もぐれ小田急線

第20号 1998年1月27日

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第20号 も く じ

間違った公共事業は 改めなければならない!

小田急高架問題こそ、間違った公共事業の典型であり、見直すべきである、と私たちは主張し各種裁判を闘っています。
一度決めたら、変更も止めることもしない公共事業の硬直性が指摘され、見直しが叫ばれて久しくなります。公共事業は、まず決め方が問題です。専門的な領域の検討の名の下に、官僚やゼネコンが膨大な金と時間をかけ、自らに都合のよい計画を練って提案をしてくるのに対して、議会のチェックは事実上ないに等しく、市民はもとより、マスコミでさえ、事業の全容を知るすべもないのが現状です。

1994年1月、情報公開訴訟で、高架・地下を比較検討した調査情報の主要部分を都に公開させ、原告が勝利をおさめました。ニューヨークタイムズ紙が一面のトップ記事で、「市民が政府の秘密の壁を崩し始めた」と報道したのは、裁判での勝利が、公共事業の核心にふれる主要情報を事前に公開させた日本初のケースだったからです。これは、日本政府への同紙の痛烈な批判でもありました。
認可取り消し訴訟や第3セクターへの出資取り消し訴訟、民事の工事差し止め訴訟等、現在係争中の6本の訴訟は、高架事業強行の違法性や地下方式の優位性、さらには、この第3セクターを導入した事業手法の違法性や、強引な事業手続きの違法性を白日の下にさらしつつあります。昨年2月の第3セクター訴訟の東京地裁判決では、「地下方式に優位性が認められる」と判示されてもいます。

小田急高架と街づくり見直しのための裁判と運動は、確実に行政を追いつめています。私たちの運動は巨大都市東京における住環境と住宅地のあり方を問うとともに、土建屋国家となってしまった日本の構造変革を迫る裁判であり運動です。
行政は高架工事を強引に進めています。ここで諦めてしまってはいけません。事業自体の重大な瑕疵や違法性が様々の点で明らかになってきている以上、過ちは徹底して追及し続けなければなりません。

公共事業を見直そうとのかけ声にもかかわらず、間違いが明らかな「小田急高架の見直し」さえ実現できないすれば、この国に未来はありません。

諦めないこと。諦めやすいといわれている国民性を返上することが、真の行政改革であり、政治改革であることの範を示そうではありませんか。

判決を待たず勝利!

世田谷区、「調査委」議事録の大枠を公開

  小田急関連訴訟の中で、東京都が実施した「小田急線連続立体事業調査」の情報公開訴訟での勝利は、住民が地下化事業の優位性を証明する証拠を手にいれたという意味で、後の運動や訴訟に大きく貢献してきました。ところで、今度は、世田谷区が「小田急線交通施設および沿線街づくり調査」として実施した一連の調査の情報公開訴訟で、大きな成果があがっています。
一連の調査に対する訴訟は、1996年1月に第1次訴訟を、同年4月に第2次訴訟を、それぞれ提訴しています。第2次訴訟分については、提訴後、区が全面的に情報を開示したために、勝利のうちに訴訟をとりさげ、第1次訴訟分については一連の調査のマスター調査にあたる平成3年度「調査委」の議事録公開が争点となっていました。この訴訟を担当する三宅 弘弁護士の鋭い追及の前に、7月に同議事録(「会議結果メモ」)の大枠が公開されました。現在もなお秘匿されている建設省や東京都、小田急の発言部分の最終的な公開をめぐっては、証人訊問による証拠調べが続けられています。世田谷区の情報公開担当者の訊問は12月2日に終わり、原告側は当時の委員でもあった世田谷区の川瀬助役を証人として出廷させる申請をおこないました。

