第102回 マディーのライヴ

 さて、今回は最近入手した、マディー加入後のライヴの話です。今回もテープ・トレーダー間で流通している音源になりますが、昨年の12月の最初のギグです。

今回は6日、7日、9日の音源を入手したのですが、基本的には同じようなセットリストで、日によって曲順や選曲に違いがあります。内容は次の通りで、すべてオーディエンスによる録音です。(一番クリアに録音されているのは6日のぶんですけどね。)

2004.12.06(2CDR)
WARRIOR / KING WILL COME / THROW DOWN THE SWORD / MOUTAINSIDE / FAITH, HOPE AND LOVE // F.U.B.B. / BLIND EYE / BABY WHAT YOU WANT ME TO DO / ALMIGHTY BLUES / LIVING PROOF / CHANGING TRACKS / BLOWIN' FREE- BAD WEATHER BLUES / BALLAD OF THE BEACON / JAILBAIT

2004.12.07(2CDR)
WARRIOR / KING WILL COME / THROW DOWN THE SWORD / MOUTAINSIDE / FAITH, HOPE AND LOVE / BLIND EYE / BABY WHAT YOU WANT ME TO DO / ALMIGHTY BLUES / SOMETIME THE WORLD // F.U.B.B. / CHANGING TRACKS / LIVING PROOF / BLOWIN' FREE- BAD WEATHER BLUES / BALLAD OF THE BEACON / JAILBAIT

2004.12.09(2CDR)
WARRIOR / KING WILL COME / THROW DOWN THE SWORD / FAITH, HOPE AND LOVE / MOUTAINSIDE / F.U.B.B. / BLIND EYE // BABY WHAT YOU WANT ME TO DO / ALMIGHTY BLUES / SOMETIME WORLD /LIVING PROOF / BLOWIN' FREE- BAD WEATHER BLUES / BALLAD OF THE BEACON / JAILBAIT

実のところ、前回書いたASHCONの音源を聴いて感動してしまい、さすがにその日いっぱいは余韻にひたってしまいました(笑)。で、次の日からマディーの3日分の音源を3日間かけて聴きました。

演奏を聴いて最初に思ったのは、ギターの音のことです。(GRINGOS LOCOSを聴いて予想していたことではありますが、)マディーはずいぶん太くて粘りのある音を出していますね。サウンド的には、ずいぶんと昔(70年代)っぽい音に戻ったなという感じです。

次に思ったのは、マディーのソロが、曲想によって、そして日によってずいぶんと違うんだなということでした。マディーは、ベンのような華麗なソロではなく、ハード・ロックの基本的なフレーズも交えながらの粘っこいギターを聴かせてくれています。僕は、マディーは良くも悪くも「根っからのロッカー」なんだろうなという印象を受けました。

では、3日ぶんを聴いたうえでの、いくつかの曲の印象を書いていきましょうね。

Warriorは、メインのソロはアンディーですので、今までとあまり変わらない印象を受けます。ただ、マディーのギターの太い音は、アッシュのサウンドが少し昔のサウンドに戻ったかなと思わせてくれますけどね。ライヴのオープニングとしては妥当な選曲でしょうね。

King Will Comeは、本格的にマディーのソロが聴ける曲です。イントロではオブリガードが粘りのあるストレートな音で弾かれていきます。リフも、ベンよりはずいぶん粘っこい音ですね。再結成時のテッドの音に近いような感じを受けます。マディーのヴォーカルは、ベンと同じか少し声が出ていない程度の歌唱力と言っておきましょう。で、マディーのソロです。粘っこいソロをオーソドックスなハード・ロックのフレーズも混ぜながら弾いていきます。ロックっぽいソロだと思いますよ。

Throw Down The Swordは、例によって途中でオクターブ上がるアレンジでした。リフのところのマディーは、まだ硬さが残っているようです。後半のアンディーのソロは、相変わらず美しいですが、途中からツイン・リードになると、マディーのソロがアンディーと合いません。7日の演奏はまだ比較的まとまりがあるのですが、6日や9日のマディーのソロは曲想からはずれて、どちらかというとアンディーのソロの邪魔になっている時が多いようにも思えます。(^^;
マディーにとっては得意とはしていない曲想なのかなとも思いますが、アッシュの曲の中でもかなり人気の高い曲だけに、時間が解決してくれることを祈っています。

