第59回 アーガスのリマスター盤

 さて、とうとうアーガスのリマスター盤がリリースされました。今回は、アメリカ盤の登場です。でも、ただのリマスターではなくて、マーティンがリミックスしたヴァージョンのリマスターということで、正確にはリミックス盤というべきでしょうけどね。(正真正銘のリマスターとしての音は、日本盤紙ジャケCDで聴くことができました。そのCDの、「オリジナルのままのミックスでの現在考えられる最高の音質」というコンセプトにはなかなかのものがありましたし、しかも愛情溢れる仕事でもありました。)

そして、今回のマーティン自身の手によるリミックスです。マーティンは、音の定位とか、バランスとか、エフェクトのかけ方とか、かなりいじったとのことですけどね。マーティンのリミックス・ヴァージョン自体は、「TIME WAS」等で陽の目をみてはいますが、今回はさらにリマスターすることによって、音質の向上が図られています。

全体的には、各楽器の音がずいぶんクリアーできらびやかになったなという印象を受けます。ギターの絡みなどもはっきりと聴きとれますし、全体の音のバランスもくっきりとしていて、迫力を増しています。そのぶん、オリジナルミックスにあった「ロンドンの霧がかかったような」しっとりとした響きがいくぶん薄くなったような印象は受けますけどね。ともかく、オリジナルの音とはかなり変わった「リミックス」ならではの音が、ここにはあります。もし、普通のリマスターのみだったなら、ここまでの音の変化は望めなかったでしょう。(もしかしたら、イギリス盤が出るとまた印象が若干変わるかもしれませんけれども。同じCDでも、プレス国によって音の印象が変わることがありますからね。)

今回、特に印象に残ったのが「THROW DOWN THE SWORD」でした。はっきりとミックスされているイントロのドラムロールはちょっとうるさすぎるなと思いますが、最後のギター・ソロが素晴らしいのです。オリジナル・ミックスでは霧の向こうで絡み合うように流れていたふたつのソロが、それぞれのソロにディレイがかけられて何倍もの迫力を持って絡み合っています。オリジナルミックスほどのしっとりとした味はないものの、このヴァージョンの迫力は特筆ものだと思います。(^^)

ということで、日本盤の紙ジャケCDとこのCDを並べて聴いて、「70年代ヴァージョンのアーガス」と「21世紀ヴァージョンのアーガス」の両方を楽しんでみてくださいね。どちらのヴァージョンがいいかというのは、あくまで個人の好みの問題だと思いますしね。それに、音の構造自体が違うのですから、両者を比べること自体が無意味だとも言えるでしょうし。

そうそう、ジャケットですが、今回は最初に出たCDのようなあっと驚くトリミングは使われず、オリジナルに近いトリミングになっています。ただ、裏ジャケのUFOは消されていますし、色合いも、最初のCDの色合いに近くなっています。ジャケットに関しては、オリジナル通りのジャケットでいってほしかったなって思いますけどね。

最後にボーナス・トラックです。今までのCDでは「NO EASY ROAD」のシングル・ヴァージョンが入っていたのですが、今回は「LIVE FROM MEMPHIS」が全曲収められています。ファンへのサービスということでしょうが、このボーナス・トラックはついててもついてなくても良かったんですけどね、僕には。(笑)

話は変わりますが、ニュー・アルバム「Bona Fide」のリリースは4月末以降になるそうです。曲目はもう決まっているんですけどね。

"Ancient Remedy," "Almighty Blues," "Bona Fide," "Changing Tracks," "Difference in Time," "Loves Enigma," "Come Rain, Come Shine," "Faith Hope and Love," "Go With Peace, " and "Shoulda, Woulda, Coulda"

となる予定だそうです。

では、また次回に。

(追補:アーガスのリマスター盤の日本盤ですが、ユニバーサル・ジャパンから5/29のリリース予定です。)