第40回 Where You Are

 さて、2006年の来日以降、リリースの噂が出ては消えていたカイルのニュー・アルバムが、彼の誕生日の2月12日に無事にリリースされました!!(^^)

4年ぶりに届けられたアルバムは、当初の予定とは異なり「Where You Are」というタイトルになりました。カイルが「あまり沢山の曲が入ったアルバムは好きじゃない」ということで、ここには厳選された11曲が収められています。当然のことながら、11月の来日時にも演奏された曲が多いですね。もちろん、4年も経てば、カイルの書きためた曲も多くなっていまして、来日時に演奏された曲でも(アルバムのトータル・イメージに合わない等の理由で)今回は泣く泣く選曲から漏れた名曲もあります。

カイルはリリース前からオフィシャル・サイトでアルバムの断片を聞かせてくれていましたから、今回のアルバムがどれだけ充実しているのかは、そのダイジェストを聴いただけでも想像していただけるとは思います。でもね、改めてフルに聴いたアルバムの出来映えは、そんなものじゃなかったですよ、ホント。(笑)

まずはジャケットです。フロントは、カイルが日本公演の最終日を終えた後、帰りの電車の中で撮られた1枚です。また、裏ジャケは、終電を待つ駅のホームで撮られた1枚であり、どちらもシャッターを押したのは、この僕です。(^^) 他にも、エミリアさんがシャッターを押した神戸での写真が何枚か使われています。尼崎会場に来てくださった方々には(ライヴの後で乗った電車でしょうし)嬉しいデザインじゃないでしょうか。なお、環境問題にも関心のあるカイルらしく、ジャケの素材にも気を遣っているところがいいですね。

カイルは先月末からこのアルバムのプレオーダーを始めていたんですが、最初の500枚は、手書きナンバリング&サイン入りでした。しかも、オーダー時に頼めば、自分の名前を入れてもらえたんですよ。そんなわけで、僕のCDは19番の番号入りとなりました。ちなみに、このアルバムの最初の1枚をゲットした(カイルにプレゼントしてもらった)のは、カイルの恩師様のバリー・マニロウということです。(^^)

前置きはこれくらいにして、聴いていきましょうか。楽曲については、カイル自身がオフィシャル・サイトで(曲ができていく経緯も含めて)詳しく書いていますので、読んでみてくださいね。

< Where You Are / Kyle Vincent / US / songtree / STR-10-02 1209-2 >

1. It's Gonna Be A Great Day
来日公演でもオープニングを飾った曲です。来日記念CDRにも収められていたので、すでに耳にされた人も多いでしょう。デヴィッド・キャシディあたりにも通じるもののある70年代風ポップ・チューンです。収録時間は4:06ということで、CDRの4:16よりも若干短めですが、聴く限りでは、同じテイクを使用していますね。ただし、今回のヴァージョンは、リミックスもしくはリマスターがされているようで、CDRのヴァージョンよりもエコーが聴いていて、深みを増した音となっています。もしかしたらCDRとプレスCDの違いなのかもしれませんが、カイルの曲としてはかなりゴージャスなこの曲が、よりゴージャスに聞こえますよ。(笑)

2. In Another Life
来日公演では「カラオケ・カイル」の2曲目として演奏された曲です。イントロのところで、僕にはカイルの「yes」という声が聞こえてしまいますけどね。(笑)シングルにしてもいいような、ゴキゲンなポップ・チューンです。もちろん、メロディーもコーラスもアレンジも極上ですよ。(^^)

3. The World Is Upside Down
これは日本公演では演奏されなかった曲です。カイルの渾身のバラード・ナンバーですね。メロディーも美しいのですが、サビのコーラスパートの哀愁は、たとえようのない程、心にしみてきます。カイルが吹いているサックスも、本当に素晴らしいですよ。

