第141回 ASHCON2007

  さて、年末の多忙さに負けて間隔が開いてしまいましたね。パティオには書いたのですが、その間にもアッシュのまわりではいろんな動きがありました。アーガスのデラックス・エディションのリリースもありましたし、バンド公認の音源交換サークルでも、かなりの数のライヴ音源が出てきました。

今日はその中から、今年のASHCONの音源を紹介したいと思います。いつものようにサウンドボード録音とオーディエンス録音をミックスしたマトリックスものです。

Ashcon 2007 / The Winding Wheel / Chesterfield, UK / November 3rd 2007

前回書いたように、今年のスペシャル・ゲストはマーヴィン・スパンスでしたが、届いたCDR4枚組の音源には、マーヴィンのソロ(アコギの弾き語り+打ち込み)も含まれていました。4枚のうちの1枚は、ゲストのモリスブラザーズ・バンドですので、今回はアッシュの3枚ぶんを紹介することとしましょう。

Disc One:
"No Vocals Set"
1. Intro / 2. Real Guitars Have Wings / 3. In The Skin / 4. Vas Dis / 5. Surfing A Slow Wave / 6. F.U.B.B
"Main Set"
7. Intro / 8. The King Will Come / 9. The Warrior / 10. Throw Down The Sword / 11. Sometime World / 12. Like A Child

Disc Two:
1. The Power / 2. Way Of The World / 3. In Crisis / 4. Roads Of Day To Day / 5. Number The Brave / 6. Cell Of Fame * / 7. People In Motion * / 8. Living Proof * / 9. Phoenix

Disc Three:
1. Happiness / 2. Blowin' Free / 3. Motherless Child / 4. Jailbait
Mervyn "Spam" Spence Set
5. Intro / 6. People In Motion / 7. Emer May / 8. Dance With The Devil / 9. Love Will Keep Us Alive / 10. Constant Craving / 11. Hotel California

1枚目の前半は午後の「No Vocals Set」です。で、後半からが夜のメイン・セットとなります。メインセットが3枚目の前半まで続いて、3枚目の後半がマーヴィンのソロ・セットとなります。この編集に関しては「どうよ?」と思う人も少なくないかと思います。どうせならメインセットを2枚にまとめたほうがいいのではないかと思えるからです。まあ、それは自分でCDRを焼くときに再編集すればいいのですから、とやかく言うことではないのかもしれませんけどね。(笑)

では、聴いていきましょう。まずは「No Vocals Set」のほうからです。M1のアナウンスに導かれて始まるM2は、アッシュのライヴのオープニングナンバーに使われることも多かった曲ですね。歌はないものの、アッシュの自己紹介的な曲です。マディーのスライド・ギターを聴かせるM3ですが、しばらく前からセットリストに入ることもあった曲です。もしかしたらこのインスト・セットのためだったのかもしれませんね。
そしてM4です。ジャズっぽい展開やインプロヴィゼーションの見られる曲だけに、ジョーのドラミングが冴えわたるように聞こえます。M4の緊張感との対比を考えたのか、リラックスムードのM5が続きます。
ラストは名曲M6です。マディーもいいプレイを聴かせてくれますね。加入当初に頭を抱えるようなフレーズも出ることがあったのは、もう遠い過去の想い出となりました。
こうして、インスト曲のみを集めたセットが終わります。そうそう、前回にも書いたのですが、スキャットはヴォーカルには勘定されていないようですけどね。(笑)そう言えば、アッシュがデビューした当時には、(あまりにもインスト・パートが多くて歌が少ないので)ベンチャーズを引き合いに出されて語られていた時期があったということを思い出してしまいましたよ。

次に、メイン・セットです。1枚目のM7はバンド紹介のMCですので、オープニングはM8となります。オープニングからのM8〜M10の3連発は、どうしても「ライヴ・デイト」を思い起こさせてくれますね。アーガスのデラックス・エディションのリリースに伴った意図的な選曲でしょうけれども、バンドの一般的なイメージは、今でもこうなのでしょうね。演奏自体は申し分ありません。M8でのマディーのソロは、最近定着しているカコいいパターンのものですし、M10のアンディのソロは、ライヴ・デイトのフレーズも意識したメロディアスなものとなっていて、アンディーの面目躍如というところです。(^^)

続くM11もアーガスからのナンバーです。この曲はボブの見せ場となるのでしょうが、やはりボブのベース・ソロの音は線が細く感じてしまいます。(^^; 次のM12は、今年の後半からセットリストに入ってきた曲です。久々のリスト・アップに、アンディーが意外に気に入っていた曲だったんだなと気づきました。観客の受けもいいようです。

2枚目に移りましょう。M1はニュー・アルバムからの曲です。若干地味な曲ですが、半音を活かした微妙なメロディーとタイトな演奏が意外に調和していると思います。M2も、最近久々にセットリストに戻ってきた曲です。後半のアンディーとマディーの掛け合いはなかなか聴き応えがありますね。ただ、この曲に関しては(これまた個人的な見解ですが)1978年頃のローリーのプレイと2002年頃のベンのプレイの印象が強すぎますので、マディーにはいささか分が悪い曲かもしれません。