ベンの最高の見せ場のひとつであったFaith, Hope and Loveは、そのままマディーの見せ場の曲になっています。ハーモニー・ツインは、ひとつに融合するような感じではなく、意地を張っているように響いていますね。アンディーのソロはいつも通りで、3日とも安心して聴けます。マディーのソロは、早弾きのパートはあるのですが、フレーズも割とオーソドックスで、「典型的なハード・ロック・バラードのソロ」という感じがします。まあ、こういうギターが好みの人も(特にハードロック・マニアの人には)いるのは知っていますけどね。

そしてブルースのBaby What You Want Me To Doですが、こういうブルース・ナンバーでのマディーのギターは、本当に曲に良く合っていますね。ベンほどのテクニックや煌びやかさはないのですが、ベンにはなかった粘っこさと黒っぽいフィーリングがあります。後半で転調してメジャー・スケールのマディーのソロがあるのですが、ここは今までに見られなかった展開です。でも、曲の流れに合っているかといえば、そうでもないのですが。)

続くAlmighty Bluesはアップ・テンポのブギーですから、ここでもマディーのギターの持ち味が活きています。

F.U.B.Bですが、あらかじめ決まっているハーモニー・ツインやリフのところではしっかりとした演奏力を見せてくれています。が、アドリブ・ソロのところになると、スローなパートでのマディーのソロは、(曲想をはずすフレーズもありますし、)少し面白みに欠けるような気がしますね。この曲に関しては、やはりローリーの時代(78年頃)に勝るものはないと思います。

Living Proofはロックっぽい曲想なのですが、オリジナルのソロは、なかなかメロディアスなものでした。この日のマディーのソロは、曲に合わない部分が目立ちます。

Blowin' Freeですが、いつも通りに観客との掛け合いから、Bad Weather Bluesになだれこんでいきます。このパートでのマディーは、得意技のスライドギターでいい感じのソロを聴かせてくれています。この7日のソロが一番いい出来映えではないでしょうか。マディーのスライド・ギターには、普通に弾く時にはない「煌めき」を感じますから、もう少しスライド・ギターの曲を増やせばいいんじゃないのかな?と思います。(最も、そうしたら選曲がずいぶんブルージーな曲に偏るでしょうけどね。)

Ballad Of The Beaconではマディーの音がちょっと硬いですが、メインのソロがアンディーなのでそんなには目立ちません。ラストのJailbaitは、ブギーなのでマディーも思い切って弾いているようですね。

全体として見ると、マディーはブルースやブギー・ナンバーではいい味を出していて、特にスライドギターのフィーリングには素晴らしいものがあります。しかし、スローでメロディックな楽曲では、Faith, Hope and Loveを除いて曲に合ったプレイができていないように思います。(もちろん、かちっと決められているリフやハーモニー・ツインのところはバッチリですけどね。)ただ、ギター・サウンドがベンの時よりも昔のアッシュに近いので、今の音の響きの方が好みだと言う人もいるかもしれませんけどね。

それと、まだ加入して間もないためだと思われますが、マディーはプレイが全体的に硬く、不安定で、手探り状態という感じです。ソロやオブリガートでも「はずれた」音が目立っています。(演奏日や曲によっては、「こりゃあんまりだ」と思えるフレーズもあります。)アドリブでも「曲に合わせた自分の流れ」が確立しておらず試行錯誤の状態にあると思えるのですが、日によって全く違うパターンのフレーズを弾いています。曲に合うかどうかはその日のフィーリング次第という感じですね。

ということで、マディーがバンドに溶け込むにはまだまだ時間が必要だなと感じられると同時に、マディーのプレイ・スタイルもよくわかる音源だったと思います。

<2005.1.7追補>最初にアップしてから1日も経たないのに、マディーはベンと比べてどうか?という質問が数件ありました。
「基本的にベンはベン、マディーはマディーだ」ということと、「バンドに加入して何年も経っているベンのプレイと、加入一ヶ月で手探り状態のマディーのプレイを比較するのはフェアじゃない」ということは明言しておきます。そのうえで、僕の個人的な感想を、ズバリ言うわよ。(笑)現在のマディーのプレイと、昨年春頃のベンのプレイでは、比較にさえなりません。ベンがいかにテクニックとうたごころを兼ね備えた素晴らしいギタリストだったのかということを再確認しただけです。
マディーがこれからバンドに溶け込んでいき、バンドの中の自分のスタイルを確立していくことは間違いないでしょう。その時には、自分のカラーに合っていない曲でもきちんと対応したプレイができていると思います。今でも自分のカラーに合った曲ではなかなかのプレイを見せてくれているマディーですから、早くその日が来ることを願っています。

では、また次回に。