「除くべきところは除き、ぼかすべきところはぼかす…」
調査委の「街づくり報告書」改ざん明るみに

公開された「議事録」(「会議結果メモ」)からわかったことは、調査委が小田急地下化をもとめる住民を敵とみなした上で、街づくりの面からの一大作戦会議を行っていたという事実です。
「議事録」によると、報告書の最終的なまとめをおこなった会議で、世田谷区の森 尚之道路整備部長(当時)は、報告書の取り扱いについて委員会用と議会・住民用とを別立てにすることを説明し、「外へ出すときには、除くところは除き、ぼかすべきところはぼかすというように考えています」と語り、鈴木蓊都市整備部長(当時)は彼らにとっての大規模再開発の拠点である経堂を例示し、「経堂の場合、3−8、3−10のような図をもとに地元に入るのは無理だと思っています」と語った上で、すでに調査委員会で再開発のプランや道路の計画図も「絵」として決めていながら、「地元に入る際は、地域住民の人々とみんなで考えていきましょうというスタイルで入っていくつもりです」と、住民操作の作戦を公然と語っているのです。しかも、こういった議論がなされたあと、この調査委員会の鈴木信太郎委員長(早稲田大学講師;元東京都建設局技監)は「大変だと思いますが、頑張って下さい」との挨拶でしめくくっている始末です。
結局、この調査委員会の報告書は「委員会用報告書」とは別に議会・住民用の報告書が作成され、委託調査終了後10ヶ月を経て「調査委員会報告書」としては「除くべきところは除き、ぼかすべきところはぼかす」形で区議会と住民に公表されたのです。
下の文書は平成4年3月26日に日比谷の松本楼で開催された第4回検討委員会の議事録の一部です。平成3年度の調査をまとめる際の委員会でしたが、読み返すほどに怒りがこみあげてくる議事録です。まちづくりについてここで語っている世田谷区の鈴木都市整備部長(当時)と森道路整備部長(当時)は、まるで繰り人形を操作するかのように表現しているのです。あるいは、住民を敵と決めつけたうえでの戦略会議といった風情です。ここには、市民の税金を使って調査を行っているという意識は全くありません。尊大な役人根性そのものといわなければなりません。

情報開示された丸秘会議結果メモ
「小田急沿線交通施設等整備計画調査及び街づくり調査第4回委員会」より
H.4年3月26日
日比谷公園内 松本楼

森委員(注:世田谷区道路整備部長)
〇報告書の出し方については、本日の報告書についてはあくまでも委員会用ということを意識しています。

〇外へだすときには、除くところは除き、ぼかすべきところはぼかすというように考えています。

鈴木委員(注:世田谷区都市整備部長)
〇まちづくりの方から作成した報告書をもとに、どういうように地元に入るかという考えについて、経堂駅の場合、3−8,3−10のような図をもとに地元に入るのは無理だと思っています。

〇このような絵は、区の立場としてはもっておきますが、地元に入る際はこのまちづくりをどうするかという問題点の定義から入っていく。

〇道路についてもはっきりとした線が入ったものでなくもう少しぼかしたものにして地元に投げかけながら進めていく。
〇地元に入る際は、地域住民の人々とみんなで考えていきましょうというスタイルで入っていくつもりです。

〇本日の資料は区が協会に委託して事務レベルで作業をした資料であるという考えが良いと思う。

森委員(注:世田谷区道路整備部長)
〇この委員会で作成したものについては、資料という形で報告書は別途作成します。

XXX(注:名前役職とも未だ非開示のため不祥)
〇高架にすると万里の長城になるのでは、とか不安が地元にあるので、高架によって良い街づくりが、連立を契機にすすめていくという説明をしている。
行政側はどのように考えているのかというときに、このような報告書があって、これを受けて行政としても、地元の方々と一緒に街づくりを進めていきたいというのが見えるようにしておかなければならない。
XXX(注:名前役職とも未だ非開示のため不祥)
〇次の説明会(注:平成4年7月に行われた小田急線連続立体事業のアセス評価書説明会を指す)が6月の末から7月にかけてですので、街づくりの話も出てくると思うので、発表をしたほうが良いのか、われわれの考えだけでもっているのか、いずれにしても6月ぐらいには持っていた方が良いと思う。

XXX(注:発言内容からいって鈴木信太郎委員長 早稲大学講師;元東京都建設局技監)
〇事務局も大変だと思いますが頑張って下さい。 本日はこれで終わりたいと思います。


破綻がハッキリした小田急高架
京王は値下げ、小田急は値上げ

都内の私鉄各社は、小田急電鉄も含めて昨年12月28日からの運賃値上げを実施しましたが、その中で唯一、京王線が運賃値下げを実施したことで、マスコミ各社は京王電鉄の英断をたたえました。一方、小田急は昨年の秋口から車内に「ちゃんと説明しなさいよ。ちゃんと説明します」等といったコピーのポスターを張り巡らし、パンフレットを配るなどして、弁解に躍起となっています。

京王の「快挙」は地下化運動の成果
この好対照はどこからくるのでしょうか。ここへきて、各電鉄会社の経営戦略の違いと小田急高架路線の破綻がハッキリみえてきました。また、今回の京王電鉄の値下げの「快挙」は私たちの高架反対・地下化推進の運動が引き出したものでもあるということを忘れてはなりません。
京王本線は世田谷区の北部を貫き、小田急小田原線は中央部を貫いています。両線とも複々線化と同時に連続立体事業をおこなう複々線連続立体事業を行うことを予定しており、1987年度と1988年度の2年度にわたり東京都実施の連続立体事業調査(京王線については笹塚・上北沢間、小田急線については東北沢・喜多見間)が全く同時期に行われています。

