もぐれ小田急線

第21号 1998年1月27日

バックナンバー目次へ▲

  ホームページへ▲

第21号 も く じ

小田急は一銭も使ってないのに運賃値上げ
これは不当!東京・神奈川の利用者が取消訴訟

 もぐれ小田急線20号でお伝えしたように、小田急電鉄は小田急線複々線事業の事業費を理由に、昨年の12月28日をもって運賃値上げを行いました。
この運賃の値上げに関して、去る3月26日に当会会員を含む東京・神奈川の小田急電鉄利用者15名が運輸大臣を被告として、運賃値上げ認可の取り消しを求めて東京地裁に裁判を起こしました。
鉄道運賃の値上げは鉄道事業法により運輸大臣の認可を必要としています。当会は、
1.小田急線複々線事業の事業主体が小田急ではなく日本鉄道建設公団であり、事業費は税金や公的資金でまかなわれ、事業完成までは小田急は一銭も負担する必要のないこと、
2.完成後の施設等買取は20年の分割払いであり、公的資金から利子補給がなされること、
3.本来、環境面・事業採算面からいっても地下化で行うべき事業について、高架を選択した結果として事業期間を不当に引き伸ばしていること、
4.利用客から先取り運賃を受け取れる特特法の恩恵を不当に受け、しかもその適用を不当に引き伸ばしていること、
等、この値上げの不当性を明らかにし、申請を認めないように、昨年10月20日付けで運輸大臣に申し入れを行ってきましたが、同大臣はこれを無視して値上げ認可を強行しました。
この裁判は小田急線複々線連続立体事業が東京都と日本鉄道建設公団が事業主体となった公的な事業であるにもかかわらず、あたかも小田急電鉄が多大な負担を負っているかのように偽装して行われ、複々線事業を値上げの理由としたことの違法性を問い、値上げ認可の取り消しを求める訴訟です。小田急線利用の市民全ての利害にもかかわるこの訴訟の提訴は、小田急線高架反対と道路新設拡幅反対、沿線の大規模都市再開発への歯止めを願う市民の運動に勇気を与え、ひいては建設省・運輸省が一体となってすすめている道路・鉄道・都市再開発を一体とした「線増連続立体交差化事業」という名の都市大改造計画を根本から問い直すものとなるでしょう。
本紙2面に今回の訴訟の原告代表中本信幸氏・圷 清氏のステーツメントを、また、3面には斉藤弁護士による小田急線の高架複々線事業と連続高架立体事業のからくりが明らかにされています。


ステートメント纈訴するにあたって

原告代表 中本信幸(東京)・圷 清(神奈川)

