第148回 76年日本公演の音源

さて、今回は最近出たアッシュのブートCDの紹介です。タイトルは「Japanese Bait」といい、76年10月14日の東京公演(中野サンプラザ)のオーディエンス音源です。

< WISHBONE ASH / JAPANESE BAIT / JPN / boot /TCDWA-2-1,2 >
Disk1: 1.Opening / 2.Runaway / 3.The King Will Come / 4.Warrior / 5.Lorelei / 6.Persephone / 7.Candle Light / 8.You Rescue Me
Disk 2: 1.Outward Boud / 2.Mother Of Pearl / 3.Rest in Peace / 4.It Started In Heaven / 5.Time Was / 6.Blowin' Free / 7.Bad Weather Blues / 8.Jailbait

76年の日本公演の音源といえば、チープな音だったブートLP「Ashes Are Burning」が有名ですが、そのほかの音源はほとんどありませんでした。わずかにテープトレーダー間で流通していた音源(およびそれから作られたブート)があっただけです。それと、このHPでも名古屋公演の素晴らしい音源について書いたことがあるのは覚えていらっしゃるでしょう。そんな具合ですから、新たな音源が発掘されたのは嬉しいことですね。

今回の音源の一番の売りは「完全収録」というところでしょうか。音質的には、最初のほうは低音のレベルが高すぎて籠もり気味で、時にはベース音が大きすぎて唸ってしまうほどなのですが、当時の条件を考えるとかなり良質なサウンドだと思います。中盤以降では低音の突出部が押さえられていてバランスが良くなっていますね。(まあ、レーベルがTaranruraですので、並の音源はリリースできないでしょうけれどもね。(笑))

ここで「条件」と書きましたが、僕の脳裏にはふたつのことが浮かびました。ひとつはコンサート自体のサウンドのことで、もうひとつは録音機器のことです。

まず、コンサート自体のサウンドのことです。(すでに何回か書いているので、「またか」と思われた方がいらっしゃったらごめんなさい。)76年の日本公演でのマーティンのベースの迫力は凄まじいものがありました。どれだけ文章で説明しようとも、あの「自分の身体の中心部から響いてくるベース音」だけは、実際に体験した人じゃないとわからないでしょう。

先述の名古屋の音源は、録音レベルが一定に保たれている代わりに、ベースの音自体はそこまで大きく入っていませんでした。その結果として、非常にバランスの良い高品質なサウンドを聴くことができたのです。ここでは、多少サウンドのバランスが崩れている部分が出ようとも、マーティンのベースが目一杯のレベルで録音されています。むろん、生のあの迫力をテープに収めることなど不可能ですが、それでも、この音源からはマーティンのベースの迫力を垣間見ることができます。

ふたつめは、録音機器のことです。カセットなのかどうなのかはわかりませんが、間違いなく録音レベル自動調節機能(リミッター)が働いています。「アウトワード・バウンド」の出だしなど「最初はギターだけで次にベースとドラムが入るパターン」だと、ベースが入った途端にギターの音がぐっと押さえられてしまいます。でも、幸いなことに、多くの曲ではマーティンのベース音がレベルの基準となっているために、ほぼ一定のレベルで録音されています。ですから、普通に聞く限りでは全く気にならないのではないかと思いますね。

ということで、76年の日本公演がこれだけ良質な音でリリースされたのは初めてのことですから、そこにこのCDの価値があると思います。また、紙ジャケ仕様ということや、当時のフライヤーの縮小版がついているのも嬉しいところです。超マスト・アイテムだと思うので、ファンは絶対にゲットしてくださいね。きっと泣けてくると思いますよ。

では、次の話題です。このところ、音源交換サークルやDLサイトにアッシュの最近(4月)の音源がぞくぞくとアップされています。ほとんどがオーディエンス録音ではありますが、結構いい音で録音されています。セットリストは、基本的にはほぼ同じです。例として、4月18日の音源のセットリストを書いてみましょう。

Disc 1 (59:48mins)

01. Intro (2:06)
02. Real Guitars Have Wings (4:00)
03. Mountainside (5:57)
04. Growing Up (5:01)
05. Number The Brave (4:56)
06. Warrior (5:38)
07. Throw Down The Sword (6:50)
08. Sometime World (7:35)
09. The Power (5:52)
10. The Way Of The World (inc. drum solo) (11:48)

Disc 2 (62:09mins)

01. Vas Dis (10:54)
02. In Crisis (7:06)
03. Living Proof (5:48)
04. Blind Eye (4:16)
05. Phoenix (18:50)
06. Happiness (4:49)
07. Blowin' Free (5:48)
08. Ballad Of The Beacon (4:35)

いくつかの懐かしいナンバーが姿を消していますが、ここにきて名曲「Growing Up」がセットリストに定着してきました。以前紹介した音源と比べると、ずいぶんと演奏がまとまってきたのがわかります。ただ、マディーのギターが若干不安定なので、素晴らしいライヴ・テイクになるまでにはもうちょっとだけかかるかな?という感じです。

そろそろ新しいコンピレーション盤「TOUGH」と「TENDER」も届くでしょうし、XMラジオに関する情報も入るでしょう。また、マーティンのほうのCDのリリースもアナウンスされるでしょう。
国内の話題に戻すと、前回の補足で書いた「アーガスのデラックスエディションのSHMCDが発売中止になったことは非常に残念ですが、6月にはアッシュのベスト盤「BLOWIN' FREE - AN INTRODUCTION TO WISHBONE ASH」のSHMCD版が出ます。収録曲には僕の大好きな「告別」も含まれているので楽しみなんですよ。アーガスとは違って、今度はユニバーサルのサイトにも載ったから大丈夫だと信じているのですけどね。(^^;

ともかく、アッシュからの次の便りが届くのは、ほんの少し先のことになりそうです。(^^)

では、また次回に。