第60回 BONA FIDE!

 さて、今回はアッシュの新作の紹介です。とうとう、前々から書いていた「BONA FIDE」がリリースされたのです。(^^)スタジオ盤のオリジナル・アルバムとしては、「イルミネーションズ」以来になりますね。TALKING ELEPHANTという小さなレーベルからのリリースで番号がTECD040になりますが、インナーはなかなかしっかりとした作りになっています。

ジャケットは切り絵細工でデザインされていて、着物の白い部分には日本の新聞が使われています。裏ジャケットやCDのレーベル面には龍があしらってあり、どことなく中国風味もあります。最も、日本の新聞を使っている点もそうですし、おそらく日本を意識してのデザインじゃないかなって思います。(ヨーロッパあたりでの日本のイメージって、一般的にはそんなものなんですよ。→たいていの場合、日本と中国と韓国と朝鮮と..ごっちゃ混ぜになって混信している印象があります。(笑))

話をアルバムに戻しましょうか。全部で10曲収められているのですが、前に書いたCDRやビデオで聴いた曲も、しっかり収められていました。早速ですが、順番に感想風に書いてみようと思います。(^^)

1.ALMIGHTY BLUES

ベンのコメントでは「ギターがたくさん詰まっているブギー」とのことでしたが、アッシュのお得意のブギー調だけあって、ゴキゲンな演奏ですね。ハーモニー・ツインも美しくそしてワイルドにキマっていて、ローリー時代の全盛期を彷彿させてくれます。でもね、この曲はベンの作品なんですよ。この曲を聴くだけでも、いかにベンが昔からアッシュの曲を愛していたのかということがわかりますね。(^^)

2.ENIGMA

ベンは「メロディックなポップソング」と言っていましたが、本当にポップな曲です。(^^)56回目に書いたビデオに入っていた新曲は、この曲でした。ギターのディレイが効果的ですね。それと、ボブのベースラインも印象的です。サビのあたりでは、ギターのディレイとの絡み合いで、ニュー・ロマンティックっぽくも聞こえます。90年代のアッシュの音の発展型という感じですが、シングル切るなら(ありえないけどさ(^^;)この曲でしょう。

3.FAITH, HOPE AND LOVE

56回目のビデオ評でも55回目のCDR評でも、僕が「ニュー・アルバムのイチ押し!」と書いたこの曲ですが、やっぱりアルバムの中でも最初のハイライトになっています。イントロの哀愁味溢れるハーモニー・ツインを聴けば、昔からのアッシュ・ファンも思わず涙するでしょう。曲自体もメロディックなバラードで、アンディーの歌がいい味を出しています。そしてギター・ソロです。最初のアンディーのメロディックなソロもいいですが、2回目のベンのソロが凄くいいですよ。メロディーとテクニックがうまく融合したギター・ソロですね。文句なくアルバム中のベストトラックです。あえて言いましょう。この曲は21世紀の「persephone」だと。(^^)

4.ANCIENT REMEDY

ベンは「東洋的な雰囲気のメロディー・ライン」と言っていましたが、ギター・リフにちょっぴり中東的な感じがあるかな?歌の部分のメロディーは押さえ気味ですが、そのぶんこの印象的なギター・リフが目立っています。ベンのギター・ソロも見事ですね。ただ、曲的にはもう一展開ほしかったところでしょうか?

5.CHANGING TRACKS

ベンは「ZZトップみたいな曲」と言っていましたが、オーソドックスなアメリカン・ロックン・ロール・ナンバーとなっていますし、ベンの言葉にも頷けるところがあります。ボブの力強いベースも聴きものですね。アルバム中で一番アメリカンな曲です。

6.SHOULDA, WOULDA, COULDA

ライヴでも演奏していた曲です。ベンは「グルーヴィー」と言っていましたが、ちょっとしゃくるようなリズムが印象的です。ライヴ評の時にも書いたのですが、曲的にはメロディーのあるタイプの曲ではないので、ギターのリフやコンビネーションを聴く曲ですね。ギター・ソロもかなりストレートでオーソドックスな音色ですね。

7.BONA FIDE

さて、アルバムの2回目のハイライトです。タイトル曲ですが、得意のブギー調のインストです。伸び伸びとしたフレーズを奏でるハーモニー・ツインのパートも最高ですが、ギター・ソロのパートも最高です。(^^)ブギー調のためか、ギター・ソロでは、時に初期のアッシュの印象さえ感じさせてくれます。何も知らずに聴くと、「ジェイルベイトの一部だよ」と言われたら信じちゃうそうな気もするくらいです。

8.DIFFERENCE IN TIME

ベンは「クリームとREMの融合」と言っていましたが、ディレイの効いたギターが印象的なポップ・チューンです。歌の部分になると、ローリーのいた頃のアッシュの雰囲気も出てきます。ミドル8は、ちょっとドリーミーな雰囲気を醸し出していますね。そして、美しいハーモニー・ツインは「永遠の不安」の頃のアッシュを彷彿させます。ところで、この曲のリード・ボーカルはベンかな?

9.COME RAIN, COME SHINE

これはアルバム中でも異色の曲です。アルバムの3回目のハイライトになると思いますが、3拍子系の曲で、トラッド的な雰囲気もあります。楽曲的に言うと、イエスやムーディー・ブルースやストローブスのようにさえ聴こえます。トラッドっぽい感じなので、ギター・ソロでは「ウイッシュボーン・フォー」さえ彷彿させます。ところが、SEを挟んだ後半は、かなりハードな展開を見せてくれます。(トレバー・ラヴィンの)イエスのような雰囲気もありますね。で、また最初の曲想に戻るのですが、とにかく、昔ながらのブリティッシュ・ロック・ファンにはナミダモノの曲ですよ、うん。これが「アッシュのアルバム」ということに限定しなければ、M3よりもこっちのほうがベスト・トラックだと言えるかもしれませんね。(5/10追補:この曲ですが、イエスよりもPFMにそっくりで、ギターの感じもそっくりですよってメールをいただきました。興味のある人は聴き比べてみてくださいね。まあ、どっちにしてもプログレ風味の曲であるってことでしょうね。)

10.PEACE

最後は、ゆったりとしたインスト・チューンです。前に書いたライヴの時には「Lullaby at Sea」というタイトルだったんですが、正式なタイトルはこっちなんですね。ハーモニーの心地よい曲ですね。ということで、アルバムは静かに幕を降ろします。

全体的に見ると、かなり良い出来のアルバムですね。ベンのギターをうまくフィーチャーして新しい側面を出しながらも、今までのアッシュのイメージも損なわないという楽曲が素晴らしいと思います。ライヴ評の時にはアンディーとベンのボーカルが弱いと書いたのですが、スタジオ盤なら、その弱点を充分すぎるほどに補うことができます。本当にいいアルバムになっています。

アッシュのスタジオ盤ではベスト3に入ると言うと「それは言い過ぎ!」と言われるかもしれませんが、「ベスト5」なら納得してくれるのではないかと思える仕上がりですよ。(5/10追記:この評を見た強力なアッシュ・ファンの方から、「充分にベスト3に入ると思いますよ」ってメールをいただきました。(^^)やっぱり、ファンにはたまらないアルバムだということでしょうね。)

ということで、昔ながらのアッシュ・ファンにもぜひ聴いてもらいたいアルバムですね。

では、また次回に。