第85回 アッシュの最近のライヴ

 さて、前回に書いたライヴ音源が届きました。前に書いたように2004年のを2本ではなくて、2003年の7月2日のミルウォーキーのライヴと、2004年3月のニュー・ヨークでのライヴ音源です。音源トレードで入手したのですが、相手の方(オランダの人ですが)は、丁寧に自分でジャケットまで作っていたので、ちょっと嬉しかったですね。(^^)

では、2003年のミルウォーキーからいきましょう。音源は2枚組のCDRでした。曲目クレジットは下記の通りです。

DISK 1 : MOUNTAINSIDE / THE KING WILL COME / THROW DOWN THE SWORD / ON YOUR OWN / NO JOKE / PHOENIX

DISK 2 : STRABNGE AFFAIR / ERRORS OF MY WAY / SOMETIME WORLD / BLOWIN' FREE / JAILBAIT

 これを見て、「なんか変だぞ?」と感じませんでしたか?僕は、最初に曲目を見たときに違和感を覚えました。最近のアッシュのセット・リストとは選曲傾向がちょっと違うのです。
 で、ジャケットをよく見ると謎はすべて解けました。この日のラインアップは、アンディー・パウエル、ボブ・スキート、レイ・ウェストン、そしてロジャー・フィルゲイトなのです。この時には、ベンの代わりにロジャーがステージに立っているのです。(そういえば、昨年そんなことを聞いた覚えがありますね。)

 ロジャーは自分のバンドの「シネマ」で活動していたはずですが、アッシュとしてののステージは久しぶりだったと思います。M1では、懐かしいイントロから、きっちりとした演奏を聴かせてくれています。録音のバランスが悪いのか、アンディー以外の声が聞こえにくいのが難点ですが、ロジャーもブランクを感じさせない演奏です。
 ところが、名曲M2では、ロジャーがギター・リフを間違えてしまいます。Aメロが終わったところでイントロのリフが入るはずなのに、サビ前の方のリフを弾いてしまったのです。アンディーはそのまま歌を続けたのですが、なかなかお目にかかれないミスですね。(^^; まあ、ロジャーもそれにめげることなく、堂々とした間奏のソロを聴かせていますので、名誉挽回は達成できたと思いますけどね。続くM3では、イントロのリフは昔の(オクターブ上がらない普通の)パターンですね。ラストのアンディーのソロがいつもながらの絶品です。ベンの時はツイン・リードになったのですが、ここではロジャーはコードに専念しています。
 1枚目のラストのM6は、12分程度に押さえられています。スタジオ盤程度ということなのでしょうが、僕にはこれくらいの長さの方がしっくりときますね。

 続いて2枚目です。定番のM1に続いて演奏されたM2が、個人的には嬉しいですね。でも、先述したように、ヴォーカルはアンディー以外のパートが聞こえにくいので、なかなか面白い雰囲気になっています。バンドをしている人は、パート練習用にも使えそうなくらいですね。(^^;
 続くM3も、Aメロでのアンディーのヴォーカルが聴きどころになっていますね。後半でのコーラスは、大きめに入っていてよく聞こえますが、オーディエンス録音のためベースの音が弱いのが、この曲では致命的ですね。
 M4でいったんステージが終わり、アンコールまでに時間が空くのですが、その間に会場に流れていたBGMは、ビートルズの「ラヴ・ミー・ドゥー」でした。ちょっぴり意外な選曲かもしれませんね。(^^)
 アンコールのM5ですが、クレジットと違って「blind eye」が演奏されています。そして、この音源は終わるのですが、おそらく、この後にアンコールで「jailbait」あたりが演奏されたものと思われます。

 全体としては、ロジャーが若干のブランクを感じさせながらも、ギグとしてはうまくまとまっているのではないかと思いました。

 話は変わって、2004年のニューヨークのバッファロ−でのライヴです。ここでは、ベンを含んだいつものメンバーですね。これも2枚組のCDRで、曲目クレジットは次の通りです。

DISK 1 : BONAFIDE / WAIT OUT THE STORM / WARRIOR / THE KING WILL COME / THROWN DOWN THE SWORD / FAITH, HOPE AND LOVE / STANDING IN THE RAIN / TIME WAS

DISK 2 : F.U.B.B. / ALMIGHTY BLUES / LIVING PROOF / BLOWING FREE / F**K IT WE'LL PLAY BLIND EYE / JAILBAIT

2枚目のM5のクレジットは閉口ものですが、選曲的には納得のできるものです。特に、アンディーとベンのアッシュ史上最強のツイン・ギターで演奏されるF.U.B.B.は期待は超特盛なのです。

