第99回 LIVE DATES VOL.2 の謎-ファンの考察-

さて、今回は、うちのHPからリンクを貼っているごうきさんのHPの掲示板で最近話題になったことを書いておきたいと思います。それは、「LIVE IN TOKYO」と「LIVE DATES VOL.2」という、2枚のライヴ盤(どちらも質の高い演奏が聴ける名ライヴ盤だと思います。)についてのことです。

アッシュ・ファンのみなさんなら、「LIVE IN TOKYO」のA面と「LIVE DATES VOL.2」の2面とが、同じ曲目であることは知っていると思います。そう、「F.U.B.B.」と「THE WAY OF THE WORLD」ですよね。(^^)クレジットによると、東京でのライヴは1978年の11月10日と15日の録音(曲目ごとのクレジットなし)、ライヴデイト2のクレジットは、前者が1978年10月25日のハマースミス、後者が1978年10月27日のブリストルでのライヴとなっています。

ところが、「この2枚に収められている音源は、実は同じものではないか」という意見が話題を呼びました。(実のところ、昔どこかでそういう趣旨の文章を読んだ記憶はあったのですけどね。)特に、インストである「F.U.B.B.」のほうに意見は集中しました。

ごうきさんのHPの掲示板には、僕と同じようなアッシュ・ファンの方もたくさんいらっしゃいます。そこで、いろんな方が分析に乗り出しました。自分でマスタリングまでして作成したCDRで聴き比べた人、HDに落として比べてみた人、昔、身体に染みつくほどバンドでコピーしていた経験で聴き比べた人、それぞれのアプローチで比べてみました。その結果、共通して出てきた意見は、「この2枚に収められている演奏は、同じフレーズ・同じタイミングの演奏である」ということでした。

そうなると、謎が深まります。そこからの意見は、次の二つの方向に分かれていました。
(1)音の響きは違うので別の日の録音なのに、フレーズのタイミングまで一緒だから、アッシュの演奏の再現性(演奏能力)に素晴らしいものがある。
(2)チョーキングのタイミングや音の切り方まで完璧に一致するのも、4人のメンバーのプレイが完全に一致するのも奇跡に近いので、これは同じ日の演奏(東京の音源をライヴ・デイト2に流用)である。

僕も自分なりに聴いてみました。僕の場合は、最近発掘されたハマースミスの完全版BBC音源と「LIVE IN TOKYO」を聴き比べてみたのです。すると、演奏自体はタイミングまで見事に一致していました。ただし、観客の歓声は明らかに違っていました。ハマースミス音源のほうの歓声は、「LIVE IN TOKYO」や「LIVE DATES VOL.2」とは違っていたのです。

次に、僕は1978年11月10日の東京公演のライヴ・テープを聴いてみました。スティーヴのMCは、「LIVE IN TOKYO(短く編集されていますが)」で聞き覚えのあるものでした。しかし、演奏されているギター・フレーズは、ライヴ・アルバムとは別のものでした。つまり、アッシュは「F.U.B.B.」をいつも決まったアレンジで演奏していたのではないということになります。

そんなわけで、僕には、件のふたつの演奏が同じ日の演奏なのか、別の日の演奏なのか、見当がつかなくなりました。正直な話、僕は、「LIVE IN TOKYO」には、東京の録音(MCや歓声をメインに)とハマースミスでの録音を編集したものが使われている、というのが一番可能性が高そうだと思いました。実際、11月10日の「F.U.B.B」は、優れた演奏ではあるものの、ライヴ盤の演奏ほどは素晴らしい演奏だとは思えなかったからです。

でも、ファンのひとりのOさんが、アッシュのオフィシャルに直接訊いてみてくれました。アッシュのオフィシャルからの回答は、「そのふたつは、違う録音である。日本録音は日本側に権利があって、日本以外のリリースはできない、という契約のため、Hot Ash でも使いたかったけど日本音源が使えなかった。」ということでした。クレジット通りの録音だよとは言っていないものの、別の演奏だということは明言しています。ということで、謎も一応の解決を見たということになります。アッシュの演奏の再現性と演奏技術の高さが証明されたということですね。(^^)

個人的な見解ですが、10日の演奏にイマイチ満足できなかったアッシュは、15日の演奏でハマー・スミス・ヴァージョンの「F.U.B.B」を再現したということなのでしょう。この謎解きに関しては、多くのアッシュ・ファンの方が参加されていました。掲示板ではいずれすべての書き込みが消えてしまいますので、このコラムに書き留めて残しておきたかったということを、ごうきさんのHPに集うアッシュファンのみなさんへの敬意と感謝と共に述べておきたいと思います。

なお、オフィシャルの話では、「日本公演の残りのマテリアルのCD化についても、日本側に権利が残ったままなので実施できない」とのことなので、日本側の権利関係さえなんとかなれば、(たとえ日本限定でも)日本公演完全版のリリースも不可能ではないということなのでしょう。まあ、ライヴデイト2の権利を日本ユニバーサルにという話も、アンディーが動いたにもかかわらず、どうなっているのかわからないままですので、なかなか難しいのかもしれませんけどね。(^^;

ちなみに、オフィシャルの話に出てきた「HOT ASH」ですが、ライヴ・デイト2の音源も多く含まれており、「何故こんなアルバムを出したのかがわからない」と言われることの多い不人気作の1枚ではあります。もしかしたら、契約の関係で1枚アルバムを出さないといけなかったのかもしれません。でも、このアルバムはアメリカ編集盤であり、アメリカではライヴデイト2はリリースされてないことは考慮する必要があると思います。このアルバムは、ライヴ・デイト2を(輸入盤でしか)聴けなかったアメリカのファンに向けてのアッシュのプレゼントという面もあったのではなかったかと思っています。

では、また次回に。