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2005年10月27日 毎日新聞 特集 上

扉は開くか  行政訴訟の行方
△小田急線訴訟大法廷弁論▽上△ 

 小田急訴訟に法曹関係者の注目が集まっている。裁判を起こす資格(原告適格)を巡る今回の最高裁大法廷判決が、今後長期間にわたり行政訴訟の行方を左右するからだ。「門前払いが多過ぎる」と批判を浴び続けた裁判は変わるのか。過去の訴訟当事者や識者に審理をどう見るか聞いた。

「使える裁判所」へ転換を


「環6訴訟」原告譲さん

<写真、略>

 すずきゆずる 東京大教授(魚類免疫学)。 東京都渋谷−豊島区の環状6号線(山手通り)の拡幅などを巡り、周辺住民が建設相(当時)に事業認可の取り消しを求めた訴訟の原告。99年に敗訴が確定した。57歳。


――環状6号線訴訟の最高裁判決(99年)は周辺に居住したり、通勤・通学しているが、事業地内に不動産の権利を持たない人は、原告適格がない」として、住民側の上告を棄却しました。

 まさかの判決でした。行政の事業により、環境悪化の被害を受ける私たちは司法に頼るしかなく「泣き寝入りする他ないのか」と感じました。元官僚が最高裁判事に就任したりするから、裁判所には行政に味方する姿勢が染みついているのだと思いました。


 ――敗訴確定から約6年たった今、自宅周辺はどう変わりましたか。

 道路の幅が22bから40bに広がり、沿道に高層マンションが建ち並びました。地域のコミュニティーは徐々に壊れ、私の家はマンションから丸見えです。今後、拡幅した道路の地下に首都高速道路が建設され、大気汚染が本格化します。


 ――改正行政事件訴訟法が今年4月に施行され、原告適格が拡大されたと言われています。

 行政を監視するのが司法の役割です。これまでの姿は、あまりに情けない。環境アセスメントを義務づける環境影響響評価法も先に施行(99年)され、関連法親も整ってきました。情勢の変化を意識した判決を出し「市民が使える裁判所」に変わってほしいと思います。[聞き手・小林直、写真も]


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