   私たちは、小田急電鉄モが運行している小田急線の利用客(乗客)でまたその大部分が沿線住民です。小田急電鉄は小田急線と江ノ島線が基軸となり、神奈川県と東京都を結ぶ大動脈の1つであることはいうまでもありません。
 昭和50年代の後半、小田急線の分岐点である相模大野から新宿まで高架複々線にする計画を運輸省等の役人、政治家、ゼネコン等と談合しながらたてていたのです。もとより、私達は東京都民と神奈川県民ですが、世田谷に居住しているものは、高架複々線事業(喜多見〜和泉多摩川)が昭和57年からはじまり、基礎調査の住民説明会があったりしたため、一応のことは知っていましたが、いまでも神奈川県民はもとより、都民の多くはこの事業の全貌を知らないと思います。
 東京都においては、この事業は東京都が主体となる線増連続立体交差化事業と同時一体的に具体的には既存の鉄道部分は東京都、線増部分は鉄道事業者であると説明されてきました。連続立体交差化事業は、平成四年まで事業費の93%(現在86%)がガソリン税、都民税、区民税等市民の税金でまかなわれるので、小田急の負担は極めて少ないが、複々線(線増部分)の事業費は小田急が事業主体となり、事業費の全てが小田急の負担となると、政府を含めて小田急側は繰り返し、その負担が1000億円をはるかに超えるので、高架複々線ができれば、踏み切りはなくなり、通勤ラッシュもなくなるから、事業費の一部を利用者が負担するのは当然だという名目で昭和61年に特定都市鉄道整備特別措置法が制定され、この「特別措置」により小田急は運賃を値上げしました。私達は利用者として、踏切の解消、混雑緩和をもっとも強く望んでいましたから、この事業が本当にこれらのことを目的とし、都市を健やかにするものなら、双手を挙げてこれに賛成したでしょう。
しかし、少し考えればこの目的を実現する方法は高架でなく地下でもやれること。ですから、郊外はともかく住宅の密集するところでは地下にしたほうがいいに決まっています。ニューヨーク、パリ、ロンドン等先進都市では高架鉄道がないことにこれは示されています。ですから、私達の多くが地下に切り替えるよう要求し、裁判もいくつかおこしてきました。その中には東京地方裁判所の判決が出されているものもあり、昨年2月25日の民事2部の判決では地下の方がよいとの判断が示されました。私達の裁判を含む強い要求で、この事業、つまり線増連続立体交差化事業と複々線化事業の問題点がはっきり浮かび上がって来ました。
それはこれらの事業の真の目的は道路の新設拡幅と鉄道の立体化を軸に不動産開発を行うという典型的な利権事業を展開することだったのです。しかも、複々線になる部分の事業主体が小田急であり、その事業費は、小田急が負担するということは、昨年12月28日、隣を走る京王線が値下げをしたのに小田急は2回目の値上げをするに及んで、不審に思い調査した結果、まっかな嘘だということが判ったのです。
複々線化事業の法律上の主体は政府の特殊法人である日本鉄道建設公団であること、従って線増部分の用地買収から高架工事に至るまで公団の負担で行われ土地と高架施設等は公団の所有になること、又ここから明らかなのですが、小田急は事業費の一部にあてるため運賃の値上げ申請ができる立場にないわけですから今回の値上げ、前回の値上げ申請を認めた運輸大臣の認可処分はいちぢるしく違法なものなのです。つまり、小田急の高架複々線事業は全部といっていいほど公費と利用者の負担によっているのです。
このようなことが許されるでしょうか。許されないことはいうまでもありません。小田急側は、今でも法廷などの公の場で事業主体は小田急だといい張っています。
鉄道建設公団が事業主体であることが露見されれば大変なことになると彼らが考えているからです。そこで私達は真実を明らかにし小田急側の不正を究明するために提訴を決意をいたしました。

