ホームページへ▲

2005年12月 6日付 朝日新聞夕刊

小田急高架訴訟

原 告 適 格 ど う 判 断

最高裁あす判決 都市計画巡る争いで


 鉄道や道路などをつくることを行政が認めた場合、違法性を裁判で争えるのは、地権者だけなのか、周辺住民も含まれるのか――東京・小田急線高架化の国の事業認可をめぐる行政訴訟の上告審で、最高裁大法廷は7日、この「原告適格」の問題について判決を言い渡す。過去の最高裁判例を変更し、司法の場で都市計画をチェックできる住民の範囲を広げる公算が大きい。

 小田急訴訟では、一審は一部の関連事業用地の地権者に高架化についての原告適格を認め、高架化事業全体を違法とする判決を導いた。だが、二審は、高架化そのものの事業用地の地権者にしか高架化についての原告適格はないが、そのような人は一人もいないとして、訴えを退けた。

 最高裁は原告適格の問題に限って大法廷に回した。原告適格について法律は「法律上の利益」がある場合と定めている。最高裁は「たんなる公益ではだめで、法律によって個別に保護されている利益」と限定する立場だ。

 それでも個々の訴訟で、最高裁は処分の根拠となった法律では明確に保護されない人にも、法の趣旨や目的をくみ取ったり、関連する法令を考え合わせたりして原告適格を広く認めることもあった。例えば、定期航空の運送事業免許をめぐる訴訟で騒音被害を受ける飛行場周辺の住民に認めたり(89年新潟空港訴訟)、原子炉設置許可をめぐる訴訟で安全面で影響のある周辺住民に認めたりした(92年もんじゅ訴訟)。

 だが、都市計画をめぐっては99年の「環状6号線訴訟」で最高裁は「事業地内の不動産に権利がなければ原告適格はない」と狭く判断した。

 こうした中、行政事件訴訟法が改正され4月に施行された。処分の根拠となった法律だけではなく、関連する法律の趣旨や目的、実際にどんな被害が出るのかなどを考えて判断することを求める「解釈規定」が加わった。

 今回は、改正法施行後初めての最高裁の判断となる。法改正の精神を実際にどう生かすか。それを大法廷が示すことになる。(佐々木学)


  ホームページへ▲