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2005年10月28日 毎日新聞 特集 下

扉は開くか  行政訴訟の行方
△小田急線訴訟大法廷弁論▽下△ 

制度改革、試される最高裁


立教大学大学院教授 淡路剛久さん


<写真、略>

 あわじ・たけひさ 64年東大卒。立教大助教授、同教授を経て、昨年から現職。専攻は民法と環境法。水俣病、スモン、薬害エイズなど公害、薬害問題について多数の著書、論文を発表している。63歳。


 ――環境破壊を防止するという観点で、行政訴訟の利点はどこにあるのでしょうか。

 事業者の環境破壊型開発行為よりも、行政庁の許認可が先行することが多いため、開発差し止めを求める民事訴訟より、許認可取り消しを求める行政訴訟の方が、早い段階で争えます。


 ――最近の司法判断の流れをどう見ますか。

 裁判所は行政に追随するような判決をする傾向が強く「司法消極主義」と言われてきました。しかし00年以降、尼崎大気汚染、小田急、国立マンションの各訴訟の1番で原告が勝訴するなど、変化が生じてきました。一方、2審では逆転判決が出るなど、司法判断は揺れ動いてます。


 ――こうした中で、小田急訴訟の持つ意味は。

 90年代後半以降「司法が期待した役割を果たしていない」という声が強まり、司法制度改革が実施されました。原告適格の拡大もこの流れの中にあります。さらに行政の事前規制が弱まり、司法による事後的なコントロールが重視されるようになりました。こうした一連の動きに応えられるのかという意味で、訴訟を通じ、最高裁が試されているのだと思います。


 ――原告適格はどうあるべきでしょうか。

 欧米では、直接権利を侵害されない自然保護団体なども訴訟を起こすことができます。騒音被害などを受ける周辺住民に原告適格を認めるのは当たり前です。原告適格を広げたうえで、環境に関する法整備を進め、多くの手法で行政の違法を突くことが可能になるような道を作るべきです。[聞き手小林直、写真竹内幹]


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