてきました。ところが東京都や世田谷区は、これまで「未だ決定していない」との答弁を繰り返すのみだったのです。

環境に優しく安く早い  今こそ、全線地下へ

違法騒音をクリヤーできない複々線高架

下北沢地域が地下であれば、既に成城地域が地下であるのだから、これをつなぐ経堂工区が高架であるのは著しく不合理です。本年7月24日に政府・公害等調整委員会の責任裁定が下され、等価騒音レベルで日平均70デシベルを越える騒音被害に賠償命令がなされました。1995年の最高裁判決が国道43号線道路公害訴訟で示した沿道の受忍限度日平均60デシベルからすれば、小田急に極めて甘いものですが、この数字でさえ小田急の高架事業ではクリヤーできず違法となってしまうことは、東京都が実施した環境アセスメントの結果からも明らかです。騒音問題一つとってもこの地区の高架見直しは必至となっているのです。

高架の誤り、明らか

 経堂工区では、本年11月1日より、最大の開発拠点である経堂駅前後の上り線のみを高架で立ち上げ、極めて不自然な形で一部を高架駅舎としました。事業者はこれを高架工事の広告塔に使うつもりでしょうが、経堂工区の予算執行率は平成9年度末で27%に過ぎず、これには用地費も含まれるため、工事の進捗率は実際には20%にも届いていません。しかも複々線事業用地や環境側道用地には立ち退きを拒否する住民が多数存在します。今回、下北沢の地下化が確実となったことで、これまで地下化は不可能としてきた当局の説明がデタラメであることがハッキリしました。もはや、経堂工区の違法かつ不合理な高架計画の強行は至難の業であり、連続立体事業の完成期限平成11年度はおろか、不当にも期間延長した複々線事業完成期限平成16年での達成もできない状況となっています。

高架の1/3の費用で実現できる地下化

 私たちは細川政権下で、当時の五十嵐建設大臣の提言に沿い、専門家の協力を得て東京都と高架・地下の事業比較の検証作業に着手したことがありました。情報公開訴訟にも勝利し、基礎データを開示させての検証作業は多くの実りが期待されていたにもかかわらず、細川政権崩壊の機に乗じて、東京都は約束を破棄し一方的に経堂工区の高架での事業認可申請をおこないました。この際に得た東京都のもつ基礎データを使えば高架・地下の事業費比較で、地下化は高架化に比べて約3分の1で済むことが明らかになりました。2線2層地下シールド方式の場合は在来線跡地や既存買収地の有効利用が可能になるため、高架下の利用しか得られない4線並列高架と比べれば、創出される資産を勘案した事業費用比較では733億と2038億という大差になるからです。しかも、この事実は東京都側も認めているのです。

小田急高架見直しを 日本経済再建の象徴に

事業費が3分の1で済む以上、現在高架で工事を進めている経堂工区の地下化への転換は、現在の高架構造物を壊しても未だ採算が取れます。しかも、高架・地下の移行区間には膨大な工事費や環境対策費がかかるため、高架見直しを伴わない下北沢地域の地下化は極めて高か上がりになるのです。従って、下北沢地域の地下化とあわせて既に地下化で工事をしている成城駅付近までの全線地下化への事業転換を図ることこそが合理的であることは間違いがありません。

小田急高架事業は中曽根政権下で提唱された「アーバンルネッサンス」政策の下、道路新設・拡幅と周辺部の高層大規模再開発を伴うものとして企画されてきました。

小田線増連続立体交差事業は東京都と日本鉄建公団が施工者となり、税金と利用者の負担によってなされる事業であり、純然たる公共事業に他なりません。経堂工区だけでも東京都のいう鉄道事業費は2400億円であり、道路・周辺事業を含めると予想される事業規模は一兆円を超えます。未曾有の不況下、バブル再来を願う無責任な声もありますが、それでは現在の大不況をもたらした日本経済や財政の構造転換はなされません。今、真に求められているのは環境を重視した新しい公共投資の形です。私たちはどこからみても合理的な小田急線の地下化への転換を実現することによって、東京都と政府が公共事業の根本的出直しの証とすることを切に望むものです。

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小田急高架と街づくりを見直す会 会長 中本信幸
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