特特(とくとく)法は得得(ゆうぐう)法
今回の私鉄の運賃改定問題を見ていくには、鉄道事業への数々の優遇措置の中でも一番新しい複々線事業への「特定都市鉄道整備促進特別措置法」(特特法)についての知識が必要となります。
この特特法は複々線化事業等の私鉄が行う大規模改良事業について、10年で事業を完成させるという条件で事業費の一部を10ヶ年間運賃に上乗せして特別徴収してよいという制度です。1986年4月に成立しており、1987年9月に成立したNTT資金法とあいまって、周辺部の大規模再開発を伴う都内の鉄道の複々線化連続立体事業が一斉に動き出すきっかけをつくった法律です。施行規則や政令などが整備され1987年12月28日をもって東武、西武、京王、小田急、東急の都内私鉄5社がその初認定を受けています。

京王線は、調布駅付近を地下化で線増立体化
京王線を除く各社は複々線化事業と連続立体化事業を合わせた線増連続立体事業を10年で完成させる目標を掲げましたが、京王線は、連続立体の事業調査を行ったにもかかわらず、車両の長編成化とホームの改良事業を選び、笹塚・上北沢間の高架化を伴う複々線事業については、当面見送ることを決定しました。一方、調布付近の2キロメートルについての連続立体事業計画は地下方式で行うことを先行させようとしています。つまり、京王線は小田急線と同時期に東京都の高架連続立体事業計画を抱えながらも、小田急高架と市民運動の動向に注視しながら、拙速に高架事業に着手することなく車両の長大化で混雑緩和を乗り切り、約束通り運賃を値下げし、時代の趨勢に合わせて、市民の要望もいれながら連続立体事業を地下化にシフトさせようとしているのです。小田急線での粘り強い市民の運動は、明らかに京王線の事業計画に影響を与えています。

高架断念が京王の強みとなった
特特法では10年後には事業を完成させた上で特別徴収分を廃止し、同時に、運賃値上げについてはこれを抑制することが約束されていました。ところが、この法の趣旨を忠実に守って実現できたのは京王線のみだけなのです。
当時複々線を選択した他の各社の事業はどうなったでしょう。高架を選択した小田急、西武、東武はいずれも事業を完成させることができず、運賃還元どころか高架事業を理由にしたさらなる値上げを申請するにいたったのです。
小田急にいたっては、事業の達成計画を平成17年まで延長しましたが、特特法認定の根拠とされた世田谷代田・下北沢間の混雑率緩和については現在においても達成率0%の上、東京都の連続立体事業調査で関係機関の協議調整を待つとし、後回しとされた下北沢工区については事業計画はおろか、計画案すら発表されていないのが現状です。

閣議で了解された下北沢の地下化
この区間についてはすでに私たちの会が1994年11月に野坂建設大臣(当時)と面談した際に、野坂建設大臣から直接「地下化で決まっていると聞いている」との談話も得ており、その後1996年7月には下北沢工区の構造形式を地下化とすることが閣議で了解されたとの確実な情報も得ています。案としてまとまっていながら発表を控えているのは、現在高架で工事を進めている経堂工区の工事方式の正当性が失われてしまうからにほかなりません。
もはや東京においては、事業期間が長期化し経費もかさむ高架事業は破綻したといわなければなりません。経堂工区を下北沢工区と合わせて地下化に見直すことの合理性がますます明白になったといってよいでしょう。

