第153回 アーガス V.S. アーガス

 さて、ようやく新しいレビューを書く時間がとれました。その間にも、アッシュの話題がいくつかあったのですが、今回は、アッシュたちの新作のお話です。

そう、「たち」と書いたのには理由があって、本家アッシュとマーティン・アッシュが、先月から今月はじめにかけて、ほぼ同時にアルバムをリリースしたのです。

本家のアッシュは「ARGUS Then Again Live」というライヴ・アルバムを出し、マーティンのアッシュは「Argus Through The Lookig Glass」という再録アルバムを出しました。最近噂されているアンディーとマーティンの確執を示唆するかのように、アーガスでの両者対決という様相になってしまいました。アッシュの仲間たちが元気に活動しているのは嬉しいですが、どこか複雑な気持ちにもなりますよね。(^^;

気を取りなおして、まずは本家の方から行きましょう。このアルバムは、以前書いたことがあるXMラジオ用のライヴ・プログラムです。ジャケは薄手のエンペロープ仕様なので若干見劣りするかもしれませんが、アーガスと同じ仮面の戦士を用いたジャケですので、一貫性はありますね。内容的に中心となるのはアーガスの曲順通りのフル演奏なのですが、それ以外の曲もいくつか収められています。オープニング・イントロ的なM2はともかくとして、最新スタジオアルバムのハイライトでもあったM4が収録されているところに、自分たちが現役のバンドだという意地のように思えますね。

< ARGUS Then Again Live / Wishbone Ash / UK / 2008 Beneapoet records / no number >
1.Intro: Geroge Taylor Morris / 2.Real Guitars Have Wings / 3.Mountainside / 4.Growing Up / 5.Time Was / 6.Sometime World / 7.Blowin' Free / 8.The King Will Come / 9.Leaf and Stream / 10.Warrior / 11.Throw Down the Sword / 12.Way of the World

肝心の内容ですが、さすがに演奏のほうは(風格とでもいいましょうか)まとまりもあり、いいできだと思います。名曲「剣を捨てろ」のソロは、(原点回帰なのか、)昨年あたりからアンディーのソロとマディーのバッキングという形に落ち着いていて、いい雰囲気を醸し出しています。

難点を言うと、やはりヴォーカルでしょうか。正規のライヴ盤ですので、音源共有サークル等の音源に比べたらしっかりと入ってはいるものの、どうしても弱さを感じてしまいます。70年代オリジナル・メンバーでのライヴのようなハーモニーは、残念ながらここにはありませんが、ファンにとっては涙ものの1枚であることに変わりはないと思いますね。

続いては、マーティンのアッシュです。こちらは、完全なリメイク・アルバムです。ゲストにジョン・ウェットンとジェフ・ダウンズを迎えての制作ということで、リリース前から気になっていた1枚ですけどね。ジャケットは戦士のレリーフがモチーフで、裏ジャケにはUFOが描かれています。ジャケット的にはUFO以外の一貫性は少ないですね。

< Argus Through The Looking Glass / Martin Turner's Wishbone Ash / UK / mystic record / MYSCD 201 >
1.Time Was / 2.Sometime World / 3.The King Will Come / 4.Leaf and Stream / 5.Warrior / 6.Throw Down the Sword / 7.Blowin' Free

肝心の内容です。ここでは、(MTWAのいつものライヴと同様に、)半音下げチューニングで演奏されています。演奏の方も(一般的には無名ながらも)なかなか渋いところのメンバーを集めていますので、そつなくこなしています。マーティンのヴォーカルも、キー下げと(おそらくスタジオ・テクニックのおかげで)きっちりと収められていますし、本当に彼の唄を聞きたいと思っていたファンたちには、最高のプレゼントにはなっていると思いますしね。

ただ、半音下げたチューニングは(バンド側が思っている以上に)曲の印象を違うものにしていると思います。マーティンが前のように声が出ないんだという現実を改めて感じさせられてしまいますね。(^^;

また、マーティンは昔のインタビューで「ジョン・ウェットンが新しいハーモニーを作ってくれたよ」と言っていた「剣を捨てろ」ですが、聴いてみるとそんなに新しいという印象は持ちませんでした。それよりも「ああ、オーソドックスにまとめているなあ」という感じがしましたね。この曲では、イントロのハーモニー・ツインが途中で高い方が1オクターブ上がるという、本家アッシュのマーク時代に加えられた変更を踏襲しているあたりは、意外な気がしました。逆に、最後のギター・ソロがアーガスのスタジオ盤を踏襲したツインリードで弾かれているところには、マーティンの意地が見えたような気がします。

そして曲順です。あえて「ブローイン・フリー」を最後に持ってきたのは、どうなんでしょう?もう何回もこのアルバムを聴いているのですが、未だにこれで良かったのかどうかの判断がつきません。(^^; みなさんは、どう思われます??

全体的には、演奏もまとまっているしよく作られているアルバムだとは思いますが、良くも悪くも「再録音版」というのが僕の受けた印象です。もちろん、マーティンの声とベースが好きな人には、本当に堪らないアルバムであることは間違いないんですけどね。(^^)

ということで、アッシュのファンのみなさまなら、両方とも買ってみてね。(笑)

では、また次回に。

次はASHCON2008の予定です。