第207回  心の世界 / Bahashishi

 1. 月の呼吸 / 2. 渇望 / 3. spell / 4. 逃げた鳥 / 5. 光へと続く道 / 6. 逸楽の夢 / 7. Interlude / 8. 五月闇のバラッド / 9. 浅葱の星 / 10. 記憶の天秤 / 11. Line

さて、今回紹介するのは今年の5月24日にメジャー・デビューしたBahashishiのファースト・アルバムです。Bahashishiとは「こころ」という意味だとのことで、ということは、ファースト・アルバムとしては(「ジャックスの世界」じゃないですが)かなりオーソドックスなタイトルということになりますね。(^^)

僕はこのバンドのことは全く知らなかったのですが、3日前に連れ合いの筋でバンドの事を知り、このアルバムを手にし、気がついたらこのアルバムばかり3日間ずっと通勤の行き帰り(注:片道40キロで1時間20分程度)に聴いていました。(^^;

Bahashishiは「ギター:浩一、ヴォーカル:ユラリ、ベース:JARI、キーボード:明日香、ドラムス:Hajime」の5人組のバンドですが、彼らの楽曲のほとんどはヴォーカルのユラリさんとギターの浩一くんのペンになるようです。僕にとっては自分の子どもと言える年代の若いバンドなのですが、新旧いろんなスタイルの音楽を上手く再構築しているなと思いました。それと、なによりも楽曲が粒ぞろいでクオリティが高いということを言っておかないといけないでしょう。

M1は、楽曲も歌も演奏もサウンドも(バンドのイメージ戦略も含めて)アルバム中でも屈指の曲だと思います。ギターとピアノのサウンドもいい感じですが、弦楽器(これは生音ですよね)のアレンジが素晴らしいです。サウンド的には落ち着いていて耳に心地よいのですが、歌詞の面ではなかなか抽象的で重たいものがありますね。アルバム中のベスト・トラックだと思いますが、個人的には3番目のお気に入りの曲です。(^^)

M2はアップテンポのエモーショナルなラヴ・ソングです。悪くはないのですが、アルバム中の他の(ミッド・テンポやスロー・テンポの)曲に比べた時に、収まりの悪さや居心地の悪さを感じてしまうのは僕だけでしょうか?M3は、ミッド・テンポのバラードですね。この曲でも、ストリングスのアレンジが素晴らしいです。メロディー・歌詞・コーラスに滲む哀愁と、個人的には一番のお気に入りの曲です。

M4は、ゲストでヴァイオリン・プレーヤーが参加しています。リズム、ギターの音色、ピアノのフレーズと、かなりジャジーな曲です。ギターのオクターヴ奏法(さて、生音でしょうか?オクターバーでしょうか?前者ならいいな。)が印象的ですね。この曲の歌詞も若干重めですね。M5は、60年代末風のアコギ→ハモンドと来るイントロに惹かれます。サウンド的にはニール・ヤングかバッファローのイメージでしょうか。我々おじさん世代(笑)には一番受け入れやすいサウンドの曲かもしれません。

さて、M6です。サスティーンを効かせまくった(一歩間違えたらサンタナになってしまうような)ギターが印象的なラテンっぽい曲です。この曲もおじさん受けしそうですね。(笑)ライヴでは凄くカッコいいだろうなと思えるし、個人的には2番目のお気に入りの曲です。泣きのギターが好きな人は、この曲からどうぞ。

M7は、タイトル通りのインタリュードで、明日香さんのピアノ・ソロです。ドビュッシーやらビル・エヴァンスやらリッチー・バイラークやらデヴィッド・ベノアやら、いろんなピアニスト(だけじゃないけど)たちの名前が浮かんできますが、とどのつまりが優しい響きの曲ですね。M8は、M7のイメージを引き継いだイントロから始まる、ミッド・テンポのバラードです。他の曲と比べて歌詞が多めなのが特徴でしょうか。サビのメロディーが素敵ですし、後半のギターとヴォーカルが絡んでいくあたりもいい感じです。

M9は、懐かしさを感じさせるキーボード(群)のサウンドが印象に残りました。(80年代ニュー・ミュージック世代の人たちならきっと、僕の言わんとすることが伝わると信じていますけどね。)アルバム中で、ある意味、一番オーソドックスな曲かも知れません。M10は、静かなところから少しずつ盛り上がっていく曲です。メロディーにメリハリや展開がある曲ではないので、リズム隊をはじめとするバッキングによる盛り上げ方が聴き処となっています。なんか、玄人受けしそうな曲ですね。

ラストのM11は、バンド全体で盛りあげていく構成や、歌詞のメッセージ性も強いというあたり、アルバムの最後に似合うタイプの曲ですね。でも、油断して聴いていると下手したら言葉に切り刻まれてしまいそうな感じも受けます。ストレートな表現は今の彼らのような若い時期だけに許されるものだと(僕は)思いますが、歌詞が聴き手に伝わるという点では、間違いなくアルバム中で唯一無比の存在でしょう。重い曲だけに、余韻を残しながら若干軽目に落としたところで終わる構成は見事だと思います。

全体として印象に残るのは、詩にヴィジュアルなイメージが強い一方で詩を大切にしている姿勢が伝わってくること、ストリングスのアレンジが絶妙で曲のイメージを引き立てていること、年齢の割に幅広いスタイルの(というか、かなりシブい)ギターに見られるように、バンドのサウンドはその根底にどの世代にも受け入れられるような懐かしい響きを持っていること、ですね。
逆に気になった点は、メロディーの符割と歌詞のセンテンスが合っていなくて、聴いただけでは歌詞を認識しにくい部分がわりとあるということと、「これ**みたいだね」と有名アーティストに比べられるであろうことが容易に想像できることでしょうか。(後者については、きちんと歌詞を認識したならば、そうではないことがわかるとは思いますけどね。)

いろいろ書きましたが、後半(M11を除く)の曲の印象が若干薄いものの、本当に楽曲のクオリティの高いアルバムだと思います。彼らに興味を持たれた方は、彼らのオフィシャル・サイトもありますので、行ってみてくださいね。(サーチエンジンで一発だと思いますので。)ネットで見たファンの声によると、彼らのライヴはかなり迫力のあるものだそうです。生演奏を見たら、また印象が変わるのかもしれませんね。

ということで、いつもとはベクトルの違う1枚ですが、時にはこういう音楽もいかがでしょうか?

では、また次回に。

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