第106回 ベルリンのアッシュ


 さて、今回紹介するのは、めちゃめちゃ最近のライヴの音源です。なんと、2005年の2月4日のベルリンのライヴなんです!!僕が入手したのが昨日ですので、ライヴが終わってから2日ちょっとで、ファンの耳に入るという、恐るべき速さです。「いくらなんでも、そりゃあり得ない!」と思う人もいるかも知れませんね。

実は、この音源は、海外のある「音源共有サイト」にアップされたのです。そこには、いわゆるコレクターズCDやコレクターズDVDにあたる音源や映像がかなりあるのですが、そこにアッシュの音源が登場したという次第です。さすがにアップされたばかりなのでダウンロードスピードがむちゃくちゃ遅く、まるまる半日以上かかりましたけどね。(^^; そしてファイル変換してCDRにしましたので、けっこうな仕事ではありました。

録音はオーディエンスですが、時々録音が揺れる部分がある以外は、かなりきれいな録音ですね。セット・リストのクレジットは、下記の通りです。

WISHBONE ASH / Quasimodo Club, Berlin 4. Feb. 2005

Disc 1: 1. In the skin / 2. Warrior / 3. Standing in the rain / 4. Ancient remedy / 5. The king will come / 6. Throw down the sword / 7. The pilgrim / 8. Faith, hope and love / 9. Almighty blues

Disc 2:  1. Changing tracks / 2. Rock'n'roll widow / 3. Living proof / 4. Blowin' free - Bad weather blues // 5. Hard on you / 6. Jail bait / 7. Shoulda woulda coulda / 8. Hard times

このコラムでも、12月のライヴのことを何種類か書きましたが、それから2ヶ月も経っているだけに、セットリストにもいくつかの変化が見られます。一番目立つのは1枚目のM7,2枚目のM2あたりでしょうか。12月にはたどたどしかったマディーのプレーがどうなっているのか、懐かしの名曲の出来映えはどうか、など、興味津々でCDRを聴きました。

では、いくつかの曲の感想を書くことにしましょう。

まず1枚目です。M1はインスト・ナンバーですが、オープニングによく演奏される「real guitars have wings」じゃありません。この曲のほうが選ばれた理由ですが、おそらく、この曲がスライド・ギターの曲だからだと思われます。実際、この曲でのマディーのスライド・ギターは本当にいい感じに流れていきますからね。(^^)

M2でも、ラストのマディーのソロが曲に沿うようになってきているのがわかります。M3でも、ベンのような超絶技巧の早弾きではないけれど、うまくまとまったマディーらしく粘っこいハード・ロック風のフレーズが聴かれます。

ベンのカラーが色濃く出ていた楽曲であるM4は、やはりベンの印象が強すぎて、マディーには不利な曲でしょうね。マディーもそれなりにまとめてはいるのですが、印象は薄い感じです。(いずれはセット・リストから消えていくのかな?という気もしました。)

M6ですが、ラストのツイン・リードのパートでのマディーは、曲想に沿ったフレーズを弾いています。もう「アンディーの邪魔」なんて言いません。(^^; ただ、曲想に合わせるのを気にしてか、小さくまとまりすぎているきらいはありますけどね。でも、十分今後に期待を持てる成長度だと思いますよ。

さて、M7です。この曲はインストの大作ではありますが、基本的に決められたリフとハーモニー・ツインから構成されている曲です。アドリブに不満の残った「F.U.B.B.」と違って、マディーには合った曲だと思いますし、実際、聴き応えのある演奏となっています。

続いて2枚目です。なんと言っても目玉はM2でしょう。スピードはスタジオ盤よりも若干早めでしょうか、ゆったりとしたリズムで演奏されています。マディーはのっけからスライド・ギターですね。フレーズからして、ボトル・ネック奏法でしょう。リード・ヴォーカルはアンディーですが、音域の関係でフェイクを入れています。でも、今回のフェイクは十分に許容範囲ですね。間奏のマディーのソロですが、間奏の入り始めのリフっぽいところはそのままなのですが、アドリヴに入るとテッドとは全く違ったフレーズを弾いていますね。じんわりと盛り上がる感じで、間違いなく本日のハイライトのひとつだと思います。マディーがもっとステージを重ねてこの曲になじんだ頃にどんなソロを聴かせてくれるのかが楽しみになりました。この曲だけでも、半日待ったかいがありましたよ。(^^)

で、M4です。例によってラスト・ナンバーとなるのですが、いつも通り「bad weather blues」につながってきた.....と思ったら、なんと、途中から「where is the love」になっちゃうじゃないですか。これはびっくりしました。ホント、サプライズですねぇ。(笑)この曲のライヴは久しぶりじゃないのかな?

アンコールの1曲目のM5は、ashconに倣っているというとろでしょうか。完全にアンディーを中心とした演奏です。そして、M7も(ここでこの曲が来るなんて)少し驚きました。

正真正銘のラスト・ナンバーは、ブギー調ロックン・ロールのM8ですね。ラストもマディーのスライドが唸る曲でギグは終わるのでした。

12月の音源のコラムの時にも漠然と予想してはいましたが、マディーが苦手(だろうと聞こえた)な曲が減り、代わりにマディーの得意なスライド・ギターの曲とリフで聴かせる曲が増えたというところでしょうか。それにしてもマディーのスライド・ギターは本当に聴き応えがありますね。普通に弾くときの20倍はカッコいいです。(笑)

全体としても、マディーが随分とバンドになじんできたのがわかります。12月にあった「あんまりな」フレーズや「アンディーの邪魔になっているような」フレーズは、今回はほとんど聞かれません。ベンのような華麗なフレーズはありませんが、ロッカーのマディーらしい演奏を聴くことができます。

確かに、個人的な趣味で言えば、僕はベンのプレイの方が遙かに好きです。でも、この音源のマディーは、必殺のスライド・ギターを武器に、十分に自分の個性を発揮し始めていると思います。マディーが加わることにより、アッシュのサウンドにロックっぽい粘りが復活してきました。アッシュ・ファンならば、ご自分の耳で確認してもらいたいと思わせてくれる音源ですね。

では、また次回に。