運輸大臣への要望書

当会は不当な期間適用延長を認めないよう運輸大臣に求めました。

1997年10月20日

運輸大臣 藤波孝男 殿
小田急高架と街づくりを見直す会
会長 中本 信幸

要望書

去る9月22日、小田急電鉄株式会社は貴運輸大臣に対し運賃値上げと特定都市鉄道整備促進特別措置法の期間適用延長を申請しました。この申請は、鉄道事業者として小田急自らの社会的責任を顧みず、沿線の住民の意向を全く無視して厚顔無恥になされたものであります。
私たちは、小田急沿線の住民を代表して、貴大臣がこの申請について許可されないよう、ここに要望するものであります。
理由は次の通りです。
1 、小田急電鉄株式会社は、私たち市民運動が以前から指摘していた「合理的な地下方式」を無視し、土地買収面積が大きく事業費も極めて高くつく高架方式を強行したために、目算が狂い今回の申請となったのである。
つまり運賃値上げ申請等を余儀なくされた理由について、小田急電鉄株式会社は都市計画変更や用地買収の難航を挙げているが、これこそ小田急電鉄株式会社の経営陣が長期的経営判断を基本的に誤り「合理的なシールド工法による地下方式」を採用しなかったために起こった事態である。 小田急電鉄株式会社はこの責任を自ら取らなくてはならない。
2 、小田急電鉄株式会社は、第3セクター訴訟の弟1審判決において東京地裁の行政部が「地下方式の優位性」を認めているにもかかわらず、シールド工法による地下方式を主張している私たち市民運動の意向をいまだに全く無視しつづけている。これは社会的にも断じて許されるものではない。
3、 公共投資の抜本的見直しが叫ばれる今日、このような連続立体化交差事業については建設省もこれからは地下方式が中心とすでに認めている。
4、梅ヶ丘駅以東の下北沢駅付近については、野坂元建設大臣が地下方式になる旨の発言を行っているにもかかわらず、未だ発表せずに、運賃値上げ等を申請するのは利用客や住民を愚ろうするものである。
そもそも、特特法により認定された特定都市鉄道事業計画では世田谷代田から下北沢までの混雑率208%を166%に緩和することが輸送力増強の目標であり、法適用の根拠である以上、下北沢駅付近の計画案や目途さえ一切公表せずに事業の延期を一方的に行い、積立金の利用者への還元を行わないのは、立法の趣旨に反している。
特特法には認定の取り消し(第11条)や運賃変更命令(12条)や勧告(第13条)の条項などが定められているのであるから、法に従って適切な措置を取っていただきたい。
5 、今回値下げ申請した京王線については、笹塚・調布間で地下方式で複々線化する計画等が住民のうわさにも上っており、これに対比して小田急電鉄株式会社の対応のまずさは顕著である。 今回の小田急電鉄株式会社の運賃値上げ等の申請は絶対に認められない。
建設大臣とも協議の上、再度抜本的に高架案を見直していただきたい。
財政赤字解消のためにも公共投資の効率化、抜本的見直しがますます急務となっている今日、諸事情ご賢察の上、貴大臣におかれましては私たちの要望についてよろしくご理解いただき、決して許可されないようここにお願い申し上げる次第です。

以上


でっち上げの総会をゆるすな!
条例違反の「経堂街づくり協議会」は解散し、区の補助金を返却すべきだ

小田急線連続立体事業の再開発事業の戦略拠点とされている経堂駅周辺に関しては、「世田谷区街づくり条例」にもとづいて「経堂駅周辺街づくり協議会」が1996年11月に発足しました。経堂駅周辺地区に位置する宮坂1丁目に事務所を構えている当会としては、この協議会の民主的運営を求めて、会の高品事務局長を協議会の副会長におくり出してきました。ところが、発足当初から、高架推進を画策してきた大地主や商店街の一部幹部が区と結託して地下推進派と広範な住民の排除を画策してきました。
昨年11月21日には協議会総会を勝手にでっち上げ、高品副会長の解任と住民排除を目的とした規約改悪を強行採決するという挙に及んでいます。区の委託調査の情報開示で明らかになっていますが、経堂駅前には32階建ての超高層ビルが構想され、補助52号線や補助128号線と補助133号線の前倒し着工と新規区道の整備、さらには、小田急経堂車庫跡地利用を合わせた再開発計画は、住宅地世田谷に大規模商業拠点を形成しようという試みに外なりません。実際の多数派である地下化推進の住民を排除する「経堂駅周辺街づくり協議会」は、もはやこの構想を鵜呑みにしていくための御用機関に過ぎません。大地主や商店街等の利害関係者で固め、実質上の住民参加を保証しない協議会は「街づくり条例」違反です。補助金を受けて運営されている同協議会は即刻解散し、補助金を返還すべきです。