4. Where You Are
タイトル・ナンバーです。当然のごとく、来日公演でも演奏されています。ピアノのイントロから最初の歌が出てくるあたりまでは、弾き語りで唄われたライヴ・ヴァージョンを思い出させてくれますが、CDでは、サウンドがどんどん厚くなっていきます。厚みと広がりのあるサビのコーラスなんて、完全に別物の響きですね。実を言うと、この曲がタイトル・ナンバーになったと聞いた時には「えっ?」と思ったのですが、こうして聴いてみると、違和感は完全に消えてしまいました。

5. Emily Standing
盟友パーセノン・ハックスリーとの共作によるバラード・ナンバーです。来日時にカイルが「この曲が、きっとニュー・アルバムの中で君が一番好きな曲になるよ。新しいアリアンだ。」と言いながら断片を聴かせてくれたんですけど、メロディーもコーラス(パーセノンも唄ってます)も実に美しい名曲だと思います。アリアンのような聴く人の心を一瞬で掴んでしまうようなパワーはないかもしれませんが、本当にいい曲ですね。個人的には、アコースティック・ギターの響きが、どうしようもなく気に入っています。

6. It's A Lonely World
これも来日公演で唄ってくれた曲ですね。もしかしたら、アルバム中で一番地味な曲かもしれませんけどね。ライヴの時にキャロル・キングの「It's Too Late」みたいなリフを挟んでくれたと書いたのですが、こうしてスタジオ・テイクを聴くと、やっぱりあの曲のアレンジと同じようなフィーリングを感じます。愛すべき小品(4分もあるので小品ではないけど、イメージ的にね。(笑))というべき存在かな?

7. Satellite
この曲も、来日時の「カラオケ・カイル」で唄われた曲です。練りに練ったアレンジで届けられた、カイル屈指の名バラードですね。イントロのピアノにエリック・カルメンを感じるのは僕だけでしょうか?この曲でも、カイルのサックスが素晴らしいですよ。アルバム中で1曲選べと言われたら、この曲を選ぶ人も多いんじゃないかな?

8. Goin' Down
アルバム中で唯一と言ってもいいかもしれない、ロックっぽい香りのするミッド・テンポの曲です。まあ、僕にはギルバート・オサリバンの香りを一番強く感じるんですけどね。アルバムの流れを考えたときにアクセントになる曲という存在でしょうか。

9. Sakura Lullaby
もう解説不要と言える曲ですね。(笑)
来日公演でも唄われた、日本のファンに捧げられたバラードです。極めつけに美しいメロディーと歌詞が、シンプルなサウンドに乗せて唄いあげられていきます。カイルの全作品中でも屈指の名曲だと思いますね。
サウンド的には、ここでもCDRのヴァージョンに比べてずいぶんとエコーが効いていますよ。(個人的には、ピアノのみで唄われているシンプルなデモ・ヴァージョンが一番素晴らしいと思っているんですけどね。)
そうそう、「Sakura Lullaby」に関して、ひとつ思い出したことがあるので書いておきます。カイルの来日時に、僕はカイルにこう訊かれたんです。「ツトム、君はこの曲のアレンジについてどう思う?僕は楽器の沢山入ったヴァージョンも作れたんだけど、来日記念CDのヴァージョンはどうだい?」僕はこう答えました。「この曲は、本当にメロディーが美しいから、カイルのピアノでシンプルに唄うのが一番いいと思うよ。Simple is bestさ。」カイルはにっこり笑ってこう言いました。「そうか、じゃあ、このヴァージョンは君のお気に入りだね。本当にシンプルに最小限の音しか入れてないんだ」。
オフィシャルサイトのこの曲のコメントを見ると、カイルが本当に多くの音を重ねて録音していたんだなってことがわかります。きっと、カイルはミックスを終えた後でも少し迷っていたんでしょうね。で、自分の判断に同意してもらえて嬉しかったんじゃないかと、裏話を知った今はそう思います。(笑)
余談ですが、前にも書いたようにこの曲の日本語ヴァージョンの歌詞も(手前味噌で申し訳ないですが)素晴らしい出来映えだと思いますので、前回の記事を見てやってくださいね。(カイルの要請で僕も日本語ヴァージョンを唄うことにはなっていますが、)いつか遠くない未来にカイル自身が日本語で歌ってくれる日が来ることを信じています。

