もぐれ小田急線

第23号 1998年8月7日

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第23号 も く じ

地下化と賠償一人360万を求め 8月5日、騒音被害者68名が提訴
さらに二次原告団結成準備へ

 8月5日、小田急線の地下化と騒音等複合被害の損害賠償一人360万円を小田急電鉄に求める訴訟を原告68名で東京地裁に提訴しました。
 原告は去る7月24日に公害等調整委員会の裁定を受けた原告と、従来この手続きに全く参加していなかった沿線騒音被害者で構成されています。
 当会は公害等調整委員会の責任裁定に関しては、責任がうやむやになってしまう小田急と被害住民との調停和解ではなしに、責任裁定を政府の責任で出させることを求め、申請参加者に訴えてきました。その結果、裁定委員会や小田急の執拗な和解工作を跳ね除け、実に4分の3の申請者が調停和解を拒否するという成果を勝ち取りました。
 この成果の上に責任裁定の結果はありました。受忍限度を70デシベルとしたことや、被害認定を月3000円に押さえるなど問題はありますが、在来線騒音の違法性を政府自らが認定したことに大きな意味があり、このことによって小田急線の問題は全国の問題となりました。
 今回の訴訟は受忍限度を在来線新線基準の昼間60デシベル、夜間55デシベル以下とし、これを達成するための有効な代替案として地下案の実施を求め、加えてこれまでの騒音等の被害補償を一人月3万円として計算し過去10年にさかのぼって360万円の賠償金額を求めるという構成を取っています。
 今回は第一次訴訟として提訴しましたが、裁定申請者の訴訟期限の8月24日までには第二次訴訟を、それ以降は第三次訴訟を提出すべく準備を進めていますので、裁判に迷っている申請者および沿線騒音被害者に合流を訴えます。

川崎道路訴訟の勝利は地下化の正しさを証明

 8月5日は道路問題で川崎公害訴訟が勝利した記念すべき日でした。私たちは小田急線の高架による複々線連続立体事業について、この事業が道路事業であり、都市の大規模再開発事業であることを訴え、事業を地下化に転換することによって鉄道公害をなくし道路事業や都市再開発事業の野放図な拡大を阻止することを目的に運動をしてきました。
 川崎公害訴訟の判決は、自動車の排ガスだけでも健康被害をもたらすことを司法が認めたという意味で画期的です。道路行政の抜本的見直しの新たな闘いが始められる条件がこの日に整ったというべきでしょう。まさに歴史的なこの日、私たちが道路と鉄道の総合政策に関わる連続立体事業問題で、違法な鉄道騒音を是正するために鉄道の地下化への転換を求めて、訴訟を提起することになった意味は大きいといわなければなりません。

