第226回   松尾清憲の肖像-ロマンの三原色- / 松尾清憲

1.太陽が泣いている / 2.Music / 3.天使は知らない / 4.Blue Rose / 5.Urban Swimmer / 6.A Song For Utopia / 7.彷徨える Beast / 8.彼女はミステリアス / 9.Go Away From The Bad Worldさまよえる Beast / 10.カレイドスコープの王国

 さて、今回紹介するのは「松尾ちゃま」こと−ポップ・マエストロ−松尾清憲のニュー・アルバムです。このところ松尾さんのアルバムは、ストレンジデイズからリリースされていたのですが、今回はユニヴァーサルに配給先を替えてのリリースとなります。

松尾さんと言えば、ソロ・アーティストとしてはもちろんのこと、BOXのメンバーとして、cinemaのメンバーとして、ピカデリーサーカスのメンバーとして、ソングライターとしてと、広い分野で活躍していることはご存じだと思います。そのすべての場面で松尾さん独特の「ポップ」をふりまいているのですけれども、今回のアルバムも松尾ポップの結晶がずっしりと詰まった作品になっています。

M1は、結構古い作品だとのことですが、ずいぶんとドラマチックなアレンジの曲ですね。でも、そのアレンジがリリカルなメロディーを際だたせてくれています。松尾さんにしてはずいぶんとオーソドックスな節回しではないかと思いますが、それもメロディーの普遍性に一役かっているのかな?と感じますね。個人的には第1期DPのリッチー・ブラック・モアっぽいギター・ソロがお気に入りです。M2は軽快なポップ・ナンバーですね。古き良き時代のアメリカン・ポップスの香りがします。

M3は、モータウン風リズムに60年代ブリティッシュ・ポップ・サウンドが乗っかった楽しい曲ですね。結構シングル向きの曲のように思います。ミドル8のポールマッカートニー風の展開は、どことなく伊豆田さんの曲みたいですね。(^^)スカのリズムのM4は、メロディーとコーラスの美しさが目立つ曲です。こういう雰囲気の曲を聴けば、シネマを思い出してしまいますね。個人的には一番のお気に入りの1曲。

M5は落ち着いたサウンドの曲ですね。サビのメロディーとコーラス以外のアレンジの雰囲気(特にギターの音)が、 以前デビューしたBahashishiの「Spell」 とよく似ているのは、偶然とはいえ、個人的には面白かったです。M6は、派手な感じのする曲ですね。(笑)あくまでギターが中心なのだけどエレポップ風味のアレンジは、バグルスあたりのイメージなのかな?これも面白い曲です。

そしてM7です。これまたピカサ風のドラマチックな曲です。メロディーもリリカルで美しく、アレンジも完璧ですね。個人的には、アルバム中のベストトラックではないかと思います。M8は、凄くライヴっぽい雰囲気の曲ですね。BOXっぽい感じがするのもあたりまえです。ここでは杉真理さんが完全フィーチャーされてるのですから。(^^)60年代ブリティッシュ・サイケの香りがするのも納得です。そう言えば、この曲をはじめ、このアルバムでヴァイオリンを弾いている武藤さんって、昔、風祭クンのソロ・ライヴでヴァイオリンを弾いていた武藤さんなのかな?

M9は、すごくブリティッシュ・ポップ色の強い曲ですね。ピカサじゃないのが不思議なくらいの曲です。メロディーも凄くいいですよ。ラストのM10は、チェンバロの音が印象的なアコースティック・ポップです。リリカルなサウンドにメロディーが絡んでいく構成が美しいですね。そして、余韻たっぷりで、この素敵なアルバムは終わりを告げるのでした。(^^)

聞き終わってみて、本当に充実しているアルバムだと思いました。最近のアルバムが「ミニ・アルバム」の感覚のものばかりだっただけに、久々のフルアルバムは聞き応え十二分ですね。(^^)

僕は最初に松尾さんのことを「ポップ・マエストロ」と書きました。ファンの間では、松尾さんのことを敬意を込めてそう呼ぶのです。僕もその呼称には賛同していますし、松尾さんの音楽を語るのにふさわしい言葉だとも思います。
また、ファンの間では、松尾さんのもうひとつの呼称として「メロディー・メイカー」というものが一般化していますが、僕は松尾さんのことを「メロディー・メイカー」と呼ぶことについて、必ずしも賛同してはいませんでした。もちろん、これまでの松尾さんの作品のメロディーのクオリティは高水準のものばかりだったことは事実です。ただ、僕には松尾さんの音楽を語るのに「ポップ・マエストロ」のほうが遙かに的を得ていると思うし、曲のメロディーそのものを見た場合、松尾さんよりもそれにふさわしい日本のアーティスト(たとえば、サウンド指向でメロディーを重視して聴かれるアーティストではないのですが、移籍前のHMさんとか)が頭に浮かぶのです。
でも、このアルバムを聞き終わった時、今までの松尾さんに、ここまでメロディーの素晴らしいアルバムがあったかな?と感じました。完成度やポップ度ではいつも120%以上のものを感じていましたが、今回のアルバムでは、メロディーの良さを本当に感じています。「メロディー・メイカー」?・・・いいんじゃない(^^)。と思わせてくれた1枚です。

それにしても、2007年は(僕たちポップ・フリークにとって)なんという年なのでしょうか。
アメリカ(!!!)、ファウンテインズ・オブ・ウェイン、ピルバグズ(!)、ポップ・イズ・アート、ポール・マッカートニー(!)、クラウデッド・ハウス(!!)、クリック・ファイヴ、ニック・ロウ(!!!)、日本でもチューリップ(僕にとっては1枚目のみですが)、などなど素晴らしいアーティストたちの新譜が相次いでリリースされ、ルビナーズやスクイーズの全盛期のライヴがリリースされ、ラズベリーズのライヴアルバム(!!)がリリースされ、パイロットの初来日(!!!!)が決まり・・・・(ちなみに「!」はびっくり度です)。そしてこうして松尾さんの素晴らしすぎる新作までリリースされたのですから、嬉しい悲鳴が止まる暇がありません。これでカイル・ヴィンセントの新作のリリースが年内に間に合えば(シングルは秋に出るようですが)、もう死んでもいいくらいの歴史的な1年だと思いますね、僕は。(笑)

では、また次回に。

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