 1枚目のM1は、オーソドックス過ぎるほどアルバムに準じた演奏になっています。まずは小手調べというところでしょうか。録音もまとまったいい音ですね。続いてのM2は、ちょっと珍しい選曲かもしれませんね。前に書いた2003年末には後半に演奏されていたのですが、ここでは2曲目の登場ですからね。演奏は文句なしですし、ヴォーカルもしっかり録音されており、迫力も十分です。
 渋めの2曲に続いて、アーガスからの3曲が演奏されます。でも、曲順はいつもとは違いますね。M3のAパートでは、ヴォーカル・ハーモニーは(マーティンやトニーのいた頃の力強さはないものの、)美しく響いていますし、ベンのソロも(enigmaのようにディレイを効かせたバッキングも)素晴らしいものです。Bパートも素晴らしい出来映えですね。
 アンディーの手癖フレーズに続いてM4のイントロが流れてきます。アンディーのバッキングに乗せて弾かれるベンの哀愁いっぱいのオブリガードのフレーズがいいですね。(録音の関係で前に書いた2003年のライヴの時には弾いていることに気づかなかったのですけどね。(^^;)ベンがバンドに完全にとけ込んでいる証拠だと思います。ヴォーカルは(若干弱いものの、)ハーモニーは素晴らしい響きを醸し出しています。そしてベンのソロです。エキサイトでスリリングで、テッドのソロのイメージを損なわないようなサウンドで、なおかつベンの個性を前面に出した素晴らしいソロです。ホント、最近のアッシュを知らない昔のファンの人にも聴いてもらいたい演奏ですね。(^^)
 M5は、またまたベンの(ディレイの)オブリガードとアッドナインスのコードの響きから静かに始まっていきます。マーク以来のオクターブ上がるバージョンのイントロですね。ここでもヴォーカル・ハーモニーが素晴らしいです。アンディーのソロは、(前曲のベンのソロに刺激されたのか、)本当に美しいフレーズで弾かれています。この曲の名ソロの中のひとつに入れてもいいと思いますね。途中からベンも入ったツイン・リードになりますが、これもまた素晴らしいですね。泣けてきます。(^^;
 次に、またまた名曲のM6です。ここでは、やはり2回目のソロのベンの演奏が特筆ものですね。オフィシャル版の「almighty blues」のCDやDVDでみられた若干の硬さもなく、本当に素晴らしいソロを聴かせてくれています。時間と経験がそうさせたのか、それとも正式なレコーディングはしていないという心理的な部分がそうさせたのかはわかりませんが、とにかく美しさも、緩急の構成も、見事としか言えません。僕が今まで聴いたこの曲のソロの中では間違いなくベストだと言えるでしょう。
 M7では、ベンの凄まじいギター・ソロが聴かれ、アンサンブルにはバンドとしての風格さえ感じてしまいます。懐かしのM8は、やはりイントロのアコギの響きが美しいですね。Aメロのヴォーカルも(さすがに曲想的にテッドの頃のように完璧にはいきませんが)いい雰囲気ですね。後半でのアンディーのソロはさすがの一言です。

 では、2枚目です。件のM1は、最初のメロディーのところでベンが1音だけ弾き間違えかける(グリッサンドで上手くつないでいます)のですが、おやっと思ったのはそれだけで、とにかくエキサイトな演奏になっています。ボブのベースが堅実にリフを刻んでいく上に、アンディーとベンが「息のあったハーモニー」と、「がっぷり四つに組んだギター・バトル」を聴かせてくれるのですから。僕は、この曲のベスト・テイクは「ライヴ・イン・トーキョー」か「ライヴ・デイト2」だと思っているのですが、この演奏も決して負けてはいませんね。
 M2は、得意のブギー・ナンバーを余裕で聴かせてくれていますね。ミドル8のギターがハーモニー・ツインになっていないことは残念ですが、ベンのソロを筆頭に隙のないいい演奏です。M3も(変わったアレンジのアコースティック・ヴァージョンも、最近のギグでは多いのですが、)ここではオーソドックスなアレンジでの演奏ですね。ベンのギター・ソロも、ローリーの時代を基本にしてはいますが、ベンなりの速いフレーズとエフェクターを導入して聴かせてくれています。
 M4は、間に観客との掛け合いとバッドウェザー・ブルースを挟んだ、いつもの長尺ヴァージョンですね。(ところで、ラストのリフとソロに入る前にベンの弾いているフレーズは、ジーザスクライストなのかな?)
 ここからがアンコールになります。(観客にやけにはしゃいでいるうるさいのが一人いるようですが。(^^;)クレジットが問題のM5ですが、アンディーが何故かMCでそう言っているだけで、曲自体は普通のものですので、ご安心を。(笑)曲が終わった時に一瞬「レディー・ウイスキー」のリフを弾きかけるのはご愛敬でしょう。ラスト・ナンバーのM6は、スタジオヴァージョンに則った演奏ですが、ハーモニー・ツインのフレーズとか、ずいぶん煌びやかにエキサイトになっています。前半の叙情的な名曲群の演奏が素晴らしすぎたため、ラストを締めるこれらのオーソドックスな曲たちの印象が若干薄くなってはしまいましたが、演奏自体は最後まで素晴らしいですね。

 こうして聴き終わって思ったのは、アンディーのヴォーカルもずいぶんと上手くなったなということと、アンディーとベンのギター・コンビネーションは最高だというでした。僕は、前からイルミネーションのメンバーが最強だと思う(一番好きなのは2期のラインアップですが)と言っていたのですが、このライヴを聴いて、今のメンバーは、(確かにヴォーカルでは劣るものの、)総合的には最強と言っていいのではないかと思いました。(演奏力は間違いなく史上最強ですしね。)ということで、「これはオフィシャル盤を上回るライヴだ」と評して、筆を置くこととしましょう。アンディー、今のメンバーなら「ライヴデイト4」作っていいからね〜。((^^;)

では、また次回に。