第143回 ARGUSのSHM-CD

  さて、このHPも今日で10周年を迎えました。アッシュのコーナーも、当時は独立していなくて単なる1コーナーだったのを思い出すと、感慨深いものがあります。その10周年を飾る今回は、先月リリースされたアーガスのSHM−CDの話題です。

SHM−CDと聞いて「それ、何?」と思う人もいるとは思いますが、これは新しい高音質CDの形式です。これまでにも、SACDとかHDCDとかの高音質CDや、DVDaudioなどもありましたが、今回はCDのフォーマットのままで高音質を追求したものなんだそうです。具体的には、ビクターの開発した透明度の高い新素材樹脂を使用しているのですが、樹脂部分での光の劣化を抑えることで原音に近い音が再生できるということだそうです。

で、先月下旬にロック系のアルバムが何枚もこのSHMCDでリリースされたのですが、その中にこの「アーガス」も含まれていました。(^^) 
< WISHBONE ASH / ARGUS / JPN / UNIVERSAL / UICY90768 >

皆さんもご存じのように、現在、アーガスには二つのヴァージョンがあります。ひとつは、レコード時代からなじみ深いオリジナル・ミックスのもので、もうひとつはマーティンがリミックスを施した30周年エディションです。今回SHMCDに選ばれたのは、マーティンの手による30周年エディションのほうでした。30周年エディションについては、リリース当時にも書いたので重複は避けますが、個人的にはオリジナルとは別の作品だととらえています。そのサウンドがSHMCDではどうなっているのか、興味津々で普通のCDと聴き比べてみました。

最初に音が流れてきた時の印象は「深いなぁ」というものでした。30周年エディションではオリジナル・ミックスにあった「霧のような」しっとり感が薄れたクリアーな音だと思っていたのですが、このSHMCDでは曲の潤い部分がいくらか戻ってきたように思います。また、音自体も、ずいぶんと深みを増していると感じられます。名曲「剣を棄てろ」のラストのアルペジオの響きあたりを聴くと、それが顕著にわかるでしょう。CDの素材だけでここまで変わるんだなと、ちょっとびっくりしました。(まあ、カーステレオで聴いたり、デジタルオーディオプレーヤーに取り込んで聴いたりするぶんには、そんなに影響のない違いなのかもしれないですけどね。(笑))もちろん、音源自体は同じなのですから、オリジナルと30周年エディションほどの違いは出てきません。でも、この深みを増した音は、かなりの好印象を与えてくれましたよ。

ただ、こういう音になるんだったら、30周年エディションじゃなくて、オリジナル・ミックスのほうでやってほしかったし、やるべきじゃなかったかなとは思います。そりゃ、海外ではオリジナル・ミックスのデラックス・エディションがリリースされたばかりだというのはあるでしょうけれども、日本ではリリースされていないわけですしね。もしかしたら、そのほうが多く売れたのではないかと思うのですが...。

話をSHMCDに戻しましょう。72年リリースのアーガスでさえこうなんですから、たとえば高音質録音で知られているスティーリー・ダンの「彩」なんて、SHMCDなら凄い音になってるんじゃないのかな?って思いました。今回、かなりのタイトルがリリースされましたので、自分の興味があるアルバムから、一度体験してみるといいと思いますよ。

では、また次回に。