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2005年10月28日 毎日新聞 特集 中

扉は開くか  行政訴訟の行方
△小田急線訴訟大法廷弁論▽中△ 

「判例変更」で範囲拡大を


東京大学教授 小早川光郎さん


<写真、略>

 こぼやかわ・みつお 69年東大卒。助教授を経て、83年から現職。専攻は行政法。著書に「行政法講義」など。02〜04年、司法制度改革推進本部の行政訴訟検討会で委員を務めた。59歳。


 ――裁判を起こす資格(原告適格)を拡大したとされる行政事件訴訟法の改正に関与されました。その立場から、小田急訴訟をどう見ますか。

 以前から、付近住民の原告適格を認めるべきだと考えていました。しかし判例は動かず、立法で動きをつけるしかないと思っていました。私の考えのすべてが法律になったわけではありませんが、原告適格を拡大しようと思えば可能になる法律ができたと思います。

  ――「法改正は判例の寄せ集めであり、原告適格は拡大していない」という見方もあります。

 法改正のメッセージは拡大」です。「被害の態様や程度を考慮して原告適格を判断する」という趣旨の(判例にない)規定も加わったので、拡大の道筋は付けられたと思います。無制限ではありませんが、放置できない被害を拾い上げることは可能です。


 ――これまで「積極的に改正を活用し、育ててほしい」と発言してきました。施行からわずか半年で、大法廷の実務家たちが、その法律を巡って審理を行います。

 非常にタイミングが良いですね。大きな重要な一歩だと思います。これからさまざまなケースを積み重ね、法改正の意味を膨らませて頂きたい。


 ――従来の判例は、事業地に不動産の権利を持つ住民以外の原告適格を否定してきました。

 改正法の意味を分かりやすく示すためには、判例変更が望ましいと思っています。これまでは、人為的に原告適格を狭く限定してきました。これが自然な範囲まで拡大すればいいと思っています。[聞き手・小林直、写真・石井諭]


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