「協議会総会」、高品副会長を解任し規約を「改正」

 とうとう、ここまでやるか。昨年11月21日に経堂のすずらん会館(すずらん商店街所有の会館)で開催された「経堂駅周辺街づくり協議会」の総会は、あたかも与党総会屋がとりしきる大企業の「総会」の如く挙行されました。まともな議論を一切おこなわせず、同意の拍手を求める形で進行し、さらには協議会に駆けつけた木下泰之区議を入り口で羽交い締めにして入場を暴力的に阻止しようとするなど、常軌を逸した形で開催を強行した総会の目的は、高品斉副会長(当会事務局長)の解任と会規約の「改正」と運用基準制定にありました。
この街づくり協議会総会の開催は協議会副会長の高品氏には秘密裏に決定され、通知は地下化推進派の会員のところには送達されず、地域住民への周知としてはチラシなどを一切使うことなく、街の数箇所に数日前になって目立たぬポスターを掲示するのみといった方法でおこなわれました。しかも当日30名以上の新規会員が商店街から組織的に登録され、この新規会員の委任状を含めた委任状をもって、総会成立の定足数を確保するなど、およそ民主主義の基本ルールを無視する方法がまかりとおりました。
高品副会長解任は、6月20日の協議会開催時に石綿会長が辞任撤回問題や会運営のあり方について批判を受けた際、「会長を補佐しなかった」という「理由」によるものです。既に運営委員会で同一の「理由」で「解任」を「決定」していましたが、区議会で解任の不当性や会規約違反が追及され、運営委員会では解任はできないことが確認されたことから、総会をでっちあげ、会規約を改正し、運用基準を設けて地下化推進派や住民排除の規定を新たに盛り込むという暴挙に出たものです。新会規約では「小田急高架で決定された都市計画を前提にする」とされ、会員参加資格に地域の線引きを設け、当会のような任意団体を排除するため法人登記を参加要件に加えています。運営も全員の合意に努めるとしていたところを削除し、さらに少数の運営委員会に強大な権限を与え、しかもこれまでの公開条項を制限しています。
世田谷区街づくり条例にもとづく会として認定され、住民の多数の支持を義務づけられている上、補助金も受け、区の職員が事務局を補佐している同協議会の運営や新会規約は明らかに同条例に違反しています。当会としては、この違法かつ不当な「経堂駅周辺街づくり協議会」に対して、その解散と補助金の区への返還を求めるものです。

<資料> 通信「きょうどうのまち」

経堂駅周辺地区は小田急高架事業とあわせた大規模再開発の戦略拠点となっており、建設省から世田谷区までが一体となって小田急やゼネコンの尖兵でもあるコンサルタント会社とともに住民に対する作戦会議を繰り返してきました。このことは、平成3年度の「小田急沿線交通施設及び街づくり調査検討委員会」の議事録開示で極めて鮮明になっています。当会は「経堂駅周辺街づくり協議会」問題を中心にこの一年間、街づくり問題と格闘してきました。その際、経堂駅周辺向けに、通信「きょうどうのまち」を発行し2回チラシとして配布してまいりました。ここにチラシを再録しておきます。なお、標題とした「きょうどうのまち」は「市民共同のまち」であるべきだとの意味を込めました。

通信 きょうどうのまち 第1号

1997年4月20日発行
「きょうどうのまち」編集委員会

経堂駅周辺街づくり協議会石綿会長、辞任を表明
 去る4月15日、「経堂駅周辺の街づくり協議会」の第3回協議会が、経堂地区会館別館(旧婦人会館)で開催されました。
 同協議会は、小田急線の連続立体事業にともなう駅周辺のまちづくりを協議し、区の「駅周辺街づくり構想」に反映させるためのものであり、昨年(注;1996年)11月に発足したばかりのものです。4月15日の協議会は会員資格問題を巡って大きく混乱し、その際、会長が混乱の責任を取って辞任することを表明したことから、今後の行方が注目されています。
 同日の協議会は、運営委員会が用意した報告事項を説明資料の配布もなしに一方的に口頭で報告するという方式で行われ、運営委員会への「一任」同意が目につき、質疑要望については最後に一括して行う等、あたかも「株主総会」的な手法を用いておこなわれようとしていました。フロアーからは運営の改善を求める意見が相次ぎました。

会則を逸脱した理不尽な区域線引き
 「事件」は次のようにして起きました。亀井建設大臣が3月14日の参議院予算委員会の答弁で小田急線の高架事業の見直しの検討を約束したことが、参加していた区議会議員より報告されたのを受けて、参加者が同議事録の配布をしようとしたところ、当日の議長を務めていた石綿会長は根拠もなくこれを制止しようとしました。これを疑問に思った別の初参加者が抗議すると、抗議した住民の居住地域が外れているといって会員資格を論難し発言を封じようとしました。ところが、すでに会員であることが明白なI氏の隣にこの住民が住んでいることがわかると、今度はI氏についても区域から外れているから会員ではないと言い放ちました。
I氏が抗議し議長席につめより、釈明をもとめましたが、明確な解答をなすことさえできず、参加者からの強い抗議の前に、議場は騒然となりました。結局、石綿氏は会を混乱させた責任を取って、会長を辞任することを表明し、これをもって会は終了したのです。
石綿会長は経堂一丁目在住、I氏は宮坂1丁目在住。その距離は50メートルも離れていません。会員資格については発足当初、準備会が理由もなく居住地域の範囲を限定する案を示したことから、会場から異議が唱えられ、昨年11月20日に定められた正式な会規約では、範囲の限定を撤廃。経堂のまちづくりに関心を持ち協議会に参加を望むものは会員として活動できることとなっており、他の地区の協議会の閉鎖性を打ち破る画期的な規約として注目もされていました。

