第133回 Tracks 3

 さて、今回はリリースされたばかりの「Tracks 3」のレビューです。3枚組の大ボリュームで届けられたアルバムには、本当に多くの楽曲が収められていました。当初の情報を読んで、マディー時代の楽曲ばかりだと思っていたのですが、実際は幅広い年代の音源からの選曲でした。

ブックレット(写真)によると、1985年から2005年までの楽曲が選ばれているとなっています。でも、よくよく見ると、このブックレットのクレジットのうちいくつかは誤りであるということがわかります。たとえば、「告別」や「ソレル」は昨年の秋頃からセットリストに入ってきたものですから、明らかに2005年の音源ではありません。おそらく2006年(若干の可能性で2007年)の音源でしょう。

また、ラストの「戦士」は、オフィシャルサイトの記述にもあるように、オリジナルのスタジオ・テイクにオーケストラを被せたアレンジのもののようです。まあ、この曲だけはライヴではないということで、ボーナス・トラック的な扱いとなると思われますけどね。

では、1枚ずつ聴いていきましょうか。アッシュのフォーラムで、収録曲のうちの何曲かは出典が記されています。やはり、既存のラジオ音源、TV音源、音源交換サイトに出ていたサウンドボード(あるいはサウンドボード・オーディエンス・マトリクス)音源が中心となっているようですね。

Disc 1
1. Surfing a slow wave ASHCON 2005 Electric Set (SBD/AUD Matrix)
2. Ancient remedy ASHFEST 2005 Acoustic Set (SBD)
3. The ring ASHCON 2005 Acoustic Set (SBD/AUD Matrix)
4. Healing ground ASHCON 2005 Electric Set (SBD/AUD Matrix)
5. Changing tracks ?
6. Living proof ?
7. Rock n roll widow ASHCON 2005 Electric Set (SBD/AUD Matrix)
8. Ballad of the beacon ASHFEST 2005 Acoustic Set (SBD)
9. Lullaby ASHFEST 2005 Acoustic Set (SBD)
10. Candlelight ASHFEST 2005 Acoustic Set (SBD)
11. Wings of Desire ASHFEST 2005 Acoustic Set (SBD)
12. Sorrell ?
13. Capture the moment ?
14. Comfort zone ?
15. Why don't we ASHCON 2005 Electric Set (SBD/AUD Matrix)
guest: Ted Turner
16. Baby what you want me to do ASHCON 2004 Electric Set (SBD/AUD
Matrix) guest: Jas Morris

M5ですが、いきなり難しい問題ですね。ベンの頃から、ライヴでは頻繁に取り上げられている曲です。でも、2003年のクレジットから考えるとDVD「almighty blues」の時に録音した音源の中からの選曲というのが有力だと思いますね。(ただ、前の曲からつながっているように聞こえるのが気になるところですけどね。)
M6は、1985年のクレジットの通り、マーヴィンの頃ですね。ブート盤「no more lonely nights」とも、TV音源とも違いますので、85年にいくつか録音されたラジオ音源の中のひとつだと思われます。
M12とM13は連続で演奏されていますので、当然、同じ日のものです。サウンドボードがらみのもので流通しているのは2006年10月31日と年11月4日と11月15日のものが有名ですから、そのどれかかな?
M14は、1999年の「house of blues」には入っていない曲ですので、同年にラジオ録音の記録があるパリでのものでしょうか?

Disc 2
1. Clousseau ?
2. The Raven ?
3. Valediction ?
4. Error of my way ASHFEST 2005 Acoustic Set (SBD)
5. Wait out the storm ASHFEST 2005 Acoustic Set (SBD)
6. Dreams outta dust ASHCON 2005 Electric Set (SBD/AUD Matrix)
7. Eyes wide open ?
8. Faith hope and love ?
9. Persephone ASHCON 2004 Electric Set (SBD/AUD Matrix)
guest: Mark Birch
10. Cell of fame ?
11. Phoenix ?
12. Baby don't mind ASHFEST 2005 Acoustic Set (SBD)

M1ですが、1988年というクレジットより、テッドの再加入ツアーの音源でしょう。となると、88年のBBC音源あたりかな?
M2、M3、M7(2004年は、明らかに誤りです)は、DISK1のM12、M13と同じ時の音源でしょうね。(これもM6とM7がつながっているようにも聞こえるのが気になるところです。)
M8、M11は、DISK1のM5と同じ時の音源ではないでしょうか。「almighty blues」のCDともDVDとも違う音源ですけどね。どちらにしても、かなり狭い会場のようです。
M10は、クレジットを見てびっくりしたのですが、聴いてみるとヴォーカルはマーヴィンでした。ですから、これは1985年の誤り(ミスプリント)でしょうね。これはディスク1のM6と同じ日の音源でしょうか?(「no more lonely night」とは、曲のテンポやギターのフレーズの入り方が一緒なのですが、歓声が違います。元音源という可能性もあるかもしれません。)

Disc 3
1. Hard on you ASHCON 2004 Electric Set (SBD/AUD Matrix)
2. Ship of dreams ?
3. Come in from the rain ASHCON 2004 Electric Set (SBD/AUD Matrix)
guest: Mark Birch
4. High heeled sneakers ASHCON 2005 Electric Set (SBD/AUD Matrix)
guest: Ted Turner
5. Rock me baby ?
6. Jailbait ?
7. Another time ?
8. Motherless child ASHCON 2004 Electric Set (SBD/AUD Matrix)
9. Hard times ?
10. Blind eye ?
11. East coast boogie ?
12. Loose change ?
13. Warrior (with Orchestra) ?

M2,M7,M11はクレジット通り、アンディーとロジャーの二人での録音で、M12はイアン・ハリスとアンディーによる録音です。また、クレジットが1999年の3曲は、おそらく前述のものと同じ日のものかと思われます。

M13に関しては、言及しないわけにはいきません。中止となったアーガスのオーケストラ・ヴァージョンの断片を垣間見ることのできるテイクではありますが、イントロのソロの途中でオーケストラが入ってきてバンドの音をかき消すというミックスといい、オーケストラの雑なアレンジといい、楽曲を破壊しているようで、あまり愛のある仕事とは言えないように感じます。ファンの間でもいろいろなことが言われているようですが、僕はこう言うことにしましょう。「アーガスのオーケストラ・ヴァージョンのプロジェクトは中止になりました。その事実が、すべてを評価していると思います。」

ということで、なかなか出典のわからない音源が多く収められていますね。仕方ないので、新しい情報がわかり次第、少しずつ補足していこうかと思っています。

アッシュは新しいドラマーのジョー・クラブトゥリーを加えて、ツアーを続けています。近々、ジョーの入った後の音源が手元に届く予定ですので、またレビューしようと思います。

それでは、また次回に。

< TRACKS 3 / WISHBONE ASH / UK / Talking Elephant / TECD-111>