第105回 名古屋のアッシュ


 さて、今回は、ちょっと懐かしくも驚異的な音源の話です。なんと、あの76年の来日公演の時の名古屋での音源なんです!!

あの時の日本公演は、発売前の「ニュー・イングランド」をメインに据えたツアーで、マーティンのハマーのベースのパワフルな音に初めて触れてぶっ飛んだ記憶があります。また、今考えてみても、あのときのパワフルなアッシュ・サウンドには何か「独特のもの」があったように思えます。

でも、当時出ていた東京公演のライヴ盤ブートレッグLPは、音もすごく悪かった(というか酷かった)ですし、同年のリバプールのラジオ音源やロックパラストの映像は、(音源や映像自体は素晴らしいものでしたが、)日本公演とは若干サウンドのニュアンスの違ったものでした。僕も、ある人から東京公演のテープをいただいて、喜んで繰り返し繰り返し聴いていたのですが、当時のカセットの自動レベル調整機能ではマーティンのベースの音をとらえきることができす、ちょっと聞きづらいところのある音源ではありました。(むろん、その人への感謝の気持ちは何ら変わりませんけどね。)

ところが、今回別のある方から、10月13日の名古屋でのライヴ・テープをいただきました。しかも、それは一定のレベルでステレオ収録したという、本当に信じられない音源だったのです。もちろん、オーディエンス録音ですから、(PAで流れた演奏自体はモノラルですし)サウンドボードのような楽器のセパレーションはありませんが、ステレオマイクだけあって臨場感はたっぷりです。なによりも、レベルが一定で変化しないので聴きやすく、なおかつ、サウンド・バランス的にも素晴らしいものがあります。

1.RUNAWAY / 2.THE KING WILL COME / 3.WARRIOR / 4.LORELEI / 5.PERSEPHONE / 6.CANDLE LIGHT / 7.YOU RESCURE ME / 8.REST IN PEACE / 9.OUTWARD BOUND / 10.MOTHER OF PEARL / 11.IT STARTED IN HEAVEN / 12.TIME WAS / 13. BLOWIN' FREE // 14.BAD WEATHER BLUES / 15.JAILBAIT

収録されていたのは上記の通りです。残念ながら、マイクのトラブルで、M3のイントロまでは片方のチャンネルしか録音されていない部分が多いですし、M1とM12は、曲の頭が切れていました。でも、M4以降の音源は奇跡に近いものがありますね。聴いていると、自分の観た公演のことがはっきりと思い出されてきました。(その公演のことは、コラムの第3回目で書いています。)

今回の音源を聴くことにより、自分の記憶の間違いもいくつか修正されることとなりました。たとえば、不協和音でハーモニーが変だった曲は「ローレライ」ではなくて「アウトワード・バウンド」だったんだということや、「プレリュード」は演奏していなかったということなどです。それと、(スティーヴかな?)「ローリー、オカマ」のMC。これ、確か僕が観たときにも言ったぞ〜。(^^;

その「アウトワード・バウンド」ですが、曲のノリや迫力は、スタジオ盤はもちろんのこと、リバプールやロック・パラストのものを遙かに越えていると思います。途中のハーモニーが不協和音だとしても、それはこの迫力の前には小さなことのように思えてきます。「名演」なのかどうかはわかりませんが、この日本公演がこの曲の最高の「快演」であったことは間違いないと断言しましょう。(^^) 

この曲以外にも、M5とか、M8とか、10とか、本当に泣けてくるくらいの演奏ですね。これで最初の3曲がきちんと録音されていたら、ホント、もう死んじゃったかもしれません。(笑)

ということで、テープからきちんと録音されている曲を抜粋してCDRを作り、毎日聴いています。マーティンのベースの凄さだけは、生で聴いた人じゃないとわかってもらえないとは思いますが、それでもこの年の日本公演の迫力を改めて堪能した思いがします。改めて、テープをくださった方に心から感謝したいと思います。

ローリーの音源としては、別のルートで80年の3月のパリ公演の音源(オーディエンス)も入手しました。これについては、いつかまた書きたいと思っています。

では、また次回に。

「2.6追補」パティオにも情報をいただきましたが、あの「不協和音」のところは、イーブンタイド(社のハーモナイザー)だそうです。バッキングのところとかでは音に厚みが出ていて一定の効果をあげていると思います。が、ハーモニー・ツインの時に使用すると、ハーモナイザーの音ともう1本のギターの音がぶつかって、不協和音の極致になっている部分もあります。(まあ、現代音楽に比べれば大したことないですが、やはりハーモニー・ツインの部分では使わない方がいいと思えます。)このハーモナイザーを76年の日本公演以外で使用した音源はないとのことですので、この音源がやはり貴重な音源であることは間違いないようです。