抜本的な運営改革を!
同協議会は世田谷区のまちづくり条例に規定された団体として区から認定されており、経堂駅周辺地域の「街づくり構想案」を区に提案するための組織という性格をもっています。区からの財政援助や人的援助を受けた上で、経堂のまちの将来にとって重要な事項を審議する協議会である以上、その運営は協議体として幅広い意見を交わす場でなければならないのは当然のことであり、また、まちの声を反映し、かつすべての世田谷区民に開かれたものでなければならないことはいうまでもありません。会長の辞任を期に、真に開かれた民主的な会運営が望まれています。

通信 きょうどうのまち 第2号

1997年7月3日発行
「きょうどうのまち」編集委員会

経堂駅周辺街づくり協議会、参加者を不当排除
 既に、本紙創刊号は「経堂駅周辺街づくり協議会」の会員資格をめぐる混乱の責任をとって第3回協議会で石綿会長が辞任を表明したことを伝えた。ところが、去る6月20日に経堂地区会館で開催された第4回協議会では、主催者側が前回協議会で会員資格問題を追及した会員の入場阻止を企て、会員資格規制を一方的に行おうとしたことや、辞任したはずの石綿会長が挨拶に立ったり、呼ぶことを決議もしていない区派遣の「専門家」の講演を予定したことから、大混乱におちいり、結局、当日の協議会は流会となった。同協議会は既に世田谷区街づくり条例による「地区街づくり協議会」として公費援助がなされているが、このような運営を続けている限り公費援助を受ける資格はないし、既に支払われた公費援助は区に返還するべきだとの声がこの事件を機に一挙に広がっている。
 当日、主催者側から入場を阻止されようとしたのは第3回協議会で会員資格問題を追及した斎藤驍氏(弁護士、宮坂1丁目在住)と木下泰之氏(区議会議員、宮坂1丁目に事務所を構える「小田急線の地下化を実現する会」の事務局次長)。
 「経堂駅周辺街づくり協議会」の会員資格については昨年(注;1996年)11月20日の第1回協議会の際、準備会から会員となれる住民の範囲を示す地図とそれに基づいた規約案が配布されたため、参加者から批判が相次ぎ、12月に開かれた第2回協議会では配布された地図の範囲外の住民も会員として参加できるものとした規約が定められていた。4月15日に開催された第3回協議会では斎藤氏と隣家の参加者に対して会長が「あなたがたには会員資格はない」と公言したことの責任をとって石綿会長は辞任を表明していた。ところが6月20日の協議会では斎藤氏に対して「会則運用基準」の順守なるものを記載した文書に署名をしなければ入場させないとしたのである。

条例違反の協議会運営
 この会則運用基準は1で「協議会として街づくりを進める対象としての範囲は、区域図に示す範囲とします。」として一方的に範囲を限定した上で、2で「会員の要件としての範囲は、1の範囲が基本となりますが、範囲外の者であっても、次の要件を備えた者であれば会員になることができます。」とし、要件の(2)で「現在、都市計画決定された高架方式で進められている連続立体交差事業を基本に駅周辺の街づくりを考える者。」とされている。
 このことは協議会参加の要件として、街づくりに対して一定の価値観を持つことを強要しており、区の公的助成を受ける「地区街づくり協議会」にこのような運用基準を設けること自体、会員の自主的参加と住民からの多数の支持を条件に「協議会」への公的助成を規定した「世田谷区まちづくり条例」違反であることは云うまでもない。まちづくりを考える際に既存都市計画を順守することを前提とするのは意味がないばかりか、小田急線の高架決定については裁判所で都市計画の認可の処分の取り消しが争われている以上、この争いをも含めた現状から街づくりの協議をするしか方法はありない。それを小田急線の高架を肯定するものに限るとするのは「まちづくり」のイロハからの逸脱以外のなにものでもない。
 そのうえ、問題なのはこの「運用基準」は協議会として正式に定められたものでなかったことである。この「運用基準」の「制定」については当日の協議会の議題には含まれていたものの、役員会側の案に過ぎないものであった。協議会での決定もしていない「運用基準」で入場を規制すること自体、常軌を逸している。
 木下区議に対する入場阻止行為はさらに異常なことであるといわなければならない。木下区議は宮坂1丁目に事務所を構えている「小田急線の地下化を実現する会」の役員である。同事務所は当初配布された「会員資格範囲図」の内に存在しており、「昭和信用金庫経堂支店」や「世田谷信用金庫経堂支店」までもが会員となっている以上、協議会の会員資格に何ら問題はない。ましてや、当日は五十畑区議も会員として参加しているのであり、木下区議のみの入場を阻止しようとするのは協議会規約上、問題であるばかりでなく、協議会が助成団体という公的な存在である以上、議員の調査権をも不当に妨害する行為であるといわなければならない。
 このような逸脱行為が世田谷区の事務局補佐のもと行われている以上、区の責任も免れない。