1998年3月26日


日の丸にタダ乗りの小田急 高架事業のカラクリの全貌ついに露見

弁護士 斉藤  驍

    小田急線沿線の皆様は電車に乗るたびに成城学園から梅ケ丘付近まで、電車の窓から線路の南側の空き地に「小田急線連続立体交差化事業、複々線事業用地」という看板を何枚も見られたと思います。しかし、この連続立体交差化事業と複々線事業という「2つ」の事業がならんで書かれているのは何故かと疑問に思われませんでしたか。
 多くの人々は、高架複々線の買収済の事業用地であるという程度の理解で、何故2つの事業なのかということを考えることもなく通り過ぎていったのではないでしょうか。また、誰が買収した土地なのかということも小田急を複々線にするための用地なのだから小田急が自分の負担で買収したのだろうと理解していたことでしょう。
 昨年1月ごろから、高架工事のテンポが速くなり、看板を立てていた空き地も少なくなり、かわってコンクリートむき出しの高架橋が南側に目立つようになりました。この高架橋等の施設は、誰のものかと疑問に思われた方もおられるでしょう。しかし、多くの乗客や住民は、空き地が沢山あったときと同じように小田急のものだと理解していたのではないでしょうか。
 この種の公共事業の看板には、普通事業の名前とその主体が明記されています。家を建てるときの建築確認の看板を思い出されればすぐお分かりになると思います。しかし、先程の看板には、連続立体交差化事業、複々線化事業と二つの事業の名前は書いてありますが、それぞれの主体の名前は書かれていませんでした。不思議に思われた方ももちろんおられたことでしょう。特に、小田急線の地下化を希望する人々でそうするために熱心に行動している人々が不審の念を抱いたのは当然です。しかし、これまた多くの人々は、いまだに気付いていないのです。だが、これはある意味で当然なのです。
 東京都・小田急・世田谷区が主催して、地元で24回も開かれた説明会、都議会、世田谷区議会では、連続立体交差化事業は東京都、複々線化事業(線増事業)は小田急が主体であると説明し、政府もつい1ヵ月前まで同じように国会、裁判所などで説明していたからです。
しかし、私ども小田急弁護団はかなり前から、高架複々線事業は物理的には全く1つの事業であり、建運協定(昭和44年9月、建設省と運輸省が道路法等に基づいて制定された協定、いわゆる行政立法)においても高架複々線事業は「線増連続立体交差化事業」といって1つの事業とされており、その基になる東京都の都市計画も1つのものとしていますから、何故2つの事業とされるのか特に「複々線化事業」とされるものの主体は何なのか疑問を持っていました。それからというもの色々のルートから情報を集め、これを分析してきました。
バブルの入口といわれる昭和61年頃、中曾根元内閣は'アーバンルネッサンス'と称して都市を大々的に再開発し、ゼネコンやデベロッパーなどに暴利をむさぼらせ、そのことによって己も潤おうとして公共事業のみならず私企業に対しても公金を投入できるようにするために多くの法律を制定しました。昭和61年に制定された特定都市鉄道整備特別措置法もその1つです。これが、小田急などの鉄道事業者が高架複々線等大規模な事業を行う際、その事業費の一部を運賃値上げによってまかなうことを保証する法律なのです。
 皆様も充分御承知の通り、小田急の「高架複々線事業」は大変不条理なものであるため、市民の反対や行政と小田急が訴訟の場にひきずり出されたりしていることもあって、右の法律によれば10年以内にこれを完成、運行の用に供さなければならないと定められているにもかかわらず、この期間の期限が昨年12月に来るというのに、半分はおろか、4分の1も完成していなかったため、小田急は昨年12月28日更に2回目の運賃値上げを行いました。その値上げは実質約10%に及ぶのです。これは、鉄道事業者の便宜をはかるために制定された先述の法律にすら違反する違法なものです。
 京王線が値下げしたために、これをマスコミが報道したこともあり、小田急は各駅に大量のパンフレット、車内広告などで先の2つの事業、とくに複々線化事業の負担が極めて大変であるから等と弁解に終止していたことを承知の方も多いと思います。
 一方、先ほどの私たちの調査と分析は、その直前に結論が出ていました。それは、小田急が負担が大変だといっている複々線化事業(線増)の主体は、狛江地区(喜多見から和泉多摩川間)の計画段階(昭和57年頃)のところから、小田急ではなく政府の特殊法人である日本鉄道建設公団(鉄建公団)であり、従ってこの事業費は用地買収をふくめて全部を鉄建公団が税金等の公金で負担しているのです。逆にいえば、小田急は何も負担しなくてよいのです。従って、線増部分の事業費の一部にあてるために、運賃を値上げする必要も理由もないわけですから、このような運賃値上げが許される筈がありません。
 事業費の全部を鉄建公団の金即ち公金(税金など)でやってもらいながら、さらに乗客の負担で金をとろうというのは犯罪といっても過言ではありません。ですから、今小田急の乗客や沿線住民が日々目前にしている事業用地と高架施設はすべて鉄建公団の財産で、小田急のものではありません。要するに、高架複々線事業は本来1つのものであるのに、2つに細切れにすることによって、小田急はほとんど金を使わずにあぐらをかいていてよい訳です。しかも、これを国や都や区の役人、ゼネコン等と結託して行っているのです。
 このようなやり方自体が犯罪的ですが、またこれが日々新聞に報じられている政、官、財が結託した犯罪を次々と生み出しているのです。ですから、今回の運賃値上げの取消を求める訴訟は、単にこれ自体を問題にするものではなく、都市再開発という典型的かつ大規模な公共事業のあり方を根本から問うているのです。今までもこの事業のもつ普遍的な問題点を解明追求してきました。これはニューヨークタイムズが1面トップでとりあげたほど画期的なことで、他に例を見ない市民運動に私たちは取り組んできた訳です。しかしここまでくれば、小田急高架事業のカラクリは殆どその全貌を現したといってよく、あとはいかに勝利するかという問題が残るだけになりました。

