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環境影響評価調査計画書―小田急小田原線(代々木上原〜梅ヶ丘駅間)の連続立体交差及び複々線化事業― に対する意見書


2001年6月15日

東京都知事 石原慎太郎 殿

小田急高架と街づくりを見直す会
会長 中 本 信 幸
世田谷区宮坂1−44−34−207
03−8439−9868

1,本件事業の名称の変更についての説明を明確にされたい

 本件小田急小田原線(代々木上原〜梅ヶ丘間)の事業について「連続立体交差及び複々線化事業」と表記されているが、これは小田急小田原線(喜多見〜梅ヶ丘駅付近間)についての事業の際の環境影響評価で表現されていた「複々線・連続立体交差事業」の表記と異なっている。

 同様の事業であるにもかかわらず何故、表記を変えたのか、「複々線・連続立体交差事業」の表記の由来・法令上の根拠と「連続立体交差及び複々線化事業」の表記の由来・法令上の根拠を明らかにした上で、おのおのの差異と概念の違いについて明らかにされたい。

2,細切れアセスを本来のアセスに改めよ

(1)騒音・振動・粉塵被害・低周波騒音等は代々木上原・和泉多摩川間を対象とせよ

 本件事業によって代々木上原から和泉多摩川までの複々線化は完了することになり、電車の交通量とスピードはこの代々木上原から和泉多摩川までの全区間において自ずと増えることになる。そうすると、今回の事業は騒音・振動・粉塵被害・低周波騒音等についてこの全区間において影響を及ぼすことになる。従って、影響を与える全区間を対象に環境影響評価を行うべきである。

 喜多見・梅ヶ丘駅付近間の事業の際の環境影響評価では一日あたりの列車交通量を現行の770本から喜多見・梅ヶ丘間「完成時」の800本への30本の増加としてしか環境影響評価をしておらず、この手法は「細切れアセス」の典型として専門家からの批判を受けたはずである。今回の事業区間は地下化であるため、この区間のみに限定すれば、騒音・振動については高架と地下の移行区間のみの調査となり、今回の事業によって少なくとも1000本以上には増えることが確実な交通量とスピードアップに伴う喜多見・梅ヶ丘間の環境影響は無視されることになる。このような調査は環境影響評価の名に値しない。

(2)補助26号線・補助54号線等交差道路による環境影響評価を合わせておこなえ

 連続立体交差事業は交差する踏み切りを連続して解消すると同時に、交差道路を拡幅するばかりでなく、新設する。また都市再開発・街づくり事業もあわせおこなう事業である。

 本件代々木上原〜梅ヶ丘駅間の事業の計画素案説明会では、補助26号線・補助54号線の都市計画変更素案と各駅ごとの駅広の計画素案や、駅広から補助幹線道路へのアクセスについての計画素案も提示している。

従って、環境影響評価に当たっても、これらの事業計画をもふくめた線増連続立体交差化事業にみあった大気汚染・騒音等の環境影響を予測すべきである。



3, 工事車両による大気汚染・騒音・振動・交通混雑の影響を環境予測項目に加えよ

 本件の事業区間は概ね二線二層の地下方式を取ることとなったが、シールド工法は急行線の一部にしか使わないため、地下全区間で開削工法を採用する。下北沢地域は住宅が密集し、道路も狭隘であるため、開削工法による土砂の搬出や建設資材の搬入等で工事用車両による周辺影響は大きい。工事車両による大気汚染・騒音・振動、交通混雑による生活・事業活動への影響の予測は不可欠であり、環境予測項目に加えるべきである。

 ちなみに、喜多見・梅ヶ丘間の環境影響評価の際には工事車両による環境影響評価は行われている。



4, 本件事業の都市計画素案立案の課程情報を公開せよ

 東京都環境影響評価条例第5条は「知事は、都民事業者並びに特別区長及び市町村長に、この条例に定める条例の実施に関し必要な資料を公開し、又は提供するよう努めなければならない。」としている。

もとより、環境影響評価の対象となる事業計画については、その詳細や立案過程について充分な情報が提供されなければ、環境影響評価に対して正しい意見を表明することすらできないことは言うまでもない。

 本件のような都市計画決定をともなう事業の環境影響影響評価調査計画書は事業計画素案の段階で立案されることとなる。事業計画素案は素案である以上、計画案となるまでは計画素案が変更されることが前提とされる。

 従って、環境影響評価調査計画書への意見は可塑的な計画素案の実体を充分つかんでおく必要が生ずる。とりわけ本件事業計画素案は二線二層地下方式をとっているが、ほとんどが開削工法であり、事業費が安上がりであるはずの全線シールド工法を何故採用しないのか不可解である。開削とシールドでは事業費はもとより、水脈や地盤への環境影響、工事に係わる環境影響が大きく異なっている。

 また、同じ構造形式を取ったとしても地下構造物はその工法によって水脈・地盤・土壌汚染・水質汚濁などに環境影響を与えるのであるから、どのような工法をとり、物理的・化学的影響を与えるのかを明確にしておく必要がある。

 よって、現計画素案導出の経過の詳細、及び予定される工法の詳細を都民に提供しておくことは計画素案の段階で環境影響評価調査計画書を提出する際の責務である。同計画素案は昭和62年・63年の連続立体事業調査および平成12年度の連続立体事業調査にもとづくものである以上、これらの基礎調査を公開すべきであるし、その余の技術情報も公開すべきである。

以上


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