連綿と居座る石綿会長
 主催者の一方的な入場規制にもかかわらず、斎藤氏、木下氏両名は会場に入り、会長辞任問題や、専門家派遣の問題、公的助成を受けている協議会の運営の在り方について議論をすることについて動議を提出したにもかかわらず、主催者側は発言を制止し、議論する時間を保証しなかったために会場は混乱。議事を一方的に打ち切って散会とした。
 会場内で両氏が6月20日の協議会開催にあたり主催者側に2つの動議が提出された。
 第一に第3回協議会で辞任表明を行ったにかかわらず、いまだに石綿氏が会長として居座っていることについての釈明を求める動議である。石綿会長の辞任表明は、一度会員資格を認めた会員について会員資格がないと発言をしたことから生じた混乱の責任をとってのものであった。石綿氏は6月20日の協議会の席上でも自ら「辞任発言」をしたことは認めている。協議会の基本的事項にかかわることであるから、少なくとも辞任問題についての報告と役員会としての見解を参加者に説明し、議論を深めるのが筋であるが、当日はいきなり石綿氏が会長としての挨拶を強行した。斎藤氏が釈明の動議をもとめたのは当然のことであるが、石綿氏は「当日の議長を辞任しただけであって会長を辞任したわけではない」といなおり、混乱の原因となった会員資格問題に一切触れようとせず、謝罪もすることなく釈明動議を打ち切った。会長を辞任した訳ではないといなおることは許されるべきではない。百歩譲ったとしても議事の混乱をもって「議長」を辞任したのであれば、第3回協議会自体の取り扱いが問題にされなければならない。住民の自主的な協議体であるはずの同協議会の会長のポストに連綿としがみつくこと自体異常な事である。

頼まないのに区から専門家派遣、1回6万円は誰も知らず
 第一の動議を強硬的に打ち切ると、主催者側は区から派遣された専門家(民間コンサルタント)による「勉強会」を始めようとした。
 斎藤氏および木下区議から再び2つ目の動議が提出された。第2の動議はどのような資格で、どのような権限で区から専門家が派遣されているのかの釈明についてである。
 「まちづくり協議会」への専門家の派遣については「世田谷まちづくり条例」28条で区長は「街づくりを推進するために必要があると認めるときは、街づくりの専門家を派遣することができる。」とされており、区長は「その業務に要する経費の一部又は全部を負担するものとする」となっており、現在は専門家が1回派遣されると6万円が専門家に区から支払われることが通例になっているそうである。
 専門家の派遣については、第1回目の協議会の時から区から派遣されたと称する専門家が会議に同席しており、協議会でどのような専門家の派遣を要請するかといった根本的な議論は一切なかった。役員会においても専門家は派遣されており、役員会の席上で、役員から専門家に対しあなたは何故ここにいるのかとの質問が出るほど、「専門家の派遣」の手続き自体が不明朗であった。「世田谷区街づくり条例施行規則」の18条は「街づくりの専門家の派遣を受けようとする者は、区長に対し、申請をしなければならない」とされているにもかかわらず、協議会はおろか役員会でさえ専門家派遣および専門家の選定および専門家派遣の予算についての説明や協議は一切なかったのである。

傀儡(かいらい)住民組織に街は託せない!
 6月20日の協議会では専門家派遣についての正当性の弁明は主催者側は一切できなかった。役員の中からも、専門家派遣についてはきちんと議論されたことがないとの証言も披露され、結局、同協議会が区のいうままの専門家を受け入れ今日に至っていることがはしなくも証明されてしまった。
 すでに、同協議会は区からの補助の是非を議論することもなく、区からの補助金をいつの間にか受けており、また事務局の補佐と称して区の職員が事務方を引き受けている。ちなみに、条例のどこを読んでも区の職員が事務局の仕事を引き受けたり補佐ができるとは書いていない。区のいうままに専門家を派遣してもらって勉強会を行うということであれば、これでは「区の傀儡(かいらい)住民組織」といわれても仕方がない。席上、木下区議の6月   日の区議会本会議で同協議会を「区の傀儡住民組織」と批判したことに協議会役員から非難の発言があったが、木下区議が同役員に対して協議会への助成の根拠法令である「世田谷区街づくり条例」とのかかわりで問いただしたところ、「条例など知らなくてもよい。」などと言い出す始末であった。これでは住民の自主的な住民組織であるとは言い難く、操り人形をあらわす「傀儡」の言葉がふさわしい。
 動議発言を封ずる怒号のなかで、動議はきちんと議論されることもなく、派遣専門家による「勉強会」も中止になったが、それでもこの専門家にはその日の派遣費6万円が支払われることになったはずであり、また、協議会は補助金で運営されている。区民の血税を使い地区街づくり計画の案を作成する以上、協議会の運営は公正なものにあらためなければならないし、石綿氏を初めとする街の一部の有力者の私的な利害とのみ結び付いた協議会であるならば、区は一切の助成を撤回し、地区街づくり計画原案を作成する権限を剥奪するべきである。
 小田急線の連続立体事業を巡っては、高架・地下を選定する際に行った、街づくり計画原案の作成を含めた建設省の要綱に基づく基本調査情報が秘匿されたまま、強引に高架計画だけが決定されたという経緯がある。連続立体事業は建設省自身が認めるとおり道路開発や周辺の超高層高度利用を盛り込んだ巨大な市街地再開事業であることはいうまでもない。秘匿された情報の開示から始め、高架事業の隠された真実を区民の前に明らかにし、地下への見直しの是非をもふくめて徹底的に議論の場を提供するのが地元自治体の役目であるはずである。行政操作型にしかならないうわべをとりつくろった「住民参加」であるならば有害無益である。区民が街の将来を選択するにたる基礎情報を、まさに骨身を削り、都や建設省と対決しながら区民に提供し、区の将来にとって過ちのない未来を区民とともに模索することからしか世田谷に自治は育たない。