個人的な見解として

三 田 誠 広

  ぼくが住んでいるのは世田谷区の三宿というところで、電車は新玉川線の池尻大橋駅を利用することが多いのだが、場合によっては井の頭線の池ノ上も使うし、新宿に出る時は少し歩いて、小田急の下北沢から乗ることも多い。だから、沿線住民というほどではないが、時々小田急線を利用する乗客として、複々線化の問題には関心をもってきた。
最もよく利用する新玉川線は地下鉄道だが、これはすでに地上が首都高速3号線に占拠されているという事情で実現したものだ。地下鉄道の利点は、雪や風雨に強いことが挙げられる。雪で電車がストップすることもないし、プラットフォームで電車を待つ時も寒風にさらされることがない。街の再開発との兼ね合いにしても、三軒茶屋駅の周辺は地下駅と新開発のビルがうまく接続されている。
こういう実績をもつ世田谷区が、なぜ積極的に小田急の地下化を推進しないのか、理解に苦しむところだ。鉄道側としても、地下化の方が建設費が安いことは明らかで、投資効率を考えれば地下鉄道にした方が有利なことは、おそらく小田急としても最初からわかっていたのだろうと思う。
さて、ここから書くことは、一般論であり、個人的な見解にすぎない。そうお断りして話を進めていく。
戦後の歴史を振り返ると、日本の政府や地方自治体、鉄道会社などが、つねに建設業界とのタイアップで、産業基盤の整備に努めてきたことがわかる。日本が発展途上国だった時代は、必要な施設があまりにも多く、建設業界の売り手市場で、高い建設費をそのままウノミにする傾向があったようだ。ところが昨今は、鉄道にしても道路にしても、ぜひとも必要なものはすでに整備され、次の段階に入っている。不況で建設業界全体が沈滞している時期でもあるから、いまは買い手市場で、できる限り安い建設費で施設を造ることが、公共事業に要求されるところだろう。
ところが実状は、相変わらず、建設業界を潤すために続々と公共事業が計画され、税金が湯水のように浪費されている。なぜそうなのかといえば、役人や鉄道会社の経営陣と、建設業界は、長年のパートナーだったから、としかいいようがない。確たる証拠もなしに、ワイロが横行しているとか、過剰な接待で話が決まっている、などと誹謗するつもりはないが、全体として、公共事業が計画されると、なるべくお金がかかる方向に計画が推進される傾向があるように見える。
バブルが弾けて日本という国が貧乏になったのだから、鉄道の建設も合理的に、安上がりにすべきだというのは、ある種の素人考えで、不況のこの時期こそ、経済の活性化のために、なるべくお金のかかる公共事業を推進すべきだという論理も成り立たないわけではない。もちろんこれは倒錯した論理で、資金の無駄遣いは国民の税金や、鉄道の場合は利用する乗客の運賃によってまかなわれているわけだから、損失はわれわれ一般住民の肩にかかってくる。
いまだに全国各地に、無駄なダムや道路が造られ続けている。小田急の問題に関しても、高架鉄道や巨大な駅ビルを建てることが本当に必要かどうか、充分に検討する必要があるだろう。
何よりも、高架鉄道の建設によって、周辺の住民は直接の被害をこうむることになる。小田急の場合は、住民側から、地下化という対案が出されているにもかかわらず、事業が一方的に推進されようとしている。高架鉄道は雪にも弱いし地震にも弱い。沿線には騒音がまき散らされ、日照はさまたげられ、街は高架によって分断される。
これほどのマイナス要素があり、さらに費用が余計にかかるとすれば、いったい誰がどういう経緯でこのような計画を立てたのかを、丹念に検討する必要があるだろう。役人と業界の癒着という、国家全体に蔓延している病理が、われわれの身近な場所にもひそんでいるのではないかと、充分に疑い、監視の目を広げなければならない。