10. On My Ride
再びカイル屈指の名曲の登場です。カイルのバラードの持つメロディーの魅力とポップなサウンドの魅力を併せ持つ曲ですね。この曲が日本公演で歌われなかったのは本当に残念ですが、ここでこうしてアルバムに収められたことを素直に感謝したいと思います。この曲を聴いて気に入らない人はいないんじゃないかな?と思わせてくれる曲ですから。僕がアルバム中のベスト・トラックを選べと言われたら、(迷ったあげくですが)この曲にするんじゃないかなって思いますね。

11. Petals Of Peace
最後に控えているのも、カイル屈指の名曲です。平和を願うカイルが広島に捧げて書いてくれた曲ですから、広島在住の僕には特に思い入れの深い曲ですし、11月の広島公演で一緒に唄った音源は僕の宝物のひとつでもあります。ここでもまた、CDRよりもエコーの効いたサウンドになっていますよ。
実を言うと、このアルバムがもっと早くリリースされていたならば、この曲がタイトル・ナンバーになっていたはずなんです。実際、ジャケットの歌詞の扱いも、この曲だけが特別になっていますし、カイル自身にとっても特別な意味のある曲なんだなってことがわかります。ひとりでも多くの人に、カイルのこの曲の存在を知ってもらいたいと願って止みません。

ということで、あっという間にアルバムが終わってしまいました。本当に充実したアルバムだと思いますし、それは、僕のレビューの中に何回「屈指」とか「名曲」とかの言葉が出てきたかでも感じていただけるのではないでしょうか。(笑)

全体としては70年代ポップの遺伝子を強く感じる楽曲が多いように感じます。カイルが人生の一部として聴いてきた名曲たちのエッセンスを具象化したと言えば、ちと褒めすぎでしょうか?(個人的には、褒めすぎとは全く思いませんけどね。)文中にも出てきますが、僕が一番近いフィーリングを感じたのは、ポップな曲ではBELL時代のデヴィッド・キャシディの名曲たち、バラードではエリック・カルメンとギルバート・オサリバンなんですけどね。(^^)

あえて難点を言えば、ひとつだけ。ジャケのサイズがきっちりとしすぎていて、CDを取り出すときにきつくて難しいということでしょうか。僕はCDを不織布袋に入れて、ジャケに挟んでプラ袋に入れて保存していますけどね。(笑)

あと、今回アルバムから漏れた曲たちのことをいくつか書きたいと思います。何と言っても惜しむべきはバラードの名曲「Until Love Comes Again」でしょうか。ロン・ダンテとの共作となる曲なんですが、エモーショナルに歌い上げられる曲です。カイルは、来年リリース予定の未発表&レアトラック集第3弾に収録すると言っているのですが、早く正式リリースしてほしいものです。
2006年の日本でのライヴでも披露済みの新曲「Your Life」と「Don't Follow Me」も収録されなかったのが残念な曲です。まあ、前者は政治色の濃い曲でしたので、アメリカの政権の変わった今の時期に出すアルバムにはそぐわなかったとは思いますけどね。
また、「Coffee House Dues」や「She Comes Home Hero」も人気の高い曲です。最近では、日本公演記念CDRにデモ・ヴァージョンが収録された「Can't Let Go」も、ぜひ完成ヴァージョンを聴きたいと思わせてくれる曲でしたね。こうして、今回未収録となった曲のクオリティの高さも、今回のアルバムの密度を示していると思います。

なお、カイルは、「Petals Of Peace」のスロー・ヴァージョンも完成させたとのことです。そのヴァージョンも近い将来に僕たちの元に届けれらることを祈りつつ、今回は筆を置くこととしましょう。

では、また次回に。


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