いよいよ、危ない世田谷の環境
このままでは住めなくなってしまう。

危惧したことがすでに世田谷区内で現実のものとして頭をもたげつつあります。例えば、二子玉川では東急多摩川園跡地を中心とした再開発計画で40階を超す住宅棟ビルを含む超高層ビル4棟が計画され、三軒茶屋の超高層キャロットタワーの完成を契機に国道246沿いの駒沢2丁目では、住居地域に接して30階建て高さ98メートルものワンルームマンションの建設の確認申請手続きがなされようとしています。また、砧のNHK技術研究所の建替えが予定され、用途地域を高度利用地区に変更した上で、77メートルの超高層ビルが建てられようとしています。
こういった状況は、経堂駅前の32階建ての超高層ビル計画が区の役人のいう「試案」などではなく、現実に生きたプランであることがよくわかります。
超高層ビルにとどまらず、世田谷では大規模マンションや中小規模のマンションの建設ラッシュとなっており、一方で15坪以下のミニ宅地開発が目につきます。行政は違法建築を取り締まるどころか容認しており、建築基準法で義務付けている完了検査届は世田谷区で22.4%に過ぎません。緑被率は20%を既に切っており、大場区政登場の1975年時の緑被率は30%ですから22年で緑を3分の1も消失させていることになります。その原因のほとんどが庭の緑の消失なのです。
こうした傾向に歯止めをかけるためにも、どこからどうみても理不尽な小田急線高架とこれとセットになった大規模再開発を許してはなりません。

高架・超高層・車だらけの街にノーを! 都市のあり方を皆で考えよう。

「小田急線の地下化を実現する会」として活動してきた私たちは、昨年9月21日に総会を開催し、会の名称を「小田急高架と街づくりを見直す会」と改め、新たな活動を開始しました。
会の名称変更は、訴訟等を通じ、高架事業の違法・不当性が明らかになり、代替案としての小田急地下化の優位性が明らかになってきているにもかかわらず、強引に経堂工区(喜多見駅・梅丘間)で高架工事が開始されていること、合わせて工区6駅周辺の街づくり構想や同工区内25本もの新設・拡幅交差道路の着手計画が進みつつあるという事態に対応するものです。
たった6.4キロメーターの区間に25本もの道路新設・拡幅計画を含み、1兆円以上の投資がなされるこの連続立体交差事業を見直せという私たちの運動は、都市再開発のあり方そのものを本格的に問う市民運動です。一見地域問題のように見えるかもしれませんが、同じような連続立体事業が都内各鉄道の沿線で同時進行している現状を見れば、問われているのが東京全体の都市再開発のあり方そのものであることがわかります。
高架工事は進んでいますが、その事業手法の法的根拠や市民への説得性といった都市計画上の基礎はがたがたです。そして、過ちが明らかである以上、あきらめずに闘い続けることがなにより大事であると考えます。また、いまや法律用語ともなった「街づくり」を具体的にどう見直すかは、まさにこれからの課題です。
高架・超高層・車だらけの街にノーを、真に環境と共生した街をつくりだすために、ひとりひとりの英知と行動を集めましょう。地域を問わず、私たちの趣旨に賛同する方のご参加をお待ちしています。入会して頂き、会と裁判を支えていただければ幸いです。入会申し込みの要領は右「お願い」のとおりです。会費は月一口1,000円です。2口以上お願いできれば幸いです。

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小田急高架と街づくりを見直す会 会長 中本信幸
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