会員便り 梅ヶ丘の会員Yさん宅をお訪ねして

3月のある日、小田急沿線の梅ヶ丘駅近くにお住まいのYさん宅をお訪ねした。
Yさんはこの地に嫁いで45年、その前を入れると70年もここにご縁をもっておられる。Yさんが経営し、自分も住んでいるマンションの屋上から下を見ると梅ヶ丘駅から、3本の朱い鉄柱が打ち込まれている。でもその先の世田谷代田方面にかけては何の工事も行われていない。豪徳寺方面にむかって駅近辺だけ橋脚が立ち並んでいるのと対称的である。

Yさん「毎日のように小田急側が代替地の図面を持って来て、どうかどうかと廻って来る。今よりも広い所をいって来るが繙續[得できないことの1つに梅ヶ丘の先の世田谷代田・下北沢方面がどうなるのか、まるで発表されていないことだ。」
会員A「駅付近や立ち退きに応じたところでは工事を急ピッチで行って圧迫感をあおっている。でも下北沢方面には手をつけていない。」
Yさん「家の西側では環七方面から11m幅の道路ができる予定。世田谷通りから明正高校を貫けてくる道路も計画されている。まさに高架と道路にはさまれてしまう。道路だって今のままで充分だ。これ以上騒音と排ガスに悩まされたくない。便利さだけを第一にしないでほしい。」
会員B「だいいちこんな不況風が吹いている時に、景気をあおろうとして公共事業をやたらに行うと必ずあとでつけが来る。見直しも必要だ。次の世代の人がそのつけで苦しむようなことは絶対にしてはならないと思う。」
会員A「お金になる話なら政治家や区や都側やゼネコンはのってくるが環境にやさしい地下化の方にはどうものってこなかったようだ。」
Yさん「都の人は説明会の時『少なくとも梅ヶ丘駅付近は今よりよい環境になる』といっていた。複々線高架事業と道路の新設、拡幅、不動産開発などのてんこもり事業を知っていたはずなのに、この人の発言は嘘もはなはだしい。人をバカにしている。」
会員B「道路は人の為にあるのであって、車の為だけではない。お金さえバラまけば公共事業はどうにでもなると上の人は思っているのかも知れないけれど、それは将来的にみて恐ろしいことだ。低レベルでなく高い理念をもって都市作りに当たってほしい。」
会員A「ニューヨークタイムズの記者が以前、取材に来た時『ニューヨークでは今、住宅地に高架鉄道は絶対に走らせない。ハーレムならやるでしょうけど。』と首をすくめてみせた。」
Yさん「緑の世田谷を子孫に残してほしい。街づくりが街こわしにならないように!」

(K記)


