第3回  MIZUKIさんのレビュー その1 

 このコーナーの更新は本当に少ないのですが、今回からは数回の連載になります。

僕と同じようなカイルの大ファンのひとりに、作家の水姫透さん(代表作:文芸社「ブラック&ブルー」、ネットでのハンドルは「MIZUKI」。以下、MIZUKIさんと表記します。)がいらっしゃいます。MIZUKIさんは、ご自分のHPでカイルの楽曲についての素晴らしいレビューを載せていらっしゃいました。(カイルだけでなく、エリック・カルメン、ラズベリーズ、等々、独特の切り口でアーティストへの愛情を散りばめた読み応えのあるレビューばかりでした。)

ところが、最近、MIZUKIさんのサイトが終了してしまいました。でも、MIZUKIさんのレビューがネット上から消えてしまうのは忍びないという声が多くあがり、僕を含めた何人かの音楽仲間たちのHPで、MIZUKIさんのレビューを掲載して残しておこうということになりました。僕はカイルの担当です。(^^)

前置きが長くなりましたが、今回は1回目ということで、ファースト・アルバムから入りましょう。(ページ構成はもととは違いますが、文章は当然ながらオリジナルのままです。)そうそう、日本のカイル応援サイトのマスターのマークさんもゲスト出演されていますよ。(笑)

<アルバムについて>

◆これは厳密にいうとファーストではないが、我が国で公式に発表された初アルバムということだ。というわけで、一見これからソロ・キャリアをスタートさせるひ弱なアーティストの初々しいアルバムかと一般的には思いがちだ。ところが天才というのは、いつの時代も、ある時突然突如として現れるものなのだ。特に私はこのオープニングからの3連発の凄さに椅子から転げ落ちるほどの衝撃受け、同時に嬉しさで胸が一杯になった。このナイーブなジャケットを見て、誰がこの素晴らしい音世界を想像できよう。全曲圧倒的に素晴らしいメロディと多彩で魅力的なアレンジで構築されたサウンドは予想を遥かに越えていて言葉を失うほどだ。もし、もっと多くの人々がこのアルバムを認知し実際に音を聴いたら、世の中のほとんどのアルバムはゴミ箱行きになるだろう。これは腰を抜かすほど、とてつもなく魅力的で素敵なアルバムといえる。(2003.4)

<楽曲レビュー>

Arianne
 

■素晴らしい!これがカイル・ヴィンセントなのか。。。懐かしいギターの音色とともに、ハスキーな歌声が切なく響くこのメロディアスな曲は、70年代というよりは60年代後半のPOPソングの香りだ。曲想、サウンドのムードはフォトメイカーの「Where Have You Been All My Life」によく似ている感じだが、どちらも大好きな曲だ。なぜか久々に思い出した青春の息吹が胸いっぱいに溢れ出す、とてもフレッシュなメロディ。1曲目から、いきなり琴線をわしづかみにされたようで、何か言おうにも言葉につまってしまうほどの名曲だ。

《マーク談》
歌詞には、"Our first cigarette ruined ourfirst kiss."というのがでてきます。直訳すると「ボクたちがはじめて吸ったタバコで、はじめてのキスが台無しになっちゃった。」となるのですが、はじめてこの曲を聴いた時にも、メロディーとともにすごく印象に残りました。なかなかのセンスだなと。

Wake Me Up (When The World's Worth...) 

■一転して溌剌としたロック・サウンドだが、これがメチャメチャカッコいい!! ラズベリーズより、もっとシャープで、このバンドサウンドのアレンジは実に魅力的だ。イントロのギターのカッコよさ、独特の硬いドラムスの音、競りあがってくるような粋なコーラスと、はっきりいって私はこの曲1発でカイルの魅力に完全陥落したのだ。あのラズベリーズさえも、ここまで粋でカッコいい曲はない。このサウンドのカッコよさの前では、ラズの傑作「プレイ・オン」でさえも色褪せるほどだ。完璧なバンド・サウンドで、しかもこれほど贅肉をそぎ落としながらもPOPに響くバンドは、なかなか思い出せない。早くも、カイルを聴かずして人生を終える人は不幸だと言わざるを得ない。

One Good Reason 

なぜカイルがエリック・ファンの琴線に触れたのかという回答のような曲だ。この出だしのムード、曲想、ピアノ、歌い方は完全にエリック・カルメンのムード一杯だ。ピアノとともに歌いだす出だしの曲調は「オーバーナイト・センセイション」にそっくり。だが似ているムードはあるが、すぐに彼独自の、もっと蒼く繊細な世界に誘ってくれる。これはむしろ、エリック・カルメンにこそカバーしてもらいたいほどの名曲だ。残念ながら「ウインター・ドリーム」の中にも、ここまでの名曲はなかったと思えるほどだ。やはりエリックのメロディの全盛期は、ラズベリーズ後半から「雄々しき翼」あたりまでではないだろうか。この曲を聴くと見事にエリックの全盛期の才能を逆説的に証明しているような気がする。