提訴にあたってのアピール

 私たちは、小田急小田原線東北沢から成城学園の線路際に住んでいます。小田急小田原線は、ご承知かも知れませんが、東京新宿から小田原、箱根を結んでいる都市高速鉄道で、都心と神奈川とを結ぶ大動脈であるとともに、私たちが居住し、仕事する幹線でもあります。
 この路線は昭和の初期からあったものの、日本の高度成長が始まる1960年頃までは「それなら小田急で逃げましょか」という歌の文句で知られる、ただ箱根へ行けるという程度の地方鉄道に過ぎませんでした。
 ところが高度成長が始まり、東京近郊のベッドタウン化が進むやいなや、小田急電鉄はこの流れに乗じて、宅地開発に始まり、さらには道路等の「インフラ整備」の土建業へと手を広め、今ではホテルチェーン、デパート、コンビニエンスストア等典型的なコングロマリットとなり、東京では東急、西武、東武に続く存在となっています。
 しかし、営利だけを求めるこのような拡大は、通勤ラッシュと開かずの踏み切りとなって現れ、私達都内沿線の住民はもとよりベッドタウンの人々に絶えがたい騒音、振動、開かずの踏切に滞留する大気汚染等を、すでに20年以上にわたりもたらし続けてきたのです。
 ベッドタウンの人口増大をみずから進めたにもかかわらず、小田急電鉄はこれに見合う輸送力の増強を、不動産や土建業などの営利事業の展開のために故意に怠り、通勤地獄等の複合汚染のことを考えれば、地下方式による連続立体交差をしなければならないにもかかわらず、全くやろうとしませんでした。
 私達の大部分が居住する世田谷区議会は1970年、1973年と2回にわたりこのことを小田急電鉄だけではなく、国等関係機関に求めていたのです。しかし小田急電鉄が、が採算があわないという理由で、当時地下方式より安かった高架方式による連続立体交差もやろうとしなかったのです。
 ところが、1980年代に中曽根内閣がアーバンルネッサンスと称して都市の大々的高層再開発を鉄道と道路を軸に巨利と利権を求めて展開するや、小田急電鉄はまたもこれに便乗し、地下方式の方が高架方式より安くなっていたにもかかわらず、高架のほうが高層大開発のために有利であると判断し、政官の指導をうけながらにわかに高架複々線事業に着手しました。
 高架複々線になれば列車の運行量がはるかに増えるだけでなく、速度も格段にあがり、かつ連続立体交差化に伴い道路が多数新設、拡幅されるので、騒音、振動、大気汚染等の複合汚染が桁外れに激しくなるだけでなく、高層再開発に拍車をかけることになります。
 輸送力の増強とあかずの踏み切りの解消は、東京一極集中が続く限り、複々線連続立体交差にするより他はありません。しかし高架方式にすれば、比較的閑静だといわれる世田谷の街が一気に破壊されるおそれがあるのです。それにもかかわらず私たちだけでなく、関係議会など公の場でこれをひたかくし、ただ「輸送力増強」「踏切解消」という心にもないうたい文句で強行しはじめたのです。
 政、官の指導と協力でこの無法なことが、「公共事業」として、本来その抜本的見直しが必要であり、口先では総理大臣ですらこれを認めている時代に、しかも戦後最大の不況に乗じて「景気対策」として推進されているのです。
 私達は20年以上にわたる長い間ふりかかっている被害を、小田急線が自分たちのためにも、「公共」のためにも役に立つものだといい聞かせて我慢してきましたが、もうそれは出来ませんし、してはならないと考えるに至りました。
 去る7月24日、公害等調整委員会で「受忍限度」を超える違法な被害が私達に生じていることを認めたことを機会に、私達は小田急電鉄に対し、被害の根絶のため、高架複々線化を地下方式に転換することならびに従前の被害にしかるべき賠償を求めて、本日東京地方裁判所に提訴いたしました。
 高架複々線事業が推進されているところは、東京だけではありません。全国の大都市で進められています。もしこれがそのまま実現したら日本は日本でなくなるといっても過言ではありません。この事業に去らされている人々、あるいはその危険のある多くの人々に私達は訴えます。私達の被害をなくし、未来に禍根を残さないようにするために、共に立ち上がりましょう。
 また、私達は国民の全てのみなさまに訴えます。鉄道と道路、騒音と排ガスを放置し、都市の利権本意の高層大開発を認めてしまえば子孫に申し訳がたたないばかりでなく、今の未曾有の不況を打開することが出来ないのです。そしてこの都市問題は、同時に農村の問題です。
 闘いのやり方はもとより色々あることを私達は承知しています。どんなやり方であっても目的と志を同じくして一緒に頑張りましょう。

1998年8月5日

小田急地下化実現・騒音複合汚染阻止原告団
    代表 中本信幸(神奈川大学教授・経堂)
     同 山田キヌ子(主婦・梅ヶ丘)
     同 柳田 徹(商店経営・下北沢)
   事務局 小田急高架と街づくりを見直す会

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小田急高架と街づくりを見直す会 会長 中本信幸
〒156−0051世田谷区宮坂1−44−34−207 TEL/FAX 3439−9868
郵便振替口座 00130-0-769202
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