小田急沿線の動向

グリッド状の補助線は世田谷を滅ぼす
都市計画道路の阻止のために立ち上がろう

 世田谷の住環境を守るためにどうしてもしなければならないことがあります。それは碁盤の目状に計画されている都市計画道路等の阻止とその抜本的見直しです。既に世田谷区は環状7号線や環状8号線、甲州街道、246号線などの幹線道路があり、沿道には排ガスや騒音など深刻な道路公害が広がっています。この上、碁盤目状の補助線をつくることは住宅地域である世田谷にとっての自殺行為です。これ以上の道路は要りません。
小田急線の高架とあわせて、新たに進められようとしているのは喜多見・梅丘間だけでも都市計画道路8本の新設と17本の既存道路の拡幅です。8本の都市計画道路とは幅54メートルの外郭環状線と16メートルから20メートル幅の補助線7本です。
外郭環状道路についてはかつて世田谷区長は反対を表明していました。補助線については戦後占領下に机上で線引きがなされ定められたもので、いわゆるマッカーサー道路といわれ、多くの家屋の立ち退き問題が生ずるため、長らく未着工になっているものがほとんどでした。
ところがこれらの道路の必要性の有無を吟味することなく、全て通すことを前提に進められてきたのが小田急線高架事業です。住民参加で街づくりを吟味するのであれば、当然、この都市計画道路の必要性の有無から議論をしていかなければなりません。現在の小田急線の工事区間の6駅で駅周辺街づくり協議会が発足していますが、これらの協議会の一番の問題点は、小田急高架や都市計画道路を「街づくり」の前提条件としているところにあります。
一方で建設省は「時のアセス」を導入して、都市計画の見直しを「唱道」しているのですから、マッカーサー道路である補助線などは計画の是非を住民が検討するところからはじめなければ、行政は「街づくり」や「住民参加」を語る資格はありません。現工事区間では車庫跡地を抱える経堂が小田急やゼネコンにとっての再開発の戦略拠点になっていますが、経堂で、補助52号線、補助128号線、補助133号線を通すことは住宅地としての経堂をことごとく商業地域に変えていくことを意味します。これらの道路は長らく凍結されていたため、都市計画地や近隣に住んでいる方々も「のんびり」構えていたきらいがありますが、道路計画線上に住む人も、そうでない人も、今こそ、この道路計画に反対して立ち上がらなければならないときを迎えているといわなければなりません。

加速される道路建設と住環境破壊
建設省と東京都「都市構造再編プログラム」を策定

 建設省と東京都は4月10日に、東京23区を対象とする「都市構造再編プログラム」を策定しました。これは今後5年間に1600億円を道路建設費として重点投資を行い、90路線(長さ59.5キロ)の完成を目指すもので、この内19路線については沿道の用途地域、容積率の見直しも進めます。この重点投資で約1兆円の民間建築投資が見込んでいます。
このプログラムは、昨年11月の政府の「21世紀を切りひらく緊急経済対策」を受け、建設省と東京都がまとめたもので、民間開発が誘導される可能性が高い23区を対象に沿道の土地利用転換の効果を狙ったものです。バブル経済崩壊後、道路づくりや都市再開発について一定の「抑制」の方針をとってきた政府と東京都が、「景気浮揚」を錦の御旗にまた「土地利用促進」を公然と語り出しました。土建屋国家の行き着いた先がバブル経済、その後遺症からの脱却方針がまたもや土建屋政策では、もはや国を滅ぼす施策としか言うほかはありません。
そのうえ、公共事業に関する施策の具体的転換表明であり、重大な首都の都市再編計画であるにもかかわらず、新聞紙上やテレビがほとんど取り上げていないのはどうしたことでしょう。大新聞では日経と毎日、東京新聞が都内版に小さな記事をのせたきりで、朝日や読売は報道さえしていません。NHKもごく簡単にふれただけです。
私達は小田急高架事業の本質が「道路整備と一体となった都市の大規模再開発」であることを、ことある毎に表明してきました。今回のプログラムにも当然ながら、小田急小田原線の線増連続立体事業も他の私鉄の同種事業と並んで掲載されています。
80年代のバブル経済下では都心区の住宅地域を消滅させ、ここでまた、目先の利益だけで今回のプログラムを押し進めれば、23区から良好といえる住宅地域は消滅してしまいます。いま、小田急高架と道路・周辺再開発を見直させる運動は、この建設省や東京都の間違った都市政策を改めさせる運動であり、まさに真っ向からぶつかる運動として位置しているのだということをここに改めて明らかにしておきます。

ページの先頭へ▲  バックナンバー目次へ▲  ホームページへ▲

小田急高架と街づくりを見直す会 会長 中本信幸
〒156−0051世田谷区宮坂1−44−34−207 TEL/FAX 3439−9868
郵便振替口座 00130-0-769202
不在の場合は 事務局 木下泰之まで TEL 3468−8613 Email fk1125@aqu.bekkoame.ne.jp