It Wasn't Supposed To Happen 

で、暢気にエリックのムードに浸っていると、そんなことを吹き飛ばすような、ややガレージロックのようなハードなサウンドで快調に飛ばすカイルだ。単調なアップテンポの曲と思いきや、中盤突然スローになり魅惑的なムードになり彼の優しい声とファンタジックなコーラスが絡みつく。で再びテンポアップする。短いながら印象的なギターソロ、様々な隠し味のあるサウンドと、彼が傑出したセンスのアーティストだということを十分印象づけらられる。この男。本当にただ者ではない。

Other Side Of The Rain 

これまた、なぜか懐かしい響きの70年代POPサウンド。これはコーラスたっぷりで、1番初期のラズベリーズを連想させるサウンドだ。だから声は全然違ってもエリックのムードを思い出す。あの青春の甘く切ない感じだ。しかし、なんとなく聴いてしまうがメロディが抜群にいい。

In The Worst Way 

完璧なパワーポップで、かなりハードなサウンドだが、曲調、歌い方はやはりラズベリーズ時代のエリックの影響を感じさせる。とはいえ、やはり今の現役ミュージシャンなのでアレンジは今風で、ブラッド・ジョーンズのサウンドとかなり共通項を感じさせるがメロディの芳醇さは1枚上手で、ブラッド・ファンには申し訳ないが才能の桁が違うと言わざるを得ない。

Next Time We'll Go Crazy 

これまた、ピアノのイントロが始まると、まるでエリック・カルメンが歌い始めるのではないかと思えるほどムードはよく似ている。切々と歌い上げる愛唱で心の奥底まで染み渡る名曲だ。ストリングスが入っているせいか、郷愁感と映像感覚は特に際立っている。エリックを通り抜けてビートルズの時代まで遡っていくような感じもする。広がりのある曲展開、後半に盛り上がるスケールの大きさといい、彼の中ではエリックの「アイ・キャン・リメンバー」に位置する曲かもしれない。

All Your Promises 

カッコいいアコギのカッティング。リズミックで最高にPOPでコマーシャルな曲だ。本当に素晴らしいメロディ・メイカーの発見だ。もうなんといったらいいのだろう。こんなにPOPでカッコよくて楽しい曲を聴いたのは久しぶりだ。勝手に心が弾んでくる。しかもアレンジがPOPのツボを抑えていてたまらない。もうエリックもラズもいらない。グッバイ、ラズ&エリックといいたくなるほどだ。

I Used To Love The Girl 

オーソドックスなPOPな曲という感じだが、やはりメロディは抜群によく、それよりもなによりも重層的なアレンジが実に巧妙。絶対に単純に終わらないのが彼のアレンジの凄さだ。コーラスもバッチリ決まっている。

Austin Eyes 

これも80年代のギターバンドのようなサウンドだが、曲の展開はPOPに魅惑的に広がっていくので安心して聴いていられる。例によって隠し味一杯で様々に変化していくアレンジは傑出している。

Happy Ending 

ミデイアム・バラードだが、その郷愁感と魅惑的なメロディは私の心を捉えて離さない。彼の声そのものが郷愁なのだ。過去のそれも子供時代のことを沢山思い出させてくれる。

Young Again

エキゾチックなややスパニシュなムードさえ感じさせるのは、アコースティク・ギターやマンドリンの音が印象的なサウンドだからだろうか。ちょっと今までとは異色なムードだが、メロディは相変わらず素晴らしく、切なさと郷愁感一杯で引き込まれてしまう。

ということで、ファースト・アルバムに対するMIZUKIさんのレビューでした。

ところで、ファーストからは1枚のシングルが切られています。そのシングルCDには、別ヴァージョンも収められており、MIZUKIさんは別頁でレビューされていました。最後にそのレビューを載せて、今回は終了することとしましょう。

Wake Me Up(When The World's Worth Waking Up For) make out mix

とてつもない才能に遭遇したとき、言葉はあまりにも無力だ。そのことを実感させられたのが、このカイル・ヴィンセントとの出会いだったといえる。この演奏は、アンプラグド・ヴァージョンといってもいいだろう。確かにアルバム・ヴァージョンのROCKアレンジは比類すべきものがないほど傑出している。ただあの物凄いやつを体験していても、十分カッコよく心躍る興奮を抑えきれないことが、この曲の出来の良さを物語っている。今年(2003)この曲を初めて聴いた時、私は本当に深くマークに感謝したものだ。世の中に、これほど素敵な曲があるだろうか?これを聴いている最中はあまりに心地よく、歴史上のどんなに素晴らしいアーティストをもってしても一分の隙も無く、まったく入り込む余地はないほどだ。仮に今後の人生で、一人の友人もいなくなり誰とも会話することがなくなったとしても、私はこの曲さえあれば毎日を最高に充実した気分で楽しく笑って過ごすことができるだろう。それほど言葉では賞賛しきれない素晴らしく魅力的な曲といえる。この静かなアレンジも文句なく一級品だ


では、また次回に。


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