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「市民専門家会議」事務局の須田さんの読み方です。ご参考にしてください。

判決要旨の読み方(2001年10月4日 SDL須田大春)


法律文書は読みにくい。
しかし日本語で書いてあるのだから読んで読めないことはなかろう。
法曹専門家だけが読めればいいというものでもなかろう。
まして、尊敬する藤山裁判長がマスコミ対策に作った文書なら何とかよまなきゃ。


(事案の概要)
 本件はAに関しBがCと主張しDにEを求めた事案である。
 A:喜多見梅丘間の線増連立工事事業
 B:沿線住民である原告123名
 C:理由のない地下式不採用・被害のある高架式採用で都市計画決定に違法
 D:被告(もとは建設大臣・いまは関東整備局長)
 E:都に対する事業認可の取り消し
ここで、着目すべきは注までつけて「線増連立工事」といったこと。
これで線増と連立を一つの工事とみなすことになる。
小田急の看板が何時も連立と複々線に分かれていることを否定した。
もうひとつは、被告が大臣(政治家)から局長(官僚)に変わったこと。
これは省庁改変のどさくさにまぎれて、官僚の権限が増えたことを示す。


(争点)

1.原告適格
2.各事業認可の適法性
  2−1.認可自体の適法性
  2−2.前提となる都市計画決定の適法性


(原告適格)

付属街路工事を含めた事業地内の不動産の権利者が適格(9名)
それ以外不適格(114名)
この部分のみ半分敗訴。原告の主張は、ひろく事業によって影響をうけるもの。
被告の主張は、付属街路工事も複々線も含まない連立部分の権利者のみ。
いくら、主張が正しくても玄関払いされたのでは法廷戦術としてまずい。
地権者が残ったのはよかった。しかし、環境影響に関する裁判で不動産権利者のみが原告になれるという制約とは戦いつづける必要がある。
「あまみのくろうさぎ」を原告とした訴訟があったことを思い出す。
被告に都が参加したことには触れていない。


(各事業認可の適法性)

1. 鉄道事業認可自体

1) 都市計画決定の経緯を理解せず
   説明会で意見封殺・情報公開後の都庁での専門家協議なども経緯には当然含まれる。
2) 根拠なしに施行期間の適否判断し
   複々線と連立が別の工事であれば,どちらかが先になるはず。など十分に検討したか疑わしい。
3) 申請書の事業地表示が不正確・都市計画決定と一致しない
   詳細不明であるが、複々線と連立の関係であろう。
   都市計画決定は線増連立で認可は単に連立。
4) 施行期間の判断不合理
  の2点で違法(法61条)。中央官庁の違法を指摘。

2. 前提となる都市計画決定(付属街路も一体)


1) 在来線違法騒音の疑念を看過。都市計画によって解消を図るという視点欠落
高架によるさらなる騒音被害について環境影響評価の著しい過誤
2) 下北沢を地表のままにした計画的条件設定の誤り
3) 地下式は地形条件で劣るとした地形的条件の判断の誤り
4) 高架が圧倒的に有利とした事業的条件の判断内容の著しい誤り
 とくに、騒音の看過は違法性より利便性という法的には到底看過し得ないもの。
 事業費の検討不足は著しい瑕疵。ひとつだけでも優に認可違法。都の違法を指摘。
マスコミはなぜ前者だけをとりあげるのだろうか。


(事情判決不適用)

この部分が一番わかりにくい。
表題の行政事件訴訟法31条1項はいわゆる「事情判決」で、行政の行為に違法があることを認めておきながら、「法律どおりに実施すると混乱が生じ公の利益にならない」として、原告に「名」のみ与え「実」を与えない方便である。
今回、これを採用しなかったことが「専門家」の驚きである。
分割すると

1. 本件各認可が取り消されたとき、その手続き自体またはそれに必要な公金の支出に関与した公務員が何らかの意味で責任を追及される可能性がある。
2. 本件各認可が取り消されても、すでになされた工事について原状回復の義務等の法的効果が発生するものではない。
3. 本件各認可が取り消されても、公の利益に著しい障害を発生するものではないから
事情判決にはしないで、原告の請求を認める。
最初の項目は、悪徳官僚をやっつけろという「エール」である。
次の項目は、工事差し止め裁判の裁判官への批判である。
そして、最後はこうした方便が、合法性より利便性を上におく「官治国家」を作ってしまったことへの自責の念だというのは読みすぎか。


(結論)

原告9名が完全勝訴。残りの114名は玄関払い。

以上


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