M3は再びニュー・アルバムからの曲です。(これも個人的見解ですが)アルバムのハイライトの片割れだった曲ですので、ライヴでも締まった演奏になっているように思います。スタジオ版を聴いたときにはマディーのソロがライヴのキング・ウイル・カムとかぶっているように思いましたが、ここで聴く限りはそうでもないですね。というか、まだソロのパターンができあがる前だという印象です。(もちろん、アドリブ・ソロで全く同じフレーズを弾くことほど面白みのないものはありませんが、マディーの場合、全く自由奔放に弾くよりもある程度のパターンに沿って弾いていく方がいいプレイをしているように思いますので。)

M4は所謂「サプライズ」な選曲かもしれませんね。これまた最近加わった曲なんですが、「ファースト・ライト」からの曲が演奏されるということには感慨深いものがあります。コーラス・パートが弱いというのは現メンバーでは仕方ないことではありますけどね。(^^;

しばらく前からセットリストに入ってきたM5も「サプライズ」と言えるでしょう。80年代初期には演奏されていたものの、久々の登場となります。もともとアンディーが歌っていた曲ですので違和感はありませんが、やはりキーボードの音がないとちと寂しいかもしれませんね。

ここでゲストのマーヴィンの登場です。すでに弾き語りのソロセットで顔見せは済んでいたのですが、やはりアッシュの中で歌うということは特別のことになるのでしょう。マーヴィンは楽器は持たずにヴォーカリストとしての参加です。マーヴィンのいた時のアルバム「RAW TO THE BONE」からの代表曲M6とM7ですが、やはりマーヴィンの声には独特のものがありますね。最高音部は声が出し切れずにフラット(ふらっと?(笑))しているものの、マーヴィンのハイトーン・ヴォーカルは健在です。当時のライヴではハード・ロック・バンド(メロディアス・ハード)のようなサウンドを聴かせてくれていたのですが、現在のアッシュは割とオーソドックスな音に戻っていますので、ギターのサウンドには若干の違和感が残ります。でも、ジョーのパワフルでタイトなドラミングはそれを補って余りあると思います。観客も本当に喜んでいるようですね。(^^)
M8は、旧い曲の中では、一番マーヴィンの声質に合っていた曲です。ここでは昔のライヴのイメージを彷彿させてくれる演奏を聴かせてくれていますね。以上でマーヴィンの出番は終わりです。

ここで、多くのファン待望のM9を持ってくることで、観客の意識は現在のアッシュへと戻ってきます。でも、実はこの曲が本編のラスト・ナンバーになるのですね。当然のごとくアンコールを求める拍手が続きます。ここで2枚目は終了。

3枚目です。アンコールの最初に旧い曲ではなくてもう一度新曲M1を入れるのが今のアッシュらしいところでしょうか。1曲焦らせた後、定番のM2です。さすがに観客も興奮していますね。そして2度目のアンコールの拍手が続きます。

2回目のアンコール・ナンバーの1曲目のM3は、オーソドックスなブルース・ナンバーです。そして、正真正銘のラスト・ナンバーはM4です。これは本日の一番のサプライズですね。なんと、ワンコーラス目はスロー・ブルースのアレンジになっているのです。(!?)イントロを聴いて曲目がわかった観客は何人いたのでしょうか?最も、2コーラス目からは普通に戻っていまして、観客も大喜びのままエンディングを迎えることとなります。

全体としては、さすがにASHCONだけあって、バンドも観客も気合いの入り方が違うなあと思えるギグだったと思いました。

3枚目の後半は(ボーナス的な編集ですが)マーヴィンのソロです。アコギの弾き語りに途中から打ち込みの伴奏を加えての演奏です。ソロの代表作を中心にしたステージですね。弾き語りだけあって、今の自分の声に合ったキーでできますので、歌自体はアッシュとの演奏よりもまとまっているように思います。マーヴィンも観客も楽しそうですよ。ラストは(マーヴィンのセットのアンコールになるのですが)イーグルスのカバーですね。アルペジオもないソロもないアレンジなので、ちと「??」とは思ったのですが、マーヴィンの歌の上手さを垣間見ることはできたと思います。だてに現役ではないということでしょうか。(笑)

この音源ですが、ダウンロードサイトにもアップされたということですので、興味があれば探してみてくださいね。
なお、今回の写真も、オフィシャルサイトのフォーラムからのものです。

そうそう、最後に今回の音源に絡んで入ってきた情報です。昨年のASHCONの音源は、結局サークルにもDLサイトにも出てきませんでした。僕もその理由がわからなくて不思議に思っていたのですが、今回、サークルのメーリングリストでようやくその理由がわかったのです。

昨年のASHCONの音源が出てこなかったのは、オフィシャルでリリースするために録音されていたからなんだそうです。だから、オフィシャルでどのように出てくるかがわからないままに音源共有に出すことはできないまま、今日に至っているとのことです。音源のいくつかは「TRACKS 3」に使われているとのことですので、2005年のクレジットがある曲で、明らかに2006年のセットリストのものである曲は、ASHCON2006の音源である可能性も高いということですね。ベンのニュー・アルバムの後半のライヴもASHCON2006の音源でしたので、この二つの公式盤を聴くことでASHCON2006の様子がいくらかはわかるということなのでしょう。

ただ、僕が一番聴きたかったのはアッシュにベンがゲスト参加した演奏でしたし、もちろん、ASHCON2006全体の音源も聴かせてほしいなあと思いますけどね。(^^;

ということで、今回はこのあたりで。
では、また次回に。